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『心理学ワールド』の制作に携わった10年間

森光 佑有
51号~89号 制作担当 株式会社北大路書房

森光 佑有(もりみつ ゆう)

Profile─森光 佑有
東京都立大学人文学部心理学科卒業。一般企業への就職を経て,出版社に転職。日本評論社に非常勤で約2年間,新曜社に正社員で約10年間勤め,2020年より現職。

実務教育出版から『心理学ワールド』の制作を新曜社が引き継いだのが約13年前。以来,京都の北大路書房に転職するまで約10年間にわたり本誌の制作を担当しました。学会誌の制作自体初めて任されるうえ,カラーページや新コーナーを交えて誌面を大幅リニューアルすることになり,納品までのタイムリミットが迫る中,さまざまな方々に助けていただきながら手探り状態で準備を進めていた当時の心境が懐かしく思い起こされます。その時はよもや,101号の特集で自分が執筆することになるとは思いもよりませんでした。

今回の特別企画は,これまで本誌51号以降に掲載された気になる記事を2~3本ほど振り返って紹介するというテーマで各自書くことになっていたかと思いますが,一方で「制作のウラ話も交えつつ」というご要請もいただきましたので,そうした話題に主に焦点を当てて書くことにします。

「特集」や「小特集」企画の舞台裏

『心理学ワールド』では,毎号,さまざまなテーマで特集や小特集が企画されています。これらの企画は,いつもどのように立てられているのでしょうか。

企画の立案者は,本誌の編集委員会の先生方です。編集委員はそれぞれ任期中に特集と小特集を各2回程度持ち回りで担当し,テーマや執筆候補者案などを企画案に取りまとめ,年4回開かれる編集委員会に提出します。企画案は自由に立てられるため,担当編集委員のご専門やご関心に沿う中身になることが多く,先生方の多様なバックグラウンドや人脈が,毎号の多彩な企画内容へとつながっています。

編集委員のメンバー自体,心理学のさまざまな専門領域からバランス良く構成されるように選出されていて,2年ごとに約半数が任期を終えて交代します。コロナ禍以前には新旧の編集委員が交代するタイミングで「懇親会」が開かれていました。懇親会では打ち解けた雰囲気でお酒を飲みながら美味しいお食事をいただき,先生方や学会事務局の方々と心理学その他いろいろ語らったひと時は,本誌の制作に携わってきた中で最も楽しかった思い出の一つです。

また,特集は時に,社会的にあるいは心理学界にとって重大な出来事に焦点を当てて企画されることがありました。そのような企画の例として,「東日本大震災から1年」(57号,2012年),「その心理学信じていいですか?」(68号,2015年),「公認心理師 現状と将来」(86号,2019年)などがあり,公益社団法人として日本の心理学をリードする学会の姿勢を明確に打ち出す中身となりました。

私にとっての『心理学ワールド』

学術書の編集者の仕事を続ける楽しさの一つは,お給料を稼ぎながら,自分の興味・関心ある学問領域の「学生」としてずっと居られることです。心理学の最先端の話題をバラエティ豊かに,かつまっとうに伝える『心理学ワールド』は,私にとって,大学生の時に感じていた心理学の学びの楽しさの初心へといつも立ち返ることのできるメディアでした。どの編集委員の先生方も「自分の専門領域の心理学の面白さを伝えたい!」という熱意を抱いて特集や小特集を企画していました。本誌の制作に携わることのできた10年間をいま改めて振り返ると,とても刺激的で幸せな日々を過ごしていたように思います。

本誌の制作を通じて感じたことや教わったこと,いただいた先生方とのつながりを新たな環境で図書出版へと活かしながら,学術書の編集者としてマーケットと学問とをつなぎ,心理学ワールドの広がりと発展に少しでも貢献できれば10年間の恩返しになるのかな,と思っています。

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