公益社団法人 日本心理学会

詳細検索

心理学ワールド 絞込み


号 ~

執筆・投稿の手びき 絞込み

MENU

刊行物

心理学キャンパス

福岡女学院大学

坂田 和子
人間関係学部子ども発達学科

坂田 和子(さかた かずこ)
所在地:福岡市南区曰佐3-42-1
https://www.fukujo.ac.jp/university/

Profile─坂田 和子
福岡女学院大学人間関係学部子ども発達学科・大学院人文科学研究科発達教育学専攻教授。専門は発達心理学。著書は『教育心理学(教職エクササイズ)』(分担執筆,ミネルヴァ書房)など。

はじめに

福岡女学院は1885年,米国人女性宣教師ジェニー・ギールにより,福岡初の女子専門の教育機関英和女学校として創設されました。1921年に制服として採用したセーラー服は,諸説ある発祥元の一つとして名前が挙がります。

現在本学院は,幼稚園,中学校,高等学校,大学(3学部・短期大学部),看護大学,大学院を擁し,キリスト教主義に基づいた女子教育を行う総合学院として,134周年を迎えます。看護大学以外は,全て福岡市南区の曰佐キャンパス内にあります。「改革と伝統が共存する福岡女学院——地域貢献を大切にする学院」を2018年学院年間目標に,大学は「つながり」を重要なヴィジョンに掲げています。

写真1 本学 曰佐キャンパス
写真1 本学 曰佐キャンパス

大学人間関係学部

1999年に開設した人間関係学部は,心理学科と子ども発達学科で構成されています。心理学科は臨床心理士や公認心理師の受験資格取得をはじめ,心理学の幅広い学びとそれによる社会貢献を志向しています。他方,子ども発達学科は,保育士・幼稚園教諭・小学校教諭・特別支援学校教諭養成を目的とし,主に教育や福祉の場などで地域に貢献しています。本学部では,人としての在り方を「こころ」と「子ども」の視点から見つめ,人との触れあいやつながりを大切に,人と社会について幅広く学びます。自分らしさを活かしつつ,社会や周りの人を支える人として,生涯を通じて豊かに成長し続けていくことができる存在へ。「共に喜びをもって生きる」ことを,さまざまな角度から学びます。いずれの学科も心理学をベースとした教育課程になっています。

心理学科

心理学科では,心理的問題について理解・対処する力を育む「臨床心理」,企業・組織に関わる人間の心理を学び,自身のキャリア形成につなげる「キャリア心理」,他者と関わる力を磨く「人間関係」の3コースが用意され1学年100名の学生たちが学んでいます。

心理学科の特長の一つは実践的な学びです。1年次の『心理学プロジェクト演習』では都市銀行や航空会社と連携し,実社会での課題とその解決策を分析し,企業に直接提言します。入学後すぐに実社会で必要な技能に直に触れ,高い就業意識をもって2年次以降の学びと自身のキャリア形成に臨めるよう,注力しています。3年次の『フィールドワーク(臨床)』では,保健医療,福祉,教育の3分野の施設をフィールドとし,専門家の指導の下で「チームアプローチ」と呼ばれる支援法を実践しています。このような実習を通して,一年次前期の『臨床心理学概論』から学び続けた臨床心理学の知識を実践的な技能へと昇華させることを目的としています。また3年次の『専門演習』(ゼミ)ではこれまで学んだ知識を活用し,「市の交流人口を増やす」などの地域振興策を実践し自身の研究水準を高め「九州心理学会」でその成果を発表しています。これにより心理学的な視点から課題を分析・解決し,その成果を社会に発信・還元する力の育成を目指しています。

心理学科のもう一つの特長は本学大学院臨床心理学専攻との連携です。療育医療センターや被災地での支援活動とともに,大学院進学ガイダンスや学内入試特別枠での受験制度など,進学希望の学部生が早くから大学院での学びの支援を得られる体制を設けています。この結果,例年多数の学部生が進学し,臨床心理士と公認心理師の両資格の取得を視野に,心の専門家としての一歩を踏み出しています。

写真2 心理学科の地域支援活動
写真2 心理学科の地域支援活動

子ども発達学科

私が所属している子ども発達学科は,学年学生定員120名,専任教員は18名で,そのうち心理学担当教員は赤間健一准教授(教育心理学),毛利泰剛講師(臨床心理学),筆者(発達心理学)の3名で,うち2名は臨床心理士です。

子ども発達学科は保育者・教員養成を主目的とした学科ですが,学びの中核は子ども理解に向けた『心理学』の学びと,広く子どもや子どもを取り巻く世界を捉える『子ども学』です。

中核の一方である『心理学』の学びは,「心理学概論」「発達心理学Ⅰ・Ⅱ」「子どもの発達と学習の心理学」「発達・教育相談の基礎」「発達・教育相談の方法と実践」「子ども理解の心理統計法」などにより,子どもの内面と行動を科学的に理解するとともに,発達支援の実践者としての学習経験を積み重ねる構成となっています。

また一方の『子ども学』の学びは,「子ども学概論」「子ども学フィールドワーク」「子ども学観察演習」「子ども学フィールド演習」「子ども学総合演習」であり,それらを踏まえ,子ども学の集大成となる「卒業研究」で4年間の学びを発表します(卒業論文等は学科行事“ミッションチャイルド”でポスター等発表します)。

本学科の特長である『心理学』と『子ども学』両面からの学びは,子どもや子育て理解に必要となる人間理解を保障する組み立てとなっています。人間の生理的メカニズムや視覚の構造・機能について体験的に学び,子どもを取り巻く世界を多角的・多面的にとらえて多様な価値観を共有するための対話を重ねます。「みる」を重ねると「みる」が「診る」へ深化していきます。このように「みる」ことや「話す」ことの経験を重ねた学生たちは,進路として,保育者・教師などの専門職,大学院進学の他,航空業界など一般企業を目指し就職する学生もいます。

写真3 子ども発達センター観察室
写真3 子ども発達センター観察室

大学院人文科学研究科

本学には大学院3専攻(比較文化,臨床心理学,発達教育学)があります。臨床心理学専攻は心理学科,発達教育学専攻は子ども発達学科を基礎学科としていますが,それぞれの専攻には多様な学科出身の学生がいます。

発達教育学専攻

大学院発達教育学専攻は,教育学・心理学・特別支援教育学の3分野から,発達と教育の実践を支え開発していく学問として2015年に専攻開設しました。本邦初の修士号である修士(発達教育学)が取得できます。客員教授に内田伸子先生(お茶の水女子大学名誉教授:発達心理学,認知科学)を迎え,9名の専任教員で教育研究指導をしています。そして,学校心理士養成大学院として,多くの心理学科目を学んでいます。本専攻は,社会人や現職者の学び直しを開設趣旨に掲げています。ストレートマスターはもちろんのこと,保育士,幼稚園・保育教諭,小学校・中学校教諭,高等学校養護教諭,特別支援員,看護師,留学生の他,園長や主幹教諭など,所属している院生の経歴はさまざまです。所属している文化が異なるので,院生室はさながら異文化交流となっています。

また,毎年開催している『発達教育学講演会』,大学院3専攻持ち回りで3年に1度開催している『国際交流講演会』は,2015年に専攻開設記念としてハーバード大学のタイチャー氏を招聘し「脳科学から子どもの虐待」を,2018年度は福井大学子どものこころ発達研究センター教授の友田明美氏と内田伸子客員教授の『子どもの虐待と脳科学』を開催しました。これらの学際的な研究を受け,さらに『発達教育学研究会』で,多様な分野の研究者・実践者から学ぶ機会を保障しています。

本学の資源を活かした連携

本学は,同一敷地内に幼稚園,幼稚園教員養成大学・大学院がある,全国でも珍しい私立大学の一つです。緑豊かなキャンパスの中には,大学の施設である子ども発達センター,幼稚園の施設には子育て支援施設「森のおうち」と4月には桜が満開になる「どんぐり山」があり,特に地域貢献として行っている子育て支援で学生・院生・教員が協働・連携しています。

子ども発達センターは,子ども発達学科と発達教育学専攻の学びのシンボルとなっている建物です。観察室,子育て支援室,相談室があり,幼稚園と共同している子育て支援では,同室2方向から撮影される映像を,隣接している観察室で操作し,大学や大学院の観察法等授業で学ぶことができます。相談室には箱庭があり,教育相談の授業では模擬相談の場所となります。このような本学の施設や資源を活かして,今後さらに連携等展開していくことを計画しています。ぜひ大学ホームページをご覧いただけましたら幸いです。

PDFをダウンロード

1