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心理学キャンパス

広島修道大学

児玉 恵美
健康科学部心理学科

児玉 恵美(こだま えみ)
所在地:広島市安佐南区大塚東1-1-1 http://www.shudo-u.ac.jp/index.html

Profile─児玉 恵美
広島修道大学健康科学部准教授。専門は臨床心理学。著訳書は『日常臨床語辞典』(分担執筆,誠信書房),『エビデンスベイスト精神力動的心理療法ハンドブック』(分担翻訳,北大路書房)など。

はじめに

広島修道大学は,1725年に設置された広島藩の藩校「講学所」を起源とする修道学園によって1952年に開学した修道短期大学を母体とします。その後1960年に四年制の広島商科大学に改組され,さらに1973年に大学名を広島修道大学に変更しました。「修道」という名前から,よくキリスト教関係や仏教関係の大学ですか?と尋ねられることがあるのですが,「修道」の名は,中国の古典『中庸』にある「修道之謂教(道を修めるこれを教えという)」に由来します。

キャンパスは広島市中心部から新交通システム・アストラムラインで36分,バスで29分の木立に囲まれた自然溢れるところにあります。春には桜が,秋には銀杏並木が私たちを迎えてくれます。大学のすぐ側には地元サッカーチームであるサンフレッチェ広島のホームスタジアムもあります。在籍学生は6,228名(2017年5月時点),6学部12学科,大学院4研究科を有する私立大学です。

写真1 キャンパスの様子
写真1 キャンパスの様子

学部教育の特色

本学の心理学教育は,1973年に人文学部人間関係学科に心理学専攻ができてからの歴史があります。その後,学習,感情・動機づけ,知覚,認知,生理,発達などの基礎的学問領域と,社会行動,教育,人格,臨床,健康などの応用的学問領域とのバランスを取りながら教育を行ってきました。

そして2017年,人々の健康に貢献する教育・研究機関として健康科学部が設置され,新たに心理学科ができました。専任教員12名,契約教員1名の計13名で担当しています。健康科学部心理学科の誕生を機に,従来の基礎心理学教育を引き継ぎつつ,人々の精神的健康の回復・保持・増進を支援するための人材や,意識調査やビッグ・データの分析を通じて企業活動に貢献できる人材を養成するための実践的な心理学教育を行っています。そのため,基礎心理学と応用心理学の融合を目指した学びの内容となっています。

1年次では,履修必須の導入科目の中で,研究論文の構成と心理学という学問分野の特徴について学びます。その他,「心理学概論」「心理学研究法」「心理調査概論」「心理学実習Ⅰ」などの必修科目が設けられており,心理学について広く概観し,実験・調査・検査の意義や方法に関する基礎知識を身につけます。また,「社会心理学」「知覚心理学」「学習心理学」「発達心理学」「臨床心理学」などの専門科目が配置され,学生ごとに興味の方向性が少しずつ具体的になっていきます。2年次からは各自の目標に応じた三つのコースに進みます。①心の健康を扱う臨床心理学を中心に学び,公認心理師や臨床心理士を目指す「心理臨床コース」,②社会心理学を中心に学び,意識調査などの心理データを分析できる認定心理士(心理調査)を目指す「心理調査コース」,③人間の行動全般について心理学的な視点を学び,心理学の知見を問題解決に役立てる力を養う「心理科学コース」です。それぞれのコースごとに,授業の履修モデルが提案されています。3年次からは少人数によるゼミごとに演習・実習科目が開講され,卒業論文作成に必要な研究計画の立案,実験・調査・検査・面接の実施,結果の分析など,論文執筆のために必要な能力を習得します。4年次ではさらに専門的な知識と技能を学びながら,実際に卒業論文の作成に取り組みます。

また健康科学部では,一年間を四つの学期から構成する4学期制(クオーター制)を採用しています。心理学科では,2年次第3学期を「活動推進学期」として,そこには必修科目を配置せず,希望する学生には学外でのインターンシップやボランティア活動,あるいは海外研修を通じて自らのキャリア形成を考えてもらいます。

施設の紹介

充実した学びの環境が整っていることも,本学心理学科の特徴です。学生が演習・実習科目で使用する心理学実験施設である「こころLAB」をご紹介します。ここには,録画システムとワンウェイミラーを備えた行動観察室,二つの実験を独立に実施可能な防音室,最大8名がネットワークを介してやりとりできるブース実験室,各種生理指標を測定するための電磁波シールド実験室,食品を扱った実験を行うために厨房施設を備えた汎用実験室,3室の心理面接室などのほか,実験や調査の準備やミーティングに利用することができる心理学実験準備室が10室配置されています。実験室の使用状況はクラウドで管理され,学生や教員は誰でも予約をすれば利用することができます。またSona Systemsの実験参加者管理システムも導入しています。このように,実践的な心理学の教育をソフト面に加えハード面からも支援しており,教員だけでなく,大学院生,学部3年生・4年生も各々,実験や調査などの活発な研究活動を行っています。

学生の活動

写真2 こころLABの行動観察室
写真2 こころLABの行動観察室

学生たちは,心理学の知識と技能を生かし,広島市児童相談所の「一時保護所夜間指導員」や,広島市教育委員会の「広島市青少年メンター」,「少年サポートセンターひろしま」支援ボランティア,児童養護施設「似島学園」や「広島修道院」の臨時職員など,さまざまな地域援助活動にも積極的に取り組んでいます。これらの施設では,職員の指導の下,乳幼児の養育支援や,情緒障がい児,困難な家庭環境下にある児童・生徒,あるいは非行少年・少女の相談相手となり,学習支援やリクリエーションの企画・実施などを通じた生活支援を行っています。

他にも,集団での問題解決やアイデア創造活動を促進する「ファシリテーション能力」を身につけ,中学校の生徒会サミットに参加するプログラムや,サツマイモの苗植え・収穫・摂食を体験する特別課外講座(農作業を介して人と食物との関係を考える)など,ユニークな学生参加型活動があります。

 

取得可能な資格

本学科では,所定のカリキュラム履修により,認定心理士及び認定心理士(心理調査),高等学校教諭一種免許状(公民)が取得できます。また任用資格として,児童心理司,心理判定員,社会福祉主事,社会教育主事があります。さらに,2017年に施行された公認心理師法に基づく公認心理師(国家資格)に対応したカリキュラムも用意しています。

 

卒業後の進路

最も多いのは一般企業の総合職や営業職,サービス業などへの就職です。また,心理学の専門的な知識を生かし,国家公務員(鑑別技官・法務教官など),地方公務員(児童相談所・子ども家庭センター・科学捜査研究所研究員など)をはじめ,医療(民間病院),福祉(児童養護施設・地域包括支援センター)など多岐にわたる施設の専門職にも就職しています。大学院に進学してさらに学びを深め,大学教員になる人もいます。

大学院

大学院人文科学研究科心理学専攻は,1978年に博士前期課程が開設され,西日本の大学では3番目の心理学専攻の大学院として発足しました。1981年には博士後期課程が設置されています。そして2018年には,博士前期課程に心理科学領域と臨床心理学領域の2領域を新たに設置し,より充実した教育を提供できることになりました。現在は,公認心理師への対応と,臨床心理士指定大学院の指定を受けるべく準備を進めています。

これに伴い,大学院心理学専攻の施設として地域の人々を対象に心理カウンセリングを行う臨床心理相談センターを開設しました。乳幼児から高齢者まで,心の健康を育む支援を行います。センターは4層2階建て,面接室4室,プレイルーム2室,カンファレンスルーム,行動観察室などを備え,国内有数の規模を誇ります。ここで,公認心理師や臨床心理士を目指す大学院生たちは,専任教員5名の指導を受けながら研修相談員としてカウンセリングの実習を行います。実はこのセンターの建物は,心理学専攻が70年代から使ってきた通称「実験棟」を大幅にリニューアルしたものです。すなわちこの建物は,本学でこれから始まる新たな臨床教育を,これまで培ってきた心理学教育が支えていくことの象徴となっているのです。

写真3 臨床心理相談センター内のプレイルーム
写真3 臨床心理相談センター内のプレイルーム

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