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6. ガイドライン3: インフォームド・コンセント(Guideline 3: Informed Consent)

心理士は自らが提供する遠隔心理支援サービスに関する特有の懸念事項を具体的に説明し,インフォームド・コンセントを得て,文書で残すように努めます。その際,この分野のインフォームド・コンセントに関して組織が定める要件に加えて,適用を受ける法律や規制についても認識しておきます。


根拠:

どのような手段で同意を取得するにしろ,インフォームド・コンセントにおける説明と同意取得のプロセスは,心理士とクライエント・患者が関係を結ぶ土台を作ります心理士は自らが提供する遠隔心理支援サービスについて,全面的にかつ明確に説明し,専門的なサービスを提供する際にはインフォームドコンセントの取得と文書化に妥当な範囲で努めます(APA倫理コード,スタンダード3.10)。さらに,どのような機器やソフトウェアを用いて対話するかを説明する際の方針や手続きを策定し,クライエント・患者と共有するように努めます。物理的に同じ場所にいないクライエントや患者に遠隔心理支援サービスを提供する場合や,対面でのやりとりがない場合には,インフォームド・コンセントを得て文書化することは,対面で行うよりも難しいかもしれません。また,遠隔心理支援サービスを提供する心理士がいる地域と,その心理士のクライエント・患者が居住する地域との間で,インフォームド・コンセントに関する法令が異なることもありえます。さらに,インフォームド・コンセントを得るにあたって,文化的,言語的,社会経済的な特性や組織的な考慮事項によっては,クライエント・患者の理解に影響を与えたり,特別な配慮が必要になる場合があると理解しておく必要があるかもしれません(例えば,未成年者に遠隔で遠隔心理支援サービスを提供する際に親や保護者からインフォームド・コンセントを得る場合など)。

遠隔心理支援サービスにおいては,機密性,通信の安全性,従来の対面サービスとの同等性などにおける潜在的なリスクに対して,従来とは異なる考慮や安全策が必要となる場合があります。そのため,心理士は特定の通信技術の使用にあたって,クライエントや患者に関する情報のセキュリティについての潜在的な脅威に対する適切な方針や手順を検討し,クライエントや患者にそれらを適切に伝えるよう推奨されます。例えば,遠隔心理支援サービスを提供する心理士は,クライエント・患者についてどのような情報がどのようにして保存され,アクセスされるのか,利用する通信技術ではどれくらい安全に情報がやりとりされるのか,そして電子的に作成,保存されたクライエント・患者情報の機密性や安全性に関する技術的な脆弱性にどのようなものがあるのか,クライエント・患者と話し合うことを検討するようにします。

実践への適用:

心理士は,遠隔心理支援サービスを提供する前に,提供されるサービスに関する特有の懸念事項を具体的に記した文書を用いて,クライエント・患者からインフォームド・コンセントを取得し,文書化することの重要性を認識します。このようなインフォームドコンセント文書を作成する際,心理士はクライエント・患者が理解できると考えられる言葉を使用するように合理的な配慮をするとともに,考慮すべき文化的,言語的,組織的な事項や,対処すべきクライエント・患者の理解に影響を与えうる問題がないかを検討します。遠隔心理支援サービスを提供する際にインフォームド・コンセント文書に含めうる特有の懸念事項として,心理士とクライエント・患者の間での遠隔コミュニケーションに用いる通信技術,境界線を設定し,遵守すること,クライエント・患者からの連絡への対応手続きなどが挙げられます。さらに,心理士は自身がサービスを提供している地域とクライエント・患者が住んでいる地域,それぞれにおけるインフォームド・コンセントに関する法律や規制を認識しておきます(詳細については,「法律や規制が異なる地域間の実践に関するガイドライン」を参照)。

上記のような特有の懸念事項に加えて,特定の情報技術を利用した場合の機密性や安全性の問題について,クライエント・患者と話し合うことが心理士には奨励されます。このような観点から,心理士は通信に用いる機器(ハードウェア,ソフトウェアやその他の構成要素)や,遠隔心理支援サービスの提供プロセスに内在するリスクを認識し,クライエントや患者が専門的な遠隔心理支援サービスを受けるうえで十分な情報を提供して,インフォームド・コンセントを得るように努めます。これらのリスクの中には,技術的な問題や,特定のサービス(検査,評価,治療など)の継続性,利用可能性,適切性が遠隔で提供されるがゆえに損なわれることでサービスが制限される場合などがあります。さらに,心理士は,クライエントや患者が受け取ったデータや情報を保護するために,クライエントや患者との間で何らかの契約を検討してもよいでしょう(例えば,心理士からの電子メールを他の人に転送しないなど)。

遠隔心理支援サービス提供時に特有な事柄の一つが請求書の内容です。インフォームド・コンセントの一環として,サービス開始前に請求書にどのような内容が含まれるかをクライエント・患者と話し合う必要性について心理士は認識しておきます。請求書には,遠隔でのコミュニケーションに用いた情報技術,提供された遠隔心理支援サービス,各遠隔心理支援サービス(例:ビデオチャット,ショートメッセージ料金,電話サービス,チャットルームのグループ料金,予約外の対応など)の料金体系が含まれるかもしれません。また,サービスの中断や障害が発生した場合の料金,データプランの超過料金を誰が負担するか,技術的な障害が起こった場合の割引,提供される遠隔心理支援サービスに関連するその他の費用について議論したことも含まれる可能性があります。