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ここでも活きてる心理学

働く人の支援に活かす

SOMPOヘルスサポート(株)産業保健サービス部開発推進グループ長 SOMPOインスティチュート・プラス(株)上席研究員

田上 明日香(たのうえ あすか)

Profile─田上 明日香
博士(人間科学)。専門は臨床心理学,認知行動療法。2011年,SOMPOヘルスサポート(株)入社。2022年よりSOMPOインスティチュート・プラス(株)にも所属。2013年より早稲田大学人間科学部非常勤講師を兼任。

研修講師として登壇
研修講師として登壇

私は,産業領域で①企業で働く人の心身の健康づくりを外部からサポートする会社と,②働き方をはじめさまざまな領域の調査研究を行っているシンクタンクというグループ内の2つの会社を兼務して,仕事をしています。

①企業で働く人の心身の健康づくりのサポート

働く人の心身の健康づくりは,従来,労働安全衛生法に基づく産業保健活動の中で,ボトムアップで取り組みが行われてきました。最近では,これらの活動に加えて,少子高齢化や労働人口の減少,変化の速いビジネス環境などの影響もあり,健康経営や人的資本経営と言われるような,人材を資本ととらえ,経営的な視点から,人に積極的な投資をし,心身の健康や働きがいと働きやすさの支援を積極的に取り組む企業も増えてきています。このような環境変化の中で,心理職の支援の領域も,従来の不調の従業員の方への心理的支援や上司や人事の対応支援に加えて,全従業員を対象にした積極的な心身の健康づくりの領域まで広がっています。このような領域において,個人と組織全体への支援に加えて,新たなニーズに対応したサービス開発などにも携わっています。

また,50人以上の事業場で義務化されているストレスチェックなどでは,従業員がストレス状況の結果を確認することや,高ストレスの従業員に医師面接指導を勧奨し希望があれば医師面接を行うことは義務とされています。これらの取り組みについて企画や結果の評価などを行う,法令で定められた実施者を,心理職も担うことができます。さらに,ストレスチェックを効果的に活用するために,従業員にストレスマネジメントの知識を身に着けてもらうことや,努力義務とされている,未然防止を目的とする組織分析を行い職場の環境改善をしていくことなどにも,心理的な支援の専門家である心理職が活躍しています。

②働きがい,働きやすさの調査・研究

上記のような,企業で働く人の支援を進めていく際には,会社がどのような取り組みに,人や予算などを配分し,限りある投資をしていくのが効果的なのかを明らかにしたうえで,さまざまな取り組みを推進していく必要があります。したがって,働く人のデータを分析し,またさまざまな知見を整理し,先行研究で明らかにされていることをふまえた研究の蓄積が求められています。この仕事については,主にシンクタンクにおいて研究しているテーマになります。このように心理学で学んできたことをバックグランドに持ちながら研究を進めています。

この領域で働きたい人の最初の一歩に

産業領域で働く心理職は少なく,この領域を希望しても実務経験がないと仕事につきにくい現状があります。そこで,①の会社内で,産業領域で働きたい心理職のみなさんを対象にした,1年間の大学院実習も兼ねたインターンシップの企画・運営を行い,産業領域での実務家育成を行っています。ここでは産業領域の心理職として培ったことを実践的な教育活動の中に活かすことができています。

このように,心理学の知見を産業領域での心理的支援の実践,研究,教育に活かしながら,仕事をしています。興味関心を寄せていただき,一緒に活動できる仲間が少しでも増えることを願っています。

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