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心理学ライフ

電車の見える新しいキャンパス

北岡 明佳
立命館大学総合心理学部 教授

北岡 明佳(きたおか あきよし)

Profile─北岡 明佳
1991年,筑波大学大学院博士課程心理学研究科修了。博士(教育学)。専門は知覚心理学。著書は『錯視入門』(朝倉書店),『錯視の科学』(日刊工業新聞社),『世界一美しい錯視アート』(カンゼン)など。

立命館大学の心理学の教育・研究施設は,これまで京都市の衣笠キャンパスにありました。しかし,2016年4月に総合心理学部が大阪府茨木市の大阪いばらきキャンパスの中に開設されまして,数年かけて京都から大阪に移転しているところです。

私は,通勤時間がこれまでの1時間から1時間半に伸びました。首都圏にお住まいの方なら満員電車の痛勤を想像するところですが,実際は優雅な快適電車通勤です。

立命館大学大阪いばらきキャンパスは,JR京都線(東海道本線)の茨木駅から徒歩5分の場所にあります。つまり,JRの電車に乗って,京都から茨木までの28.2kmの通勤となりました(京都駅までは地下鉄)。東京・横浜間の距離とほぼ同じです。京阪神の大都市を結ぶ路線ですから,いかにも混雑してノロノロ走りそうですが,ここは在来線でありながら高速路線です。首都圏で言えば,つくばエクスプレス(秋葉原〜つくば)みたいな感じです。

JR京都線には,「新快速」という種別の特別料金不要の電車が走っています。首都圏の中央線の「特別快速」みたいなものですが,走行速度が全然違います。最高速度130km/hで疾走します。通勤時間帯にもノロノロ運転がありません(ただし,ダイヤはよく乱れる)。しかも,グリーン車と同様のクロスシート車です(座席の向きが進行方向に向いている)。しかもグリーン料金不要です。首都圏から来た先生によりますと,「グリーン料金を払ってもよいから着席したい」などと意味不明なことをおっしゃいますが,グリーン車つないで乗る人おるん?

私は着席に関心はなく,運転室の後ろに陣取ります。新快速電車の主力の223系は前面展望がよろしいです。不思議なことに,私が望むポジションは競争率が低いです。通勤客の皆さんはなぜか着席を目指して殺到していきます。このため,列の後ろのほうにいても,運転室の後ろをゲットできる可能性が高いです。こうして,京都から高槻までのノンストップの高速走行を朝から楽しめるというわけです(茨木は停車しないので乗り換え)。

車窓のポイントは多く,すべては語れませんが,まずは向日町操車場があります。よだれが止まりませんね。とても複雑な配線でおもしろい上に,いろいろな車両を眺めることができます。そのほか,梅小路公園の前を通ります(蒸気機関車が保存されている)。高槻付近では新幹線の疾走も目撃できます。リニアモーターカーなんかいらないんじゃないかと思われるようなスピードで視界から消え去ります。

特筆するべきは「普通」です(207系と321系)。各駅停車なので遅そうですが,これが速くて快適なのです。複々線で,駅間が長くて,線形がよいから速いのですが,京都から乗れば朝でも座れます。そして,窓がでかい。1時限目の授業がない場合は9時頃に乗りますが,高槻までガラガラで,天気でもよければ山の緑を眺めながらの観光気分です。

このような優雅な通勤後,大阪いばらきキャンパスに到着しましても,電車とともにあります。キャンパスが線路に面しているからで,電車や貨物列車を見放題です。騒音はかなり大きいはずですが,気にしない。

最後に,俯瞰的に撮影した電車の写真を並べると,同一の写真でも,電車は平行には見えず,遠くに向かって広がっているように見えます(図1)。これは斜塔錯視と呼ばれる現象です。

図1 左右は同一の写真であるが,左の電車は右の電車よりもより左奥の方向に向かっているように見える(斜塔錯視)。正面の建物群は,総合心理学部のある立命館大学大阪いばらきキャンパス。
図1 左右は同一の写真であるが,左の電車は右の電車よりもより左奥の方向に向かっているように見える(斜塔錯視)。正面の建物群は,総合心理学部のある立命館大学大阪いばらきキャンパス。

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