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私のワークライフバランス

ライフはワークの中に

中村 菜々子
中央大学文学部心理学専攻 教授

中村 菜々子(なかむら ななこ)

Profile─中村 菜々子
博士(人間科学)・博士(医学)。専門は臨床心理学,健康心理学,コミュニティ心理学。監訳書に『パーソナリティと個人差の心理学・再入門』(新曜社)。

ライフとワークは必ずしも切り離されたものではありません。今回は,職場の中だけに閉じない関係性,そこから得られたライフへの気づきについて語っていただきました。

生来うっかり者で計画を立てるのが苦手,キャリアプランなどもつ余裕もなく生きてきました。特に若い頃は「仕事があるなら全国どこへでも」の精神で,常勤の仕事を切らさないことが最優先事項でした。

博士課程3年で学位が取得できず,幸運にも同じ大学の附属研究所助手として職を得て,働きながら学位論文を何とか提出しました。任期が切れる前にと次を探し,一人暮らしも未経験のまま,地縁のない土地の公募に応募しました。われながらよく思い切ったものです。

中村菜々子氏の経歴年表

職場では,心理臨床教育の伝統校である広島大学と,心理相談室立ち上げに関わった比治山大学での経験が,心理士養成の教育基盤になりました。この時期には自分の臨床技術と教育力の未熟さに直面し,仲間と勉強会を行い,失敗と迷いを持ち寄りました。こうした学びの場は,互いの悩みを職場以外で話せる場にもなっていたと思います。次に兵庫教育大学へ異動しましたが,教育では悩むことだらけでした。先輩心理士でもある同僚に時にランチをご一緒しながら指導上の悩みを相談したことはよい思い出です。その対話からうれしい副産物[1]も生まれました。

職場外では,学部や大学院の友人,共同研究者,勉強会や学会などで出会った仲間,各職場の元同僚が公私のヒントをくれました。思えば学部生の頃に学外の勉強会で温かく迎えてもらった経験,学部・修士・博士・助手で異なるゼミに所属して友人ができた経験が,一人で初めてのコミュニティに入ることへの自己効力感を高めてくれたのかもしれません。職場外のつながりは,同じ職場の中だけに閉じないつながりとなり,普段の役割から少し離れた視点を与えてくれます。そして現在,これまでの縁はオンライン・コミュニケーションツールのおかげで距離を越えて維持されやすくなっています。

出産は42歳の時でした。仕事を通じて人生の経験値を多少なりとも上げた後だったおかげか,余裕をもって子どもの成長につきあえているなと思います。妊娠中は職場の先輩女性教員たちが出産後の生活に関する知恵を授けてくれ,出産後は彼女たちが尽力して整えた育休制度に助けられました。出産までは遠距離婚,育休後は遠距離に戻ろうと思っていたところ,先輩教員から「家族を第一に大切に」とアドバイスされました。相当悩みましたが,思い切って遠距離を解消できるよう異動しました。それが現在の職場です。

こうして振り返ると,私はただ,日々の仕事に向き合い,つまずくたびに相談してきただけでした。悩み・反省し,相談し,ヒントをもらう。また新しいつまずきが来る。その繰り返しで,人生を一歩ずつ歩んできました。ワークに真剣に取り組み,悩む中から得たつながりとヒントによってライフもまた形作られているなと感じています(草稿に目を通してくれた社会心理学者である友人によれば,これを「スピル・オーバー」と呼ぶそうです!)。

文献

  • 1.遠藤裕乃・佐田久真貴・中村菜々子(編)(2018)その心理臨床,大丈夫? 心理臨床実践のポイント.日本評論社.

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