表彰
優秀論文賞受賞論文
2024年
選考経過
2024年度優秀論文賞選考委員会は規程により編集委員6名,犬塚 美輪,上田 祥行,島 義弘,竹村 幸祐,宮本 百合,村井 潤一郎 各氏,理事または代議員経験者5名,石川 信一,大森 美香,清水 由紀,白井 述,入戸野 宏 各氏と,阿部 恒之理事長,原田 悦子編集担当常務理事が加わり構成された。なお,規程により委員長に石川氏が指名された。
対象となった論文50編は,2023年度に完結した「心理学研究」第94巻第1―6号の原著論文,研究資料と,2023年に完結した “Japanese Psychological Research” 第65巻第1―4号のOriginal Articleである。
選考委員会は,2024年4月20日(土)の第1回委員会で,機関誌等編集委員会での初回の審査結果と各論文の担当編集委員の推薦を参考にして,20編を第1次審査の候補として選び,第1次審査を行った。5月18日(土)の第2回委員会で第2次審査の候補を7編にしぼり,第2次審査を行った。6月15日(土)の第3回委員会で,第1,2次審査の結果を総合して判断し,最終的に以下の2編を優秀論文賞とした。いずれの審査も,日本心理学会優秀論文賞規程および優秀論文賞審査に関する申し合わせに則り行われた。
なお今年度は,人々の健康・福祉の増進に直接的に貢献しうる研究や,先駆的な分析方法を適用した研究など,意欲的な論文が多くみられた。こうした内容の面白さ・独自性に加えて,心理学研究としての理論的・方法論的貢献が明確であることがあいまって,論文としての評価あるいは魅力が高くなることが,選考過程での議論により確認された。今後も,科学的研究論文としての範となると同時に,社会的課題の問題解決に繋がる研究成果の発信でもある,そうした魅力ある研究論文が増加していくことを期待したい。
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
前田 友吾 | 北海道大学 | 成功時の誇り・羞恥経験の文化差に対する関係流動性の媒介効果 | 心理学研究第94巻第5号 |
結城 雅樹 | |||
授賞理由 | |||
本論文は,他者の面前での成功時に喚起する感情の文化差の理由を社会生態学的アプローチの観点から捉え,検討したものである。先行研究において,西洋文化では他者の面前での成功時には誇りを,東アジア文化では羞恥を感じやすいことが示されているが,文化的自己観の違いに基づいたその説明には感情の適応機能への言及がなく,他の文化差研究との理論的一貫性が欠如していた。本研究では,対人関係の形成や解消の自由度を意味する関係流動性に注目し,この知覚の違いが成功時の羞恥と誇りの日米差を媒介するか,さらに成功者に社会から与えられる報酬や罰の信念がこの関係性を媒介するかを検討した。その結果,成功時の羞恥の日米差は,関係流動性の低さとそれに伴う成功罰信念によって媒介されることがわかった。一方で,誇りの日米差を関係流動性の高さと成功賞信念によって説明する間接効果は,正の相関を示したが有意傾向であった。これらは,自己意識的感情の機能と社会生態学的環境の両面に注目した理論に対する実証的証拠として,感情研究及び文化心理学への理論的な貢献を持つ。本研究は明快な論理展開に基づいており,研究の意義とともに,限界点や今後検討すべきことについても体系立てて言及されている。これらの点で論文としての完成度が高く評価され,本論文が優秀論文賞に相応しいと判断された。なお,本研究で作成された誇り・羞恥の仮想的場面や,成功賞罰信念尺度には妥当性の検討が不足している点も指摘され,これらについては今後の研究が俟たれるところである。 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
縄田 健悟 | 福岡大学 | 組織におけるチームワークの影響過程に関する統合モデル──チームレベルの分析による検討── | 心理学研究第94巻第6号 |
池田 浩 | 九州大学 | ||
青島 未佳 | |||
山口 裕幸 | |||
授賞理由 | |||
本研究は,企業組織におけるチームワークの過程を,チームレベルで検討したものである。著者らは,チームワークについての基礎的なモデルであるInput-Process-Output (IPO) モデルと,課題遂行機能と関係維持機能の相乗効果というリーダーシップ行動論の古典的モデル(三隅のPM理論)の両方を実証的に検討した。分析対象は,21の企業組織に所属する812チーム,計5,728名のデータという大規模なものであり,マルチレベル分析を用いてチームレベルの分析が行われた。まずIPOモデルに基づき,チーム・リーダーシップを先行要因,チーム・プロセスを媒介要因,チーム・パフォーマンスを結果要因としたチームワークのモデルを検証し,その妥当性を確認した。さらに,課題志向と関係志向というリーダーシップの2側面がともに高い場合,チーム・プロセスやチーム・パフォーマンスが高くなるという相乗効果が見られた。本研究で検証された古典的なモデルは非常に影響力がある一方で,実際の企業組織の現場における,チームレベルでの実証的論拠は限られていた。本研究は,これらの古典的な理論を実証的に検討していることが,特に高く評価できる。これを可能にしたのはチームレベルでの大規模データである。ネット調査技術の進展もあり,数千人規模の調査データは心理学でも珍しくなくなりつつあるが,本研究は企業組織・チーム・個人というネスト構造を保有するデータを収集している。これにより,古典的理論の新たな(そして適切な)検証が可能となった。また,著者らの研究チームはこれまでにチームの影響過程についての研究成果を蓄積してきており,本論文ではそれらの知見を踏まえた上で,リーダーシップを先行要因として加えることで,新たな発展を遂げている点も評価できる。これらの理由から,本論文は優秀論文賞にふさわしいと判断した。 |
選考経過
2023年度優秀論文賞選考委員会は規程により編集委員6名,河原 純一郎,鈴木 敦命,竹村 幸祐,野村 晴夫,村井 潤一郎,森田 愛子各氏,理事または代議員経験者5名,石川 信一,大森 美香,清水 由紀,森 津太子,山口 裕幸各氏と,阿部 恒之理事長,原田 悦子編集担当常務理事が加わり構成された。なお,規程により委員長に森氏が指名された。
対象となった論文65編は,2022年度に完結した「心理学研究」第93巻第1―6号の原著論文,研究資料と,2022年に完結した “Japanese Psychological Research” 第64巻第1―4号のOriginal Articleである。
選考委員会は,2023年4月23日(日)の第1回委員会で,編集委員,優秀論文賞選考委員の推薦および編集委員会における評価を参考にして35編を第1次審査の候補として選び,第1次審査を行った。6月25日(日)の第2回委員会で第2次審査の候補を13編にしぼり,第2次審査を行った。8月3日(木)の第3回委員会で,第1,2次審査の結果を総合して判断し,最終的に以下の3編を優秀論文賞とした。
なお,審査は日本心理学会優秀論文賞規程および優秀論文賞審査に関する申し合わせに則り行った。
授賞論文の著者に対し,2023年9月14日(木) 日本心理学会第87回大会プレコンベンション学術交流会において,石金総務担当常務理事が選考経過を報告し,続いて阿部理事長から賞状が授与された。
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
溝川 藍 | 名古屋大学 | Japanese and British Children's Understanding of the Social Function of Pretend Crying | Japanese Psychological Research Vol.64, No.1 |
授賞理由 | |||
本論文は,泣くふり(pretend crying)(いわゆる嘘泣き)の理解における異文化間の差異について,特に社会的機能に注目して検討したものである。日本とイギリスの5歳児と6歳児計71名を対象とし,登場人物が他の人の前で泣くふりをする様子を描いた架空の物語を提示し,子どもの認知や道徳的判断を調べた。その結果,異文化間の類似点と相違点の両方が示された。日英どちらの子どもも,本物の泣きと泣くふりを正しく区別し,泣くふりを良くない行動であると判断した。しかし,泣くふりの社会的機能に対する理解は文化間で異なっており,日本の子どもはイギリスの子どもよりも,泣くふりをすることで他者の関心や向社会的行動を引き出すと考える傾向が強かった。これらの結果は,集団主義的文化では個人主義的文化と比較して,ネガティブな感情の表出や他者に助けを求めることが抑制されやすいため,他者の泣いたふりについて「深読み」しやすいことを反映していると考察された。すなわち,日本の子どもはイギリスの子どもよりも,泣いたふりをした個人がより大きな悲しみを感じており,社会的な助けを必要としていると考えやすいのではないかとされた。子どもを対象とした比較文化研究はその困難さから世界的にもまだ多くないが,本研究は個別実験というさらに労力のかかる手法を用いて感情理解の文化差について丁寧に検討した点で評価できる。また,泣くふりという子どもの日常生活の中で観察される事象を対象とし,意図的な感情表出の社会的機能という観点からアプローチしたことにより,発達早期からの対人認知の文化的多様性を鮮明に描き出すことに成功している。以上の点から,本論文が優秀論文賞に相応しいと判断された。 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
Vinai Norasakkunkit | Gonzaga University | Precarious Lives Predict Culturally Deviant Psychologies: Extending the Psychology of Marginalization From Japan to the US. Japanese Psychological Research, | Japanese Psychological Research Vol.64, No.2 |
Brennan Champagne | |||
Kavika Prietto | |||
Jacqueline Armour | |||
Carly Ball | University of Denver | ||
Hayley Bigoni | Gonzaga University | ||
Allison Cutuli | University of Montana | ||
授賞理由 | |||
社会から取り残されてしまった人々(例えば,ひきこもりやNEETの状態にある人々)は,どのような心理傾向を持つようになるのか。また,その心理傾向は,当人の社会参加にどう影響するのか。本研究は,この大きな問いに答えるための研究プログラムの一端を担っている。著者たちは,社会からの離脱(例えば,ひきこもり)を,個人や家庭の問題としてではなく,マクロな社会の問題として見る。同時に,マイクロな心理傾向を丁寧に調べる実験的手法を重視し,マクロとマイクロの関係に迫ろうとしている。本研究に先立って日本で実施された先行研究では,周縁化リスク(質問紙尺度で測定)の高い人々が,日本の典型的な心理傾向(相互協調的な心理傾向)から乖離した心理傾向を持つことが示されていた。本研究は,同様の実験をアメリカで行ったものである。その結果,高リスク群がアメリカでの典型的パタン(相互独立的な心理傾向)の逆を示すことが確認された。本研究は,ある社会での問題(日本におけるひきこもり)に端を発しつつ,他文化での検証・問題意識の発信へと進んだ研究であり,国際的な研究展開の望ましい姿を示している。しかも,日本で生じがちとされる,欧米からの研究の「輸入」の逆を行くものであり,モデルケースとしての価値も高い。また,文化心理学的視座を活かした応用研究であると同時に,文化心理学の理論的限界――各社会のメインストリームだけに注目した理論構築――を打破する手がかりも本研究は示している。これらの点が高く評価され,優秀論文賞にふさわしいと判断された。 なお,公刊当時の論文には表記の誤りがあり,訂正が発表されている。 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
Carola Hommerich | 上智大学 | Determinants of Interdependent Happiness Focusing on the Role of Social Capital: Empirical Insight From Japan | Japanese Psychological Research Vol.64, No.2 |
大沼 進 | 北海道大学 | ||
佐藤 和成 | |||
水鳥 翔伍 | |||
授賞理由 | |||
本研究は,相互協調的文化における幸福観と主観的幸福感と関連要因の関連を比較したものである。主観的幸福感は,Diener の人生満足感尺度で測定されることが多いが,欧米文化の幸福観に基づいており,文化的文脈によってはこの尺度ではとらえきれない側面があると考えられている。また,心理学的研究においては,幸福感における社会的資本の役割が見過ごされがちである。このような背景のもと,本研究は,相互協調的文化の幸福観に基づく協調的幸福感尺度と人生満足感尺度を同時に用い,社会関係資本として他者への信頼やサポートネットワークをとりあげた調査を行った。調査では,札幌市住民を対象とし無作為抽出法を用いたデータ収集がなされている。分析の結果,社会関係資本は,いずれの主観的幸福感とも正の関連を示したが協調的幸福感とより強い関連を持つことが明らかになった。この結果は,協調的幸福感が人生満足度尺度では十分網羅されていない社会的資本に関連する幸福の側面を捉えており,協調的幸福感を志向する社会では,社会関係資本の重要性が過小評価される可能性を示唆するものであった。本研究は,心理学研究で見過ごされがちな社会的資本の役割に着目した点でユニークであると評価された。また,幸福感研究において国内外で標準的に使用されている尺度および測定概念について精緻な議論が展開されている点も高く評価できる。以上をふまえ,本論文は優秀論文賞に相応しいと判断された。 |
選考経過
2022年度優秀論文賞選考委員会は規程により編集委員6名,河原 純一郎,国里 愛彦,鈴木 敦命,野村 晴夫,橋本 剛,森田 愛子各氏,理事または代議員経験者5名,浦 光博,菅原 ますみ,野内 類,森 津太子,山口 裕幸各氏と,坂上 貴之理事長,原田 悦子編集担当常務理事が加わり構成された。なお,規程により委員長に菅原氏が指名された。
対象となった論文64編は,2021年度に完結した「心理学研究」第92巻第1―6号の原著論文,研究資料,“Japanese Psychological Research”第63巻第1―4号のOriginal Articleである。
選考委員会は,2022年4月24日(日)の第1回委員会で,編集委員,優秀論文賞選考委員の推薦および編集委員会における評価を参考にして29編を第1次審査の候補として選び,第1次審査を行った。6月12日(日)の第2回委員会で第2次審査の候補を12編にしぼり第2次審査を行った。7月31日(日)の第3回委員会で,第1,2次審査の結果を総合して判断し,最終的に以下の1編を優秀論文賞とした。
なお,審査は日本心理学会優秀論文賞規程および優秀論文賞審査に関する申し合わせに則り行った。
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
神原 歩 | 京都先端科学大学 | 態度が相反する他者への過度なバイアス認知を錯視経験が緩和する効果 | 心理学研究第92巻第1号 |
授賞理由 | |||
近年は,SNS等を通じて,多くの他者の意見を目にすることができる。意見の異なる他者への攻撃が目に触れることもある。本論文は,自身と態度の異なる他者に対して,「バイアスがかかった見方をする人だ」と考えやすいというバイアス認知を扱っており,社会的にも広く関心を集める研究であるといえよう。このようなバイアス認知の緩和策としては,当該の現象や態度についての理解を深めるなどの方法が思い浮かぶが,著者は,錯視を見せるという独創的な方法を用いている。自分の認知が客観的事実を反映していると信じる傾向が,バイアス認知の原因の1つとされているためである。実験では,参加者が関心を持つ社会問題について,自身と同一態度あるいは相反態度の他者を想起させ,その他者についてのバイアス認知を測定した。その前に,静止画が動いて見える錯視を紙上で見せる条件,錯視をモニター上で見せる条件,錯視ではない画像を紙上で見せる統制条件を設定した。実験の結果,錯視を紙上で見せた場合にのみ,自身と態度の相反する他者についてのバイアス認知が低かった。モニター上で見せる条件ではこの効果が得られなかったことも興味深い。モニター上で画像が動いて見えても,自分の知覚が不確かであるとは感じにくいためである。これらの結果を併せると,自身の知覚の不確かさに直面する体験がバイアス認知を緩和させたと解釈できる。このように,本論文は,他者に対するバイアス認知という現象を扱いつつ,一見,それとは関連を想像しにくい錯視を緩和策として用いるというユニークな着想,そして,それを実証する精緻な実験計画が高く評価され,優秀論文賞にふさわしいと判断された。 |
選考経過
2021年度優秀論文賞選考委員会は規程により編集委員6名,石井 敬子,国里 愛彦,小島 康生,橋本 剛,古村 健太郎,守谷 順各氏,理事または代議員経験者5名,梅田 聡,浦 光博,齊藤 智,菅原 ますみ,野内 類各氏と,坂上 貴之理事長,原田 悦子編集担当常務理事が加わり構成された。なお,規程により委員長に梅田氏が指名された。
対象となった論文47編は,2020年度に完結した「心理学研究」第91巻第1―6号の原著論文,研究資料,“Japanese Psychological Research”第62巻第1―4号のOriginal Articleである。
選考委員会は,2021年4月25日(日)の第1回委員会で,編集委員,優秀論文賞選考委員の推薦および編集委員会における評価を参考にして23編を第1次審査の候補として選び,第1次審査を行った。7月2日(金)の第2回委員会で第2次審査の候補を11編にしぼり第2次審査を行った。8月3日(火)の第3回委員会で,第1,2次審査の結果を総合して判断し,最終的に以下の2編を優秀論文賞とした。
なお,審査は日本心理学会優秀論文賞規程および優秀論文賞審査に関する申し合わせに則り行った。
今年度も,プレコンベンション学術交流会が中止となったため,学会ホームページに学会賞の特設ページが開設され,そこに授賞者からのコメントを掲載する予定である。
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
川上 直秋 | 筑波大学 | 指先が変える単語の意味――スマートフォン使用と単語の感情価の関係―― | 心理学研究第91巻第1号 |
授賞理由 | |||
本論文は,スマートフォンの日常的な長期使用が,フリック入力の反復を通して,文字,無意味単語,実在する有意味単語の感情価を変化させることを報告している。著者は,フリック入力における下向きと上向きの親指の動きが,それぞれ手前へと奥への運動であることに注目し,下フリックは接近,上フリックは回避の運動として捉えることができると考えた。接近運動はポジティブな感情と,回避運動はネガティブな感情と結びつくと論じた先行研究に基づき,入力時に下フリックを多く含む単語はポジティブな感情価を,上フリックを多く含む単語はネガティブな感情価を相対的に帯びることになると仮定し,このフリック効果の存在を5つの研究によって検証した。まず,フリック入力が実際に1.5cm以上の指の空間移動を伴うことを確認し(研究1),続いて,ひらがな清音46文字(研究2),782の無意味単語(研究3,研究4),978の単語(研究5)の感情価の評定を計1,500名以上の参加者に求めた。その結果,一貫して,フリック効果が確認され,また,この効果がスマートフォン未使用者には見られないことから(研究4,5),フリック入力と感情価変動の関係が強く示唆された。俄には信じ難い興味深い結果が,膨大な刺激数と十分なサンプルサイズの研究によって繰り返し再現される様は,科学的探求の醍醐味を教え,「良くも悪くも人間の心理は道具依存的でもある」という最終段落の一文を導く論考の精緻さは,爽やかな知的興奮を読後に残す。たとえ小さな影響でも,日常的に何百回と繰り返されることで蓄積され,検出可能となること,このような過程を経て,新しいテクノロジーが人間の心に影響を与え得ることを示した本論文は,新規性,独創性,研究手法の厳密さ,丁寧な考察が高く評価され,優秀論文賞にふさわしいと判断された。 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
高橋 惠子 | 聖心女子大学 | Assessing Representations of Close Relationships Among Chinese and Japanese Adolescents and Young Adults: Commonalities and Differences in the Two Confucian Cultures | Japanese Psychological Research Vol.62, No.2 |
平井 美佳 | 横浜市立大学 | ||
Hou, Jing | 北京師範大学 | ||
清水 裕士 | 関西学院大学 | ||
授賞理由 | |||
私たちが,社会で適応的に過ごすためには,他者との良好な関係が欠かせない。私たちの生活をささえる人間関係は,それぞれ役割の異なる複数の重要な他者(両親や友人や恋人等)との関係によって成り立っている。著者らは,この複数の他者からなる人間関係とその心理的機能(役割)を説明する愛情の関係モデル(Affective relationship model)を提案している。本論文は,この愛情の関係モデルの視点から,日本と中国の青年期を対象に,儒教文化の信念が,重要な他者との関係性とその心理的役割に及ぼす影響を調べたものである。研究の結果から,青年期の日本人と比べると,青年期の中国人は,父親をより重要な他者であると考えており,儒教文化が影響していることを明らかにした。従来の欧米を中心とした文化比較研究では,中国と日本は同一のアジア文化として,研究が行われてきた。しかしながら,本研究では,両国の文化的(主に儒教)背景が異なることに注目し,両国の重要な他者との人間関係の違いを検討している。この着眼点は,欧米を中心とする研究チームからは見過ごされてきており,非常に学術的価値が高い。さらに,本研究は,日本と中国に住む14歳から24歳までの中学生・高校生・大学生の1,565名の参加者に回答を得るなど,非常に労力のかかる研究である。日本と中国とで回答する質問項目についても丁寧に翻訳とバックトランスレーションを行うなど方法論的な精緻さも評価できる。以上のことから,本論文が優秀論文賞に値すると判断された。 |
選考経過
2020年度優秀論文賞選考委員会は規程により編集委員6名,石井 敬子,上瀬 由美子,小島 康生,古村 健太郎,守谷 順,山田 剛史各氏,理事および代議員経験者5名,梅田 聡,齊藤 智,島津 明人,白井 述,矢藤 優子各氏と,坂上 貴之理事長,原田 悦子編集担当常務理事が加わり構成された。なお,規程により委員長に梅田氏が指名された。
対象となった論文56編は,2019年度に完結した「心理学研究」第90巻第1―6号の原著論文,研究資料,“Japanese Psychological Research”第61巻第1―4号のOriginal Articleである。
選考委員会は,2020年4月4日(土)の第1回委員会で,理事・代議員,編集委員,優秀論文賞選考委員の推薦および編集委員会における評価を参考にして29編を第1次審査の候補として選び,第1次審査を行った。6月20日(土)の第2回委員会で第2次審査の候補を14編にしぼり第2次審査を行った。7月25日(土)の第3回委員会で,第1,2次審査の結果を総合して判断し,最終的に以下の2編を優秀論文賞とした。
なお,審査は日本心理学会優秀論文賞規程および優秀論文賞審査に関する申し合わせに則り行った。
委員が著者となっている論文を審査するケースが有ったが,当該委員以外が審査を行い,審議の場では,当該委員に退出を求め,厳正に審査を行った。
今年度は,プレコンベンション学術交流会が中止となったため,学会ホームページに学会賞の特設ページを開設する予定である。
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
中川 知宏 | 近畿大学 | なぜ非行集団に同一化するのか――集団間関係に基づく検討―― | 心理学研究第90巻第3号 |
仲本 尚史 | 福岡少年鑑別所 | ||
國吉 真弥 | 法務省福岡矯正管区 | ||
森 丈弓 | 甲南女子大学 | ||
山入端 津由 | 沖縄国際大学 | ||
大渕 憲一 | 放送大学 | ||
授賞理由 | |||
少年犯罪において,非行集団への同一化は非行リスクを高める一因となる。そのため,非行集団への同一化を規定する要因を検討することは,非行の抑止にとって重要である。本論文は,非行集団への同一化を規定する要因として,非行少年の差別経験と集団境界透過性(個人が社会的カテゴリー間を移行可能であると期待する程度)に注目した。少年鑑別所に入所していた男子少年を対象とした調査が行われた。その結果,同級生,教師や警察,地域住民から差別を受けたことがあると感じている少年は,差別を受けたことがないと感じている少年よりも非行集団への認知的同一化が高くなっていた。また,教師や警察から差別を受けたことがある場合,集団境界透過性が低い(非行集団から別な集団への移行可能性がない)少年は,集団境界透過性が高い少年よりも,集団への同一化が高くなっていた。本研究の特筆すべき点として,少年鑑別所に入所していた男子少年を調査対象者としているというデータの貴重さが挙げられる。また,非行少年の属性や内的要因ではなく,差別や集団境界透過性といった非行少年を取り巻く環境に注目している点も特筆すべき点である。そのため,考察で述べられた非行への再統合的な非難の表明や少年の居場所づくりといった非行抑止の対策が説得力を持ち,大きな実践的示唆を提供するものとなっている。本論文はこれらの点が評価され,優秀論文にふさわしいと判断された。 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
織田 涼 | 立命館大学 | Positive and Negative Affects Facilitate Insight Problem-Solving in Different Ways: A Study with Implicit Hints | Japanese Psychological Research Vol.61, No.2 |
服部 雅史 | 立命館大学 | ||
授賞理由 | |||
本論文は,洞察問題解決における感情の影響を検討したものである。これまでの知見によると,肯定的な感情と否定的な感情のいずれも問題解決を促進しうるが,肯定的な感情によって直観的かつ暗示的なプロセスの促進される一方,否定的な感情によって努力を要しかつ明示的なプロセスが促進される。著者らは,その過去の知見に基づき,暗示的な(例えば,閾下呈示によって再認するのが難しいような)ヒントによって洞察問題解決が促されることに着目した上で,そのような暗示的なヒントによる効果は肯定的な感情が喚起されているようなときに顕著になることを予測した。大学生を対象とした2つの実験では,参加者に対し肯定的,否定的,中性的な感情のいずれかを喚起させた後,ドゥンカーの放射線問題に解答するよう求めた。加えて実験1では,感情を喚起させる前に,放射線問題と同じ構造の「ヒント」問題,または異なった構造の「誤解を与える」問題に解答するよう参加者に求めた。その結果,正答率が極端に低く,そこでの期待された効果は見られなかった一方,典型的な誤答の割合に着目したところ,「誤解を与える」問題と比較して事前の「ヒント」問題によって誤答の割合が低くなる傾向は,肯定的な感情を喚起された場合においてのみ有意に見られた。実験2では,正答率を上げるために実験デザインが改良され,事前問題の代わりに,参加者が放射線問題に解答する直前にそのヒントまたは無関連な動画が閾下で呈示された。そして予測と一致し,無関連な動画と比較してこの暗示的なヒントによって正答率が高くなる傾向は,肯定的な感情が喚起された場合のみに見られた。また2つの実験において,否定的な感情が喚起されたときには,事前の問題や暗示的なヒントの有無にかかわらず,全般的に誤答の割合が低く,正答率が高くなった。これは,否定的な感情によって思考が精緻化されることにより,暗示的なヒントによる効果が減衰することを示唆する。この結果は,新奇性が高くユニークであるのに加え,感情がどのような思考法を促すかに関する既存の理解を前進させ,読者の関心を大いに惹きつけるものである。加えて,最初の実験における問題点を改善し,綿密な実験デザインを伴った次の実験においてより明確な結果を見出すという研究の組み立て方は,心理学研究における定石を踏んでおり,後学にとって大いに参考になる。このように本研究は,見出された知見およびその鮮やかな実験的手法の両面において,その意義が高く評価されるものである。以上を踏まえ,選考委員会は本論文を優秀論文として選出した。 |
選考経過
2019年度優秀論文賞選考委員会は規程により編集委員6名,浅野 倫子,上瀬 由美子,堀内 聡,宮本 聡介,向田 久美子,山田 剛史各氏,理事および代議員経験者5名,梅田 聡,岡村 尚昌,島津 明人,白井 述,矢藤 優子各氏と,横田 正夫理事長,宮谷 真人編集担当常務理事が加わり構成された。なお,規程により委員長に宮本氏が指名された。役員交代後に開催された第3回委員会以降は,横田理事長に代わり坂上 貴之理事長が,宮谷編集担当常務理事に代わり原田 悦子編集担当常務理事が,委員会に加わった。
対象となった論文55編は,2018年度の「心理学研究」第89巻第1―6号の原著論文,研究資料,“Japanese Psychological Research”第60巻第1―4号のOriginal Articleである。
選考委員会は,2019年4月21日(日)の第1回委員会で,理事・代議員,編集委員,優秀論文賞選考委員の推薦および編集委員会における評価を参考にして29編を第1次審査の候補として選び,第1次審査を行った。6月9日(日)の第2回委員会で第2次審査の候補を8編にしぼり第2次審査を行った。7月27日(土)の第3回委員会で,第1,2次審査の結果を総合して判断し,最終的に以下の4編を優秀論文賞とした。
なお,審査は日本心理学会優秀論文賞規程および優秀論文賞審査に関する申し合わせに則り行った。今年度は,委員が著者となっている論文を審査するケースが有ったが,当該委員以外が審査を行い,審議の場では,当該委員に退出を求め,厳正に審査を行った。
授賞論文の著者に対し,2019年9月10日(火)日本心理学会第83回大会(立命館大学)プレコンベンション学術交流会において,宮本委員長が選考経過を報告し,続いて坂上理事長から賞状が授与された。
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
金政 祐司 | 追手門学院大学 | 親密な関係破綻後のストーカー的行為のリスク要因に関する尺度作成とその予測力 | 心理学研究第89巻第2号 |
荒井 崇史 | 東北大学 | ||
島田 貴仁 | 科学警察研究所 | ||
石田 仁 | (公財)日工組社会安全研究財団 | ||
山本 功 | 淑徳大学 | ||
授賞理由 | |||
関係破綻後のストーカー的行為生起の心理的背景について,構造方程式モデリングを用いて明らかにした論文である。研究1ではインターネット調査会社のモニターを対象にした調査が行なわれ,別れた相手との交際時の関係性,関係破綻後の思考・感情を測定する尺度が作成された。研究2では,層化2段階無作為抽出法による全国調査が実施され,パーソナリティ特性(愛着不安と自己愛傾向)が過去の交際時の関係性に影響し,それらが関係破綻後の思考や感情に対して影響を及ぼすことでストーカー的行為が増大するという仮説モデルが検証された。その結果,男女共通して愛着不安および交際時の関係性の唯一性認知が,独善的執着を高め,ストーカー的行為の増大につながることが確認された。さらに,ジェンダーによる問題行動生起のメカニズムの差も明らかとなり,考察においては,従前の恋愛研究の知見との統合および発展が試みられた。ストーカー行為生起に対する心理学的研究は我が国ではまだ十分には行われておらず,本研究はこの嚆矢として位置付けられる。審査過程では,現実の社会問題解決につながる心理学的知見が明確に提出されている点,研究2において無作為抽出法に基づく全国調査が行われておりデータの信頼性が高い点,論理構成および文章が明快で説得力がある点が評価され,優秀論文にふさわしいと判断された。 | |||
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
宇野 究人 | 東京大学 | 漢字の形態情報が共感覚色の数に与える影響 | 心理学研究第89巻第6号 |
浅野 倫子 | 立教大学 | ||
横澤 一彦 | 東京大学 | ||
授賞理由 | |||
本論文は,文字を見ることで色を感じる色字共感覚と呼ばれる現象について,日本語における漢字の形態的特性の影響を,特に「偏」と「旁」の構造に注目して検討したものである。これまで,アルファベットなどの文字種に対する色字共感覚の生起には文字の形態,音韻,意味などの様々な情報が関与するが,漢字やカタカナ,ひらがなについては形態の影響が少ないとされてきた。一方,英単語では,複数語の連結によって構成される単語に対して複数の共感覚色が生じることが報告されており,偏や旁のような複数の構成要素を持つ漢字においても,複数の共感覚色が励起される可能性が考えられた。こうした背景から著者らは,偏や旁に分割可能な漢字(左右分割漢字)と,偏や旁に分割不可能な漢字(左右非分割漢字)に対して生じる共感覚色の数を比較する実験を行った。共感覚色が文字やその近傍のような外界に存在するように感じる共感覚者(投射型)と,外界ではなく頭の中に色の印象が喚起される共感覚者(連想型)らに,1つの漢字について最大2つの色を回答するよう求めたところ,左右分割漢字に対する共感覚色の回答数が左右非分割漢字よりも大きくなること,また,そうした傾向は投射型の共感覚者でより強いことが示された。漢字に固有の形態的特性に注目し,色字共感覚の生起過程との関係を明らかにした点で世界的にみてもユニークな研究であり,先行研究の丁寧なレビューに裏打ちされた精緻な議論が展開されている点も高く評価できる。以上を踏まえて,本論文は優秀論文賞に相応しいと判断された。 | |||
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
池田 尚広 | 自治医科大学 | Hypoactivation of the Right Prefrontal Cortex Underlying Motor‐Related Inhibitory Deficits in Children with Autism Spectrum Disorder: A Functional Near‐Infrared Spectroscopy Study | Japanese Psychological Research Vol.60, No.4 |
徳田 竜也 | 中央大学 | ||
門田 行史 | 自治医科大学 | ||
平井 真洋 | |||
水島 栄 | 中央大学 | ||
長嶋 雅子 | 自治医科大学 | ||
久徳 康史 | 中央大学 | ||
谷口 敬道 | 国際医療福祉大学 | ||
下泉 秀夫 | |||
檀 一平太 | 中央大学 | ||
山形 崇倫 | 自治医科大学 | ||
授賞理由 | |||
代表的な神経発達症の1つである自閉スペクトラム症(ASD)は,注意欠如多動性障害(ADHD)と同様に,実行機能における神経認知機能障害の症状を有すると考えられている。これまでの多くの先行研究から,前頭前野領域の機能不全が,ASD児の計画性や柔軟性,および作業記憶などの実行機能障害と深く関連していることが実証されている。しかしながら,ASD児における実行機能の重要な構成要素である運動制御や行動抑制の機能障害については明らかにされていない。本研究では,機能的近赤外分光装置(fNIRS)を用いて,go / no-go 課題中のASD児と定型発達(TD)児の行動パフォーマンス(反応時間や正答率)および血行動態反応の違いを比較検討した。行動パフォーマンスはASD児とTD児に有意差は認められなかったが,課題中の血行動態反応では,運動制御や行動抑制に関わる右下前頭回および中前頭回(IFG / MFG)において,TD児では有意な活性化が示されたのに対し, ASD児では活性化しないことが示された。本研究の結果は,同じ方法論でADHD児を対象にして行われ,課題中における前頭前野領域の活性が認められなかったという著者らの先行研究と同様の結果であり, ASD と ADHD が共に抑制刺激に対する右IFG / MFGの活性化の低下,すなわち抑制機能の問題に関する神経生理学的特徴を有している可能性を示唆している。さらに,本論文は,go / no-go 課題中の右IFG / MFGの低活性化がASD児の神経生理学的特徴を評価する有用なバイオマーカーなり得ること示した貴重な論文であり,その意義が高く評価された。また,論文展開の論理性,研究の方法や丁寧な考察も評価された。以上のことから,本論文が優秀論文賞に相応しいと判断された。 | |||
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
小出 允善 | 明治大学 | Cheering Enhances Inter‐Brain Synchronization Between Sensorimotor Areas of Player and Observer | Japanese Psychological Research Vol.60, No.4 |
嶋田 総太郎 | |||
授賞理由 | |||
本論文は,対人コミュニケーション場面における脳活動の同期性について,機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いて調べた研究である。課題においては,実験者と参加者(プレーヤー)の間でじゃんけんをさせ,その場面を横から見る観察者を設定している。そして,プレーヤーと観察者の脳活動の同期について調べている。実験条件である応援条件では,観察者は文字通り,プレーヤーを応援するように教示された。一方,統制条件では,観察者はプレーヤーに欺きがないか否かをチェックするように教示された。その結果,観察者は,応援条件でのみ,強い一体感を示した。さらにプレーヤーと観察者の脳活動を調べると,応援条件でプレーヤーが勝った場合にのみ,プレーヤーと観察者の感覚・運動領域の賦活状態が同期したことを示している。本研究は,脳画像研究領域でハイパースキャニングと呼ばれる,2人の脳活動の同時測定を実施している点で,方法論的に高く評価できる。さらに,同時測定による同期性を調べるアドバンテージとして,応援という独自性の高い視点に着目している。それによって一体感が高まることを確認した上で,ミラーニューロンシステムの一部である感覚・運動領域の賦活同期が生じることを発見した点は,十分に興味深く,価値の高い成果であると考えられる。また,ハイパースキャニングという手法を十分に活かした独創性の高い研究であると評価できる。本研究は,社会心理学的な要素を含む脳機能画像研究であり,対人コミュニケーションにおける脳内メカニズムに関する理解を深める上でも,当該領域において重要な研究と位置づけられる。以上の点から,本論文を優秀発表賞に値すると判断された。 |
2018年度優秀論文賞選考委員会は規程により編集委員6名,浅野 倫子,金沢 創,堀内 聡,宮本 聡介,向田 久美子,森 津太子各氏,理事および代議員5名,臼井 伸之介,梅田 聡,岡村 尚昌,杉村 和美,杉若 弘子各氏と,横田 正夫理事長,宮谷 真人編集担当常務理事が加わり構成された。規程により委員長に金沢氏が指名された。
対象となった論文51編は,2017年度の「心理学研究」第88巻第1-6号の原著論文,研究資料, “Japanese Psychological Research” 第59巻第1-4号のOriginal Articleである。
選考委員会は,2018年4月8日(日)の第1回委員会で,理事・代議員,編集委員,優秀論文賞選考委員の推薦および編集委員会における評価を参考にして30編を第1次審査の候補として選び,第1次審査を行った。6月23日(土)の第2回委員会で第2次審査の候補を10編にしぼり第2次審査を行った。7月15日(日)の第3回委員会で,第1,2次審査の結果を総合して判断し,最終的に以下の4編を優秀論文賞とした。
授賞論文の著者に対し,2018年9月24日(月)日本心理学会第82回大会(東北大学)プレコンベンション学術交流会において,金沢委員長が選考経過を報告し,続いて横田理事長から賞状と副賞が授与された。
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
田崎 勝也 | 青山学院大学 | 日本人の回答バイアス――レスポンス・スタイルの種別間・文化間比較―― | 心理学研究第88巻第1号 |
申 知元 | |||
授賞理由 | |||
リカート尺度を用いた質問では,質問の内容に関係なく,特定の選択肢を選択するレスポンス・セット(以下RS)と呼ばれるバイアスの存在が指摘されている。代表的なRSに,極端な選択肢を選ぶ極端反応傾向,中間評価を好んで選ぶ中間反応傾向,内容を十分に吟味することなく項目に同意する黙従反応傾向がある。これまでの研究から,日本人の極端な回答を避け中間的な回答を好む反応傾向が明らかにされている。一方,黙従反応傾向については,まだ研究の数が少なく,結果が定まっていなかった。本論文では,構造方程式モデリングを用いて日米韓の3国を比較・分析することによって,日本人のRSの特徴を検討することが試みられた。分析の結果,日本人の中間回答を好むRSの特徴が再確認された。黙従反応傾向は3国共に高いことも示された。これは,3種のRSの中で黙従反応傾向が最も顕著な回答バイアスであることを意味している。また,多様な文化的価値観に理解を示すバイカルチャー者は黙従反応傾向が強いことから,文化的価値の多様性が黙従反応傾向の規定因の1つであると論じられた。高度な分析手法を用い,日本人のRSの特徴を明らかにした本論文の学術的価値は高い。細部にまで言及した丁寧な考察も評価された。リカート尺度を用いた心理学的研究は極めて多い。今後,心理学研究者はRSに対する理解を深め,バイアス低減に努めることが求められるであろうし,本論文は,その手助けとなる代表的な研究の1つとなることが予想される。以上の点から,本論文は優秀論文賞に値すると判断された。 | |||
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
島田 貴仁 | 科学警察研究所 | 脅威アピールでの被害の記述と受け手の脆弱性が犯罪予防行動に与える影響 | 心理学研究第88巻第3号 |
荒井 崇史 | 追手門学院大学 | ||
授賞理由 | |||
本論文は自転車駐輪時のツーロック行動(防犯性を高めるため,カギを2つ掛けること)を題材とし,「犯罪被害の脆弱性」が異なる自転車利用者に,「脅威アピール情報の種類」と「予防行動の効果性情報」を操作した介入実験を実施することにより,それら要因が介入後のツーロック行動に与える影響を検討したものである。分析の結果,介入時に測定した行動意図(今後ツーロックをするという意図)の高低は,翌日のツーロック行動に影響するが,それ以降のツーロック行動の減衰には関係しないこと,統計情報の提示は事例情報に比べて予防行動の持続性に効果的であることなどが明らかにされた。また,操作された3要因の交互作用から,今後の防犯に向けての効果的な介入方法について,有益な結果が得られている。本研究の特筆すべき点は,フィールドにおいて実際の行動を従属変数とした実証的研究を行っていること,および28日間に及ぶ長期的な影響を検討していることである。災害や犯罪などのリスク問題に心理学からアプローチする研究では,往々にして主観的な評定のみをアウトプットとし,しかも,短期的な影響過程で議論を閉じてしまっているものが多い。それを乗り越えるには,様々なコストと工夫を要するが,本研究はそれにチェレンジしている。得られたデータは貴重であり,分析も丁寧にされている。こうした点から,本論文は優秀論文賞に値すると判断された。 | |||
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
高橋 哲 | 法務総合研究所 | 性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化と再犯との関連の検討 | 心理学研究第88巻第5号 |
西原 舞 | |||
授賞理由 | |||
性犯罪者が犯行を否認したり,責任を最小化したりすることは多くの臨床家や研究者によって認識されており,性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化が将来の再犯可能性を高めると捉えられている傾向にある。しかし,性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化が将来の再犯と関連するか否かについては,実証的研究が少なく,一貫した結果が得られていない。先行研究の問題点として,サンプルサイズの小さいこと,性犯罪の種類が少ないこと,既知の再犯リスク(性犯罪の持続性,対象者との関係性)などが考慮されていないが挙げられる。これらの問題点を考慮して,本研究では,性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化と再犯との関連を検討した。有罪判決を受けた者を対象とした縦断研究が行われ,既知の再犯リスクを考慮しても,犯行の否認・責任の最小化と再犯の関連はないことが示された。考察では,論文では有意な関連性が認められなかった背景が丁寧に記載されるとともに,否認者への対処への示唆も記載されている。例えば,先行研究で明らかになっている再犯のリスク要因に対して優先的に介入しながら,機を見て否認をめぐる話題を取り上げることなどである。本論文は性犯罪者に対する心理学的介入の方向性を考える上で有益な情報を提供する貴重な論文であり,その意義が高く評価された。また,文献レビューや文章展開が分かりやすい点も評価された。以上のことから,本論文は優秀論文賞に値する論文であると判断された。 | |||
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
Qian Qian | 昆明理工大学 | Spatial Correspondence Learning is Critical for the Sequence Effects of Symbolic Cueing | Japanese Psychological Research Vol.59, No.3 |
Feng Wang | |||
Miao Song | 上海海事大学 | ||
Yong Feng | 昆明理工大学 | ||
篠森 敬三 | 高知工科大学 | ||
授賞理由 | |||
注意の空間手がかり課題では,画面中央の手がかり(例:「←」/「→」)の指示通りの空間位置(例:左/右)に標的が提示された場合(cued条件)は,逆の位置に提示された場合(uncued条件)よりも標的に対する反応がはやくなる。さらに,「(un)cued試行に続いて(un)cued試行」のように,直前の試行が同じ条件だった場合は,そうでない場合よりも反応時間が短くなるという系列効果(sequence effect)が見られる。系列効果はさまざまな注意課題で見られるが,メカニズムは十分に明らかではない。この研究では手がかりの有効性や視覚的形状(左右対称性)などを操作し,「手がかりが直前の試行で有効だったか否かに応じて参加者が反応を調節するために系列効果が生じる」というstrategic adjustment仮説ではなく,「手がかりの知覚情報と反応が統合された一過的な表象であるイベントファイルが試行間で保たれるか否かにより系列効果が生じる」というfeature-integration仮説が支持されることを示した。さらなる実験で,手がかりの意味情報も系列効果を引き起こしうることも示した。本論文は,何かに注意を向けるという作業を連続的に行う際に,人は作業間でどのような記憶表象を維持するのかという基本的な問題に,よく練られた論理展開と手堅い実験で迫ったものである。実験1の結果の一部の再現性を実験3で確認するなど,信頼できる知見を提供している点も好ましい。緻密に仮説を組み立て,地道な実験で検証する。実験心理学のお手本と言える論文であり,優秀論文賞に相応しいと判断された。 |
2017年度優秀論文賞選考委員会は規程により編集委員6名,臼井 伸之介,尾見 康博,金沢 創,櫻井 研三,田山 淳,水野 治久各氏,理事および代議員5名,佐藤 豪,杉村 和美,杉若 弘子,羽生 和紀,森 津太子各氏と,長谷川 壽一理事長,宮谷 真人編集担当常務理事が加わり構成された。規程により委員長に櫻井氏が指名された。役員交代後の開催された第2回,第3回委員会以降は,長谷川理事長に代わり横田 正夫理事長が委員会に加わった。
対象となった論文77編は,2016年度の「心理学研究」第87巻第1-6号の原著論文,研究資料,“Japanese Psychological Research” 第58巻第1-4号およびICP2016特集号のOriginal Articleである。
選考委員会は,2017年4月23日(日)の第1回委員会で,理事・代議員,編集委員,優秀論文賞選考委員の推薦および編集委員会における評価を参考にして40編を第1次審査の候補として選び,第1次審査を行った。6月24日(土)の第2回委員会で第2次審査の候補を9編にしぼり第2次審査を行った。7月30日(日)の第3回委員会で,第1,2次審査の結果を総合して判断し,最終的に以下の4編を優秀論文賞とした。
授賞論文の著者に対し,2017年9月18日(月)日本心理学会第81回大会(久留米大学)会員集会において,櫻井委員長が選考経過を報告し,続いて横田理事長から賞状と副賞が授与された。
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
梶村 昇吾 | 京都大学 | 日本語版 DDFS および MWQ の作成 | 心理学研究第87巻第1号 |
野村 理朗 | |||
授賞理由 | |||
マインドワンダリング(mind wandering)とは,近年注目されている心のデフォルト状態を示し,心理学研究の重要なトピックになってきている。心のデフォルト状態とは,科学研究におけるベースラインの状態を意味するが,我々人間の実生活においては,起きている時間の約半分の時間にも該当するような何気なくあることを考えたり,感じたりしている状態である。本研究は,マインドワンダリングの測定を目的とした自己記入式尺度2点の日本語版作成と,その信頼性と妥当性の検証を目的として行われた。作成された尺度の妥当性については,well-being,精神疾患関連特性とも相関関係が示されている。また,研究2として,作成された尺度と認知課題(外的注意課題)との相関を検討し,関連が認められたことによって尺度の信頼性をより高いものにしている。本尺度については,今後,神経科学分野,認知科学分野等を中心として多くの分野で活用されることが予想される。特に,心と関連する医学分野で注目されているデフォルト・モード・ネットワーク(default mode network : DMN)は,マインドワンダリングとの親和性が極めて高い。それ故,本尺度は医学分野での活用も大いに見込まれるものである。研究の計画が堅強であること,尺度の信頼性と妥当性を検証する手続きについても十分配慮が行き届いていること,読み手にも理解しやすい論調であったこと,研究の限界点についても丁寧に言及していたこと等が評価された。以上のような理由から,本論文は優秀論文賞にふさわしいと判断された。 | |||
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
布井 雅人 | 聖泉大学 | 表情の快・不快情報が選好判断に及ぼす影響――絶対数と割合の効果―― | 心理学研究第87巻第4号 |
吉川 左紀子 | 京都大学 | ||
授賞理由 | |||
我々が特定の対象について好きか嫌いかを決める際,その選好判断には少なからず他者の判断の影響,すなわち社会的な影響がある。自分の選好判断が信頼する友人一人の判断に左右される場合もあれば,不特定多数の他者の判断に左右される場合もある。本研究では,こうした社会的場面で起こりうる現象について,認知心理学の立場から実験的に取り組んだ。著者らは,無意味図形を好意度評定の対象として使用し,喜びと嫌悪の表情写真を無意味図形の周囲に配置して他者が示す喜びや嫌悪のシグナルの絶対数と割合を制御した3つの精緻な実験から,参加者の選好判断への影響を調べた。その結果,複数の他者が存在する場面では,他者が示すシグナルの数が無意味図形の選好判断に影響することと,表情によって数の影響に違いがあることを示した。さらに,集団内における喜び表情の割合の増加は無意味図形への好意度を上昇させるのに対し,嫌悪表情がひとつでも存在すると好意度の低下をもたらすことを明らかにした。本研究は,社会的相互作用の効果について表情刺激を利用した認知心理学実験で検証したものであり,広範囲な心理学のテーマに関連している点が高く評価された。また,日常的に体験する社会的場面に正面から取り組み,複数の実験で一貫した結果を得て,読みやすい文章でまとめた点も評価された。こうした点から,本論文は優秀論文賞に値すると判断された。 | |||
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
川本 哲也 | 東京大学 | Personality Change from Life Experiences: Moderation Effect of Attachment Security | Japanese Psychological Research Vol.58, No.2 |
授賞理由 | |||
パーソナリティの生涯発達に関する研究の多くは,ビッグファイブ・パーソナリティを中心に検討を進めている。現在までに分かっていることを総合すれば,時点間の得点の相関からみればパーソナリティの安定性は高い一方で,平均値の変化からみれば成人期初期に比較的大きな変化がある。したがって,この時期の発達的変化の要因と個人差を解明することは,現在の人格発達研究における重要な課題である。本研究は,そこに切り込んだものである。短期縦断研究によって,成人期初期の若者のビックファイブ・パーソナリティの変化における個人差は,肯定的・否定的な人生経験によって説明できること,その際,個人のアタッチメント・スタイルによって経験からの影響の受けやすさが異なることを明らかにした。アタッチメント・スタイルの安定している人は,肯定的な人生経験を通して適応的なパーソナリティ特性を高めるが,アタッチメント・スタイルの不安定な人は,否定的な人生経験を通して適応的なパーソナリティ特性を低めていたのである。人生経験によってパーソナリティが変化することは既に知られていたが,その変化のあり方の個人差を説明する要因(アタッチメント)にまで踏み込んだ研究は海外も含めて例がない。このような国際的に新しい知見を,大規模な縦断研究と最新の分析手法というこれまた国際的なレベルでのアプローチによって提出したことが本研究の最も重要な価値であり,優秀論文賞に相応しいといえる。 | |||
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
宮崎 由樹 | 福山大学 | The Sanitary-Mask Effect on Perceived Facial Attractiveness | Japanese Psychological Research Vol.58, No.3 |
河原 純一郎 | 北海道大学 | ||
授賞理由 | |||
本論文は,いわゆるマスク(sanitary mask: 衛生用マスク)の装着が顔の魅力に及ぼす影響を検討したものである。一般に流布している俗説として「マスクをした方が美人にみえる」といったものがあるが,本論文では,この俗説を検証する目的で,顔の魅力をマスクの装着の有無により検討した。顔画像は,魅力の度合いが高いもの,中程度のもの,低いものに分類され,実験ではマスクだけでなく,ノートやスマホなどで同じ部分が遮蔽している場合も比較検討された。その結果マスクにより魅力は低下するものの,もともとの顔の魅力が低い場合はこの限りではなく,しかもノートなどで遮蔽された場合は,逆に魅力が高くなることが明らかとなった。またこれらのマスクによる魅力の変化が,知覚された健康度に関連していることも同時に示された。本研究は,マスクという一般にも広く関心を引く装着物が,顔の魅力の知覚にどのように影響を与えるのかを,多数の実験により検討したものである。その結果は俗説をある程度裏切るものであり,選考委員会ではむしろこの点を高く評価する意見などが出された。漠然と一般に信じられているトピックを,丁寧な実験を重ねることでひっくり返したことは,実験心理学という学問の持つ意義を再確認させるものであったといえるだろう。本論文は今後マスクについて議論する際の基礎的なデータとして広く引用されていくことが期待される。マスクは日本では広く見られる文化的なアイテムでもあり,“Japanese”とつく英文誌の論文として,本論文はその代表となるにふさわしい論文と評価したい。 |
平成28年度優秀論文賞選考委員会は規程により編集委員6名,小塩 真司,尾見 康博,河原 純一郎,櫻井 研三,田山 淳,水野 治久各氏,理事および代議員5名,佐藤 豪,中村 知靖,羽生 和紀,山口 裕幸,吉田 俊和各氏と,長谷川 壽一理事長,宮谷 真人編集担当常務理事が加わり構成された。規程により委員長に中村 知靖氏が指名された。
対象となった論文58編は,平成27年度の「心理学研究」第86巻第1-6号の原著論文,研究資料,“Japanese Psychological Research” 第57巻第1-4号のうち特集号でない第2-4号に掲載されたOriginal Articleである。研究資料は,2011年4月の論文種類変更により,対象論文となった。
選考委員会は,平成28年3月27日(日)の第1回委員会で,理事・代議員,編集委員,優秀論文賞選考委員の推薦および編集委員会における評価を参考にして33編を候補として選び,第1次審査を行った。6月12日(日)の第2回委員会で11編にしぼり第2次審査を行い,7月10日(日)の第3回委員会で,第1,2次審査の結果を総合して判断し,最終的に以下の3編を優秀論文賞とした。
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
横田 賀英子 | 科学警察研究所 | 連続性犯罪の事件リンク分析 | 心理学研究第86巻第3号 |
渡邉 和美 | |||
和智 妙子 | |||
大塚 祐輔 | |||
倉石 宏樹 | 滋賀県警察本部 | ||
藤田 悟郎 | 科学警察研究所 | ||
授賞理由 | |||
連続して発生する性犯罪が,同一犯によるものであるかどうかを事件リンク分析という手法を用いて推定した論文である。1993年から2005年までに全国で検挙された360人分の事件データが分析の対象となっている。分析の結果,犯行場所の公共性,被害者の年齢層,凶器の有無,時間帯,接触方法,住宅地の別の説明力が高いことを明らかにした。パーソナリティに関する近年の理論をきちんと引用し,先行研究と比べてより少数の変数により説明力の高いモデルを提示する等,心理学的に非常に意義のある研究である。また,本論文の主要な統計分析となっているロジスティック回帰分析をはじめとして,全体として統計分析も丁寧になされており,説得力のある論理構成となっている。何よりも,著者らの所属する科学警察研究所ならではの研究成果であり,目的や結果の明瞭性,および実社会,とりわけ実際の犯罪捜査活動への応用可能性等が高く評価された。時空間的な距離を分類して分析することや,統計的な知見では例外になるような事例を詳細に分析すること,平日・週末の別がなぜ説明力がなかったかを考察することなど,本論文を基点にしてさらなる発展も期待できる。 | |||
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
金重 利典 | 東京大学 | Categorization and understanding of facial expressions in 4-month-old infants | Japanese Psychological Research Vol.57, No.3 |
針生 悦子 | |||
授賞理由 | |||
言語獲得前の乳児が養育者などの他者とコミュニケーションをとるときには,顔表情は重要な情報の送受信源となる。その際,乳児は相手の表情を知覚的に弁別できている必要があるだけでなく,その表情の意味が理解できていなければならない。本研究は,こうした相手の表情の弁別と,その表情の理解はいつからできるようになるのかという疑問に丁寧に正面から取り組んだ。従来の研究では,おおよそ4ヵ月から6ヵ月の間にこの能力獲得の境があることを示していたが,それらの研究では対象児集団に幅があり,4ヵ月児で笑顔と怒り顔が弁別でき,表情の意味まで理解できているかは依然として不明のままだった。このように研究結果に差異が生まれる理由の一つとして,特定の月齢児のみに実験参加を求めることが容易ではないという乳幼児研究の難しさがある。しかし,著者らは丹念に4ヵ月児のみ限定して40名の参加者を得た。そして4ヵ月児は,表情弁別は可能だが,その情動的な意味はまだ学習できていないことがわかった。この発見と併せて,明確な論旨はこの研究領域以外の選考委員からも読みやすいと評価が高かった。地道に特定月齢児のみからデータを蓄積し,必要な統制が堅実になされていたこと,丁寧に先行研究との相違点を考察したことも評価された。こうした点から,本論文は優秀論文賞にふさわしいといえる。 | |||
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
石川 信一 | 同志社大学 | A cognitive-behavioral model of anxiety disorders in children and adolescents | Japanese Psychological Research Vol.57, No.3 |
授賞理由 | |||
本論文は, 532名の小学生,751名の中学生の協力を得て行われた。加えて41名の対象者は,不安障害の臨床群と判断された。全ての対象者が,自己陳述尺度,認知の誤り尺度,不安障害尺度に回答した。臨床群とそれ以外の群(community group)の比較では,不安症状,認知の誤り,否定的な自己陳述で,臨床群の得点が有意に高かった。しかし,肯定的な自己陳述は両者の得点に有意差が認められなかった。そして,児童と生徒,臨床群の不安障害に対するモデルを作成した。臨床群を含む日本人の小学生,中学生を対象に認知の誤り,自己陳述,不安障害の関連を検討した研究は本論文が初めてである。提出されたモデルでは,認知の誤りが,否定的な自己陳述に繋がり,それが子どもの不安,そして一般的な不安に繋がるという知見を提供している。不安障害の軽減のためには,肯定的な自己陳述に注目するのではなく,認知の誤りに介入していく必要があることを示唆している。認知の誤りには認知再構成法が使われるが,心理教育やリラクゼーションを含めた方法を学校で実践することにより,予防的な活動が展開できる可能性がある。著者も述べているように,研究の課題は認められるものの,今後,日本の子どもたちの適応の促進のために,研究と実践に大きなインパクトをもたらす研究として位置づけることができる。今後,不安障害の子どもの治療や援助,そして予防について,心理学関係者及び学校関係者の間で議論が活発になることが望まれる。以上の理由から本論文は,優秀論文に値すると判断された。 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
北梶 陽子 | 北海道大学 | 社会的ジレンマ状況で非協力をもたらす監視罰則──ゲーミングでの例証── | 心理学研究第85巻1号 |
大沼 進 | |||
山根 隆宏 | 奈良女子大学 | Benefit findingが発達障害児・者の母親の心理的ストレス反応に与える効果 | 心理学研究第85巻4号 |
佐藤 德 | 富山大学 | 未来は君の右手にある――身体化された時間概念―― | 心理学研究第85巻4号 |
縄田 健悟 | 九州大学 | 企業組織において高業績を導くチーム・プロセスの解明 | 心理学研究第85巻6号 |
山口 裕幸 | |||
波多野 徹 | 株式会社産学連携機構九州 | ||
青島 未佳 | |||
内田 由紀子 | 京都大学 | You were always on my mind: The importance of “significant others” in the attenuation of retrieval-induced forgetting in Japan | Japanese Psychological Research Vol.56 No.3 |
上野 泰治 | University of York | ||
宮本 百合 | University of Wisconsin-Madison |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
大友 章司 | 甲南女子大学 | 震災後の買い溜め,買い控え行動の消費者の心理プロセスの検討 | 心理学研究第84巻第6号 |
広瀬 幸雄 | 関西大学 | ||
大上 渉 | 福岡大学 | 日本における国内テロ組織の犯行パターン | 心理学研究第84巻第3号 |
前原 由喜夫 | 慶応義塾大学 | Reasoning bias for the recall of one’s own beliefs in a Smarties task for adults | Japanese Psychological Research Vol.55, No.3 |
梅田 聡 | |||
西田 裕紀子 | (独行)国立長寿医療研究センター | Does high educational level protect against intellectual decline in older adults?: A 10-year longitudinal study |
Japanese Psychological Research Vol.55, No.4 |
丹下 智香子 | |||
富田 真紀子 | |||
安藤 富士子 | 愛知淑徳大学 | ||
下方 浩史 | 名古屋学芸大学 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
田中 孝治 | 関西大学 | 避難口誘導灯に通過後の情報を付加することの効果 | 心理学研究第83巻第3号 |
加藤 隆 | |||
財津 亘 | 富山県警察本部 | 虚記憶が隠蔽情報検査に及ぼす影響 | 心理学研究第83巻第4号 |
小澤 良 | 中京大学 | 両眼固視中の片眼におけるコントラスト感度の低下 | 心理学研究第83巻第6号 |
鬢櫛 一夫 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
木原 健 | 産業技術総合研究所 | 情景知覚における空間周波数情報の統合――空間不一致事態での検討―― | 心理学研究第82巻第4号 |
武田 裕司 | |||
平川 真 | 広島大学 | 自己-他者配慮的目標が間接的要求の使用に及ぼす影響 | 心理学研究第82巻第6号 |
深田 博己 | |||
塚脇 涼太 | |||
樋口 匡貴 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
川人 潤子 | 広島大学 | 大学生の抑うつ予防のための自己複雑性介入プログラムの効果 | 心理学研究第81巻第2号 |
堀 匡 | |||
大塚 泰正 | |||
八木 善彦 | 産業技術総合研究所 | スクロール提示された文章の読み特性 | 心理学研究第81巻第4号 |
菊地 正 | 筑波大学 | ||
山田 歩 | 青山学院大学 | もっともらしい理由による選択の促進 | 心理学研究第81巻第5号 |
外山 みどり | 学習院大学 | ||
和田 裕一 | 東北大学 | Multisensory integration of vision and touch in nonspatial feature discrimination tasks | Japanese Psychological Research Vol.52 No.1 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
神 信人 | 淑徳大学 | 信頼が報われる条件 | 心理学研究第80巻第2号 |
田中 寿夫 | 千葉県子どもと親のサポートセンター | ||
秋元 頼孝 | 東北大学 | 共通基盤を考慮する前にアイロニ-的意味の活性化は生じるのか | 心理学研究第80巻第5号 |
邑本 俊亮 | |||
石田 容士 | 北海道大学 | アイロニーによる非難の対象は反復的言及によって同定されるか | 心理学研究第80巻第6号 |
阿部 純一 | |||
石村 郁夫 | 筑波大学 | Flow experiences in everyday activities of Japanese college students: Autotelic people and time management | Japanese Psychological Research Vol.51 No.1 |
小玉 正博 | |||
小杉 大輔 | 静岡理工科大学 | Nine- to 11-month-old infants' reasoning about causality in anomalous human movements | Japanese Psychological Research Vol.51 No.4 |
石田 開 | 岐阜聖徳学園大学短期大学部 | ||
村井 千寿子 | 玉川大学 | ||
藤田 和生 | 京都大学 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
對梨 成一 | 立命館大学 | 縦断勾配錯視――周囲視環境と床の傾斜効果―― | 心理学研究第79巻第2号 |
池田 和浩 | 東北大学 | ネガティブな体験の肯定的な語り直しによる自伝的記憶の変容 | 心理学研究第79巻第6号 |
仁平 義明 | |||
中溝 幸夫 | 北九州市立大学 | Misconvergence to the stimulus plane causes apparent displacement of the stimulus elements seen monocularly | Japanese Psychological Research Vol.50 No.1 |
川畑 秀明 | 鹿児島大学 | ||
Ono, Hiroshi | York University | ||
中村 信次 | 日本福祉大学 | Effects of stimulus eccentricity on vection reevaluated with a binocularly defined depth | Japanese Psychological Research Vol.50 No.2 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
実光 由里子 | 大阪芸術大学短期大学部 | 確率による報酬の価値割引――現実場面と仮想場面の比較―― | 心理学研究第78巻第3号 |
大河内 浩人 | 大阪教育大学 | ||
十河 宏行 | 愛媛大学 | 自然画像における視覚探索中のサッカード軌道の湾曲 | 心理学研究第78巻第5号 |
武田 裕司 | 産業技術総合研究所 | ||
遠藤 信貴 | 日本学術振興会・ 産業技術総合研究所 |
全体または局所レイアウトの繰り返しにおける文脈手掛かり効果 | 心理学研究第78巻第6号 |
武田 裕司 | 産業技術総合研究所 | ||
鍋田 智広 | 広島大学 | 幼児の連想的虚偽記憶における意味的知識の発達 | 心理学研究第78巻第6号 |
目久田 純一 | |||
神垣 彬子 | |||
松井 剛太 | |||
朴 信永 | |||
山崎 晃 | |||
髙橋 康介 | 科学技術振興機構ERATO | 動的な変形に対する視触覚間同時性判断 | 心理学研究第78巻第6号 |
齋木 潤 | 京都大学 | ||
薬師神 玲子 | 青山学院大学 | Independence of sampling of motion parallax and binocular disparity in discrimination of depth | Japanese Psychological Research Vol.49 No.4 |
林 創 | 京都大学 | Children's moral judgments of commission and omission based on their understanding of second-order mental states | Japanese Psychological Research Vol.49 No.4 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
金児 恵 | 東京大学 | コンパニオン・アニマルが飼主の主観的幸福感と社会的ネットワークに与える影響 | 心理学研究第77巻第1号 |
三沢 良 | 九州大学 | 鉄道運転士の不安全行動を誘発する心理学的要因 | 心理学研究第77巻第2号 |
稲富 健 | |||
山口 裕幸 | |||
篠原 郁子 | 京都大学 | 乳児を持つ母親におけるmind-mindedness測定方法の開発――母子相互作用との関連を含めて―― | 心理学研究第77巻第3号 |
岡田 佳奈 | 同志社大学 | 空間記憶におけるラットの海馬と視床前核群の海馬采―脳弓を経由した機能的連携 | 心理学研究第77巻第3号 |
岡市 広成 | |||
槙 洋一 | 北海道大学 | 高齢者の自伝的記憶におけるバンプと記憶内容 | 心理学研究第77巻第4号 |
仲 真紀子 | |||
大上 渉 | 佐賀県警科学捜査研究所 | 凶器の視覚的特徴が目撃者の認知に及ぼす影響 | 心理学研究第77巻第5号 |
箱田 裕司 | 九州大学 | ||
大沼 夏子 | |||
清成 透子 | アントワープ大学 | 直接交換と間接交換が内集団信頼行動へ及ぼす影響 | 心理学研究第77巻第6号 |
Foddy, Margaret | カールトン大学 | ||
山岸 俊男 | 北海道大学 | ||
池田 まさみ | お茶の水女子大学 | Effects of surface pre-presentation on symmetry detection on a 3-D bumpy surface | Japanese Psychological Research Vol.48 No.2 |
石口 彰 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
對梨 成一 | 立命館大学 | 階段の水平踏面が傾いて見える錯視の実験的解明 | 心理学研究第76巻第2号 |
杉森 絵里子 | 京都大学 | 反復呈示と二重課題がアウトプットモニタリングに及ぼす影響 | 心理学研究第76巻第3号 |
中西 政志 | |||
米田 英嗣 | |||
常深 浩平 | |||
楠見 孝 | |||
山本 恭子 | 同志社大学 | 他者との関係性が表情表出に及ぼす影響の検討 | 心理学研究第76巻第4号 |
鈴木 直人 | |||
真島 理恵 | 北海道大学 | 間接互恵性の成立――非寛容な選別主義に基づく利他行動の適応的基盤―― | 心理学研究第76巻第5号 |
高橋 伸幸 | |||
本田 秀仁 | 東京工業大学 | 言語確率の暖味性と方向性――確率情報の性質と意思決定に与える影響―― | 心理学研究第76巻第6号 |
山岸 侯彦 | |||
大沼 進 | 北海道大学 | Why do residents accept a demanding rule?: Fairness and social benefit as determinants of approval of a recycling system | Japanese Psychological Research Vol.47 No.1 |
広瀬 幸雄 | 名古屋大学 | ||
唐沢 かおり | |||
依藤 佳世 | |||
杉浦 淳吉 | 愛知教育大学 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
豊田 秀樹 | 早稲田大学 | 実験デザインに基づく一対比較データの解析――構造方程式モデリングによる表現―― | 心理学研究第75巻第1号 |
室橋 弘人 | |||
尾碕 幸謙 | |||
芳賀 麻誉美 | 女子栄養大学 | ||
河合 千恵子 | 東京都老人総合研究所 | 配偶者の死への適応とサクセスフルエイジング――16年にわたる縦断研究からの検討―― | 心理学研究第75巻第1号 |
佐々木 正宏 | 國學院大学 | ||
石丸 径一郎 | 東京大学 | 性的マイノリティにおける自尊心維持――他者からの受容感という観点から―― | 心理学研究第75巻第3号 |
今在 慶一朗 | 北海道教育大学 | 民事紛争における和解成立の要因と効果 | 心理学研究第75巻第3号 |
今在 景子 | 東北大学 | ||
小川 時洋 | 同志社大学 | On the saliency of negative stimuli: Evidence from attentional blink | Japanese Psychological Research Vol.46 No.1 |
鈴木 直人 | |||
桑名 俊徳 | 帝京大学 | Repetition effect in visual recognition of letters | Japanese Psychological Research Vol.46 No.2 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
村本 由紀子 | 岡山大学 | “自己卑下”が消えるとき――内集団の関係性に応じた個人と集団の成功の語り方―― | 心理学研究第74巻第3号 |
山口 勧 | 東京大学 | ||
井関 龍太 | 筑波大学 | テキスト処理時のオンライン推論における活性化ユニットの検討――単語ユニットか,命題ユニットか―― | 心理学研究第74巻第4号 |
河原 純一郎 | 広島大学 | Mere presence of distractors: Another determining factor for the attentional blink | Japanese Psychological Research Vol.45 No.3 |
北條 弘 | - | A marginal maximum likelihood method for the vector threshold model to analyze dichotomous choice data | Japanese Psychological Research Vol.45 No.3 |
優秀論文賞選考委員会特別賞 | |||
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
山本 由華吏 | 国立精神・神経センター精神保健研究所 | 入眠感調査票の開発と入眠影響要因の解析 | 心理学研究第74巻第2号 |
田中 秀樹 | |||
白川 修一郎 | |||
山崎 勝男 | 早稲田大学 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
内田 照久 | 大学入試センター | 音声の発話速度が話者の性格印象に与える影響 | 心理学研究第73巻第2号 |
井村 修 | 琉球大学 | 統合失調症と視点取得能力――統合失調症患者と一過性精神病障害患者の比較を通して―― | 心理学研究第73巻第5号 |
山岸 侯彦 | 東京工業大学 | Effects of valence and framing in decision-making: Assessing decision-makers' perceived domains of choice | Japanese Psychological Research Vol.44 No.4 |
優秀論文賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
唐澤 真弓 | 東京女子大学 | 日本人における自他の認識――自己批判バイアスと他者高揚バイアス―― | 心理学研究第72巻第3号 |
豊田 秀樹 | 早稲田大学 | 探索的ポジショニング分析――セマンティック・デファレンシャルデータのための3相多変量解析法―― | 心理学研究第72巻第3号 |
渋井 進 | 東京大学 | 表情のカテゴリー知覚と意味的距離の関係 | 心理学研究第72巻第3号 |
佐藤 隆夫 | |||
繁桝 算男 | |||
山田 寛 | 日本大学 | ||
松田 昌史 | 北海道大学 | 信頼と協力――依存度選択型囚人のジレンマを用いた実験研究―― | 心理学研究第72巻第5号 |
山岸 俊男 | |||
苧阪 満里子 | 大阪外国語大学 | ワーキングメモリにおけるフォーカス効果 | 心理学研究第72巻第6号 |
西崎 友規子 | |||
小森 三恵 | |||
苧阪 直行 | 京都大学 | ||
東山 篤規 | 立命館大学 | Perceived distance of targets in convex mirrors | Japanese Psychological Research Vol.43 No.1 |
横山 芳和 | |||
下野 孝一 | 東京商船大学 |
研究奨励賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
沖田 庸嵩 | 札幌学院大学 | 選択的聴取時の単語に対する意味処理――再認テストと事象関連脳電位を用いた検討―― | 心理学研究第71巻第1号 |
治部 哲也 | 関西女子短期大学 | ||
渡辺 はま | 名古屋大学 | 予定の記憶における時間的特性 | 心理学研究第71巻第2号 |
川口 潤 | |||
北神 慎司 | 京都大学 | 視覚情報の記銘における言語的符号化の影響 | 心理学研究第71巻第5号 |
永井 淳一 | 東京大学 | 負のプライミングは回転文字によって生ずるか | 心理学研究第71巻第5号 |
横澤 一彦 | |||
高野 陽太郎 | |||
牧野 浩 | 千葉大学 | ハトにおけるカテゴリー学習とプロトタイプ効果――人の合成顔画像を用いて―― | 心理学研究第71巻第6号 |
実森 正子 | |||
廣川 空美 | 関西学院大学 | The effects of sex, self gender type, and partner's gender type on interpersonal adjustment during a first encounter: androgynous and stereotypically sex-typed couples | Japanese Psychological Research Vol.42 No.2 |
土肥 伊都子 | 四天王寺国際仏教大学 | ||
山田 冨美雄 | 大阪府立看護大学 | ||
宮田 洋 | 関西福祉科学大学 | ||
足立 浩平 | 甲子園大学 | Nonmetric multidimensional scaling with clustering of subjects | Japanese Psychological Research Vol.42 No.2 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
高橋 伸幸 | 北海道大学 | 一般交換の自発的形成――選択的利他行動に関する実験研究―― | 心理学研究第70巻第1号 |
山岸 俊男 | |||
林 直保子 | 日本学術振興会 | ||
兵頭 恵子 | 甲南女子大学 | 阪神・淡路大震災による精神的身体的影響に関する調査研究――女子大学生における地震直後,2か月後,9か月後の状態―― | 心理学研究第70巻第2号 |
森野 礼一 | 神戸女学院大学 | ||
堀内 孝 | 日本学術振興会 | 現実自己,理想自己,および,社会的自己における自己関連付け効果 | 心理学研究第70巻第2号 |
櫻井 成美 | 東京学芸大学 | 介護肯定感がもつ負担軽減効果 | 心理学研究第70巻第3号 |
尾関 宏文 | 京都大学 | 曲線知覚における視覚メカニズム | 心理学研究第70巻第4号 |
乾 敏郎 | |||
針生 悦子 | 青山学院大学 | Controlling the application of the mutual exclusivity assumption in the acquisition of lexical hierarchies | Japanese Psychological Research Vol.41 No.1 |
今井 むつみ | 慶應義塾大学 | ||
小笠原 春彦 | 小樽商科大学 | Standard errors for procrustes solutions | Japanese Psychological Research Vol.41 No.2 |
Franco Purghé | University of Trino | Figure‐background segregation and the formation of illusory figures | Japanese Psychological Research Vol.41 No.2 |
研究奨励賞 | |||
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著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
中谷内 一也 | 静岡県立大学 | ゼロリスクの結果の価値に関する研究 | 心理学研究第69巻第3号 |
佐藤 静 | 東北大学 | コラージュ療法の基礎的研究――コラージュ制作過程の分析―― | 心理学研究第69巻第4号 |
森田 ひろみ | 生命工学工業技術研究所 | 形と色の統合における局所結合の働き | 心理学研究第69巻第5号 |
森田 昌彦 | 筑波大学 | ||
齊藤 智 | 大阪教育大学 | Rhythmic information in working memory: effects of concurrent articulation on reproduction of rhythms | Japanese Psychological Research Vol.40 No.1 |
石王 敦子 | 追手門学院大学 | ||
今在 慶一朗 | 東北大学 | Utility and fairness concerns in policy evaluation among Japanese people | Japanese Psychological Research Vol.40 No.4 |
大渕 憲一 | |||
安藤 清志 | 東京女子大学 | College students and religious groups in Japan: How are they influenced and how do they perceive the group members? | Japanese Psychological Research Vol.40 No.4 |
土田 昭司 | 関西大学 | ||
今井 芳昭 | 流通経済大学 | ||
潮村 公弘 | 信州大学 | ||
村田 光二 | 一橋大学 | ||
源氏田 憲一 | |||
渡辺 浪二 | フェリス女学院大学 | ||
西田 公昭 | 静岡県立大学 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
河原 純一郎 | 広島大学 | 注意捕捉に及ぼす刺激駆動的要因の効果――静的刺激と動的刺激を含む視覚探索による検討―― | 心理学研究第67巻第1号 |
竹内 朋香 | 日本学術振興会 | 夢特性評定尺度(DP尺度)の作成と生理指標による妥当性の検討 | 心理学研究第67巻第3号 |
宮下 彰夫 | 東京都神経科学総合研究所 | ||
犬上 牧 | |||
佐々木 由香 | 通信総合研究所 | ||
安藤 満代 | 九州大学 | 蝶図形の認知におよぼす特徴の重みと頻度の効果 | 心理学研究第67巻第4号 |
箱田 裕司 | |||
八木 保樹 | 立命館大学 | Helping behavior following a failure experience | Japanese Psychological Research Vol.38 No.2 |
清水 隆徳 | サントリー株式会社 | ||
藤田 和生 | 京都大学 | Linear perspective and the Ponzo illusion: a comparison between rhesus monkeys and humans | Japanese Psychological Research Vol.38 No.3 |
竹下 秀子 | 滋賀県立大学 | Tool use by chimpanzees (Pan troglodytes) of the Arnhem Zoo community | Japanese Psychological Research Vol.38 No.3 |
Jan A. R. A. M. van Hooff | Utrecht University | ||
湯沢 正通 | 広島大学 | Development of the understanding of character constancy:Expectations of the behavior of friendly and unfriendly peers | Japanese Psychological Research Vol.38 No.4 |
原野 明子 | 県立新潟女子短期大学 | ||
唐澤 穣 | 愛知学院大学 | Category size and judgments of variability: The effects of seeing the trees in the forest | Japanese Psychological Research Vol.38 No.4 |
Marilynn B. Brewer | Ohio State University | ||
松嶋 隆二 | 神戸大学 | The dynamic programming matching analysis of handwriting movement in delayed vision | Japanese Psychological Research Vol.38 No.4 |
森清 善行 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
吉川 左紀子 | 追手門学院大学 | 2種の相貌印象判断と顔の再認記憶 | 心理学研究第66巻第3号 |
大六 一志 | 東京大学 | モーラに対する意識はかな文字の読み習得の必要条件か? | 心理学研究第66巻第3号 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
池田 智子 | 広島大学 | 英語・日本語単語間の翻訳過程に関する研究――絵から生じる干渉・促進効果からの検討―― | 心理学研究第65巻第2号 |
竹内 龍人 | NTT基礎研究所 | Attentional modulation in motion aftereffect | Japanese Psychological Research Vol.36 No.2 |
竹内 龍人 | 東京大学 | ||
飼原 壽夫 | 大阪樟蔭女子大学 | A linkage of chromatic and achromatic cues in neon color effect | Japanese Psychological Research Vol.36 No.3 |
高橋 成子 | 京都市立芸術大学 | ||
竹本 篤史 | 京都大学 | ||
江島 義道 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
中條 和光 | 福井大学 | 横スクロ-ル表示の読みの速度に及ぼす文字数の効果 | 心理学研究第64巻第5号 |
納富 一宏 | 早稲田大学 | ||
石田 敏郎 | |||
山田 寛 | 川村短期大学 | Dimensions of visual information for categorizing facial expressions of emotion | Japanese Psychological Research Vol.35 No.4 |
松田 稔樹 | 東京工業大学 | ||
渡利 千春 | JR東日本 | ||
末永 俊郎 | 帝京大学 | ||
外島 裕 | 人材開発情報センター | Standardization of an integrated aptitude test for system engineers: Intellectual abilities and personality factors | Japanese Psychological Research Vol.35 No.4 |
高野 陽太郎 | 東京大学 | Recognition of forms rotated in depth: A test of the information type theory | Japanese Psychological Research Vol.35 No.4 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
田中 豪一 | 北海道教育大学 | 能動的対処作業における交感・副交感神経興奮と心臓血管系反応パターンの関係 | 心理学研究第63巻第2号 |
唐澤 かおり | 京都大学 | Evaluation-confirmation: The effects of schema organization on attribution and information seeking | Japanese Psychological Research Vol.34 No.1 |
日比野 治雄 | 千葉大学 | Counterbalancing mechanism of yellow-blue opponent-color system against macular pigment | Japanese Psychological Research Vol.34 No.3 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
蜂屋 真 | 大阪市立大学 | ラットの観察反応に及ぼす刺激呈示時間,要素持続時間及び刺激呈示方法の効果 | 心理学研究第62巻第4号 |
伊藤 正人 | |||
井上 毅 | 京都大学 | 意味記憶における語彙的表象と音韻的プライミング効果 | 心理学研究第62巻第4号 |
山内 隆久 | 北九州大学 | Types of tasks and attitude change in cooperative situation | Japanese Psychological Research Vol.33 No.1 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
堤 幸一 | 就実短期大学 | 2反応自由選択場面における近交系マウスの逃避-回避学習 | 心理学研究第61巻第4号 |
牧野 順四郎 | 筑波大学 | ||
石王 敦子 | 京都大学 | 線画-単語課題における聴覚-視覚間ストル-プ干渉 | 心理学研究第61巻第5号 |
吉田 茂 | 筑波大学 | オン・オフ視覚誘発電位の二元過程モデル | 心理学研究第61巻第5号 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
桑原 尚史 | 鹿児島女子大学 | 社会的文脈における会話処理過程の検討 | 心理学研究第60巻第3号 |
西田 公昭 | 関西大学 | ||
榧野 潤 | |||
浦 光博 | 富山女子短期大学 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
小野 浩一 | 駒沢大学 | 帰納的判断の規定要因の検討――確信反応閾による行動論的分析―― | 心理学研究第59巻第6号 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
坂元 章 | 東京大学 | 人物表象の印象評定に及ぼす影響 | 心理学研究第58巻第3号 |
重野 純 | 北里大学 | The auditory tau and kappa effects for voiced stop consonants | Japanese Psychological Research Vol.29. No.2 |
河合 優年 | 名古屋大学 | Development of reaching behavior from 9 to 36 months | Japanese Psychological Research Vol.29. No.4 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
山根 一郎 | 筑波大学 | 心理的距離と面識度水準の効果にもとづく対人経験の分析 | 心理学研究第57巻第6号 |
石田 勢津子 | 名古屋大学 | フィードバックを伴う自己評価反応の学習に及ぼす効果 | 心理学研究第57巻第6号 |
広瀬 弘忠 | 東京女子大学 | The psychological impact of the Tokai Earthquake prediction: Individual's responses and the mass media's coverage | Japanese Psychological Research Vol.28. No.2 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
釘原 直樹 | 九州工業大学 | 危機状況からの脱出行動における同調性と固着性に関する実験的研究 | 心理学研究第56巻第1号 |
奥田 秀宇 | 中京大学 | 報酬分配における利己主義と対人魅力 | 心理学研究第56巻第3号 |
近藤 文里 | 滋賀大学 | 脳血管障害患者の構成活動に関する研究 | 心理学研究第56巻第6号 |
研究奨励賞 | |||
---|---|---|---|
著者名 | 所 属 | 論文タイトル | 掲載巻号 |
坂西 友秀 | 埼玉大学 | 観察者の帰属作用に影響する先行経験及び視点要因の検討 | 心理学研究第55巻第4号 |
石毛 明子 | 東京大学 | カテゴリ-群化における典型性効果 | 心理学研究第55巻第4号 |
箱田 裕司 | 千葉大学 | ||
益田 良子 | 筑波大学 | Effects of caudate lesions on radial arm maze behavior in rats | Japanese Psychological Research Vol.26 No.1 |
岩崎 庸男 |