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高校生・高校教員の方へ

Q&A

Q1: 心理学にはどのような分野がありますか?
A1: 心理学はとても広い学問です。心理学は「基礎心理学」と「応用心理学」に大別されることが多く,以下のような分野があります。

①基礎心理学
心や行動のメカニズムを理論化したり,実験や調査をもとに明らかにしようとしたりする分野です。

分野名 内容概要
認知心理学 記憶や思考,注意など情報処理のプロセス
発達心理学 乳幼児~高齢期までの心の変化
生理・神経心理学 脳や神経系と心・行動の関係
社会心理学 人と人の関わりや社会的な影響

 

②応用心理学
基礎心理学で得られた知見を,教育・職場,健康などの「現実問題の解決」に使います。

分野名 内容概要
臨床心理学 心の健康・心の問題改善への支援
教育心理学 教育現場での学習支援や指導方法の支援
スポーツ心理学   運動・競技力の向上支援
犯罪心理学 犯罪の理解と予防,司法応用

日本心理学会のウェブサイト(「高校生・教員のための心理学を知るための本」「高校生のための心理学講座 YouTube版」)でも,様々な分野を紹介しています。


その他にも,東京未来大学のウェブサイトなどで紹介されています。

 

Q2: 心理学はどこの学部で学べますか?
A2: 心理学部,文学部,人間科学部,教育学部,社会学部のほか,医療系,福祉系,人文系,教養系などの学部でも学べます。ぜひご自身でも調べてみてください。
Q3: 大学で心理学を専攻すると,どのような授業を受けますか?
A3: 多くの大学には,心理学概論や心理統計法,データ解析,実験法,調査法に関する授業があります。また,より専門的な科目としては,認知心理学や発達心理学,社会心理学,臨床心理学などの各心理学分野に関する授業や,英語文献の講読などもあります。さらに,公認心理師(Q10を参照)になるためには、国が定めた25科目を学部段階で履修する必要があるため,公認心理師資格に対応した大学では,これら25科目が開講されています。具体的な科目名や公認心理師については,「公認心理師の会」のウェブサイトなどをご参照ください。
Q4: 心理学部(学科・専攻・コース)であれば,どの大学でも学べることは同じですか?
A4: 公認心理師資格(Q10を参照)に対応している場合,共通する科目が開講されていますが,学べる内容や教育の特色は大学によって異なります。特に,所属している教員の専門分野によって,深く学ぶことのできる分野は異なります。どのような授業が開講されているか,また,関心のあるテーマを専門とする教員がいるかどうかについては,各大学のホームページなどで確認してみてください。
Q5: 心理学と他の学問(教育学,社会学,医学など)の違いや関わりは?
A5: 教育学は教育心理学,社会学は社会心理学,医学は臨床心理学と特に関係が深く,大学によっては,教育学部に教育心理学,社会学部に社会心理学,医学部に臨床心理学の学科・専攻・コースが設置されていることもあります。

教育学は,教育制度や教育課程,教育行政,教育の歴史などについて理論的・実践的に研究する学問です。教育学では心理学に限らず,哲学や行政学,社会学などの視点や方法を用いて研究を進めます。

社会学は,社会の構造や機能,人間と社会との関わりを解明しようとする学問で,個人のアイデンティティや家族,階層・階級,地域社会,国家など幅広い領域を対象とします。これに対して心理学は,社会との関わりだけでなく,個人の認知や感情,生理的反応なども含めて,人間の行動について探究する学問といえます。

医学の中でも精神医学は心理学と深く関連しています。臨床心理学はカウンセリングなどによって心理的な支援を行うのに対し,精神医学では医学的診断や薬物を用いた治療を行います。臨床心理士や公認心理師は医師免許を必要としないのに対し,精神科医は医師として診断や薬の処方などの医学的治療を行います。

Q6: 心理学とカウンセリングは違うのですか?
A6: 異なります。心理学は、「心や行動の仕組み」を研究する学問です。悩みやストレスを抱えている人だけでなく、一般的な人間の心の働きについて科学的に探究します。カウンセリングは心理学の応用分野の1つです。カウンセリングの元々の意味は「相談」や「助言」であり、悩みやストレスを抱える人を支援・援助するための具体的な方法の1つです。心理学の知見に基づいて行われることが多く、専門的なスキルを必要とする点が相談や助言とは異なります。
Q7: 健康な人も心理学の対象ですか?
A7: もちろんです。心理学は「心の病気」だけを対象にしているわけではありません。むしろ健康な人の認知,学習,動機づけ,性格,対人関係のあり方などを幅広く研究します。最近では「ポジティブ心理学」という,幸せや生きがい,やりがいをどう高めるかを探る研究も盛んです。また,スポーツ選手のメンタルトレーニングや,企業でのモチベーション向上のためのプログラムに関する研究などもあります。
Q8: 動物を扱う心理学もありますか?
A8: あります。初期の心理学研究では,動物を対象とする実験から多くの知見を得てきました。例えば有名なものとして,「パブロフの犬」の条件反射の研究や,スキナーという心理学者によるハトのオペラント条件づけに関する研究があります。また,比較心理学という分野では,動物の行動を調べることで,学習や認知の仕組みなどについて研究しています。最近では,コンパニオン・アニマルなどについての研究(心理学ワールド69号,92号)もあります。
Q9: 心理学を学ぶと,将来どのような仕事に就けますか?
A9: 一般企業への就職が最も多いのは文系大学全体の傾向と似ています。どのような仕事に“就ける”かという視点では,医療福祉系,教育系,公務員,研究者などをあげることができます。医療・産業・司法・福祉・教育系では心理職・カウンセラーとしてのニーズがあり,大学院に進学して心理専門職(公認心理師、臨床心理士等)の資格を得ると採用の可能性が高まります。公務員は学部卒業段階で募集があり,国家公務員では,法務省,厚生労働省,家庭裁判所などへの進路があります。地方公務員では,警察や児童相談所などでの仕事につくことができます。教育系では,大学で教職課程を履修することにより,中学校の社会科,高等学校の公民科などの教育職員免許状を取得して,教員になる進路もあります。また,研究者や心理専門職を目指す大学院進学率が高いのも心理学の特徴です。
Q10: 心理学に関連した資格はありますか?
A10: 大きく分けて国家資格と民間資格があります。現在唯一の国家資格が公認心理師(心理学ワールド111号)です。資格取得のためには,大学院修了もしくは認定施設での実務経験が必要です。民間の資格で代表的なものとして臨床心理士があります。こちらも資格取得のためには認定された大学院を修了する必要があります。その他には,日本心理学会認定心理士,産業カウンセラー,学校心理士,発達臨床心理士などがあります。いずれも資格取得のための条件が細かく決められていますので,あらかじめ調べておくことをおすすめします。
Q11: 心理学を学べば,人の心がわかるようになりますか?
A11: 人の心がわかることと人の心が読めることは違います。人の心が読めるようになるかというと,それは否です。一方で人の心がわかるようになるかという点については,ある程度はそうだと言えます。人の思考・判断・意思決定には一定のパターンが有ります。そうしたパターンを理解することで人の心の向かう方向をある程度は予想することができるようになります。
Q12: 心理学を専攻するのに向いている性格はありますか?
A12: 特段,心理学に向いた性格というのはありません。ですので,人に対する関心や心理学に興味を抱いた高校生の皆さんには,自分の性格を気にすることなく心理学を目指していただきたいと思います。
Q13: 心理学を専攻できる大学を受験予定です。高校のうちにどのようなことを学んでおけば良いですか?
A13: 文系科目に偏ることなく,文理科目を幅広く網羅し,大学での学びに活かしていただきたいと思います。 心理学には文系のイメージが抱かれていますが,医学系・数理情報系の知見を活用する分野も多数あります。また学部のうちから日本語の論文だけでなく,英語の論文を読むゼミなどもあります。 日本心理学会ウェブサイト「高校生のみなさんへ」もご参照ください。
Q14: 心理学を学ぶ上で数学の知識は必要ですか?
A14: 高校の数学Ⅰで学んだ統計を活かすことができます。平均値や標準偏差などの記述統計,検定などに求められる推測統計を理解する知識は必須です。近年ではサンプルサイズ,効果量,検定力の計算などの数学的知識が求められています。RやPythonなどのプログラミングを取り入れる授業・ゼミも増えてきています。ただし,心理学に必要とされる数学の知識はある程度絞られていますので,恐れることはありません。目的に沿ってじっくり学んでいけば確実に身についていきます。
Q15: 心理学は難しいですか?
A15: なかなか難しい質問です。どの学問も決して簡単ではありません。難しいからこそ学び,答えを探していこうとするのだと思います。心理学は魅力的な学問です。その魅力に取り憑かれると,難しさより新しいことを発見したときの喜びが上回るのではないかと思います。 心理学は日常的な問題から出発しているため,その問題が解けたときには,その知見を社会のなかで活かすことも可能です。