公益社団法人 日本心理学会

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常務理事会から

教育研究委員会活動報告

現在,日本心理学会には12の常置委員会が置かれていますが,その一つに,私が常務理事として担当する「教育研究委員会」(遠藤由美副委員長)があります。この委員会はさらに四つの小委員会から構成されています。そして,それぞれの小委員長のもと,総勢25名の委員が「研究活動の促進や援助」「心理学教育の改善のための研究や資料収集」「心理学に関連する社会的問題の調査」など,公益社団法人として社会に向けたハイインパクトのある事業を担っています。以下に,各小委員会による昨年度から今年度にかけての主な活動内容を報告します。

講演・出版等企画小委員会(伊東裕司小委員長)では,公開シンポジウム(社会のための心理学,科学としての心理学シリーズ)を企画,開催しています。昨年度は,紛争,貧困,死,司法面接,共感する心,データ時代の心理学を考えるなど,身近なテーマを取り上げて,のべ12回各地で開催しました。いずれの会場でも,全国で活躍する認定心理士などのcitizen psychologistsが多数参加され,活発な議論が行われました。今年度も,「心理学で冤罪を防ぐ」や「認知症医療への心理学的貢献」,「消費者の心理をさぐる」といった時宜を得た社会的波及効果のある企画が計画,実行されており,好評を博しております。

「高校生のための心理学講座」は,昨年は北海道から沖縄まで全国14の大学で開催し,毎回将来の心理学者を目指す卵たち(?)が大勢出席してくれました。今年度は初めて,講座の開催について公募したところ,多数の大学から申し込みをいただきました。残念ながら,地区のバランスや開催時期などを考慮して,いくつかの大学にはお断りや日程調整をお願いすることになりましたが,お陰様で例年並みの規模で14の大学に開催していただくことになりました。この講座は,大学のオープンキャンパス時に開催されるなど,各大学の特色を生かした講座が組まれており,心理学の学問としての持続可能な発展の原動力になっていると考えております。

「心理学叢書」として,『心理学の神話をめぐって』(邑本俊亮・池田まさみ編),『病気のひとのこころ』(松井三枝・井村修編)と『心理学って何だろうか?』(楠見孝編)の3冊を誠信書房から刊行しました。3番目の叢書については,別の記事(「教育研究委員会 調査小委員会から」)で楠見孝小委員長が詳しく報告していますので,ご覧ください。

資料保存小委員会(サトウタツヤ小委員長)では,心理学の歴史的資料の保存・調査を継続的に担って活動しています。古典的実験機器類の調査・撮影を行い,学会ホームページの心理学ミュージアムの歴史館で公開しています。また現在まで,19名の名誉会員と終身会員の先生方にご協力いただいて,オーラルヒストリーの聞き取りとその記録化を行っております。日本の心理学ワールドを支えてきた著名な先生方の語りは,ダイジェスト動画として前述の歴史館にuploadされています。2027年には,日本心理学会は100周年を迎えることから,その記念事業の一環としても,ますます委員会のアーカイブ活動の重要性が増しています。

博物館小委員会(遠藤由美小委員長)では,毎年,心理学ミュージアム展示室に掲載する作品を公募し,応募作品から優秀作品賞授賞作品を選考し,大会前日に行われるプレコンベンション学術交流会(以前の会員集会)で授与しています。昨年度と今年度の最優秀作品賞は「暗いものが光る―グレア効果―」(小林勇輝制作)と「スポーツファンはなぜ熱狂するか?―内集団協力の説明原理―」(中川裕美制作)でした。

2018年4月にはWeb版心理学ミュージアムのデザインをリニューアルし,スマートフォンにも対応するなど,より作品を見やすく,検索しやすいサイトに改良しました。会員の先生方の講義資料や教材づくりのサービスに貢献しているのではと自負しています。近年の心理学研究の再現性の問題の議論を踏まえながら,展示室の陳列作品についても,さらなる充実を図っていきたいと願っています。

また,日本学術会議において,2022年からの高等学校の新学習指導要領における公民科目「倫理」「公共」に心理学の内容を導入する準備が始められています。高校への心理学教育導入を支援するため,本委員会でも検討を開始したところです。

(学術担当常務理事・久留米大学教授 津田彰)

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