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心理学史の中の女性たち

サトウタツヤ
立命館大学総合心理学部教授。学校法人立命館・学園広報室長。日本心理学会教育研究委員会資料保存小委員会委員長。今回の主人公はアメリカでデューイ と学友,そしてイタリアでモンテッソーリに師事。いろんな人がいるなぁという素朴な印象。そして,姉妹で協力していたということも分かって驚いた。

サトウタツヤ

マーガレット・ナウムブルグ

マーガレット・ナウムブルグ

Naumburg, Margaret(1890-1983)
http://jewishcurrents.org/may-14-mother-art-therapy/

芸術療法(アートセラピー)を,芸術を用いて心理療法を行うものだと定義するなら,その種類は芸術の数だけあることになる。音楽,演劇,詩,絵画,コラージュ……俳句や詩吟のように日本独自の芸術だって,忘れてはいけない。そして,絵画を描く,作曲をするというような創作のみならず,演奏や鑑賞など,芸術的な行為そのものにも様々な形態があり,個人で行うものもあれば集団で行うものもある。こうした芸術の様々な種類や形態を心理療法に活用するのが,広い意味での芸術療法ということになるのだろう。

マーガレット・ナウムブルグこそが芸術療法の創始者の一人であり第一人者として認められている。彼女はニューヨークでカレッジを終えた後,コロンビア大学でデューイと共に学び,その後イギリスのLSE(ロンドン経済大学院)で経済学を学んだのだが,そのとき,アレクサンダー・テクニックで知られるアレクサンダーの知己を得た。さらにはイタリアでモンテッソーリに幼児教育を学んだ。彼女は後に,モンテッソーリ教育に基づく子どものための美術学校を開校(1914)し,精神分析の訓練までも積んだというから驚きである(伊東,2014)。

ナウムブルグは1940年代以降,ニューヨーク州立精神医学研究所で自発的に描く絵画が治療に及ぼす影響について研究を行った。彼女のスタンスは当時のアメリカで力をもっていた精神分析的な力動論に基づく芸術療法であり(佐野,2006),芸術によって自発的な想像(イメージ)が解放されることにより,治療効果があると主張していた。ここで芸術とは主に絵画のことを指しており,シンボルを描くこととそのシンボルから何かを連想することが,自発的想像の解放に有効だと考えていた。彼女は,心理療法のように心理を対象にしたセラピーと芸術を媒介としたセラピーは異なると考えていたし,日常的な作業を行う作業療法と芸術療法も,異なるものだとしていた。彼女にとって,独創性の発露を通じた療法かどうかが重要だったのであろう。

なぐり描き法(scribble technique)はナウムブルグが提唱した技法である。二人のうち一人が,まず赴くままになぐり描きを行い,次にもう一人が,それをベースになぐり描きを行う。これを繰り返すと,なぐり描きだった線や形が,像となることがある。そうした場合には,彩色を行い絵画として完成させていくことになる。あるブログに,実際のクライエントが描いたものではないが,その雰囲気を伝えるものがあったので紹介する。上がなぐり描きで,下がそれを絵画に仕上げたものである。

このなぐり描き法は,ナムバーグの8才年上の姉であり,美術教育家のフローレンス・ケインが,その発展に力を尽くした。

参考文献

  • 伊東留美(2014)アートセラピーと美術教育についての一考察.『人間関係研究(南山大学人間関係研究センター紀要)』13, 139-152.
  • 佐野友泰(2006)芸術療法小史Ⅱ.『札幌学院大学人文学会紀要』80,67-84.

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