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心理学キャンパス

明星大学

丹野 貴行
心理学部心理学科

丹野 貴行(たんの たかゆき)
所在地:東京都日野市程久保2-1-1
https://www.meisei-u.ac.jp/lp/psy2017/

Profile─丹野 貴行
明星大学心理学部心理学科准教授。専門は実験心理学,行動分析学。著書は『心理学に興味を持ったあなたへ:大学で学ぶ心理学 改訂版』(分担執筆,学研プラス)など。

はじめに

明星(めいせい)大学は,東京都日野市にキャンパスを構え約8000名の学生を擁する中規模大学です。1964年に理工学部が開学し,次いで1965年に,現在の心理学部の前身である心理・教育学科(心理学専修)を含む人文学部が設置されました。初代学科長である安部三郎先生以降,和田陽平先生,小笠原慈瑛先生,小川隆先生など,日本を代表する知覚・学習心理学者が本学の心理学を主導してこられました。また,1973年には戸川行男先生が着任され,臨床心理学の講座も開設されました。

そして2017年,心理学科は人文学部心理学科を母体とする改組改編により,明星大学心理学部心理学科へと新たに生まれ変わりました。骨太の基礎心理学,カウンセリングと発達支援の両面において充実した臨床心理学といった従来からの学科の強みを継承しつつ,社会心理学や産業・組織心理学の領域を拡充し,心理学を実社会で活かせる人材を育てるキャリア教育も始めました。新たな学部が目指すのは,「心理学の専門知識や技能で,社会とつながり未来を拓くことができる人材の育成」です。

写真1 明星大学の全景
写真1 明星大学の全景

教育

明星大学心理学部心理学科のカリキュラムは,良い意味で伝統的な心理学教育の理念を継承しています。まず1・2年生の必修科目として,どのような心理学の専門領域へと進むにせよ必要となる知識を習得させるべく,心理学概論,心理学統計法,心理学研究法,心理学実験,心理的アセスメントを配置しています。また学生はこの間,14名の専任教員が自らの専門領域を指導する基礎科目(知覚・認知心理学,健康・医療心理学など)のすべてを受講します。

そして3・4年生は,上記の14名の教員が指導するゼミのいずれかに所属し,必修である卒業論文の執筆を目指します。このような必修科目・基礎科目の学びと並行して,学生は,関連領域についての発展科目(少し昔で言うところの「特殊講義」),公認心理師関連科目,あるいはキャリア形成科目などを,各自の進路に適した科目を自ら選択して学ぶことができます。

専任教員の専門領域は,基礎系心理学として知覚,学習,神経,発達,比較,また臨床系心理学として精神分析学,人間性心理学,応用行動分析学,臨床発達支援,認知行動療法,パーソナリティ心理学,そしてこれらに社会心理学,産業・組織心理学などが加わり,心理学の多様な領域を学べる体制が整っています。

こうした学部教育を経て一部の学生は大学院へと進学します。本学大学院の臨床心理学コースは,日本臨床心理士資格認定協会の第1種指定大学院専攻コースとなっており,臨床心理学コースは,毎年度,外部からの入学も含め定員を充足しています。また本学では一般心理学コースも準備されており,こちらに進学し心理学の基礎的な研究を進めていく学生もいます。

学部と大学院が連携して,2018年度より公認心理師への対応も開始しました。これにより,臨床心理学コースはもちろんのこと,一般心理学コースの大学院生にも,公認心理師資格取得への道が開かれたことは,特筆すべきでしょう。

明星大学心理学会

明星大学心理学部の一大イベントが,2018年度で13回目を数える「明星大学心理学会」です。ここでは心理学部の全学生と教員が一堂に会し,4年生は4年間の学びの集大成としての卒業論文を,そして3年生はそれに向けた中間報告を,それぞれポスターや口頭により発表します。また1・2年生はこうした発表に直に接することで,「学会」という場を体験しつつ,自分が3年生以降どのゼミに所属しどのような研究を行うのか,実例から学ぶ機会となります。本心理学会ではこれに加えて,大学院生による発表や(本学は後期博士課程も設置しており,昨年度も1名に対して博士号が授与されました),記念講演として教員による研究成果の発表も行われており,研究の実際の姿が学生に伝えられています。

教育研究設備

写真2 行動分析研究館
写真2 行動分析研究館

こうした学部・大学院の教育を支えるのが,明星大学の充実した教育研究施設です。基礎系心理学の施設として,防音が施され一部はシールドルームも備えた汎用的な実験室が11室,視覚実験室と聴覚実験室がそれぞれ1室,BIOPAC,サーモグラフィ,脳波計,光トポグラフィといった装置を備えた電気生理実験室が2室,そして工作室を備えています。また臨床系心理学の施設として,臨床検査実習室が4室,心理面接実習室が3室,プレイルーム,観察実習室,箱庭用具を備えた臨床・心理技法実習室,そして院生演習室を各1室備えています。また,これらの設備と同じエリアに各ゼミがゼミ室を有しており,学生は実験遂行や卒業論文執筆のために自由に使うことができます。

この他に,基礎系心理学の施設として,約50羽のハトの飼育設備と11台のオペラント箱を備えた行動分析研究館があります。ここでは,教員や大学院生,卒論生が日々研究を行うとともに,2年生必修の「心理学実験」において,すべての学部生に動物実験を体験させる取り組みも行っています。また臨床系心理学の施設として「心理相談センター」と「発達支援研究センター」が設置されており,大学院生の教育に役立てられています。大学院生には,各自の専用デスクを配置した院生室を提供しています。院生室は,教員研究室と同じエリアに配置されているので,授業時間外でも指導が受けやすい環境が整えられています。

進路

学生の進路選択は,他大学の心理学部と大差はないと思われます。多くの学生は一般企業への就職を,また一部は公務員や特殊な専門職を,あるいは大学院進学を選択します。明星大学は東京都の多摩地区に根ざした大学であり,その近辺での就職を希望する学生も多いようです。私たちが心理学部として新たに取り組み始めた「心理学を活かしたキャリア教育」が,心理学を実社会で活用できる人材の輩出というかたちで実を結ぶことを期待しています。

おわりに

─心理学の本当の姿を伝える

最後にもう一つ,私たちが力を入れている取り組みについてご紹介します。

心理学に関わりのある皆様はご存知の通り,心理学は人気の学問である一方で,一般に知られている心理学と大学で学ぶ心理学との少なからぬ乖離が,多くの学生が大学入学後に困惑する事態をもたらしています。そこで私たちは,オープンキャンパスを入学前教育と位置づけ,「大学で学ぶ心理学」の実像を伝える努力をしています。模擬授業においてブレンターノやスキナーにも触れているのだと言えば,私たちがどれだけ本気でこれに取り組んでいるのかが分かっていただけるでしょうか。また,模擬授業だけでは当然時間が足りませんので,心理学科教員が協力して簡潔な入門書を作成し,それをオープンキャンパスで配付しています。さらには,その入門書を読んでくれた受験生に,さらに深く学ぶ機会を提供するために,同じく心理学科教員により『心理学に興味をもったあなたへ:大学で学ぶ心理学(改訂版)』という書籍を,明星大学心理学科編として2016年に出版しました。こうした地道な活動により,心理学の実像をきちんと理解し,それを学ぶ準備が整った学生を本学に迎え入れられるよう努力しています。

写真3 オープンキャンパスの様子
写真3 オープンキャンパスの様子

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