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心理学キャンパス

中部大学

田中 秀紀
人文学部心理学科

田中 秀紀(たなか ひでのり)
所在地:愛知県春日井市松本町1200
https://www3.chubu.ac.jp/psychology/

Profile─田中 秀紀
中部大学人文学部心理学科准教授。専門は臨床心理学(事例研究・遊戯療法の原理)。著書は『遊戯療法と子どもの今』,『心理臨床関係における身体』(いずれも共著,創元社)など。

はじめに

中部大学は1938年に設置された名古屋第一高校を起源とし,1964年に中部工業大学として愛知県春日井市,濃尾平野の「春日井の丘」に開学しました。文系学部が設置されたのを機に1984年に中部大学と名称を変更しました。名古屋駅から中央本線で25分,そこからバスで10分のところに,36万平方メートルの緑豊かなキャンパスが広がっています。在籍学生数は11,265人(2017年5月現在),文系理系7学部27学科,6つの大学院研究科からなる総合大学となっています。教育・研究活動として,産官学連携や地域連携活動を積極的に行っていることも本学の特徴です。特に2013年に採択された文部科学省の「地(知)の拠点整備事業(COC事業)」では,日本三大ニュータウンの一つ高蔵寺ニュータウンと連携し,地域の活性化に貢献できる学生の教育・育成を行っています。総合大学で心理学を学ぶメリットは,文系・理系という枠組みにとらわれることなく,幅広い知識と心理学の知識を融合させることが可能になるという点にあります。なお本学には「ちゅとら」なるキャラクターがおり,大学祭やオープンキャンパス,そしてテレビ取材を受けるなど,広報の一役を担ってくれています。

写真1 緑豊かなキャンパス
写真1 緑豊かなキャンパス

心理学科について

心理学科は2002年に人文学部に設置されました。バブル経済崩壊以降,不安定な社会構造を背景に引き起こされる,いじめ・ストレス・虐待といった様々な「こころの問題」に社会の注目が集まる中で,心理学的観点からそれらの問題に取り組むことのできる人材育成が大学の責務と考えられたことが設置理由です。その教育課程においては,①現代の心理学の理論や概念を理解でき,②社会が抱える課題について,データを基に適切かつ論理的に解析・考察でき,そして③他者との討議や協同作業を通じ,問題解決に向けて積極的に貢献できる人材を輩出するという,実践的な内容をディプロマ・ポリシーとして掲げています。

本学科は学年定員90名計398名の学生と,認知心理学,社会心理学,発達心理学,臨床心理学を専門とする9名の専任教員から構成されています。カリキュラムは,現代の心理学領域を広くカバーしています。幅広い心理学を学ぶことで,ひとつの問題や現象をさまざまな視点から探究し,人間の複雑なこころを多面的に深く理解することを狙いとして授業を展開しています。

本学科では,1年次より心理学の専門科目を履修することができます。まずは「臨床心理学概論」「心理学概論」「心理学統計法」など,心理学の基礎的な領域を概観するとともに,「感情・人格心理学」「知覚・認知心理学」「発達心理学」「社会・集団・家族心理学」など専門教育を積極的に導入しています。また実習・演習型の授業に力を入れ,「心理演習(実験)」・「心理演習(調査)」を必修として,少人数のグループで心理学の具体的な実験や調査に取り組むことで,人間のこころを探るための心理学の研究法やプレゼンテーション能力を養います。2年次になると「教育心理学」「認知科学」「心理学研究法」「心理データ解析」などより専門性の高い授業が展開されます。それに加えて「心理学プレゼミナール」では,学生が各班に分かれてすべてのゼミの見学をし,実際のゼミに参加する授業があります。そこでは各教員の心理学専門領域に体験的に触れることになります。3年次からは少人数によるゼミ「心理学ゼミナール」が開講され,論文を講読することなどを通じて各学生の興味が心理学的にはどのように研究されてきたかを学びます。さらにゼミ内での学生や教員とのディスカッションを通じて,卒業論文作成に必要な問題意識の構築につなげていきます。また「心理学実習E(フィールドスタディ)」では,高齢者福祉施設に赴き,施設の見学や介護の実際を体験する中で,施設を利用される方の心理的な援助の視点を学ぶ実習が用意されています。4年次ではさらに自らの興味ある専門分野を学びながら,教員の指導を仰ぎつつ1年間をかけて卒業論文の作成に取り組んでいきます。1月の最終発表会では,卒業論文をポスター形式で発表します。学生が発表している様子からは自信やたくましさが見受けられ,4年間の成長を感じることができます。

本学科では,心理学界の第一線で活躍する学外の研究者を招き,「心理コロキウム」という講演会を開催しており,そこに学生は誰でも参加することができます。1年生の段階から最先端の心理学に触れ,研究者と交流することができます。2017年度は2回講演会が開催され,活発なディスカッションが交わされました。

写真2 卒業論文発表会の様子
写真2 卒業論文発表会の様子

施設の紹介

本学科では開設時から「心理実験棟」が整備され,科学的な心理学の研究方法や臨床心理学の面接・検査を学ぶための設備が整えられています。データの解析のソフトウェアがインストールされたパソコンが100台設置されている心理データ分析室があり,心理学実験の講義演習科目,実習科目に使用されています。また,映像分析室や大小実験室が10室設置され,実習や卒業論文作成のための実験に使用されています。心理査定や心理面接の実習で使用される,箱庭を備えた面接室もあります。卒業論文締め切りが近くなる秋の終わりごろになると,心理データ分析室に多くの4年生が自ずと集まってきます。そこでは,自らのデータを分析しながら,同級生のデータ分析を助け,お互いの結果を議論しあうなどの光景が見られるようになります。

写真3 統計ソフトを使った心理データ分析室での授業
写真3 統計ソフトを使った心理データ分析室での授業

学生の活動

地域援助活動にも取り組んでいます。本学科学生は地元春日井市で学習支援事業に携わっています。生活保護世帯やひとり親世帯など,主に経済的な困難を抱える世帯の中学生を対象にした,本学科学生による無料の学習支援活動です。この事業を学生が「個性を発揮して生徒一人一人が輝ける場所になってほしい」と「学習教室きみいろ」と命名しました。その中で学生は学習意欲が促進されるような働きかけを行うとともに,臨床心理学教員の指導のもと心理的なサポートを心がけることで,子どもの自己効力感や自尊感情が向上するよう努めています。2011年に活動が開始し,2017年からは春日井市から委託された「子どもの学習支援事業」として運営するようになりました。また,今年度からは地元の児童自立支援施設での夜間嘱託員の活動も始まりました。

学科の様子

中部大学では「春日井の丘」にある緑豊かなキャンパスで,風が木々を揺らす音が聞こえる中で授業が行われます。また筆者自身も,緑に囲まれた中で気持ちよく授業をさせていただいています。学生や教員が池の前のベンチで雑談したり,芝生に座って休憩したりしている光景が日常になっていて,とてもよい環境です。大学全体も比較的おおらかで,全国的に大学環境が急激に変化している中で,良い意味での「昔ながらの大学」の雰囲気を残していると感じます。素直な学生が多く,学生はバイトやサークル活動,部活動,学内のボランティアなどに積極的に参加しています。

卒業後の進路

学生は4年間のカリキュラムを学修していく中で,実験や調査といった人間理解のための技術,高度なデータ解析の技術など,社会に必要とされる資質が養われます。本学科の卒業生は,一般企業や,銀行などの金融機関,公務員,社会福祉法人などに就職しています。一般企業でも主にサービス業など,心理学を活かした「人と関わる仕事」を希望しているようです。また臨床心理士資格取得を目指し,大学院への進学者も毎年おります。本学科では「心理キャリアディベロップメント」という授業を開講し,企業の第一線で活躍してきた講師による講義や,就職活動に必要なスキル(技術)を身につける演習など,独自のキャリア教育を行っています。

また2018年度より本学科は,公認心理師資格取得に対応したカリキュラムをスタートさせました。大学院の方は現在公認心理師資格のカリキュラムに対応していませんが,質のよい公認心理師を輩出できるよう,実習や授業内容の充実などを推し進めていく予定です。

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