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私のワークライフバランス

「夫婦それぞれのワークライフバランス」の間のバランス

白井 述
立教大学現代心理学部 教授

白井 述(しらい のぶ)

Profile─白井 述
博士(心理学)。専門は知覚・発達心理学。著書に『視覚の事典』(分担執筆,朝倉書店),『心理学実験 (公認心理師の基礎と実践 第6巻)』(分担執筆,遠見書房)など。

お仕事の都合により,ご夫婦で同居や別居を繰り返されてきた白井述先生。お互いのワークライフバランスの間のバランスを模索されてきた経験について語っていただきました。

私の家族構成は,私と配偶者のふたりです。共通の趣味はお酒を嗜むことで,私たちの「ライフ」の多くを占めていますが,お酒を楽しむには心身の健康が大事ということで,最近は副次的な趣味としてサイクリングやジョギングも一緒に楽しんでいます。「ワーク」と関連した情報としては,ふたりとも,教員として大学に勤務する心理学者であることが挙げられます。同じ勤務先になったことはありませんが,研究テーマが近いこともあり,共同研究者として一緒に仕事をすることは頻繁にあります。

そんな私たちですが,互いにポスドクだった頃に結婚して以来,同居したり,別居したりを何度か繰り返してきました。別に,仲が悪くなったり,持ち直したりとかそういうことではなく,主にはお互いの「仕事の都合」によります。ちなみに,2022年の4月から,私の勤務先が新潟から埼玉の大学に変わり,何年か早く東京の大学に勤めていた配偶者と一緒に,現在は都内で暮らしていますが,これまでの結婚期間の半分ほどを別々に暮らしてきた計算です。

現代の日本の民法には夫婦の同居義務が定められていますし(民法752条に「夫婦は同居し,互いに協力し扶助しなければならない」とあります),また,実際に周りを見渡しても,同居している夫婦の方が多いようにも思います。にもかかわらず,「仕事の都合」で,それなりの年月を別居状態で過ごす選択をしてきたのですから,私や配偶者のワークライフバランスは,他人から見れば相当に「ワーク」に偏ったものに映るかもしれません。

実際のところどうなのかといえば,私も配偶者も,研究者であることを楽しんではきましたが,お互い仕事最優先の人生を歩んできたわけでもありません。ただ,私と配偶者,それぞれのワークライフバランスが互いに相容れないものにならないよう,努めて意識してきたとは思います。例えば,どちらか一方の「ワーク」ないしは「ライフ」が先行,あるいは停滞し過ぎれば,当人のワークライフバランスが変わるのは当然として,相手のワークライフバランスにも多かれ少なかれ影響します。そういう状況が訪れたときには,お互いのワークライフバランスが各自の許容範囲から外れないように,また,お互いのワークライフバランスの状態に大きな隔たりが生じないように,相談や議論,選択を都度繰り返してきました。いわば,ふたりのワークライフバランス間のバランスを保つことで,互いに納得できる選択肢を模索してきたのかもしれません。

結果として,一緒に暮らしたり離れたりを繰り返しつつ,おそらくは現代日本の平均的な夫婦像とは,大分異なる生活を送ってきたのだと思います。そうした生活が,他人の目にはどう映るのか,正直なところよくわかりません。ただ,少なくとも私たちにとっては,それはそれで,刺激的で得難い経験を伴った,それなりに幸せな生活だったように思います。また,紆余曲折を経て,現在のように一緒に暮らせるようになったことも,単純に,そしてとても嬉しく感じています。同居を再開したことで生じたであろうワークライフバランスの変化も徐々に感じてきてはいるところですが,そうした変化自体も楽しみながら,これまで以上に充実した生活を送ることができたらな,と思っています。

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