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バークレー研究留学

金谷 翔子
日本学術振興会特別研究員PD

金谷 翔子(かなや しょうこ)

Profile─金谷 翔子
2008年,東京大学文学部行動文化学科卒業。2014年,東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(心理学)。産業技術総合研究所特別研究員を経て,現在は京都大学大学院人間・環境学研究科で日本学術振興会特別研究員(PD)。専門は知覚心理学,認知心理学。

日本学術振興会PDとして,2016年5月〜2017年4月迄の1年弱,カリフォルニア大学バークレー校で在外研究の機会に恵まれました。きっかけは,2015年の夏に訪日されていたデイヴィッド・ホイットニー教授と出会ったことです。視知覚を中心に,さまざまなテーマで精力的にハイインパクトな研究を推進されている彼の研究室で仕事をさせていただくことはとても魅力的に思え,また,少しお話ししただけでも分かる彼の温かな人柄に惹かれ,渡米を決めました。

翌年5月,フロリダでの国際会議への参加を終えて,直接バークレーへ向かいました。バークレーはサンフランシスコから橋を渡って車で30分ほどの距離にある,小さな大学街です。ユニバーシティ・アベニューという目抜き通りが街の東西を突き抜け,その東の端,海抜が徐々に上がって山へとつながる辺りに大学が位置しています。キャンパスは自然に溢れ,走り回る野生のリスや,カリフォルニアの真っ青な空の下,芝生で昼食を取ったり寝転がって本を読む学生たちの姿は,いつ見ても心が和みました。

ホイットニー教授の研究室では,優秀で個性的なメンバーたちが待っていました。最も驚いたのは,生粋のアメリカ人率の少なさです。ほとんどがヨーロッパやアジアからやってきた留学生あるいはポスドクで,外国人であることが当たり前という環境は,私にとって大変ありがたいものでした。研究スタイルはとてもオープンで,教授とはいつも,学生やポスドクがいる部屋の隣に位置するキッチンで打ち合わせをします。週に一度のラボミーティングも,大きなソファのある部屋でそれぞれ思い思いの場所に腰掛け,時には教授が買ってきてくださる美味しいピザを食べながら行います。

私が取り組んだ研究は,視覚における要約統計量知覚の機序に関するものでした。さまざまな空間的特徴(e.g., 物体の大きさ)について,複数の物体を見て瞬時にその平均値を把握することができることが知られていますが,このような処理が時間的特徴(e.g., フリッカー周波数)についても可能なのか,可能であるならばどのような機序が関与しているのか,といった問いについて,さまざまな実験を行い検討しました。限られた時間の中で,幸いにしてなんとか研究結果をまとめることができたのは,常に的確なアドバイスをくださった教授と共同研究者のおかげです。無償でリサーチアシスタントを務めてくれた優秀な学部生にも大いに助けられました。

生活面では,まず家探しの大変さが記憶に残っています。現地では近年,驚くべき速度で土地と家賃の値上がりが進行しており,リビング/ダイニングに寝室,台所と浴室の付いた一般的なアパートの家賃が,大学から徒歩圏内の治安の良い地域であれば平均2000ドル程度でした。そのため,ほとんどの学生はルームシェアをして,パートナーや友人と一緒に暮らしていました。私自身は,一軒家の一室を間借りするなどして家賃を抑えました。一方で,せっかくのアメリカ生活,研究以外のことも経験したいと考え,観光や友人たちとの交流も積極的に行いました。車で3時間ほどの距離にあるヨセミテ国立公園でキャンプをしたことや,友人たちの母国であるさまざまな国の文化を教わったこと,各国の家庭料理をご馳走になる機会に恵まれたことなどは,楽しい思い出となりました。

あっという間の滞在期間でしたが,バークレー生活で得た研究成果や,研究室内外のさまざまな方々から学んだことは,私にとってかけがえのない財産です。お世話になったホイットニー教授,研究室の仲間たち,共同研究者,現地の友人たち,日本からメールやスカイプ等で応援してくれた家族や友人たちに心から感謝しています。各国から優秀でアクティブな研究者が集まる贅沢な環境に身を置けたことに感謝し,意義のある研究を発信し続けることを目指して,今後とも努力を重ねたいです。

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