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【特集】
【医療領域】総合病院におけるコンサル テーション・リエゾン活動の実際
馬場知子(ばば ともこ)
Profile─馬場知子
2009年,上智大学大学院総合科学部心理学研究科修士課程修了。国立がんセンター東病院や国立がん研究センター中央病院での心理療法士としての勤務を経て,2012年より現在の職場に勤務。
昨年公認心理師の試験を受けるべく研修を受けた際,参加者同士のワークの中で仕事の内容を紹介すると「へー,そんな仕事もあるんですね!」と言われた。まだまだ心理職の世界ではマイナーな業界なのだと実感したが,一般医療における心理的なケアのニーズは高い。平成26年度厚生労働科学特別研究事業「心理職の役割の明確化と育成に関する研究」報告書によると,全国の一般病院のうち心理職を常勤雇用しているのは約3割だが,公認心理師の誕生によってその割合はさらに増えることが期待される。先の調査では,医療チームへの参加やコンサルテーション・リエゾン活動(以後CL活動とする)をその業務内容として約70パーセントの心理職が挙げている。CL活動とは身体疾患をもつ患者の心理学的な問題に対応するものであり,筆者の業務の中心になっている。筆者は精神科には所属せず,すべての診療科からの依頼を受けている。日々関わる患者のもつ身体疾患は循環器疾患や悪性疾患,神経難病などさまざまであり,主治医から依頼がある場合もあれば,看護師から相談を受けることもある。依頼内容は,心理状態,知的および認知機能の評価や患者家族の意思決定支援,長期にわたる治療の中での心理的サポートや集中治療領域での危機介入など多岐にわたる。精神科医師との連携は必須であり,より精神的に重症であったり急激な変化があったりする場合には速やかに精神科医師に連絡をとり対応を依頼している。筆者は緩和ケアチームの一員としても活動しており,医療者向けの勉強会や患者同士の交流会を運営しファシリテーターとして参加したり,講義をしたりすることもある。
入院中の患者はたいていの場合大部屋で過ごしている。身体状況として許されるのであれば別室を確保して面談するが,難しい場合にはそのまま大部屋で面談をすることもある。時には,車いすを押して敷地内を散歩しながら話をすることもある。面談で得られた患者に関する情報や心理師としてのアセスメントは直接,あるいはカルテ記録を通して間接的に,患者にかかわる多職種と共有する。患者の治療やケアに関するカンファレンスは定期的に開かれているため,そこに参加し心理師としての見立てを伝えることもある。多職種が患者の心理社会的な側面について理解を深めることは,より患者にとって苦痛の少ない,患者の価値観に添った治療やケアにつながると考えている。
CL活動における介入の特徴の一つは,患者が心理師と会う時,患者のニーズがそれほど高くない場合もあることである。「落ち着かない様子でなんだかおかしいんです」,「本人はそこまで希望していないのですが,とりあえず一度話をしてみて,と伝えています」といった一報が入ることもある。何がそこで起こっているのか,どこにニーズがあるのか,誰がどのような期待をしているのか,といったことについてもアセスメントを要する。また,患者に直接会わずに,医療者と対応について話し合うだけの場合もある。どんな場合でも患者の気持ちに添いつつ,今この人にとって一番必要なことは何かを常に考えるようにしているが,そのためには心理学やカウンセリングに関する知識だけでなく,身体疾患に関する知識や病院という組織に関する知識,生命倫理,公衆衛生などについても知っておかなければならない。CL活動で関わる患者にとって最も重要なことは身体的な治療をできるだけスムーズに行うことであり,そのサポートをすることが,ほかの医療者と同じく心理師にも求められていることなのである。
公認心理師の養成カリキュラムでは医療現場での研修が必修となり医学に関する教育も以前より充実するものと思われる。しかし与えられた時間で得られる知識や経験は現場で働くために必要十分なものとは言い難い。病院で働く多くの職種が同じ職種の先輩に日々教えてもらう環境にあるのに対して,心理職は一人職場であることが少なくない。個人が様々な媒体を用いて学習し知識を得て経験につなげていく努力を継続していくことが重要であり,またそれを後押しするしくみも必要と思われる。総合病院精神医学会やサイコオンコロジー学会では他職種とともにCL活動について学ぶ機会があるし,同じ領域で働く心理職の勉強会もいくつか存在する。また,病院内においても他職種から学ぶことは多くあり,いつも助けてもらっている。知ったかぶりをせずに教えてもらう姿勢が大切だと肝に銘じている。
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