- HOME
- 刊行物のご案内
- 心理学ワールド
- 101号 『心理学ワールド』の楽しみ方
- 執筆と担当からみる「つながり」
執筆と担当からみる「つながり」
宇井 美代子(うい みよこ)
Profile─宇井 美代子
筑波大学大学院博士課程心理学研究科修了。博士(心理学)。専門は社会心理学,ジェンダー。著書に『社会に切りこむ心理学』(共編著,サイエンス社)など。
『心理学ワールド』86号(2019年)から,日本心理学会男女共同参画推進委員会が企画した「私のワークライフバランス」のコーナーが始まりました。近年,ワークライフバランスへの関心が高まってきましたが,それはまたワークとライフのバランスをとることがいかに難しいかを示唆するものであり,研究者も同様です。そのような中,それぞれの研究者がワークライフバランスをどのようにとってきたのかについて執筆者に語っていただくことで,読者のヒントになればと,企画されたものです。2023年1月に発行された100号までの間に,14名の方にそれぞれのワークライフバランスについて執筆していただきました。
私は現在,男女共同参画推進委員として本コーナーの担当をさせていただいておりますが(近々,次の担当者の方に引き継ぎます),実は初回の執筆者でありました。本コーナーの企画者である前担当委員の方から,お声がけいただいたのです。最初は「私なんかが“ヒント”だなんて,おこがましくて,とんでもない!」と尻込みをしたのですが,「すばらしいこと」を披露するのではなく,ただただ普段感じていること,行っていることを書いてほしいとのことでしたので,お引き受けしました。当時4歳の娘をバタバタと育て,バタバタと仕事をしておりましたが,いざ書いてみますと,夫と協力し,周囲の方々からの支援をいただきながらという「つながり」の中でワークライフバランスをとっていることに気づく機会となりました。
その後,今度は自分が男女共同参画推進委員となり,本コーナーの担当者として,執筆をお願いする立場となりました。「これこそが正しいワークライフバランス」というものがあるわけではありません。それぞれの状況や考えはさまざまであり,それぞれ独自のワークライフバランスがありますので,年齢層や職や家庭の状況ができるだけ異なる方々に執筆をお願いするようにしています。「私でいいんですか?」と,私と同じような反応をされる方もいらっしゃいましたし,自分の経験や価値観を押しつけることにならないように,一言一句に注意を払いながら書いたという方もいらっしゃいました。
本コーナーをお読みくださった方から「毎回,楽しみにしている」との声をいただくことがあります。これは執筆してくださった方々のおかげであり,担当者としてもありがたく思います。一方,「書かれているようにうまくいくことばかりではない」とご指摘いただくこともあります。さまざまに大変な状況の中にいらっしゃる方もおられると思いますし,執筆者の方からも限られた誌面の中,「書けないこともある」とお知らせいただくこともありました。
本コーナーで書かれていないことのいくつかについては,男女共同参画推進委員会で企画・実施している「女性研究者ネットワーキングイベント」や「メンタリングイベント」のほか,「ジェンダーTips」というメーリングリストもお役に立つかもしれません。院生の方からベテランの方まで多くの方に集まっていただき,それぞれのご経験やお考え,疑問,有益だった制度などをざっくばらんに情報交換をしています。ご興味・関心のある方はぜひご参加ください。詳細は日本心理学会のサイト内にある男女共同参画推進委員会のページでご確認いただけます。
私は執筆者と担当者という2つの立場から本コーナーにかかわることができました。執筆者としては自分と周囲とのつながりを感じる機会となりました。担当者としては,できるだけ多様なワークライフバランスをご紹介し,またイベント等を通して研究者間のつながりの一助となればと思います。担当者から執筆のお声がけがありましたら,ぜひお引き受けいただき,ご経験を読者のみなさまにシェアしていただけると幸いです。
PDFをダウンロード
1