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心理学キャンパス

宮城学院女子大学

友野隆成
宮城学院女子大学学芸学部心理行動科学科

友野隆成(ともの たかなり)
所在地:宮城県仙台市青葉区桜ヶ丘 9-1-1 http://www.mgu.ac.jp/main/departments/gakugei/pb/

Profile─友野隆成
宮城学院女子大学学芸学部心理行動科学科准教授。専門はパーソナリティ心理学。著書は『あいまいさへの非寛容と精神的健康の心理学』(ナカニシヤ出版),『心理学概論 第2版』(分担執筆,ナカニシヤ出版)など。

はじめに

宮城学院女子大学は,1886(明治19)年に前身となる宮城女学校が開校され,昨年創立130周年を迎えたキリスト教主義の女子大学です。本学は2016年度の学部・学科改組により,現在は現代ビジネス学部,教育学部,生活科学部,学芸学部の4学部9学科体制となっております。

キャンパスは,杜の都仙台を象徴するような,緑豊かな仙台市青葉区郊外にあります。JR仙台駅,地下鉄南北線旭ヶ丘駅・泉中央駅からそれぞれ路線バスが出ており,「宮城学院前」のバス停で降りると,目の前に本学桜ヶ丘キャンパスが広がっています。桜ヶ丘キャンパス内には,宮城学院女子大学だけではなく,大学院人文科学研究科・健康栄養学研究科,宮城学院中学校・高等学校,そして,本学附属幼稚園から移行した幼保連携型認定こども園「森の子ども園」も,それぞれ併設されています。「神を畏れ,隣人を愛する」のスクールモットーのもと,多くの学生・生徒・園児が一つのキャンパスで学んでいます。

宮城学院女子大学で学ぶ学生たちは,地元の宮城県を中心に,多くが東北6県から集まります。本学は開校から130年以上の歴史があるため,親子3代で宮城学院出身という学生も珍しくありません。また,地元志向が比較的強く,多くの卒業生が東北の企業で働いています。そのため,学外で一緒にお仕事させていただいた方から「私,実は宮城学院のOGなんです!」と声を掛けられることが,筆者の狭いお付き合いの範囲でさえもよくあります。一方,卒業生の活躍の舞台は東北のみにとどまらず,北は北海道から南は沖縄,さらには海外からも頑張っている便りが届いてきます。

このように,歴史と伝統に培われた本学ですが,筆者の所属する学芸学部心理行動科学科は,2007年に開設された本学の中では比較的新しい学科です。エビングハウスの有名な言葉を借りて本学科を表現するとすれば,「心理行動科学科の過去は長いが,歴史は短い」といったところでしょうか。現在,1学年定員60名の学生が在籍していますが,彼女たちは日々学業に励み,本学科の新たな歴史の1ページを刻んでおります。

写真1 中庭から望む桜ヶ丘キャンパス
写真2 研究発表会「ココロサイコロ」の様子

心理行動科学科の学び

心理行動科学科では,心理学の幅広い領域を実証的手続きに力点を置いて学びます。一方,本学科では「心理学は,机の上だけでは学べない」をモットーとしています。心理学を大学の中だけの特別な存在として位置づけるのではなく,日常生活と密接に関係のあるものとして意識できるよう,社会的な実践を重視しています。

例えば,1年次必修の専門教育科目である「心理行動実践セミナー」では,受講生がおよそ20名ずつのグループに分かれ,1年生のうちから街に出てデータを集めたり,手を動かしてモノを創ったりと,さまざまな実践研究活動を行います。そして,その成果を毎年勤労感謝の日に開催している研究発表会「ココロサイコロ」において,一般の方々を対象に発表します。因みに,筆者が過去に担当したグループでは,東日本大震災の義援金をより多く集めるための方略について,義援金募集活動を行いながら実験や調査を実施して検討しました(この活動に対し,日本心理学会から助成金もいただきました)。

以上のことを踏まえ,本学科では実証と実践のバランスが取れた,以下の4本柱によって構成された特色あるカリキュラムが組まれています。

①充実した基礎領域 本学科では,基礎領域にこそ心理学の本質があり,多様な応用領域へと発展させる大事な土台であると考えています。1・2年次の基礎科目を充実させることによって心理学の面白さ・奥深さを学び,3年次以降の応用領域への展開をはかっています。例えば,2年次必修の専門教育科目である「心理学基礎実験実習」では,受講生は少人数のグループに分かれて,1課題につき2時限続きの授業を2週にわたって受講し,レポートを提出します。そのサイクルを,1年間を通して経験します。

②4年間を通じてゼミを開講本学科では,1年次から4年次までのすべての学年でゼミが開講されています。1年次では,オムニバス形式ですべてのゼミを全員が受講します。2年次では,すべてのゼミの中から各自の興味関心により二つを選択し受講します。3年次では,2年次で受講した二つのゼミのうちどちらか一方に絞って受講します。4年次では,3年次に受講したゼミを引き続き受講し,その成果を卒業論文にまとめ,「卒業論文発表会」で概要を発表します。このように,1年次からゼミを受講して,学年が上がるにつれ少しずつ興味関心を絞っていき,4年次での卒業研究に繋げることができるように,4年間を通じてゼミが開講されていることが本学科の特色です。

③他大学では学べない多彩な研究領域 本学科の教員は,佐々木隆之教授(音楽認知心理学),工藤敏巳教授(スポーツ心理学),大橋智樹教授(経営心理学),木野和代教授(感情心理学),森康浩准教授(社会心理学),そして筆者(パーソナリティ心理学)の6名です。本学科では感情心理学や社会心理学,パーソナリティ心理学など,心理学の伝統的な研究領域のみならず,音楽認知心理学やスポーツ心理学,経営心理学など,東北地方の他大学ではなかなか学ぶことができない多彩な研究領域を学べます。スタッフの人数としてはあまり多くはありませんが,学生たちはアットホームな雰囲気の中でそれぞれの研究領域の知識や技能を学んでいます。

④実践経験を単位でサポート本学科には,広く実社会における実践活動を後押しすることを目的とした「心理行動実践研修B」というユニークな認定科目があります。この科目では,資格取得や学会・研修会への参加,ボランティア活動などに対して,それぞれの活動内容に応じたポイントが付与され,一定の基準に達した場合に単位認定を行います。

また,この科目をきっかけに,本学科独自の活動である「現場部」も誕生しました。「現場部」は,心理学の学びにかかわる実際の現場を訪問し,「見て,聞いて,感じて,まとめる」いわゆるアクティブ・ラーニング形式の課外活動です。これまでに少年院や少年鑑別所,科学捜査研究所,宇宙航空開発機構(JAXA),原子力発電所,水族館など,多様な現場を訪問してきました。これらの訪問先の選定,また「現場部」の立ち上げそのものも学生の希望が反映されており,参加した学生からも大好評の活動となっています。

なお,本学科では2015年度入学生から,心理学検定2級合格相当を単位認定の要件とした認定科目「心理行動実践研修A」を,3年次必修の専門教育科目として新設しました。受検に際しては,各教員が自身の専門分野を担当する心理学検定対策講座を課外で開講し,合格をバックアップしています。

取得可能な資格

 本学科では,所定のカリキュラムの履修により,高等学校教諭一種免許状(公民)や認定心理士および認定心理士(心理調査)が取得できます。また,任用資格として,児童指導員,児童福祉司(1年以上の経験が必要),心理判定員/児童心理司があります。

卒業後の進路

 本学科卒業生の就職先は,金融・製造・販売・サービスなどの一般企業や公務員など,多岐に亘ります。そして,1〜4年次必修のキャリア科目「キャリアデザイン」や,外部講師を招いた本学科独自のキャリアサポートプロジェクト「Pナビ!」の手厚いサポートにより,最近の就職決定率は100パーセントと非常に高いです。また,進学先として,臨床心理士指定大学院や本学の大学院,本学科に推薦枠がある言語聴覚士養成専門学校もあります。

おわりに

 本学科では,これまでに紹介してきたこと以外にも,在学生が主体となってさまざまな活動を非常に精力的に行っています。大学祭やオープンキャンパスで本学科の学びを活かした企画を出したり,各ゼミ等で実施された研究を本学科全体の合同研究発表会で発表したり,宮城県名取市閖上地区の復興を目指したボランティア活動である「閖上プロジェクト」に参加して地域貢献をしたりするなど,枚挙に暇がありません。紙幅の関係でご紹介できなかった活動は,心理行動科学科オリジナルサイト(http://www.mgu.ac.jp/~shinri/)でご覧いただけます。学生たちやスタッフの生の声を毎月随時配信しておりますので,ぜひご覧ください。

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