日本の部活
文化と心理・行動を読み解く
尾見康博
部活ってヘンだ,おかしい,ってなんとなく感じていましたが,在外研究中にアメリカでの課外スポーツの現実を見て,自分も完全におかしな側にいたことに気づかされました。当地の課外スポーツ(「部活」ではない!)の指導はユルユルで,コーチが子どもたちに甘すぎるように見えたのです。当地に2年以上滞在したこともあって,当地のやり方にすっかりなじんでしまったのですが,それゆえに帰国後は大変。部活顧問が生徒を怒鳴り散らすたびにやりきれない思いが。追い打ちをかけるように,部活での体罰事件がさかんに報道されたり,過去に自ら受けた体罰を積極的に受容する学生が多いことを知ったり。そんなこんなで,いてもたってもいられず,自分が国内外で見てきた光景とイライラを描けないか,という思いを形にしたのがこちらになります。この本では,文化心理学の体を装いながら,部活は日本独自のものであり,部活には日本文化が凝縮されている,って言い募っています。ちなみに「部活動」ではなく「部活」としていることにも意味があります。気になる方は是非!
ワードマップ 応用行動分析学
ヒューマンサービスを改善する行動科学
島宗 理
心理学の主流派とは真逆のアプローチをとりながら,“知る人ぞ知る”成果をあげてきた応用行動分析学(ABA)の研究法を解説しました。ヒューマンサービスでベストプラクティスを提供するためには個人差への対応が欠かせません。そのためにはエビデンスがある既存の技法を学ぶだけではなく,目の前の問題を解決する方法を見つける方法,つまり効果がある行動変容プログラムを開発する研究法の習得が重要です。応用行動分析学ではこれが行動と環境のユニバーサルな記述単位であり,行動の諸法則であり,データに基づいて評価と改善のサイクルを回していくシングルケースデザイン法です。ABAは自閉症の療育法の一つではないのです。本書では,地雷を見つけるネズミの訓練,乳がんの早期発見プログラム,万引き防止など,多様な領域における研究や実践も紹介しました。
実践に直結する心理学のアプローチを学びたい心理学徒や他分野の専門家,これまでなんとなく気になっていたけどそのままにしてきた心理学者の皆さまにもご一読いただければ幸いです。
計算論的精神医学
情報処理過程から読み解く精神障害
国里愛彦
現在の精神医学は,疾病分類が生物学的知見に基づいていない,生物学的知見と臨床症状の間に説明のギャップがあるといった問題を抱えています。このような問題を解決するためには,生物学的知見と臨床症状を上手くつなぐモデルが必要になります。生成モデルは,脳の情報処理から行動や症状などが出力される過程をモデル化したもので,脳と行動・症状をつなぐモデルとして使えます。この生成モデルを精神障害研究に適用する研究領域は計算論的精神医学と呼ばれ,精神医学の問題の解決に有用ではないかと期待されています。本書では,精神医学研究の問題点の整理,計算論的精神医学の枠組み,代表的な生成モデル(生物物理学的モデル,ニューラルネットワークモデル,強化学習モデル,ベイズ推論モデル),各精神障害での研究事例を解説しています。計算論的アプローチに馴染みのない臨床家の方にも読みやすいように説明を工夫し,神経科学・情報系の研究者の方には具体的な臨床像がイメージしやすいような工夫をしました。楽しんで読んでいただけましたら幸いです。
本当にわかりやすい すごく大切なことが書いてある ちょっと進んだ 心に関わる 統計的研究法の本(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ)
吉田寿夫
一度に5冊の著書を上梓しましたが,これらは,拙著『本当にわかりやすい すごく大切なことが書いてある ごく初歩の統計の本』とのセットで,シリーズ本と言えるようなものになっています。統計教育の現状や実際の心理学的研究において散見される様々な問題事象を鑑みて,自明でお節介で口やかましいなどと思われそうな基礎・基本的な事柄について確実に理解してもらうために書いたものです。研究を行う際や研究法について学ぶ際の望ましいであろう態度の育成,各分析法の意味(意義と論理)についての確実な理解,自他の研究に対してクリティカル・シンキングを働かせる態度や能力の育成,統計に対する絶対視・過大評価の抑制,「心に関わる研究」という文脈を考慮した知識の形成,日常生活に役立つ知識の形成,などといったことを重視して書きました。取り上げている分析法は新しいものではありませんが,「これまでの本では,こんなことまでは(&こんなにわかりやすくは)説明していなかった」と思っていただくための工夫を随所でしたつもりです。
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