視覚心理学が明かす名画の秘密
三浦佳世
私たちは眼を開ければ世界が見えると思っている。しかし,見ている世界は記憶や予測を重ね,再構成されたものである。だから,眼を開けた瞬間に意味ある世界が広がって見える,というのはとても不思議なことなのだ。こうした見ることの秘密を追求してきたのが視覚心理学や認知心理学である。
一方,視覚の秘密を異なる方法で探求してきたのが,画家や写真家たちである。彼らは奥行きや質感,動きだけでなく,美しさや魅力,違和感や不快感を伝えるにも工夫をこらしてきた。心理学者もまた,そうした印象がどのように喚起されるかを検証してきた。
このような画家の試みと心理学者の研究をつき合わせ,見方・感じ方について考えたのが本書である。したがって,「名画の秘密」は「視覚の秘密」でもある。
70点を超える作品はすべてカラーで印刷されている。絵画や視覚に関心がない人にも,心理学の知識のない人にも,手にとってもらえたらと思う。ひょっとすると,見方・感じ方が変わり,考え方が広がるかもしれないから。
小中学生のための障害用語集
みんなに優しい学校と社会を願って
柘植雅義
障害があってもなくても,共に学び共に生活していくインクルーシブな学校や社会の実現をめざすことが,国際的な流れとなってきています。その際には,障害のある子どもや大人自身が努力して自らの成長を促すと共に,周りの環境の成長も重要です。
本書は,種々の障害のある子どもと共に教室で学ぶ他の子どもが,障害について幅広く学ぶための用語集です。小学生の低学年にも分かるような文章表現にすると共に,漢字には,表紙も含めて,全て読み仮名を振りました。大人向けの用語集や辞典等は多々出版されていますが,子ども向けは,おそらく初めてではないでしょうか。
巻末には,知能検査や点字の開発者の紹介,障害のある人で世界的によく知られた活躍している人の紹介,さらには,問題集もつけてあります。
共に学ぶ級友が,障害について必要な知識や技能を身につけ,障害のある子どもの良き理解者や支援者となって,やがては,この国が,世界中が,みんなに優しい学校と社会になっていくことを願って。
言葉と数式で理解する多変量解析入門
小杉考司
本書の構成は「言葉で理解するパート」と「数式で理解するパート」に分かれています。
多変量解析がどういうものなのかというイメージを掴むこと,これが言葉パートの目的です。統計ソフトウェアが出してくる結果について,どこをどのように読めば良いか,それがどういう意味なのかを理解するために,なるべく平易な言葉で説明しました。ではなぜそのような読み方をするのだろう? なぜそのような指標が意味あるものとして利用されるのだろう? こうした一歩進んだ疑問に答えるのが数式パートの目的です。R2の値がなぜ回帰分析の時に報告されるのか,固有値が1.0以上の因子を共通因子とするのはどういう意味があっての基準なのか,そうした根拠を解説します。
階層線形モデルやベイズ統計モデリングといった新しい技術が心理学にも導入されてきました。ユーザとして,学ぶべきことが非常に多くなったように思います。そんな今だからこそ,統計モデルのメーカとユーザの間を,細やかなグラデーションで繋げたい,という思いで書いた一冊です。
基礎心理学実験法ハンドブック
坂上貴之
辞典や事典の編纂と同じく,ハンドブックの制作もまた,学会の会員の紐帯を強く広く鍛える効果があるように思う。日本基礎心理学会の創立30周年を機に編まれた,このハンドブックもそうした効果を齎したとすれば,ややもすれば学協会からの会員離れが話題に上る昨今の状況の中で,ささやかな抵抗を試みたことになる。
制作にあたって責任編集委員会でいろいろなアイデアを出しあった。ある委員は,一つの実験法は様々な研究トピックスと関連しているから,マトリックスでこうした姿を表現したいねと提案された。私は私で,実験法は長い歳月をかけて洗練されてきたのだから,進化の系統樹で実験法間の関係を描いてみたいと言った。いずれも残念ながら実現はしなかったが,心理学の魂ともいうべき方法論への熱い想いが,その会議の討論の中にはあったのである。
朝倉書店のHPには本ハンドブックの序文が,基礎心理学会のHPには発刊のお知らせが載っている。それらをご覧になることで,私たち基礎心理学徒の熱い想いが伝わって頂ければうれしいのだが。
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