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私のワークライフバランス

夫婦の協力と自己実現

フミコンサルティング合同会社 代表/青山学院大学,慶応義塾大学 非常勤講師

蔵本 真紀子(くらもと まきこ)

Profile─蔵本 真紀子
ビクトリア大学でBA,青山学院大学で博士(心理学)取得。専門は発達心理学,文化心理学。2020年設立の自社で企業向け人事系コンサルティングを提供。

左から夫,次女,長女,私
左から夫,次女,長女,私

国際結婚を経験し,子育てと学位取得を同時並行で進められてきた蔵本真紀子先生。役割分担を柔軟にとらえ,ご夫婦でお互いに尊重,協力し合っていくという大切な視点を語っていただきました。

フランス企業で働いていた時に出会った同僚のフランス人と結婚し,国際結婚の子育ての難しさを初めて実感しました。周囲には国際離婚や夫婦仲の悪化で苦しむ子どもたちが多く,彼らを助けたいという思いから,異文化間夫婦の実態と子育てについて研究するため,青山学院大学大学院に社会人入学しました。大学院入学と同時に次女の妊娠が判明し,入学後すぐに1年間の休学を余儀なくされました。その後,夫の海外赴任が決まり,いわゆる「ワンオペ育児」が始まりました。休学中は2歳の長女の子育てと並行して,空き時間に先行研究を調べ,取りまとめる日々を送りました。次女出産後,翌年の後期から復学しましたが,夫不在の中で研究とインタビュー調査,資格取得の研修に参加する際はベビーシッターの助けを借りました。修士論文・博士論文の執筆は子どもが寝静まった後の22時から始め,平均睡眠時間は4時間でした。博士後期課程修了時は感無量でした。多くの人から,どうやって心身を壊さずにやり遂げたのかと聞かれます。確かに大変でしたが,限界を感じることは少なかったです。当時実践していたワークライフバランスのポイントは以下の通りです。

  1. ① 自分の研究に誇りを持ち,価値があるという強い信念を持つこと
  2. ② 研究は回り回って子どもたちのためになると考えること
  3. ③ ベビーシッターに頼ることに罪悪感を持たないこと
  4. ④ 子どもと一緒にいる時間を最大限楽しむこと
  5. ⑤ 隙間時間があれば,短い昼寝をすること
  6. ⑥ 夫に愚痴ること

夫が休暇で帰国した際は,疲れているにもかかわらず子どもの世話や家事を率先してくれ,私の健康を気遣ってくれたことに感謝しています。夫が完全に日本に帰国した後は,役割分担を徹底的に話し合いました。ただし,その役割に固執せず臨機応変に対応しています。例えば,料理担当の私が仕事で遅くなる時は夫が作り,風呂掃除担当の夫が腰を痛めた時は私が代わりに行います。役割分担は固定的なものではなく,状況に応じて柔軟に調整するものだと考えています。また,夫婦間で小まめに労い,感謝の気持ちを伝え合うようにしています。家庭を持つ者にとってワークライフバランスには互いへの尊重と積極的協力が不可欠です。互いの文化的背景や言語の違いから齟齬が生じることがあるため,「察して」は排除し,言葉を尽くすこと,相手を理解しようとする姿勢が自然と身につきました。こうした家庭内の自他尊重コミュニケーションもワークライフバランスを良好に保つための秘訣だと思います。

現在は培った知識と現場経験を活かして企業向けコンサルティング,研修,コーチングを行っています。子どもたちは成長し手がかからなくなりましたが,まだまだ親との質の高いコミュニケーションが不可欠な時期です。「忙しそうだから話しかけにくいな」と思われないように,子どもたちとの時間を何より優先したいと思います。また,家庭だけでなく,自分の時間も大切にしています。漫画やアニメが好きなので,時間ができたら漫画を読んで楽しんでいます。

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