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  3. ニューズレター 2021 年度 No.1

The Japanese Psychological Association News Letter

vol.07

オンラインやオンデマンドによるイベントは支部会主催ではなく「認定心理士の会」主催となります。ご所属の支部会にかかわらず、是非、多くのイベントにご参加ください。

    • 2021年8月7日(土)13:00~16:00
    • Zoomオンライン会場

    九州・沖縄支部会立案によるウェブ公開シンポジウム「感情」を開催します。開催日時は、2021年8月7日(土)13:00~16:00です。

    本シンポジウムでは、日常経験する自らの感情とどのように向き合うかというテーマに関して、3名の心理学者とともに考えます。最初に、鹿児島大学の榊原良太先生より「よりよく生きるための感情との向き合い方」というタイトルで話題提供を頂きます。その次に大分大学の村上裕樹先生より「感情調節の認知神経科学的メカニズム」についてお話し頂きます。最後に、九州産業大学の小田部貴子先生より「気づかれにくい感情体験の影響」というタイトルで話題提供を頂きます。各先生の話題提供の概要については、https://psych.or.jp/authorization/20210807_kyuoki/をご覧頂けると幸いです。

    参加ご希望の方は、申込ページ(https://www.kokuchpro.com/event/nokai20210807/)にアクセスして頂き、必要事項をご入力のうえ、お申し込みください。認定心理士の方だけでなく、一般の方の参加も多く見込まれており、2021年7月2日現在で899名の方にお申込みを頂いております(定員は1000名)。多くの方にご参加いただき、会を盛り上げていただきたく思います。

    (九州・沖縄支部会:光藤宏行)

    • SNS等の功罪を心理学から考える
    • 綿村 英一郎先生(大阪大学大学院 人間科学研究科 准教授)「“いち抜けた!”と言えない心理―SNS・ネット依存の研究から―」
      笹原 和俊先生(東京工業大学 環境・社会理工学院 准教授)「フェイクニュースを科学する」
    • 2021年9月11日(土)13:30~17:00(開場13:20)
    • Zoomオンライン会場
    • 無料、事前申込制にて定員500名
    • 日本心理学会ホームページでご案内いたします。以下の申込サイトにて必要事項をご入力の上、お申込みください。
      https://psych.or.jp/authorization/ninteinokaievent/

    ※ご参加には、Zoom Video Communications 社が提供するweb会議サービス「Zoom」の使用が必要です。インターネットに接続しているパソコン、タブレット、スマートフォンなどをご準備ください。通信料は参加者負担です。録画・録音はご遠慮ください。

    この度、近畿支部会とオンライン支部会とで協力しつつ合同で企画を進め、公開シンポジウムを実施することになりました。過年度にコロナ禍の影響で対面での開催が叶わなかったセミナーを、オンラインでの実施に踏み切ったものです。

    「SNS等の功罪を心理学から考える」を全体テーマとして、このテーマに関わる社会心理学や情報行動学のご研究を精力的になされている2名の先生からご高話をいただきます。公私にわたってリモートでの活動が活発化した(余儀なくされた?)今だからこそ、皆様とともに考えておきたいテーマだと感じています。下記するご演題の雰囲気からも感じられるように、両先生とも初学者から専門家までに分かりやすいようにかみ砕いてお話しくださる予定です。

    オンライン支部会も携わる合同企画ということもあり、ご参加くださる皆様と演者先生方との双方向性を多少なりとも確保したイベントにしたいと企画者一同で模索しているところです。皆さまと対面にてお目にかかれないこと残念ではありますが、時勢に即しつつの充実した場になればと(対面でないからこそマスク越しでなくお顔が見えるということもありますし[笑])、皆さまの奮ってのご参加、お待ちしております。

    (近畿支部会:田中芳幸、オンライン支部会:池田琴世)

    • 2021年9月15日(水)~9月30日(木)
    • オンデマンド配信(事前申込制、無料)
    • 藤掛 和広先生(中京大学心理学部)・「ドライバエージェントによる高齢者の運転支援」
      中原 純先生(中京大学現代社会学部)・「高齢者の対人関係 ~活動理論を心理学的に考える~」
    • 2021年9月8日(水)
      https://psych.or.jp/authorization/20210915_tokai/

    東海支部会企画による公開シンポジウムを開催いたします。本企画は2020年度に参集により実施する予定で講師の先生方にもご準備を進めていただいていたものですが、残念ながらそれが叶わず、今年度に満を持してオンデマンドにより開催する運びとなりました。高齢者に関する研究を精力的に行われているお二人の先生にご講演いただきますので、多角的に「高齢者の社会生活と支援」について皆さんと考える機会になれば幸いです。

    オンデマンド配信という認定心理士の会としては珍しい形式ですが、参加申込みをしていただいた方に動画URLを申込締切日以降に送信しますので、開催期間内にご視聴いただくというものです。物理的・時間的制約もなくご参加いただけると思いますので、多くの皆様のご参加をお待ちしております。参加ご希望の方は、申込ページ(https://www.kokuchpro.com/event/nokai20210915/)にアクセスして頂き、必要事項をご入力のうえ、お申し込みください。なお、本シンポジウムは東海心理学会に協賛していただいております。

    (東海支部会:小川一美)

    • 2021年11月7日(日)13:00~14:00(予定)
    • Zoomオンライン会場
    • 大塚由美子(愛媛大学法文学部・准教授)
    • 視線方向の知覚様式:視線知覚とその発達
    • 「日常」の対面状況では相手が見つめている方向を認識したり、相手と視線を共有することはスムーズな意思疎通を行うための助けとなる。では一体どのようにして私たちは他者が見つめている方向を判断しているのか、という点は普段ほとんど意識されることはない。本講演では、私たちはどのようにして他者の視線方向を認識するのかという問題について、錯覚を利用して成人を対象として行われた研究からの知見の他、発達研究からの知見も紹介する。
    • 本イベントは、事前登録いただいた方に対してZoomのオンライン同時配信にて実施する予定です(要事前登録、先着500名)。認定心理士もしくは日本心理学会会員でしたら、どなたでも無料でご参加いただけます。参加申込方法については、下記の認定心理士の会イベントのホームページに記載予定ですのでご確認下さい。
      https://psych.or.jp/authorization/ninteinokaievent/

    (北海道支部会:小川健二)

    • 2021年12月18日(土)午後開始予定
      ※開始時刻は後日決定します。認定心理士の会のイベント告知ページ(https://psych.or.jp/authorization/ninteinokaievent/)にてご確認ください。
    • 日本の若者とサブカルチャー(仮)
      報告1:菊池 聡(信州大学人文学部・教授/認知心理学)『社会的相互作用としての「おたく」の系譜学』
      報告2:岡田 努(金沢大学人間社会研究域人間科学系・教授/発達心理学)『鉄道オタクの心理学』
    • 小林 大祐(金沢大学人間社会研究域人間科学系・教授/計量社会学)
      田邊 浩(金沢大学人間社会研究域人間科学系・教授/理論社会学)
    • 荒木 友希子(金沢大学人間社会研究域人間科学系・准教授)

    北陸支部会が企画する、本年度初めてのオンライン講演会です。北陸在住の方はもちろん、全国より多くの方のご参加をお待ちしております。

    (北陸支部会:松井三枝・伏島あゆみ)

【関東】関東支部会イベント開催報告1: 第1回公開セミナー(オンライン開催)

左上:渥美氏、右:大崎

新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年度内に計画していた3つの関東支部会企画セミナーが中止になっていましたが、令和3年3月6日(土)に2020年度初めての関東支部会企画セミナーをオンラインで開催することができました。

テーマを「心理学『再入門』講座~もう一度学びたい心理学の基礎と臨床~第2部 臨床編」として開催しました。本セミナーには、全国から約300名の方(マレーシア島の海外からの参加者もあり)にご参加いただき、盛大に開催することができました。

1時間目は、「特別支援教育に関する心理学」ということで、私、大崎博史(国立特別支援教育総合研究所総括研究員)から、発達障害、知的障害感覚障害等、さまざまな障害のある子ども達の心理面、教育面の話題提供をさせていただきました。

2時間目は、「犯罪心理学」ということで、東洋大学社会学部教授の桐生正幸氏から犯罪心理学の歴史を含めて、最新の研究の知見について話題提供をいただきました。

3時間目は、「精神疾患とその治療」ということで、由比ガ浜こころのクリニック医師で、国立特別支援教育総合研究所の特任研究員の渥美義賢氏から精神疾患や遺伝子、発達障害等も含めた医学的な知見についての話題提供をいただきました。

4時間目は、「健康心理学」ということで、大阪大学大学院人間科学研究科准教授の平井啓氏から、がんの予防、行動経済学の知見を含めた、健康・医療心理学の最新の知見についての話題提供をいただきました。

本企画は、過去に大学等で認定心理士の資格を取られた方に、各分野の心理学の今日的な知見を提供し、最新の心理学について知っていただくことで、自らの心理学の学びをさらに深化させていただくことを目的に企画しております。今後もこのような認定心理士の資格取得者の学びの場を提供させていただきたく、さまざまな企画を考えていく所存です。引き続き、会員の皆様の主体的な参加へのご協力をよろしくお願いいたします。

左上:桐生氏、右:平井氏

(関東支部会:大崎博史)

【関東】関東支部会イベント開催報告2: 第2回公開セミナー(オンライン開催)

写真は、当日の配信画面から。上段左:安藤清志先生(東洋大学)、上段右:阿部恒之先生(東北大学)、下段左:佐藤隆夫先生(立命館大学)、下段右:佐藤俊彦(長野大学)。
※佐藤隆夫先生は現在、人間環境大学に所属しておられます。

関東支部会では、2021年度の第2回のセミナーとして、本年3月21日(日)に、Zoom Webinarを利用したオンライン形態により、第2回公開セミナー「心理学『再』入門講座~もう一度学びたい心理学の基礎と臨床~第1部 基礎編」を開催しました。この「『再』入門」というタイトルで、2021年3月中に、基礎編と臨床編のセミナーをそれぞれ別の日程で開催しました。21日には、基礎編のセミナーを開催し、その中では、社会心理学、感情心理学、知覚心理学、および生理心理学の4つの基礎心理学領域の講義が行われました。当日は、講師の先生方や、主催側の裏方の皆さま7名を含め、合計454名の方にご参加いただきました。年度末でお忙しいところ、これほど大勢の方にご参加いただき、企画した側として、たいへんうれしく思います。なお、このセミナーは一般公開で開催しましたので、認定心理士以外の方にもご参加いただきましたことを申し添えます。

本セミナーは、認定心理士の皆さまが、かつて学んだ領域はもちろんですが、学生時代にあまり手を付けられず、それほど詳しく勉強しなかった(苦手だった)心理学の領域も含め、あらためて勉強しなおす契機になればと考えて企画いたしました。本来であれば、ちょうど一年前の2020年3月に、首都圏の大学等を会場として開催しようと企画しておりました。ところが、ご存知のように、この時期には、新型コロナウィルスの感染拡大が大きな問題となったために、残念ながら、いったんは開催を見送ることとなりました。一年遅れとはいえ、オンラインの形態で、本セミナーを実施することができましたことは、企画者としてもたいへんうれしく思います。この場をお借りして、講師の先生方、ご参加くださった皆さま、開催にご協力くださった日本心理学会の関係者の皆様に心より御礼申し上げます。

セミナーの冒頭で、日本心理学会常務理事で、本会の運営でいつもお世話になっていた津田彰先生から、開会のご挨拶をいただいた後、企画者である筆者、佐藤俊彦が、本日の企画の趣旨と、講師の先生方への質問の方法などをご説明させていただきました。その後、いよいよ授業が始まりまして、1時間目は、東洋大学の安藤清志先生の「社会心理学」の授業でした。従来からある社会心理学の研究領域を概観した後、無意識的過程の研究(プライミング)、進化心理学の影響を受けた研究(子育て)、介入研究(行動経済学)といった、最近の研究動向をご紹介いただきました。私が学生時代に習った社会心理学とは少し違っている印象を受けました。これは、私自身がこれまで、社会心理学の領域を、あまり勉強してこなかったせいもあるかとは思いますが、社会心理学が時代とともに変わっているということを感じました。

2時間目は、東北大学の阿部恒之先生の「感情心理学」でした。感情経験の成立する過程として、身体過程が関与する場合としない場合とがあるということや、太古の昔には有益だった感情のメカニズムが、現代では過剰に反応して、さまざまなストレス関連の心身の病理を生むという「空ぶかし」仮説をご紹介いただきました。他方で、感情は、もはや役に立たなくなった進化の遺物ではなく、外適応と呼ばれる概念によって、現代社会において、文化形成の基盤としての重要な役割を獲得したとの見方をお示しいただきました。ストレス研究との関連も含めて、感情研究を幅広く俯瞰したご説明をいただきました。

3時間目は、立命館大学の佐藤隆夫先生による「知覚心理学」でした。さまざまな図や動画をご紹介くださり、さすが、視覚的にも見ごたえのある内容でした。ロシアのお土産、マトリョーシカなどを例に挙げていただきながら、われわれは、網膜像だけでは十分な情報を得ることはできず、情報の不足分を「適当に」補いながら、脳の中で外界を再構築している、といったご説明をいただきました。自分では正確に目の前の世界を見ているつもりでも、実際には、すでに持っている知識や、思い込みの影響を受けるということを、具体例を通して、実体験とともに実感をさせていただきました。

4時間目は、筆者である長野大学の佐藤俊彦が担当させていただきました。前半には、生理心理学の領域全体の概略をお話しするとともに、後半には、日常生活の中での身体機能計測の一例として、パソコン利用時の筋電図や呼吸計測を取り上げながら、疲労軽減のヒントについて申し上げました。

以上の授業の中では、講師の先生方に、それぞれの領域をわかりやすく解説いただき、その領域を学ぶための参考書などもご紹介いただきました。先生方には、講義時間をかなり正確に守っていただき、予定していた時間の通り進行いたしました。4つの講義が終わった後に質疑の時間を持ちました。当初は30分間(16時40分~17時10分)の予定だったのですが、いただいたご質問がたいへん多く、17時20分までかけて、講師の先生方に回答していただいたのですが、それでもすべてのご質問には、お答えできませんでした。本セミナーの最後を締めくくるにあたり、認定心理士の会・関東支部会の会長である安藤清志先生の閉会のご挨拶をもって、今回のセミナーを終了いたしました。

セミナー終了後に実施したアンケートには、305名の方にご回答いただき、そのうちの241名、約8割の方が認定心理士の資格をお持ちでした。このアンケート結果によれば、ウェブ開催ということもあって、北海道から沖縄までの国内はもちろん、海外にお住まいの方にもご参加いただきました。セミナーの感想を問う設問では、9割以上の方に、「非常に良かった」または「良かった」という肯定的評価をいただいておりました。オンライン形式でのセミナーの開催や、50分授業×4コマの授業形式については、おおむね好評だったようですが、今後の改善に向けたご要望もいただきました。今後のセミナー企画の参考にさせていただきます。

今後も引き続き、本会の会員の皆さまに、コロナ禍の重たい気分を吹き飛ばすような、刺激的な学びの場をお届けできればと考えております。皆さまには、今後とも積極的なご参加をいただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

(関東支部会:佐藤俊彦)

【関東】関東支部会イベント開催報告3: 第3回公開セミナー(オンライン開催)

対談場面(左:三宮氏、中央:安藤氏、右:仲氏)

令和3年3月28日(日)に「コミュニケーションの心理学」というテーマで、関東支部会企画第3回公開セミナーをオンライン開催しました。セミナーには、524名の事前参加申し込みがあり、実際には、当日392名の参加がありました。無料のセミナーは、このように当日キャンセルされる方が毎回、約2割いらっしゃるのですが、定員を設けているセミナー等もあり、そのため参加申し込みが定員オーバーのためできない参加者の方もいらっしゃるので、申し込みの際は再度、参加可能かどうかを十分ご検討いただいてから参加申し込みをお願いしたく存じます。

さて、本セミナーでは、最初に講演1ということで、大阪大学名誉教授の三宮真智子氏から「誤解の心理学~コミュニケーションの失敗から学ぶ」というテーマでお話いただきました。人と人とのコミュニケーションの失敗事例から、なぜ、そのような誤解が生じるのか、コミュニケーションの誤解を防ぐためには、どのような点に気をつけると良いのか等の話題提供をいただきました。

次に、講演2として、立命館大学総合心理学部教授の仲真紀子氏から、「子どもへの司法面接~正確で負担のない事実調査のために」というテーマでお話いただきました。仲氏が自ら関わられている子どもの司法面接の経験から、子どもからの正確な情報を聞き取るための方法、事実確認の方法等についての話題提供をいただきました。特に、「子どもの話を隣にいる者として聞くこと」「子どものことばを(聴き手が)勝手に解釈しないこと」というお言葉は、印象的なお言葉でした。

またお二人の先生方に加え、コーディネーターとして、関東支部会会長で、東洋大学社会学部教授の安藤清志氏も参加し、「心理学を学んだ者として、人と人とのコミュニケーションで大切にしたい視点」についての対談を行いました。こちらの対談は、参加者からのお二人への質問が多く出されたため、あまり時間をとることができませんでしたが、人と人がコミュニケーションを行う上で大切にしたいことについてのまとめがなされました。

今後も関東支部会では、「社会に貢献できる心理学」をテーマに、私たちにとって社会生活を送る上で身近なテーマを心理学的な視点から取り上げていきたいと思います。今後ともご協力をよろしくお願いいたします。

なお、2020年3月末をもちまして、関東支部会企画セミナーの開催に多大なるご尽力を賜りました関東支部会の徳田治子幹事(高千穂大学人間科学部准教授)が退任されました。多大なるご協力に、感謝申し上げます。

(関東支部会:大崎博史)

【北陸】北陸支部会イベント開催報告:“オンライン講演会 in 北陸”(2021/3/7)

 

2021年3月7日(日)に、北陸支部会の2020年度3回目のイベント、“オンライン講演会 in 北陸”「学習理論を支援に役立てる」を開催しました。司会は井戸啓介先生(富山担当幹事、富山県立大学)が担当しました。北陸支部会会長の松井三枝先生(金沢大学)による開会あいさつに続いて、講師の竹澤みどり先生(富山県立大学)にご講演いただきました。

講演のタイトルは、「学習理論の臨床現場への応用」でした。はじめに学習理論(古典的条件づけ、オペラント条件づけ)の説明があり、次いで不登校の大学生に認知行動療法を実践した事例をご紹介いただきました。不登校が1年半続いている要因を、学習理論に基づいて行動分析を行った結果、大学生が外出できないのは広場恐怖(パニックが起こった場合、それが生じた場所に行ったり、そこに留まることに対する恐怖)の可能性があると分析されました。そこで、認知行動療法の一つである段階的エクスポージャー法を用いた介入を試みました。エクスポージャー(暴露)とは、恐怖や不安の対象に触れて不安を生じさせながら、時間の経過によって自然にそれが和らいでいくのを体験してもらう手法です。今回のケースでは、大学生が外出する課題を設定し、その外出先までの距離を徐々に自宅から遠ざけていくことで、不安度を調整しました。大学生は約1年間、竹澤先生のアドバイスに従って段階的なエクスポージャーを行いました。その結果、次第に授業に出席できるようになり、最終的には無事に単位を取得して卒業できました。参加者の方々は講演を通して、学習心理学で学ぶ基礎理論を用いてどのように人の問題行動を分析し、またそのような介入により解決するか、ということを学ぶ良い機会になったことと思います。なお、今回ご紹介いただいた事例は、竹澤先生の既発表論文(竹澤みどり (2016). 広場恐怖による不登校に対する認知行動療法的アプローチ―電子メールを用いて介入した事例― 学生相談研究, 37, 81-93.)に基づいています。講演の途中、参加者はチャットに質問を書き、竹澤先生にはその一つ一つに対して、丁寧にお答えいただきました。

講演会の参加者は、175名(講師1名、幹事5名を含む)でした。参加者の皆様に、お名前とお住まいの地域を併記して表示していただいたところ、幹事が確認した限りでは、36の都道府県からご参加いただきました。また、海外からご参加いただいた方もおられました。

講演会終了後には、恒例のお茶会を開催しました。50名の方々にご参加いただきました。司会は森本文人先生(福井担当幹事、仁愛大学)が担当しました。講師の竹澤先生にもご参加いただきました。前半は参加者がチャットに書き込んだ講演の質問を、竹澤先生にご回答いただきました。後半では認定心理士の各自の活動紹介や、認定心理士の会へのご意見などが出ました。特に、地域支部会をどう活性化するか、という問題については、今後も引き続き検討していき、支部会間で情報交換できたらと思います。

北陸支部会では、地域の認定心理士の方々の交流を促すことを、活動の目的の一つとしてきました。前年度はオンライン開催の結果、対面での開催と比較して、北陸の参加者が少なかったです。一方で、上記の通り、全国各地の方々からご参加いただくことができ、お茶会ではオンライン上で地域を超えた交流を行うことができました(盛り上げていただいたオンライン支部会の方々にも感謝!)。北陸在住の心理学者を、全国の方々に知っていただく機会にもなりました。もうしばらくは、オンラインでイベントを開催せざるを得ない状況が続きそうです。今後も北陸支部会は、北陸の心理学研究を皆様に紹介する機会と、認定心理士の皆様の相互交流の機会を企画していきます。今年度もご都合が合うようでしたら、ぜひお気軽にご参加ください。

(北陸支部会:松井三枝・渡邊伸行)

【中国・四国】中国・四国支部会イベント開催報告:公開セミナー

 

2021年2月27日(土)13:30より、中国・四国支部会公開セミナーを、Zoomミーティングによるオンライン開催で実施しました。認定心理士60名を含む67名の方々にご参加いただきました。

今回のセミナーのテーマは「司法・犯罪領域における心理学の貢献」。福山大学人間文化学部教授で犯罪心理学がご専門である平伸二先生より講演をいただきました。

講演は、防犯環境設計や割れ窓理論などの「犯罪防止の心理学」、ポリグラフ検査などの「捜査支援の心理学」、さらに「犯罪被害者支援」の3つの観点からのお話でした。司法・犯罪領域における取り組みの中で、心理学が担っている重要な役割とはどのようなものなのか、科学捜査研究所での長年のご経験もふまえてお話しいただきました。

現在、刑法犯の認知件数は戦後最少の更新が続く一方で、インターネット上の犯罪など、犯罪の多角化やグローバル化の側面も危惧されています。講演では、防犯ボランティアの取り組みの広がりや、防犯環境の適切なデザインと効果的な使用による生活の質の向上、子どもたちが地域安全マップ作製の活動に参加することによるさまざまな効果など、興味深い事例が具体例とともに多角的に紹介されました。さらに、ポリグラフ検査など心理学を活用した捜査の実際、犯罪被害者支援の取り組みの経緯や現状・課題へとお話が続きました。安全・安心なまちづくり、犯罪被害および被害者支援。こうしたテーマは私たちの日常生活において身近なテーマであることを改めて認識しながら、興味深く拝聴しました。

今回のセミナーは、中国・四国支部会のイベントとしては初めてのオンライン開催でしたが、中国・四国からだけでなく、東北から九州・沖縄、さらに海外からも、さまざまな所から多くの出席をいただきました。講演に続いての質問コーナーでは受講者のみなさんからの興味深い質問が時間いっぱい続くなど、おかげさまでスムーズに実施することができました。ありがとうございました。

セミナーの様子

(中国・四国支部会:山崎理央)

【九州・沖縄】九州・沖縄支部会イベント開催報告:公開シンポジウム

 

2021年2月28日(日)の13時から16時まで、「心理学は学校、教育、学びにどう関わるか?」と題して、2020年度の認定心理士の会 九州・沖縄地区支部会シンポジウムが開催されました。会場はZoomオンライン会場となりました。当日の開催の挨拶および司会進行は、本企画を担当した一人である西南学院大学の分部が行いました。当日の参加者は161名で、そのうちの136名にシンポジウム後のアンケートに答えていただくことができました。認定心理士の方の参加は、136名のうちの108名(今後取得予定の方は8名)で、昨年を上回る人数となりました。話題提供の先生方は、国内外で活躍されている社会心理学、認知心理学、発達・臨床心理学をバックボーンに、教育について研究をされている3名の先生でした。概略とまとめは、当日の講演順に以下の通りとなります。

最初に鹿児島大学(2021年4月より京都外国語大学)の稲垣勉先生からは、「意識されにくい心の影響」というタイトルで、潜在的態度とそれが教育やいじめに及ぼす影響を中心に、社会心理学(特に対人認知)の研究知見を教育場面に応用されたお話をしていただきました。聴衆の方からは、いじめが無くなりにくい一端を垣間見られたという感想など、驚きの声もいただきました。

次に長崎大学の前原由喜夫先生からは、「心理学は教育現場で役に立たない?」というタイトルで、ワーキングメモリや心の理論が教育や学習効果に及ぼす影響についてお話いただきました。ヒトの認知能力およびその発達過程を念頭においた教育の重要性に、聴衆の方からも感銘を受けたという感想が多数寄せられていました。

最後に鳴門教育大学の内田香奈子先生からは、「いじめ予防のために心理学ができる学校教育」というタイトルで、発達・臨床心理学の知見を踏まえた教育現場における予防教育についてお話をいただきました。実際の学校で実施された具体的なプログラム内容とその目標および効果について、特に教育に携わっていらっしゃる方から参考になった旨の感想が寄せられていました。

今回のシンポジウムは、新型コロナウィルス感染症の影響によりオンラインでのシンポジウムとなりましたが、話題提供の3名の先生方ならびに多くの認定心理士の方にサポートをいただきました。また、認定心理士の会運営委員会委員である九州大学の光藤宏行先生には、企画から当日の司会進行まで幾度となくお力添えいただきました。末筆ながら、今回のシンポジウムに携わっていただいた全ての皆様に心から御礼申し上げます。

(九州・沖縄支部会:分部利紘)

【オンライン支部会】オンライン支部会イベント開催報告1:シチズン・サイエンスワークショップ第2~4回

 

【テーマ】はじめてのシチズン・サイエンスワークショップ

【開催日と講師】
2021年1月16日 第2回:「研究方法(調べ方)を決めよう!」髙瀨堅吉先生
2021年2月6日 第3回:「結果のまとめ方を決めよう!」髙瀨堅吉先生
2021年3月13日 第4回 :「一旦、発表してみよう!」
総評:髙瀨堅吉先生(自治医科大学・認定心理士の会運営委員会委員長)、坂田省吾先生(広島大学・認定心理士の会オンライン支部会会長)
挨拶:坂上貴之先生(慶應義塾大学・日本心理学会理事長)

【開催会場】Zoom オンライン会場

【参加状況】参加者:34名、最終研究グループ数:14

【発表研究テーマ※一部のみ紹介】
石川裕美子:ポリベーガル理論からみた複雑性PTSDの理解
荻野貴美子:教育学における心理学的アプローチの効果と課題
竹中あかり:避難情報のわかりやすい表示方法について
片山勝己:学会とは何か?学会での認定心理士の可能性は
その他、10テーマ

日本心理学会 学術大会の「社会連携セクション」でのポスター発表への参加を目標に掲げ、2020年11月から約5ヵ月間に及んだ「はじめてのシチズン・サイエンスワークショップ」。3月13日はオンラインで14の研究グループから研究計画や進捗状況、5カ月間の感想についての発表がありました。日本心理学会理事長の坂上貴之先生からご挨拶をいただき、参加者から内容や研究方法に対して質問や意見、謝辞などの交換、髙瀨堅吉先生、坂田省吾先生から総評をいただき無事に終了しました。

期間中は第2回・第3回では全員でのオンラインによるワークショップで髙瀨先生による研究方法、進め方についての講義と、研究グループでのミーティングを行いました。ミーティングには髙瀨先生、坂田先生が各ルームを巡回しアドバイスを下さいました。講義を受けた参加者からは「研究活動をどのようにすればいいのか全くわからなかったが今回を機に、今後は自分のフィールドで研究活動に取組んでみたいと思った」「日々の生活や仕事などの日常の中に研究のテーマになるものがあるとわかり、あれこれと思索するようになって楽しい」「先生方のアドバイスによって視点や気づきを頂く機会や全く知らなかった方法、参考情報や書籍について知ることができ研究活動には指導をいただくことが必要だと思った」などの感想が寄せられました。

全体ワークショップ開催日以外は研究グループごとにオンラインで部屋に分かれて話し合う活動日を2回設け、それ以外はオンラインコミュニケーションツール(Slack)のみでの活動を行いました。研究テーマを掲げ、一緒に研究をする仲間を探し、チームを組み、研究計画を立てるといった活動が5カ月間にわたりオンラインのみで展開されていきました。

最初はなかなかコミュニケーションが活発に展開されませんでしたが、研究テーマを掲げる方が出始めると一変して活発になり仲間探しやチームが組まれ、テーマや研究方法についての話し合いが展開されていきました。オンラインでのこのような活動について参加者からは「コロナ渦ということや遠方にお住いの方もたくさんいる中で(私自身もそうですが…)、SlackやZoomといったオンライン上でのやり取りは全国各地にいる様々なフィールドにいる方とやり取りができ有意義なものだった」「参加した方々(自分も含め)年齢層が高めですので、SlackやZoomの使い方などを含め四苦八苦でしたが、皆さん、果敢に挑戦されている姿に励まされました」といった声が寄せられました。

今回のワークショップは運営側にとっても参加者にとっても、すべてをオンラインのみで行うという、これまでに例のない全く新しいシチズン・サイエンス活動の方法へのチャレンジでもありました。参加者にとってはSlackやZoom、Google driveなどを使った活動への不安や対応が必要となることが容易に想像できたことから、運営側としては膨大な準備と密度の高い参加者への対応を覚悟し取り組みました。実際にワークショップが始まると、先述の感想にもあったように参加者の年齢層が高いことからオンラインツールに不慣れな方も多くいらっしゃいました。想像をしていた状況では事足りないことがわかり、運営スタッフは毎晩のように深夜まで準備や打ち合わせを行いました。運営だけでなく参加者としても研究チームを立ち上げたメンバーは自分の研究チーム(上記に紹介の4つの研究テーマ)との活動とも重なり、時には徹夜作業となることが発表会まで続きました。

それでも、参加者の方々の「何とかついていきたい」「あきらめたくない!」「研究がこんなに楽しいなんて」「研究をやってみたい!」「パソコンを買いました!」「子どもに操作を習いながら…」等々の連絡や相談をうけ、皆さんのモチベーションの高さと情熱、意気込みに触発され、運営側としても何とかそれに応えたいという気持ちで取り組みができ、無事に完走、いや、皆さまとのワークショップの伴走を無事に終えることができました。

今回の報告はここまでの伴走を終えたとして結びたいと思います。なぜなら、ワークショップに参加した方々による研究活動は今も続いているからです。

当ワークショップ終了後も各研究チーム単位での活動だけでなく、チームを越えた交流や自主的にワークショップ企画がなされています。第85回大会へのエントリーをして、現在準備にお忙しいチーム、2022年のエントリーのために研究を継続しているチーム、速度はそれぞれですが、皆さま「研究発表をする」というゴールを目指して走り続けています。認定心理士の皆さま、研究者の皆さま、是非とも「日本心理学会第85回大会、社会連携セクション」にもご注目ください。

さらに、ワークショップに参加したメンバーにより認定心理士同士の交流と繋がりを深め、認定心理士として社会貢献への活動を実践するためのWEBサイトも立ち上がっています(https://www.certified-psycologist.com/)。日本心理学会のシチズン・サイエンスプロジェクトの一つとして、認定心理士が企画・運営を行い、認定心理士の方々が研究課題の設定から発表までを協同で取り組んだワークショップ、今後の展開もこちらで報告して参りますので皆さま、ご期待ください。

最後に当ワークショップ開催・運営に際して、誠意と情熱でご支援・ご指導くださいました髙瀨先生、坂田先生に心より感謝申し上げます。

(オンライン支部会:竹中あかり)

【オンライン支部会】オンライン支部会イベント開催報告2:第16回 Net de 交流! 認定心理士

講師:山崎理央先生

【テーマ】カウンセリングの基本をヒントに考える、日常のストレスケア

【講師】山崎理央先生(福山大学、公認心理師・臨床心理士、認定心理士の会 運営委員会委員)

【開催日】2021年3月27日

参加者は68名。キャンセル待ちが130名越えという、認定心理士の会では超人気オンラインイベントとなりました。

イベント前半は今回のテーマについて、山崎理央先生にお話していただきました。最初にヒトがストレスを感じるメカニズムを解説して頂き、次に対人関係から生じる様々なストレス反応について、更に、ストレスの原因になる環境変化や変化に適応しようとする労力もまたストレスとなる事、見通しが立たない事へのストレス等も解説していただいた上で、ストレス対処法へとお話をいただきました。そして、日常のストレス対処法の一つである「話を聴いてもらう事」また「傾聴」スキルの幾つかのポイントをご紹介いただき、プログラムは後半のペアワークに移りました。参加者が3人一組となり、それぞれ「話し手」「聴き手」「観察者」を担当し、1つのセッション内で5分の傾聴ワークと続いて3分のふりかえりを行い、役割交代しながら合計3セッションが実施されました。ロールプレーは大辻隆夫氏「イヌバラ法」をつかって、話し手が動物や植物になったつもりで日常の出来事についての悩みを語って頂き、初対面の参加者同士でも話しやすい雰囲気満載のワークショップでした。

セミナー終了後に引き続き開催したフォローアップカフェでは、山崎先生を交え参加者からのカウンセリングについての質問や疑問に、先生から直接お応え頂ける場面もあり、参加者には満足度の高いオンラインセミナーとなりました。

(オンライン支部会:ゆみ)

【オンライン支部会】オンライン支部会イベント開催報告3:第17回 Net de 交流! 認定心理士

左:岡崎さんの考えられる認定心理士の意味 右:講師:岡崎博士氏

【テーマ】私の50歳再就職に役立った、認定心理士資格

【講師】岡崎博士氏(認定心理士、元 広島労働局 雇用環境・均等室 総合労働相談コーナー総合労働相談担当)

【開催日】2021年5月29日

参加者は認定心理士49名、その他1名の50名でした。

認定心理士資格を活かして、就職・転職したい。でもなかなかそれが難しい、との声をよく聞きます。そこで今回はそんな方への一つのヒントになればと思い、認定心理士資格を活かして50歳でハローワークへの就職を成し遂げられた、岡崎博士さんのお話をお伺いしました。

岡崎さんは17歳から船員として働き始められました。しかし、ご事情により40歳代で約10年間、無職生活をされたそうです。この間に、「船乗りが陸上で働くためには、しっかり勉強しなければならない」と考えたそうです。そして、パソコン通信で知り合った少年との「いじめ問題」交流をきっかけに心理学に興味をお持ちになり、放送大学で心理学系の科目をたくさん履修されました。認定心理士資格以外にも、産業カウンセラー資格等も取得されたそうです。

やがて、とある方から「岡崎さん、今も無職ならハローワークで手伝ってください」と言われるようになり、ハローワークに就職されました。そして、機会あるごとに、「私は日本心理学会の認定心理士です」と語るようにされました。その結果、社会福祉協議会等、ハローワーク以外からも講師依頼、特にメンタルヘルス関連の依頼が舞い込むようになり、講演料収入も得ることができるようになられたそうです。

岡崎さんの講話をお聞きした後、4人程度の小グループに分かれ、参加者間で約15分間意見交換をしました。その後、質疑応答の時間を設けました。「認定心理士資格を活かして就職したい」との相談に対し、岡崎さんから「上手な自己主張」が大切。たくさんの文化や人に触れ、人間としての幅を広げることも大切…等の有益なアドバイスをいただきました。

(オンライン支部会:片山勝己)

日本心理学会第85回大会(オンライン)において、「第2回 社会連携セクション」を開催します。5名の認定心理士の方々に、「認定心理士として社会で実践していること」をテーマにご発表いただきます。認定心理士が日常の生活や業務の中で心理学を実践している事例や、心理学について考えている/行っている研究内容となります。本シンポジウムは一般公開されるため、全ての視聴者は発表に対する質問を行うことができます。ぜひ、発表をご覧になり、自由に議論し、意見交換する場としていただきたいと思います。

【開催日時】2021年9月1日(水)~8日(水)(期間中のみ、動画視聴可能)
第85回大会HP:https://confit.atlas.jp/guide/event/jpa2021/top

【発表内容(予定)】

  • 1.上村 裕章(BEC 行動・教育コンサルティング):
    「ABA(応用行動分析学)による支援」
  • 2.樋口 幸代(北九州市生涯発達課人材バンクまなびネットひまわり):
    「両親のパーソナリティ特性が子どものパーソナリティ発達に与える影響」
  • 3.天野 治子(岐阜市立日野小学校):
    「小学校の学級における発達支援」
  • 4.三木 政英(事業構想大学院大学/NTTビジネスソリューションズ)・清水 香奈子(無所属):
    「学校・職場環境での自他尊重・相互理解を促進する『Delight Sharing』の活用」
  • 5.小松 渓太(御嵩町教育委員会):
    「中学校常駐相談員としての継続的心理支援」

※発表の概要は第2回社会連携セクションHP(https://sites.google.com/view/jpa-scs2021)からご確認いただけます。

(社会連携セクション実行委員会:伏島あゆみ)

日本心理学会第85回大会において、認定心理士の会は、日本心理学会企画シンポジウムとして「認定心理士の会のこれまでとこれから―オープンサイエンス時代のシチズン・サイコロジストの役割」というテーマのシンポジウムを開催します。

認定心理士の会では、市民の認定心理士有資格者をシチズン・サイエンスにちなんで“シチズン・サイコロジスト”と称し、その活動を奨励しています。シチズン・サイエンスとは「一般の人々が行う科学であり、職業的な科学者や研究機関と協調して行う活動」を指します。シチズン・サイエンスが世界的に拡大する背景には、オープンサイエンス時代の到来があります。そもそも科学研究は、19世紀半ばに「職業としての科学」が成立する以前、経済的基盤を持ったアマチュアの手によって行われていました。しかし、職業科学者の登場が市民から科学を切り離し、ポスト真実の時代においては、フェイクニュースがはびこる原因の一端を作っています。本シンポジウムでは、市民と職業心理学者の間に位置する認定心理士の皆様が、今後どのような役割を担い、社会で活躍することができるのかについて、認定心理士の会のこれまでの活動を「科学史」という大きなスケールに位置づけて振り返ることから始めて、考えていきます。そのうえで、オープンサイエンス時代に認定心理士の皆様が、どのような活動をすることが科学や社会に求められているのかという「認定心理士の会のこれから」を模索していきます。

話題提供者(※敬称略)と発表テーマは以下の通りです。

  • 髙瀨 堅吉(自治医科大学)
    「認定心理士の会のこれまで-心理学ワールド全体の動向とシチズン・サイエンスとの関係」
  • 隠岐 さや香(名古屋大学)
    「制度化された科学とオープンサイエンス」
  • 渡邊 伸行(金沢工業大学)
    「認定心理士の会のこれから」

また、シンポジウムの最後に新しく担当常務理事になられた三浦麻子先生(大阪大学)から指定討論頂きます。

今回も、新型コロナウイルスの影響でオンライ開催となりました。ただ、このおかげで現地に足を運べない認定心理士の皆様にも、こちらのシンポジウムを楽しんでいただけるようになったと思っています。話題提供者の隠岐先生は、「科学が社会の中でどのような位置づけを与えられてきたか、という問題関心から『科学者』という職業がいかに構想され、制度的な位置を与えられてきたか」を研究されています。日本学士院学術奨励賞も受賞され、たいへんご高名な先生です。また、最後に話題提供くださる渡邊先生は、2019年9月まで認定心理士の会運営委員会の副委員長をされていて、学術集会での社会連携セクションの運営をはじめ、たいへんきめ細やかに認定心理士の皆様に寄り添ってくださった先生です。そんな渡邊先生から、認定心理士の会のこれからを伺いたいと思い、今回、話題提供をお願い致しました。

2016年4月1日に認定心理士の会が発足し、5年半が経ちました。そして、2017年9月には日本心理学会常置委員会の一つとして「認定心理士の会運営委員会」が設置され、その委員長として「認定心理士資格を得たことのメリットは『特になかった(40.3%)』」というアンケート調査結果(認定心理士報告書, 2015)が少しでも改善されるように、関係委員の皆様と4年間運営してきました。行き当たりばったりで、いたずらに運営をしてきたわけではなく、科学の歴史という大きな地図を見ながら、そして日本の心理学ワールドの現状を考えながら進めた長い航海でした。時には嵐(しかも大嵐)に見舞われ、時には、たまたま停泊した港で歓迎され、今思えば楽しい4年間でした。認定心理士の未来像を、このシンポジウムで皆様と共有できればと思っています。ぜひ、ご参加下さい。

※発表の概要は第2回社会連携セクションHP(https://sites.google.com/view/jpa-scs2021)からご確認いただけます。

(認定心理士の会運営委員会委員長:髙瀨堅吉)

シチズン・サイコロジスト奨励賞は、人々の心の健康と福祉の増進に寄与する認定心理士を顕彰することにより、社会への心理学の普及をより一層促進させようとするものです。認定心理士の貢献が社会に広く知られることが日常化したとき、日本における心理学の真の社会連携が達成され、わたしたちは社会などで重要な役割を演じることになります。この賞は、学会における社会連携の重要性を鑑み、一昨年より始まりました。今回は、第3回となります。その栄えある第3回の受賞者となりました鍋島まゆみ氏は、矯正心理分野において更生保護、薬物依存、いのちの電話を始めとした、多様な心理社会的課題に関する実践活動に従事してきました。実践活動に関連する研究発表も多く行っており、社会においてシチズン・サイコロジストとして非常に優れた活動を行っています。いずれの活動も、人々の心の健康と福祉の増進に寄与する社会的意義のある活動だと思われます。さらに、社会連携セクションでの発表やオンライン再現イベントでの報告を行うことで、社会に対する認定心理士の役割を有資格者に広めることにも貢献しています。このような鍋島氏の活動は認定心理士が活躍する領域を新たに開拓したものであり、以上の理由から、シチズン・サイコロジスト奨励賞の受賞に相応しいと判断しました。

(認定心理士の会運営委員会委員長:髙瀨堅吉)

<受賞者の声>鍋島まゆみさん「シチズン・サイコロジスト奨励賞にあたり」

この度は、シチズン・サイコロジスト奨励賞を授与下さり、誠にありがたく存じます。私にとって思いがけない受賞で大変嬉しく、今後の活動の励みになります。

シチズン・サイコロジスト奨励賞に応募した理由はこれまでの更生保護に関連する「保護司・篤志面接委員・薬物事犯者処遇カウンラー」の役割や知名度があまりにも低いことから社会に対してアピールすることも私の役割であると考えた結果の応募です。

私は看護師として働く中で、同じ国家資格を持ちながら「看護観の違いや看護教育の問題」などに興味を持っていました。その時期に東京で1年間看護教員養成講座の研修を受け、新設の看護専門学校に就職しました。この研修では私のレポートを論文化するようにと手弁当で指導をしてくださった教授との出会いもあり、研究にたいする興味がわきました。看護教員として学生指導を行ううちに、患者も看護師も人として個性の特性がありそのことがその人の看護観に繋がっていることに気づきました。この気づきは現在も学生や更生保護に関わる対象者の理解へと繋がっています。しかし看護師、看護教員、保護司、薬物事犯者処遇カウンセラー、篤志面接委員などの仕事をしている中で、何か物足りなさを感じるようになりました。そのため、放送大学や大学院で心理学関係の科目を履修し、その学習の結果が認定心理士の取得に繋がりました。その後も自分の生き方に対する不満足感があり、自分の経験を踏まえて論文化することが、恩師に対する恩返しであり、自分らしさに繋がるのではなかと考えるようになりました。そのため、64歳にして宮崎大学大学院看護学部研究科で研究方法について学びを深めました。この大学院での学びが、今年の4月に認定心理士(心理調査)の資格取得に繋がりました。日本心理学会第83回大会社会連携セクションでの発表や認定心理士の会でのオンライン再現イベントでの発表やシチズン・サイエンスワークショップ2020の参加を通して様々な職種の方々との交流が深まり、研究の基礎も学ぶことができ今後の研究の足掛かりになっています。

看護学生や更生を目指す対象者との関りは人と人との関りであり、一人一人から学ばせられることもたくさんあります。

現在学んでいる動機づけ面接の技術を基に技量を高め、今後も地域に根差したボランティアや更生保護に関わる仕事を続けるために自己研鑽を惜しまず成長をしていきたいと考えています。認定心理士(心理調査)の資格取得や今回の受賞により、私の心は満足感でいっぱいです。今後も色々な角度から、学び続け自分自身を深めていきたいと思います。

受賞に際しまして、平素より私を支えてくださっている様々な職種の関係者の皆様、そして勝手気ままに行動する私の足となって支えてくれる夫に深く感謝申し上げます。

 

(鍋島まゆみ)

 

シチズン・サイエンスとは、市民が行う研究活動のことです。シチズン・サイエンスは世界的に広がりを見せており、研究を職業とする科学者や公的な研究機関と協調して行われることもあります。日本心理学会は、認定心理士の皆様と研究を行い、これからの心理学を共に創り上げることを目的に、シチズン・サイエンス プロジェクトを始めました。詳細はホームページ(https://psych.or.jp/authorization/citizen/)をご覧ください。ホームページには、日本心理学会がなぜ認定心理士の皆様とシチズン・サイエンス プロジェクトを推進しているのかを説明する動画がアップされています(https://youtu.be/RaSNCCiIG1Y)。こちらもぜひご覧ください。

シチズン・サイエンス プロジェクトでは、これまで、神奈川県との共同プロジェクトである「アプリケーション『マイME-BYOカルテ』に実装された『未病指標』の操作性の検討」、株式会社三菱総合研究所との共同プロジェクトである「高齢者の社会参画を促進する方法を検討するための、人との繋がり状況の調査」、株式会社電通・株式会社電通マクロミルインサイトとの共同プロジェクトである「サイコロロジック・プロジェクト」が実装され、非常に多くの認定心理士の皆様にプロジェクトにご参加頂きました。

神奈川県との共同プロジェクトは、既に成果報告書をまとめて神奈川県に提出し、県より認定心理士の皆様のご協力に対する感謝を頂きました。今後、認定心理士の皆様のご活躍を、適宜、県から周知いただけるとのことです。また、株式会社三菱総合研究所との共同プロジェクトでは、現在、認定心理士の皆様より頂いたデータを解析しており、この取り組みが三菱総合研究所の共創コミュニティ「ThinkLink」に掲載されました(https://thinklink.mri.co.jp/008.html)。株式会社電通・株式会社電通マクロミルインサイトとの共同プロジェクトは、現在、プロジェクトの第一フェーズとして、認定心理士の皆様の参加意思や、参加了承いただいた方の現在の活動状況/参加してもよいテーマなどを把握させていただくための、事前アンケートを実施しました。事前アンケートにご回答いただいた内容を当学会で検討し、今後プロジェクトを拡大するか/どういったテーマでプロジェクトを推進していくかを検討中です。

このように「認定心理士」という名称が官公庁やシンクタンク、そして大手企業という社会的インフルエンサーによって広く社会に浸透してきました。そのため、この活動に注目してくださったNHKのディレクターの方が、認定心理士の会のワークショップに見学に来てくださり、シチズン・サイエンスに関する番組制作を検討しています(次ページ写真)。また、認定心理士を多く輩出してきた放送大学もシチズン・サイエンス プロジェクトに興味を示してくださり、心理学概論の講義の中でシチズン・サイエンス プロジェクトを紹介する企画が、現在、立ち上がっています。

シチズン・サイエンス プロジェクトを一つの切り口として、認定心理士の皆様が社会で活躍する契機を今後も学会としてより一層創っていけたらと考えています。

シチズン・サイエンス プロジェクトでは、現在、「潜在的連合テストによる『ジェンダー』-『科学』ステレオタイプの測定」、「災害碑発掘プロジェクト-災害の記憶を未来に届けるために-」の2テーマについて、引き続き、参加者を募集しています。ぜひ奮ってご参加ください。また、学会がテーマを設定するシチズン・サイエンス プロジェクトとは別に、認定心理士の皆様が自らプロジェクトを考案して進める「シチズン・サイエンスワークショップ」も開催され(https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2020/08/20201024_csp.pdf)、参加された認定心理士の皆様の中に、ご自身で研究計画を作成し、その研究を進める方たちが活動を始めました。日本心理学会第85回大会の社会連携セクションや一般発表で、その成果が発表予定のようです。ぜひ、皆様の仲間の認定心理士の発表をご覧いただけたらと思います。

大学や研究機関に所属していない「シチズン・サイコロジスト」である認定心理士の皆様への社会からの期待は、ますます高まっています。日本心理学会から発信される情報を、メールや認定心理士の会Facebook(https://www.facebook.com/NinteiShinrishiNoKai)でいち早くキャッチして、ぜひ様々な機会をご利用ください。

 

写真:シチズン・サイエンスに関する番組制作を目指した公開ブレストの様子。日本心理学会で行われている認定心理士の皆様によるシチズン・サイエンス プロジェクトを紹介してきました。

(認定心理士の会運営委員会委員長:髙瀨堅吉)

2018年7月に発行した「認定心理士の会ニューズレター 2018年度No.1」からニューズレターの編集担当となり、本ニューズレターで7号目の発行となりました。本年9月で認定心理士の会運営委員会委員の任期を終えることから、ニューズレターの担当も終了となります。この間、認定心理士の会の活動は非常に活発になり、ニューズレターの頁数は増え続け、編集担当としては嬉しい悲鳴をあげながら編集しておりました。認定心理士の会運営委員会委員になり、認定心理士の皆さんのなかに非常に高いモチベーションをもって活動されている方々が多くいることを知りました。また、認定心理士という資格を何とか生活に、社会に活かしたいと強く願っている方々が多くいらっしゃることも知りました。今後も、このニューズレターがそうした皆様への刺激や、情報交換の場となり発展することを願っております。次号からは、運営委員会委員の山崎理央先生にニューズレターの編集担当を交代いたしますので、皆様どうぞよろしくお願い申し上げます。

(認定心理士の会運営委員会委員:小川一美)

  • 認定心理士の会運営委員会〒113-0033 東京都文京区本郷5-23-13田村ビル内公益社団法人日本心理学会事務局jpa-ninteinokai@psych.or.jp

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