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心理学ライフ
北海道 5月の楽しい雪山
川端康弘(かわばた やすひろ)
Profile─川端康弘
1993年,北海道大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専門は認知心理学。著書は『視覚情報処理ハンドブック』(分担執筆,朝倉書店),『心を測る』(分担執筆, 八千代出版),『認知心理学』(分担執筆, ミネルヴァ書房)など。
今はちょうどシーズンが終わるころですが,4月から6月にかけてのスキー登山の話をしたいと思います。山とスキーの会という大学のサークルに属して今でもたくさん登っていますと書きたいところですが,年と共に学生たちのサポートに回ることが多くなりました。
札幌市は人口が約200万,一応大都市と言われますが,東京23区の約2倍の面積がありますし,周辺は自然が豊かすぎて大いなる田舎という感じです。とくに南西部は山が多く,熊が出没してニュースにもなりました。こうした市内の山域に大学の山小屋が5つほどあって登山に利用されています。
札幌は同規模の都市としては世界に例が無いほどの降雪があります。6月に研究室から見える手稲山はまだ白いですし,GWなら山麓まで雪があります。いわゆる夏山開き前なのですが,この時期のスキー登山は安定した天候や雪崩の少なさ以外にも多くの利点があります。雪表面はシャーベット,下は硬く締まっているため,上りはスノーシューやアイゼンなど使わなくても楽に歩けますし,下りはわずかな傾斜でもスキーがよく滑る。そのため機動力が高く夏山より行動範囲が広がって縦走も可能です。なにより山道を歩く制約がなく好きなルートを行ける。とにかく山が近いためか当校の登山人口は他校に比べてかなり多いですし,これまで多くの心理学関係者も仲間に引き込んでしまいました。やはり1人で行くのはさびしいですから。
今年の会報を見ると80件ほどの山行報告が載っていますが,やはりこの季節の報告が多く,大雪山,日高,ニセコ・羊蹄,知床等の山域に2〜5名のパーティで出かけています。北海道の最高峰は大雪山系の旭岳ですが, 毎年5月〜6月上旬にこの周辺で若手は合宿をしますので,私たちも激励に行きます。地図中,姿見の池でスキーをザックに着けて担ぐと頂上から西にのびる尾根を登り始めます。尾根上は雪が解けてガレ土もでていますが,側面から谷にはまだ十分な雪が残っています。締まって歩きやすいので,尾根を外れ側面の雪上を山頂に向かってまっすぐ進みます。日差しは強く暑いけれど残雪のクーラーがとても快適,そのまま山頂まで行きます。普通の登山なら来た道を引き返すだけですが,ここは少し道草を。山頂でスキーを履いたら,真北に続く斜面を標高差500mほど滑り(所要時間35分),裾合平へ。雪原には島のようにお花畑があって,遠くはトムラウシ,美瑛,十勝のあたりまで見渡せます。天気が良ければお茶などして出発,トラーバースしてちょうど旭岳の裾野を回り込むように西から南の方角にゆっくりスキーで滑ります。ほとんど歩くことなく姿見の池に到着(25分)。ガレ土の夏道を歩いて下るとゆうに2時間半は苦闘するのでスキーでの下山はとても快適です。
今のクラブは活気がありますが,一時は先鋭に走り過ぎ解散の危機もありました。救ったのは高齢者と山ガールでしょうか。創部100年を過ぎましたが三浦雄一郎さんはじめ先輩の方々が健在ですし,初めはゼロだった女性も増えて,今では女性が主将を務めるシーズンもあります。登山は素人から始めるので登攀技術や知識なども男女同レベルで勝負できるし,海外に挑戦する人材もでて,今や女性抜きでクラブは立ち行かないでしょう。
もう1つの要因はオーストラリア人でしょうか。バブル期のブームが去った後,北海道のスキーや登山のインフラは軒並み衰退しましたが,10数年前から海外観光者が増えて今ではニセコは彼らの一大リゾート地になりつつあります。そのおこぼれではないですがインフラの充実はありがたいことですし,また私たちとは違ったアイディアを彼らは持っているので地元民としては楽しく観察しています。ただ彼らの大胆すぎる山ライフは見ていて少しハラハラしますけど。
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