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心理学ライフ

ワーク・ライフ・バランスと育児休職

後藤 和宏
相模女子大学人間心理学科 准教授

後藤 和宏(ごとう かずひろ)

Profile─後藤 和宏
2004年, School of Psychology, University of Exeter, Ph.D取得。2012年に相模女子大学人間心理学科専任講師を経て,2017年より現職。専門は比較心理学。著書は『ベーシック発達心理学』(分担執筆,東京大学出版会)など。

私は,同じ年の妻,4歳と2歳の2人の娘がいます。妻が妊娠後に体調を崩して以来,ワーク・ライフ・バランスについて考えるようになりました。「心理学ライフ」では,これまでに何度か育児をしながら共働きで活躍されているご夫婦会員が寄稿されています。境遇はそれぞれ違えど,他の人が子育てと仕事になんとか折り合いをつけている様子を知ることは,自分の今の生活スタイルを選択することにいい影響を受けたと思います。今回,私が自分について語ることが,同じようにどなたかのお役に立てば幸いです。

妻の体調を第一に

2013年暮れに妻が長女を出産したとき,妊娠32週での緊急帝王切開でした。長女は極低出生体重児として生まれ,新生児集中治療室(NICU)で2ヵ月お世話になりました。長女のことも心配ではあったのですが,それまで大病することもなく,元気だった妻が妊娠をきっかけに体調を崩したことで,私はとても心配しました。まず妻が元気でないと,働きながら子育てすることは難しいと感じていたため,それ以降,仕事を早めに切り上げて帰宅するようになりました。長女の入院期間が長かったため,その間,夫婦2人で話し合う時間もあり,妻が復職するまでの予定をしっかり立てることができました。当時,妻は,任期付きの役職だったこともあり,産後8週間以内に復職し,週1日以上勤務することが求められていました。そのため,妻が週2日出勤することを目標にし,週1日はベビーシッターさん,もう1日は私が長女の面倒を見ることにしました。

次女の妊娠時には,再び妻が体調を崩し,1ヵ月入院することになり,その間,私と長女の2人での生活をすることになりました(途中,実家から母がお手伝いにきてくれました)。そのため,長女の出産時以上に,妻の負担を少しでも軽減するような産後の計画を立てました。帝王切開になるため,産後1週間は入院,その後1週間を産後ケアセンターで,その後2週間を妻の実家で過ごすことにしました。長女もいるため,妻の実家で過ごす間,私が付き添うことにし,2週間の育児休職を申請することにしました。

育児休職をとる

私の職場は女子大なので,他の大学と比べ,女性教員率も高く,育児休職に関しては周囲の理解があった環境ではあると思います。そのため,職場の理解は得られやすいと思っておりましたが(実際そうだったと思います),当時,本学にはまだ男性教職員を対象とした育児休職制度がありませんでした。ちょうど同僚の男性教員に同じようなライフ・ステージの方がおり,育児休職制度の整備に関する要望を大学に申し出たところ,人事課の方の尽力もあり,こちらが思っていたよりも早い期間で,就業規則の改定などがなされ,育児休職制度が整備されました。

しかし,制度が整備されたものの,実際に利用するとなると,それなりに問題が発生しました。細かい問題を挙げるとキリがありませんが,私の休職に関する主な問題は,制度整備直後に休職をすること(つまり代替人員の手配をするための予算措置が困難なこと),期間が2週間と短かったことでした。次女の出産予定日が6月中旬でしたので,次女が保育園に通い始める9月頃まで休職することが理想的だったのですが,春学期の授業運営や期末試験,成績評価のことを考え,最低限必要だと思われる2週間の休職期間を希望しました。ところが,休職は認めるが,授業回数確保のため補講は実施するようにと言われたり(休職期間は給与が支払われないので,補講をするのは筋違いです),2週間という期間であれば,育児休職の取得は不要ではないかという育児休職取り下げの提案がされたりもしました(取得の要不要は自分が判断する問題のはずです)。しかし,本学では補講の時間枠は,6限もしくは土曜日に限られます。長女が通っていた保育園は自宅から徒歩25分程度の距離にあったため,私が登降園に付き添うためには,6限の補講は実施できません。また産後,体調が戻っていない妻に2人の娘の面倒を見てもらい,週末に補講をすることなど到底できません。いろいろ調整していくなかで,私の2週間の休職中の講義については,同僚の先生および臨時講師の先生方に代講をお願いすることが認められ,育児休職を取得することができました。私が取得した育児休職はたった2週間の短いものでしたが,この期間は私たち家族にとっては必要なものでしたし,取得しなければ悔いが残るものでした。厚生労働省の発表によると,2016年度の男性の育児休職取得率は3.16%で,これでも調査開始以来最高だということです。男性が産後の母親のケアのためにも,もっと積極的に育児休職を取得できる社会になってほしいと願わずにはいられません。

子どもたちの登園実績

子どもたちは最初,認可外保育園にお世話になりました。長女は生後8ヵ月から,次女は生後2ヵ月から,同じ保育園にお世話になっていました。その後,2人ともが2016年度4月に新設された認可保育園に通えることになり,現在までお世話になっています。昨今の保育園に関する報道などを見聞きしますと,都内に住んでいて,同じ保育園に通わせられている私たちは本当に恵まれています。しかし,子どもたちは体調を崩すので,保育園に登園できない日も多々あります。その場合,病児シッター・サービスを利用していますが,依頼しても,すぐにシッターさんが来られるわけではありません。シッターさんが来てくれるまでは,私か妻のどちらかが仕事を休むか遅らせるかという調整をせざるを得ません。妻は私が授業を休むと私も学生も補講をしなければならず,大変だろうと気遣い,仕事の都合をつけてくれたため,授業だけはなんとかこなせてきました(私:妻が1:3くらいの比率で仕事の都合をつけているでしょうか)。こうなると,自分たちも体調を崩しますし,毎日,スケジュール管理が気が気でなく疲労困憊です。

子どもたちがどれくらい登園できているかを示すために,次女が生まれた2015年度から2017年度までの登園日数を図1に示します。こうしてみると,次女が生まれた年は,長女でさえも,ほとんどの月で20日以上登園できていません。次女は,2015年12月にRSウィルスに感染し,ICUに3週間以上入院しましたので,この月はほとんど登園できませんでした。そこで,夫婦で話し合い,子どもたちが登園する日を減らし,登園率を上げるほうが,自分たちも無理なく仕事できるのではないかと考え,普段の勤務時間を短くし,当面の間は,週末の勤務や研究会・学会参加をやめることにしました。毎月の登園予定日数に対する登園日数を登園率として示したのが図2です。結果,年末年始は体調を崩すものの,登園率を劇的に改善できました。

図1 登園日数:毎月の登園日数は20日弱である
図1 登園日数:毎月の登園日数は20日弱である
図2 毎月の登園日数を登園予定日数で割った登園率
図2 毎月の登園日数を登園予定日数で割った登園率

現在,そしてこれから

今年4月から妻が新しい職場に異動になったこともあり,私は7時前に起床し,8時過ぎに自宅を出て,子どもたちの登園に付き添った後,電車で 1時間かけて出勤しています。週3日は16時半過ぎに職場を出て,子どもたちの降園に付き添っています。平日は遅い日でも19時半に帰宅するようにして,ほとんどの日は家族全員で夕食を取るようにしています。そのため,授業や会議の準備,研究活動を研究室でする時間がとれず,帰宅後,子どもたちが寝た後,あるいは早朝に仕事をするようにしています(疲れて寝てしまうことも多いですが)。家事や子どもの世話に関しては,昨年までは,私よりも妻にかかる比重が重かったのですが,今年度に入ってその比重が多少是正されています。今年も年末年始の頃に子どもたちが体調を崩すのではないかと,戦々恐々としていますが,どうなることでしょう。

最後に,私の妻も仕事と育児に関して,日本糖尿病学会の「キラリ☆女性医師!」というコーナーに寄稿しています。あわせてお読みいただけますと幸いです。

http://www.jds.or.jp/modules/education/index.php?content_id=71

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