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The Japanese Psychological Association News Letter

vol.07

オンライン開催・対面開催いずれのイベントも、お住まいの地域にかかわらずお申し込みできます。ぜひ多くのイベントにご参加ください。

  • 認定心理士の会北海道支部会は以下の要領で公開講演会を行います。第70回北海道心理学会の一般講演会として開催します。

    • 2023年11月11日(土)15:50~17:00(開場15:40)
    • 対面会場:札幌学院大学 新札幌キャンパス(〒004-8666札幌市厚別区厚別中央1条5丁目1-1 JR新札幌駅および地下鉄新さっぽろ駅から徒歩5分)
      オンライン会場:Zoom Webinar
    • 熊谷恵子先生(筑波大学人間系教授)
    • 普通に他の子たちと会話したりしているのに、数になると、いつまでも指を使わないと計算することができない、筆算になると繰り上げた数をどこに書くのかわからないというように、一部が極端にうまくいかなくなるというお子さんもおられます。認知能力のアンバランスがあることから起こってくる学習障害の中の算数の困難さについて、例を挙げながら解説して頂きます。
    • オンライン参加:定員100名 事前登録制・先着順、会場参加:定員100名 先着順
    • オンライン参加は2023年10月28日までに http://ptix.at/RCxnq0 からお申し込み下さい。会場参加は当日会場へお越し下さい。

    (北海道支部会:河原純一郎)

    • 2023年8月19日(土)14:00〜16:00(開場13:30)
    • 東海学園大学名古屋キャンパス 3号館311教室(名古屋市天白区中平二丁目901番地)
    • 黒川雅幸先生(愛知教育大学)
      テーマ:スマホ時代における子どものインターネット依存問題
      概要:近年の子どものインターネットの利用状況を概観したうえで、インターネット依存研究の動向やこれまで行ってきたスマートフォンによるインターネット依存傾向に関する研究の知見を紹介します。
    • 古賀佳樹先生(独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター)
      テーマ:ゲーム依存の心理学 ―ゲームプレイをどうとらえるか?―
      概要:ゲームは我々、特に若者にとって非常に身近なものとなっています。ストレス発散や、仲間との交流、一部認知機能の向上などいくつかメリットがある一方で、過剰な使用に伴い問題が生じる場合もあります。今回の発表では、ゲーム依存の問題が社会的に注目され、その対策のために様々研究の蓄積がされるまでの軌跡について取り上げたうえで、近年の研究について発表者自身の研究も踏まえながら紹介します。
    • 2023年8月12日(土)
    • 日本心理学会ホームページでご案内しています。
      https://psych.or.jp/authorization/230819_tokai/
    • 東海心理学会
    • シンポジウム後の交流会は行いません。

    (東海支部会:松本友一郎)

    • 2023年8月27日(日)13:00〜16:00
    • Zoom オンライン会場
    • 田中 大上渉先生(福岡大学)、山口勇弥先生(九州女子大学)、大迫秀樹先生(福岡女学院大学)
    • 犯罪非行のアセスメントや犯罪者の更生に至る刑事司法の過程で司法・犯罪心理学の専門家がどのように関わってきたのかについて、更生と深くかかわる少年犯罪を射程に含めながら、3名の専門家と共に考えます。各先生のご講演の概要については、 https://psych.or.jp/authorization/230827_kyuoki をご覧ください。
    • 2023年8月23日(水)
    • 申込専用サイト https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_TdIAa0IpS4-hzxPvNzxOIg#/registration からお申し込みください。

    (九州・沖縄支部会幹事:宮島 健)

【東北支部会企画】認定心理士の会 公開セミナー (オンライン開催) 「災害に向けたこころの準備」

2023年2月19日(日)13:00より、東北支部会公開セミナーを、Zoomウェビナーによるオンライン開催で実施しました。当日は212名の方々にご参加いただきました。

今回のセミナーのテーマは「災害に向けたこころの準備」で、若島孔文先生(東北大学大学院教育学研究科、心理支援センター・災害心理支援室)にご講義いただきました。

若島先生からは、先生らが作成・公開されている「こころの準備マニュアル」をベースにしながら、災害に備えて私達ができることについてお話しいただきました。特に、災害発生直後、中期、後期などのタイミングによって必要な準備・対応は大きく異なってくること、一人ひとりの災害に対する反応の仕方は大きく異なるのでそれに配慮することの重要性をお伝えいただきました。

講演に続いての質問コーナーではチャットも併用しつつ、一市民としての災害への準備の仕方から、現場での支援に携わっている方からの実際的な対応方法についての質問まで、活発な質疑が繰り広げられ、充実した90分でした。ご講演いただいた若島先生、参加者のみなさまに今一度お礼申し上げます。

(東北支部会:前田駿太)

【東北支部会企画】東北心理学会第76回大会・新潟心理学会第60回大会合同大会 公益社団法人日本心理学会認定心理士の会 共催 公開シンポジウム(対面開催)

2023年7月8日~9日に、東北心理学会第76回大会・新潟心理学会第60回大会合同大会が新潟国際情報大学新潟中央キャンパスにて開催されました。このうち、会期中の2つのシンポジウムを認定心理士の会共催の公開セミナーとして実施させていただきました。

大会1日目の「子どもの育ちの援助者を支える:保育・療育者支援の観点と方法」は3部構成で開催されました。第1部では「保育者支援総論」として、平野幹雄先生(東北学院大学)、柴田理瑛先生(東北福祉大学)から保育における支援者支援のニーズや実践報告がなされました。第2部では「特別な配慮を必要とするこどもの保育・療育における支援者支援」として、齊藤勇紀先生(新潟青陵大学)、高梨琢哉先生(発達支援ユニコーン)から療育における個別指導計画の立案における心理学の活用や、多職種連携における心理職の役割について話題提供いただきました。これをふまえて第3部では活発なディスカッションがなされました。

大会2日目の「公認心理師・臨床心理士:養成の現状と将来像」では、話題提供者として小林大介先生(新潟青陵大学)、中嶋豊先生(新潟大学)ならびに新潟大学現代社会文化研究科(臨床心理)大学院生有志の方、コメンテーターとして田中恒彦先生(新潟大学)をお迎えし、新潟県内大学の公認心理師養成の現状や将来の見通しについて共有がなされました。独自性の高い企画であり、東北心理学会との合同大会であることもあいまって、各大学での取り組みについて共有する有意義な場となったと思われます。

シンポジウムには両日ともに40名ほど(うち認定心理士15名)の方々にご参加いただきました。東北支部会での企画は過去数年にわたってオンラインでの実施となっておりましたが、久々に対面開催を実現でき、認定心理士の方も集う機会となったことをとても嬉しく思います。ご登壇いただいた先生方、参加者のみなさまに今一度お礼申し上げます。

(東北支部会:前田駿太)

【関東支部会企画】認定心理士の会 公開セミナー(対面開催) 「通常の学級に在籍する発達障害のある子どもへの支援の最前線!~心理学的知見で支援する!~ 」

関東支部会イベントとして、2023年7月1日(土)の13:10~16:50に公開セミナー「通常の学級に在籍する発達障害のある子どもへの支援の最前線!〜心理学的知見で支援する!〜」を開催しました。久しぶり(3年半ぶり)の対面開催となりました。会場は高千穂大学で、天候のすぐれない中ではありましたが、参加者は136名(事前登録は197名。当日来場者における認定心理士有資格者91名)と、参加者で会場が一杯の状態でのイベント開催となりました。

植木田潤先生
植木田潤先生

今回は、発達障害のある子どもへの支援をテーマに、お二人の先生に登壇いただきました。登壇頂いたのは、植木田潤先生(宮城教育大学)と丹葉寛之先生(関西福祉科学大学)です。植木田先生と丹葉先生の実践に基づく経験豊かなお話に、参加者は熱心に耳を傾け、うなずき、メモを取っておられました。ちょっとしたワークの際にも、意外にも(?)かなりの盛り上がりが見られました。

丹葉寛之先生
丹葉寛之先生

イベントの様子などから、参加者に非常に満足頂いたことがうかがえました。Zoomでの開催を期待する声もあるかと思われますが、対面ならではの良さもあります。今回は久しぶりの対面だったためか、対面の良さをより強く感じました。コロナ禍の状況次第ではありますが、今後も開催方法を工夫しながら企画をおこなっていく予定です。是非ともご参加ください。

追伸 次回の企画も固まってきました。請うご期待!

(関東支部会:鈴木公啓)

【北陸支部会企画】認定心理士の会 公開講演会(対面開催) 「領域横断的心理学研究ー横断することで見えてくること,見失うことー 」

2023年3月18日(土)に、ITビジネスプラザ武蔵研修室1において、久しぶりの対面による講演会が開催されました。井戸啓介先生(富山県立大学)に司会進行いただき、「領域横断的心理学研究 -横断することで見えてくること、見失うこと-」と題して、講師の伊丸岡俊秀先生(金沢工業大学)にこれまでにご経験された行動実験と脳機能計測の例を中心に研究成果をご紹介いただき、異なる研究手法を用いることが心の理解にどのように役立つかを1時間ほどお話しいただきました。講演ののちにフロアから実験の内容や今後の展開に関するいくつかの質問をいただきました。

「領域を横断する」とは、別々の方向からある現象の全体像がよりよくつかめるという良い点があること、一方ではある現象の全体像をつかむための「やり方」を間違えると、見失う・見誤ることもあるかもしれないという悪い点があることを、それぞれ指摘されていました。皆さまも心理学を学ぶ中で、主観で「ある現象」を語るのではなく、客観的なデータに基づいて「ある現象」を語ることの大切さはご存じかと思います(「それって、あなたの感想ですよね」という言葉が流行ったように)。

 

ただし、どのような研究計画によって得られたデータなのか、そしてそのデータが何を示すのかを検討することには、そこまで注意が向いていないようにも思えます。たとえ、ある現象に関してデータを得たとしても、焦点の当て方や当てる場所によっては、誤った解釈を導き出してしまう危険性について考えさせられる講演会でした。終了後のアンケートでも、「様々なものの効果が100%だと言い切るのは危険だと思った」、「誤った確信という話が考えさせられた」との意見が聞かれました。

今回は、小規模な会場での講演会でしたが、県外からの参加者もいらっしゃり、講演会終了後は、講師、スタッフともにざっくばらんに話す時間もありました。小規模ならではの交流が楽しめて、非常に実りのある講演会となりました。

(北陸支部会:伏島あゆみ)

【中国・四国支部会企画】認定心理士の会 公開セミナー(オンライン開催)  「アクティブ・ラーニング――心理学から見た背景と実際―― 」

2023年3月26日(日)13:30より、中国・四国支部会企画公開セミナーをZoomウェビナーによるオンライン開催で実施しました。今回のセミナーのテーマは「アクティブ・ラーニング―心理学から見た背景と実際―」であり、松山東雲女子大学准教授(開催時。現在は城西国際大学准教授)の安田孝先生にご講演いただきました。参加者数は、認定心理士145名を含む231名でした。

講演では、まずアクティブ・ラーニング(以下AL)がなぜ導入されたのか、その社会的な背景についてのお話がありました。続いてALの理論的な背景の解説をしていただき、最後にALの実施において何が重要か取り上げていただきました。

社会的背景としては、「生きる力」「社会人基礎力」「学士力」などが提言・提唱される中で、ALの必要性が浮かび上がってきました。工業社会から情報社会への移行があり、求められる能力も変化してきました。主体性や自律性、コミュニケーション、協同、汎用的・応用的な知識を扱う技能などが重要視されるようになりました。

 

ALの定義については、学習者に物事を行わせ、行っている物事について考えさせるというものがあります。しかし、活動がありさえすれば良いというわけではなく、活動への関与や認知プロセスの変化が大事です。ALの重要性の根拠としてラーニング・ピラミッドが取り上げられることがありますが、ピラミッドの中に出てくる数字の出所が不明です。また、ラーニング・ピラミッドは、いかに効果的に知識を獲得させるかという従来の教育の延長にあるように思われます。ALは知識獲得だけが目的ではなく、最終的には態度や価値観の探求までいくことが大事です。

 

ALは、受動的学習と異なる枠組みで捉える必要があります。 教育を行う上での背後にある哲学が従来の受動的学習と異なります。哲学的前提には、大きくは客観主義と構成主義の考え方があり、ALについては構成主義で考える必要があります。構成主義では、人間は能動的に対象と関わりながら知識を構築していく存在と捉えられます。評価においても、客観主義ではテストに基づく評価が重視されますが、構成主義では学びのプロセスの評価など関係性に基づく評価が提案されています。ALを理解するためには、評価においても従来の教育とは異なる枠組みとなることを把握しておく必要があります。

最後に、安田先生が行われたPBL形式の授業実践が紹介されました。地元の自治体と連携した観光客増加の施策を提案する授業でしたが、学生が自分自身とチーム全体に対して行った評価結果を分析したところ、学習者が意識を向ける側面によって学習活動に対する自己評価が異なりました。改めて、ALを行う上で学生の適性、個人差を考慮することの重要性が示されました。

質問コーナーでは参加者の方々から質問をいただき、安田先生には丁寧にお答えいただきました。参加者の方々からは「ALの理解が進んだ」「心理学の視点から論点整理をしてもらえて良かった」「教育実践が興味深かった」などのご感想をいただきました。講師の安田先生とご参加いただいた皆様に感謝申し上げます。

(中国・四国支部会:松尾浩一郎)

【オンライン支部会企画】認定心理士の会 オンラインイベント
「日本心理学会 第86回大会社会連携セクションポスター発表オンライン再現イベント」

2023年2月26日(日)13:30~15:30、日本心理学会第86回大会社会連携セクションポスター発表オンライン再現イベントを、金沢工業大学・伏島あゆみ先生にご挨拶をいただき、認定心理士のヤフー株式会社デザイナー・田中みつるさん、同じく認定心理士の一般社団法人神戸太陽の風代表理事・横山裕右さんにご講演いただき、閉会のご挨拶を広島大学大学院・坂田省吾先生にしていただきました。参加者は79名(関係者含む)、このうち認定心理士は60名でした。

 

田中みつるさんのテーマは「Webメディアによるウェルテル効果対策の取り組みと、自殺の心理プロセスから導くUXデザイン」でした。田中さんは、入社後に認定心理士の資格を取得され、「錯覚の科学」の授業がすごく面白く絵画も勉強中とのことでした。本題の1. Yahoo! ニュースのウェルテル効果対策、2. 自殺相談窓口を掲載した特集ページのUXデザインで田中さんは、自殺報道により一般の自殺者も増加するウエルテル効果を指摘しました。そこで、田中さんらYahoo! ニュースの取り組みとして、「WHOの定めた自殺報道ガイドラインに従い、報道に配慮するとともに、パパゲーノ効果(自殺の危機を乗り越えた人の話が自殺抑止の効果を持つ可能性があるという仮説)をヒントにしたプロジェクトを開始した。専門家の意見を聞きながら特集ページを作り、自殺を踏みとどまった経験談の記事などを掲載。画面の文字や色味などデザインも、今つらい状況にある人が読みやすいような工夫をした。その結果、相談窓口へのアクセス数が予想以上に多く、希死念慮を抱えている人が多くいることを痛感し、自殺者が増える時期に集中してパパゲーノ効果を意識した記事や特集ページの配信を行っている。」と報告がありました。

田中さんは、今回の取り組みにより、「心理学の知識が役立っている、社会問題に対する自分の立場や責任を見直す機会となった。」と報告がありました。

報告の中で、認定心理士の資格を取得する過程で、心理学の知識を体系的に学んだことを社内でも伝えていたところ、今回のプロジェクト参加に至ったと自己紹介をされていました。この辺りは、認定心理士の資格を取得後の活動と周囲へのどのように伝えるかも、参加者の皆様には参考になったのではないかと感じました。そして、イベント後に回収したアンケートは、心理学の知見が仕事にうまくつながっているというものがメインでした。自殺報道に関しては、Yahoo! の心理学的な知見を活かした対策に好意的なものが目立ちました。また、これに関連してTVの報道の在り方の課題を指摘する意見も散見されました。

横山裕右さんの再現イベントテーマは「認定心理士だからこそ実践したい専門職との接続」でした。横山さんは、社会福祉士・精神保健福祉士・認定心理士の資格を持ち、一般社団法人 神戸太陽の風の代表者として活躍されています。実際の活動は、相談支援専門員(3日/週)、カウンセリング(2日/週)で、内容は、公的サービスに合致しない生活の悩みや困りごとを聞き、公的サービスに当てはまらない、生活の中での悩みや困りごとは、未病のグレーゾーンであると、それらに焦点を当て、埋蔵されたクライエントの掘り起こしを行われています。横山さんの活動の根底は「心理学をちょっとかじったおじさん」というスタンスです。対象の話も「聴く」ではなく、「聞く」。横山さんは「相談支援専門員は、クライエントのニーズに応じて、さまざまなサービスを組み合わせ、地域生活が成立するよう連絡調整を行う。大切なことは、障がいのあるなしに関わらず、グレーゾーンの人々に開かれた相談窓口が必要。地道な活動の必要性(地域での掘り起こしなど)、専門職が各専門職の領域を知り、役割分担して連携すること。予防医学的な取り組みが重要である。」と締めくくり、「心理学はどんどん変容している、未解明の学説も多い、勉強し続けることの必要性」を訴えて終わりました。

横山さんのアンケートでは、「近所のおじさん」が参加者の心に響いたようで、「『心理学をかじった近所のおじさん』のスタンスが認定心理士という資格の意味ではないか」、また「福祉施設においてグレーゾーンの人々を専門職につなげることもできる」という意見もありました。

お二人に共通しているのは、心理学の基礎的な部分を履修して取得した認定心理士という資格を、自分の仕事や活動の中に組み込み、社会の中で活用し活動している実際の報告でした。

(オンライン支部会:荻野貴美子)

【オンライン支部会企画】認定心理士の会 公開講演会(オンライン開催)「動物の時間 ―実験データが示すもの― 」

2023年6月18日(日)公益社団法人日本心理学会認定心理士の会オンライン講演会「動物の時間―実験データが示すもの―」を広島大学特任教授・新潟医療福祉大学教授坂田省吾先生に行っていただきました。参加者124名(関係者含む)うち認定心理士87名でビデオ視聴者は164名で再生回数247回でした。

今回のチラシにも、動物が好きで研究をされている先生のお人柄を表すような、目がくりくりした犬の画像があります。これは坂田先生の愛犬「ショー」です。今回は、坂田先生が長年研究者として携わってこられた動物実験を基軸に、講演をしていただきました。ちなみに坂田先生は今年の3月広島大学を定年退職され、4月から新潟医療福祉大学へ着任されました。

講演は「人の行動を考えよう、5つの話を欲張りにしている。」と坂田先生の提案から始まりました。坂田先生は「今回はラットを用いた実験的研究の話です。餌を欲しがる条件においたときの、すぐにもらえる小さな報酬(SSR)を待つことで大きな報酬(LLR)がもらえる場面を設定して、ラットがどちらを選択するのか、時間価値割引をラットで測定した研究紹介です。待つことの難しさについて一緒に考えましょう。」と紹介してくださいました。

 

ラットを用いた実験的研究の話では、ラットを選択する理由として、早熟、多産、温順、哺育能力が高く性周期が安定していることがあげられる、という動物実験に携わらない人間として興味深い説明も受けました。動物を用いた実験で学習とその定義の確認、学習の基本として古典的条件づけ、オペラント条件づけの確認をしました。これらの知識をもとにラットを用いて実験した際、ピーク法に焦点を当て分析すると、動物は強化設定時間を頂点とする正規分布様の反応度数分布を示すようになり、これは動物の期待を行動的に示したものと解釈され、分布の頂点時間は動物の計時行動の正確さを表す指標となる、とお話がありました。

そして、選択行動の測定のお話がありました。即時小報酬と遅延大報酬についてラットを用いた実験のお話です。即時小報酬と遅延大報酬が主観的に等価になる遅延時間、つまり衝動的選択の尺度についてのお話でした。先行研究の問題点と本研究での変更点について提示があり、実験のまとめは、衝動的選択測定課題として妥当である、衝動的選択の検討に有用であるとお話がありました。総合考察として、本研究の目的は衝動的選択を測定するための遅延調整課題の妥当な手続きの提案は、ラットが主観的な報酬価に従って選択を行う、衝動的な選択測定課題として妥当性のある新たな手続き・分析方法を提案、本研究で提案した遅延調整課題を用いることで衝動的選択に関する研究は、より発展するだろう、とまとめられました。

最後にまとめとして、動物も個体によって反応傾向は異なります。学習経験を通して少しずつ行動を変えることは可能です。待つことの難しさはありますが、条件設定と訓練によって待つことができるようになります。……これが学習の力です。と締めくくっていただきました。

質問時間は、坂田先生へ、学習、ラットだけでなくイヌ、ネコ、そして人間の待つことなど多岐にわたる質問が出ました。アンケートも同様で様々な意見がありました。

閉会のご挨拶は、公益社団法人 日本心理学会事務局長 仮澤様にしていただき、盛会のうちに終了しました。

(オンライン支部会:荻野貴美子)

【認定心理士の会運営委員会企画】日本心理学会第87回大会
大会企画シンポジウム「心理学を効果的に活用できる人材の育成 ― 人の特性に根ざした産業・社会の問題解決に向けて ― 」

9月15日(金)~17日(日)の3日間、日本心理学会第87回大会が神戸国際会議場にて開催されます。今年も認定心理士の会運営委員会の企画で、上記テーマのシンポジウムを17日(日)16~18時に開催します。このシンポジウムは、一般公開となりますので、認定心理士の資格の有無に関わらず、参加費は無料で、どなたでもご参加いただけます。当日、会場に直接お越しください。なお、今回は対面のみの開催で、配信の予定はございません。ご了承ください。詳細は、日本心理学会から配信されるメールや、大会HP(https://confit.atlas.jp/guide/event/jpa2023/top)などをご確認ください。

今年のシンポジウムは、昨年出版された『価値を生む心理学―人と製品・サービスを結ぶ科学―』の編著者である、小俣貴宣氏(ソニーグループ株式会社)に企画していただきました。話題提供者として、執筆者の一人である平尾直靖氏(株式会社資生堂ブランド価値開発研究所)の他、平井啓氏(大阪大学大学院人間科学研究科)、澤井大樹氏(株式会社イデアラボ)、田中優子氏(名古屋工業大学大学院工学研究科)にご講演いただきます。

上記の『価値を生む心理学』では、心理学が企業や社会でどのように役立つか、企業で活躍する心理学の専門家による様々な事例が紹介されています。最後の章では、編著者の小俣氏が、心理学の専門知識や技術を習得した “心理学人材”を、企業でどのように受け入れていくか、心理学人材自身が企業や社会でどのように活躍していくか、また教育機関が心理学人材をどのように育成し、輩出していくか、など、様々な視点での提言をされています。

今回のシンポジウムでは、この“心理学人材”、に焦点を当て、その教育や育成に携わっている専門家をお招きして、それぞれの取り組みや意図、成功例や課題などをご紹介いただきます。その後、話題提供者、司会者、そして参加者を交えて、今後の人材育成に向けた課題や展望について議論していきます。認定心理士の皆さんにとって、心理学の専門知識が企業などでどのように活用されているか、また認定心理士が心理学人材として企業や社会にどう働きかけていくか、といったことを考える機会となれば幸いです。

(認定心理士の会運営委員会委員長:渡邊伸行)

日本心理学会第87回大会
第4回社会連携セクション

社会連携セクションでは、「認定心理士として社会で実践していること」をテーマに、認定心理士が日常の生活や業務の中で、心理学を実践している事例や、心理学について考えている/行っている実践・研究内容などをご発表いただいております。第4回目の今回は、2023年 9月16日(時間未定)に神戸国際会議場・神戸国際展示場にて、現地でポスター発表を実施いたします。

認定心理士の方々に、以下の3件の内容をご発表いただく予定です。第87回大会に参加される予定の方、開催地のお近くの方、ご興味のある方は、大会に参加(参加費有料)のうえ、社会連携セクションを見にいらしてください!よろしくお願いいたします。

〇発表内容(敬称略。予定)
  • ・岡村 知美(放送大学)・武谷 智美・杉本 眞代:
    「心の病気にならないためのオンライン講座による心理的支援」
  • ・三木 万紀子(大森山王メンタルヘルス研究所):
    「メンタルヘルスに関する勉強会の開催を通して~認知行動療法を学ぶ~」
  • ・白木 彩華(高知県会計年度職員):
    「日常生活や会議やセミナー参加者としての継続的な心理支援」

(社会連携セクションWG長:伏島あゆみ)

【認定心理士の会運営委員会企画】第1回新刊連動講座 認定心理士の会×福村出版『恋の悩みの科学』刊行記念オンラインイベント

第1回新刊連動講座 認定心理士の会×福村出版『恋の悩みの科学』刊行記念オンラインイベントを2023年7月8日(土)14:00〜15:30 に実施しました。193名にご参加頂きました。ありがとうございました。

松井豊先生(編者)、相羽美幸先生(著者)、古村健太郎先生(著者)に、ご著書の内容の一部やその裏側についてお話しいただきました。

書籍『恋の悩みの科学』を特別価格でお求めいただける参加者特典もありました。

 

今後も新刊連動講座は続きます。執筆中・近刊予定の方は認定心理士の会運営委員までお知らせ下さい。

(新刊連動講座WG長:河原純一郎)

新型コロナウイルス感染症の状況がようやく落ち着いてきて、私たちの生活のさまざまな部分で対面の活動が戻ってきています。認定心理士の会の開催イベントも、以前のような対面開催での実施が増えてまいりました。

会員のみなさまがセミナーやシンポジウムで顔を合わせ、講師の語りに熱心に耳を傾けるお姿は、やはりそれ自体が、お互いに触発し学びを深める刺激となる貴重なものですね。

一方で、このコロナ禍において、私たちはオンラインでのコミュニケーションの経験に触れ、その良さもいろいろと学んできました。オンラインはこの3年でずいぶん身近なものになりました。

これからは、対面とオンラインのバランスをあれこれと試行錯誤しながら探る中で、学びや交流の可能性がさらに広がっていくのが楽しみです。

(運営委員会委員:山崎理央)

  • 認定心理士の会運営委員会〒113-0033 東京都文京区本郷5-23-13田村ビル内公益社団法人日本心理学会事務局jpa-ninteinokai@psych.or.jp

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