私のワークライフバランス
ほどほど主義で進む道

西 恭平(にし きょうへい)
Profile─西 恭平
博士(学術)。専門は臨床心理学。2025年より現職。筆頭論文に「思春期における,自傷行為をする友人との関わりと捉え方の変容プロセス」『心理臨床学研究』42(1), 29-42, 2024など。
臨床の現場を経て,研究の道を歩まれている西先生。パートナーや近しい方の助けを借りながら,無理なく研究と向き合うための大切な心構えを教えていただきました。
私は修士課程修了後に臨床の現場へ出て,数年を経て研究の道に戻りました。現場での支援も続けつつ,より早い時期からの学びの支援や,研究で得た知見を複数の現場へ広く還元したいという思いが強まり,社会人から博士課程へと舵を切りました。
博士課程の3年間は,研究・臨床のダブルワークであり,そこにプライベート(ライフ)も加わり,せわしない日々でした。しかし,いろいろなものに手を出すということは,それだけ幅広い経験ができるということであり,それらが良い相互作用を生み出していました。例えば,週に一度のスクールカウンセラーの勤務は,そこで得た問いが研究の視点につながり,その研究活動がまた臨床にも還元されていました。
ただし,時間と体力には限りがあります。まだまだバランスは模索中の身ですが,私なりに工夫をしてきました。一つは,「完璧主義からほどほど主義へ」です。作業を最小単位に砕き,隙間時間で少しだけ,とりあえず手を動かしてみることにします。論文もこまめに見直さず,ひとまず最後まで書き切ります。作業は,区切りの良さではなく決めた時間で終わらせます。また,予定のない日を意図的に設けて,その日は趣味の時間と仕事の調整に充てました。業務が減る夏休みなどの時期には,研究にギアチェンジして集中的に取り組みました。もちろん,受ける仕事は絞り込むようにして,背伸びをしすぎない量で回すようにもしました。
ただ,これらを一人で考え,管理することは私には難しかったので,友人や先輩,先生方,同僚に積極的に相談しました。職場が複数あることは,そのまま相談先の多さにもつながっています。
家庭の設計でも視点を切り替えました。私は博士課程進学と同時に今の妻と同棲を始め,博士号取得の2025年3月にプロポーズ,同年11月に結婚しました。初めは家事にも意気揚々と力を入れていましたが,今はほどほど主義で回す運用をしています。研究者はキャリアが見えづらく変動も大きいですが,妻はよく相談に乗ってくれ,共に何度も将来設計を立て直してくれました。
ひとりひとりの状況が違うので,ワークライフバランスにおいて「こうしたらよい!」という唯一の正解はないでしょう。しかし,情報を集める,誰かに相談する,ということはとても大切だと感じます。この記事もその一つでしょうし,日本心理学会における交流も大きな資源だと思います。
私もまだ駆け出しですが,この記事が,博士課程に進むか迷っている方や,両立に不安を抱える研究者の方にとって,少しでもヒントになっていればうれしいです。あなたのこれからの一歩を,心から応援しています。
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