心理学キャンパス
徳島文理大学
岡林 春雄(おかばやし はるお)
所在地:徳島市山城傍示180
https://www.bunri-u.ac.jp/faculty/human-life/psychology/
Profile─岡林 春雄
徳島文理大学人間生活学部心理学科教授。専門は認知心理学,認知科学。著書は『最新 知覚・認知心理学:その現在と将来展望』(金子書房)など。
大学の成り立ち
徳島文理大学は,村崎サイ先生が明治28年(1895年),徳島に私立裁縫専修学校を設立したところから始まります。NHK朝ドラ『あさが来た』(初回放送2015年9月28日)のヒロイン「あさ」(女性実業家・広岡浅子)と近い時代にありながら,「女性の自立」を唱えて教育を重視したのです。太平洋戦争の戦火に遭いながら,「他からの協力,他への協力なくして,『人間の自立』はあり得ない」(村崎凡人理事長)との考えから,村崎学園は建学精神を「自立協同」とし,現在,村崎正人理事長のもと,幼,小,中,高,短大,大学(9学部27学科),6大学院,3専攻科,そして,5研究所,1相談室を有する総合学園として発展してきています。
心理学科・心理学専攻の歴史
1966年,家政学部家政学科の中に心理学が誕生しました。1970年,児童学科になり,林勝造先生(PF-Studyで有名)のリーダーシップの下,1998年,人間発達学科の誕生とともに,大学院では家政学研究科・児童学専攻1期生が入学しました。1999年,児童学専攻に臨床心理学コースができ,臨床心理士養成2種指定校となり,2002年,臨床心理士養成1種指定校となりました。2003年,人間発達学科から心理学科に改名し,大学院も2005年,児童学専攻から心理学専攻・臨床心理学コースに改編されました。心理学科の誕生には,徳山孝之先生の功績がありましたが,これによって,四国で唯一の「心理学科」が生まれました。そして,四国で最初の「臨床心理士養成指定校」(笠井達夫先生の功績)になったのです。
心理学科の学び─三つのプロセス
心理学は人間の心の機能(知・情・意)とその表れである行動についての学問で,人間行動のあらゆる領域を対象としています。基礎的な生理的反応や知覚の領域から,カウンセリングや心理療法といった対人支援の領域,また,生産性の向上や組織運営のあり方といった産業領域での活用,地域社会や環境との関わりまで含めたコミュニティ心理学など非常に幅広い学問です。
そこで,心理学科では,卒業後の就職・進学に関連して資格取得という観点から三つの特徴ある目標指向プロセス(goal oriented process)を準備しています。
①一般企業,公務員等(心理標準プロセス) 人間関係が希薄になっている現代社会において,心理学を専門として学ぶこと自体が一般企業で,また,公務員として好印象を持たれることは間違いありません。そして,心理学全般の基礎的知識・能力を認定するものとして「認定心理士」と「心理学検定」があります。これらを取得しながら,大学を卒業して,心理・福祉関連業種に就職することが可能で,毎年,多くの卒業生が県庁,市役所,銀行等々に就職しています。
②養護教諭一種免許取得(心理養護教諭プロセス) 養護教諭は児童・生徒の心身の健康を担う教諭です。心理学科では特に「こころ」の健康に貢献する養護教諭の育成を目指しています。教育現場では,不登校やいじめなど心の問題を抱えた児童・生徒への支援が保健室の大きな役割になっており,身体的な知識に加え,心理学の専門性が必要とされているのです。今年,現役で徳島県養護教諭に合格したのは,本心理学科の学生のみでした。
③大学院進学と資格取得(心理専門職プロセス) 公認心理師に関して,本学科では,スタッフならびに実習先確保に万全を期し,養成を始めました(写真2)。臨床心理士については,指定大学院修了が受験資格とされており,本学は学部から大学院に直結する良い環境にあると言えるでしょう。徳島県の主要病院・施設での心理専門職,高知県スクールカウンセラー等々,本学の卒業生が働いています。
現在のスタッフ(敬称略)青木宏(担当:心理学研究法他;法務省出身),岡林春雄(認知心理学他;病院臨床,米国大学出身),小板清文(犯罪心理学他;法務省出身),高橋宏之(心理療法演習他;法務省出身),藤崎ちえ子(心理検査法他;スクールカウンセラー出身),中津達雄(感情・人格心理学他;法務省出身),山崎暁子(精神医学他;精神科医),渡邊悟(臨床心理学特論他;法務省出身),貴志知恵子(健康相談活動他;養護教諭)等々となっており,司法・犯罪分野を手厚くカバーするとともに,刑務所や鑑別所に学生を連れて行っています。また,世界レベルでの心理学の動向に詳しいのも現在のスタッフの特徴です。
心理学に興味をもつ人たちに
心理学に興味をもつ人が多いことはうれしいことですが,人間関係がうまくいかず,「自分のことは隠し,他者の心を覗き見る」手段が心理学という考えは間違っています。心理検査の実施目的も「やっぱりこの人は変だ」と決めつけるのではなく,「この人は抑うつ性が高いのだが,一緒に,どのように対処していけばよいのか」を考えるところにあります。心理学は,自分と他者(すなわち,あなたが生きている世の中)との相互作用を研究対象にしています。相互作用という関わりが大事なのです。自分が出さなければ,他者も出してくれません。
受け身的な被害者感覚(無視された,のけ者にされた,等々)が先行すると正常な判断ができなくなります。感情と認知は相互作用があり,ある事象のとらえ方にも思い込みが入ってきます。思い込みで突っ走り,他者や自分を傷つける前に,日頃から自分の思いを出し,他者の思いを聞き,関わりをもつことによって,もっと楽しく有意義な生活を送ってください。心理学は,関わりをもつ方向へのベースをあなたに考えさせてくれるでしょう。
おわりに
現在,日本の大学の心理学科は,国家資格・公認心理師を意識しています。公認心理師に求められているのは,現場で使うことができる応用能力です。高等学校教育に沿っていえば,「PISA型の学力観─応用型の学力」が必要になってきているのです。私の著書『最新 知覚・認知心理学』(金子書房)でも,知覚・認知心理学の基礎をしっかり押さえながらも,認知行動療法や教育現場のスキーマ利用などの応用の話題について検討しています。「心とは?/生きているとは?」という問題提起から始まる心理学は,前述したとおり,最終的には人間関係/対人関係という関わりに行きつきます。
若者諸君,心理学は面白いですよ。機会があれば,関心のある大学のオープンキャンパスに顔を出してみてはいかがでしょう。各大学のホームページにオープンキャンパスの日程は載っています。最後に,徳島文理大学・在学生から皆さんへのメッセージを載せておきます(囲み談話)。徳島文理大学には,四国4県,沖縄の他,全国から学生が集まっています。高校までとはまったく違った学び舎の風土を愉しんでください。
在学生からのメッセージ
高校の時,スクールカウンセラーの方と関わりがあり,それが公認心理師(臨床心理士)をめざすきっかけになりました。先生の紹介で本学を知り,実際にオープンキャンパスに参加して入学を決めました。
本学の心理学科には,公認心理師を目指す人だけではなく,臨床心理士や認定心理士,養護教諭など様々な目標を持つ学生が集まっています。私は,犯罪分野での就職を考えており,鑑別所見学では,矯正施設の特徴から想像よりも明るい印象をうけました。
仲間たちとの交流は新たな発見を得るためのよい刺激となり,より広い視野で物事を捉えられるようになりました。加えて,何か困り事がある時は力になってくれる教職員が多くいるというのも自慢です。
他にも,部活動やボランティアといった様々な社会的活動に参加する機会が豊富にあることも魅力であると感じています。
(3年・吉岡利菜さん談 岡山県出身)
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