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心理学キャンパス

聖徳大学

相良順子
児童学部児童学科児童心理コース

相良順子(さがら じゅんこ)
所在地:松戸市岩瀬550
https://faculty.seitoku.ac.jp/child-studies/

Profile─相良順子
聖徳大学児童学部児童学科児童心理コース教授・コース主任。専門は発達心理学。著書は『子どもの性役割態度の形成と発達』(風間書房),『保育の心理学』(共著,ナカニシヤ出版)など。

はじめに

写真1 キャンパスの中心にある広場
写真1 キャンパスの中心にある広場

聖徳大学がある松戸市は,上野から電車で20分,東京都と千葉県を隔てる江戸川を渡ったところにある東京のベッドタウンです。江戸時代から水戸街道沿いの宿場町として栄えました。

聖徳大学のキャンパスは,松戸駅から歩いて5分というたいへん恵まれた立地にあります(写真1)。丘の上にあり,駅に近い大型スーパーマーケットの5階から大学の校門へつながります。授業の開始前や終了の時間帯は,このスーパーのエスカレーターが聖徳大学の学生によって埋め尽くされます。事情を知らない人は驚く光景です。

聖徳大学の歴史は,昭和8年(1933年)に,創立者の川並香順によって聖徳学園,附属新井宿幼稚園として東京に設立された時から始まります。昭和40年(1965年)に松戸に短大が設立され,2代目の弘昭学長により三十数年間に附属小学校,附属中高,専門学校,短期大学,大学,大学院からなる学園に発展しました。現在,大学は,看護学部を含めた6学部から成る女子の総合大学となっています。聖徳大学は「和」の精神を涵養することを大切にしているためか,大学全体で行う行事が多く,たとえば,1年生の4月に2泊3日の箱根研修旅行,夏は,志賀高原研修旅行,3年生は海外研修旅行などがあります。また,シリーズコンサートといって,内外の一流の演奏や舞台を視聴する授業が全学の必修科目になっています。

児童心理コースは,本学で最も大所帯の1学年約500名から成る児童学科の七つのコースの一つで,1学年40名前後の学生がいます。平成2年(1990年)年に大学が開設された時から,児童学科には心理学を学ぶコースが作られていました。平成15年(2003年)に心理学科が開設されたことにより,児童学科の「発達臨床心理コース」は現在の「児童心理コース」と名称が変わりました。

児童心理コースの特徴:学生

児童心理コースのある児童学科は,基本的には,幼稚園教諭,小学校教諭,保育士といった幼児・児童の教育に関係する免許資格を目指す学生がほとんどです。児童心理コースも例外ではなく,卒業生の多くは保育士や幼稚園教諭として就職していきます。

児童心理コースは,「心理学を学び,子どもや保護者を支援できる先生になろう」を目標に掲げています。「明るく,まじめな学生が多い」と他大学からいらっしゃった先生方からよく聞きます。児童心理コースの学生は,児童学科共通の科目として,幼稚園教諭や保育士になるための課程に加えて,心理学の授業も履修します。もともと聖徳大学は,「保育の聖徳」といわれ,幼稚園教諭,保育士の育成では高く評価されています。保育系の技術には定評があり,特にピアノ演奏においては,入学時に全くの初心者でも卒業時には自信をもって子どもたちの前で弾けるくらいに上達します。このように保育系の演習や技術習得に追われることに加え,心理を学ぶのですから,学生は日々授業の課題をこなすことに精一杯です。特に2年生では,心理学基礎実験が必修で,学生たちは実験が終わるたびにレポートを提出しなければなりません。「2年生を乗り越えたら後はなんでもできる」と,3年生のゼミ生がたくましく言っていました。

写真2 3年生ゼミの様子
写真2 3年生ゼミの様子

3年生になると学生は,それぞれの教員のゼミに配属されます(写真2)。学生のほとんどが,卒業論文を3年ゼミの先生のもとで書くことになります。4年生になると就職試験などで忙しくなり,特に,公務員としての保育士をめざして試験を受ける学生が多いことから,「大学4年生の時に人生で一番勉強した」という学生がいました。児童心理コースでは,将来,幼児教育に従事する学生が多いので,カリキュラムとして発達心理学,教育心理学系に力を入れています。また,カウンセリングや特別支援教育関連など,子どもだけでなく,保護者支援にもつながる科目を重点的に含んでいます。在学中に児童心理コースの学生のほとんどがピア・ヘルパーを取得します。授業では,学生は真剣で,活発です。多くの学生が附属幼稚園,外部幼稚園,保育園,施設実習と2年生から複数の実習を経験しています。これらの実習を通じて実際に幼児と関わることが,学習への動機を高めているのかもしれません。

児童心理コースの学生は卒業後,保育園や幼稚園だけでなく,千葉県の上級公務員(心理職)や児童相談所の児童相談員になったり,また,銀行などの一般企業に就職する学生もいます。カウンセラーをめざし,聖徳大学の大学院児童学研究科や臨床心理学研究科に進学する学生もいます。そのため毎年,1月には4年生が自分の就職体験を2年生と3年生に披露する会を開いています。様々な経験をしてきた4年生の堂々とした話しぶりを聞いて,教員としては,その4年間の成長ぶりに感心する時でもあります。

児童心理コースでの目玉は,3年生のイギリス研修旅行かもしれません。私が大学に赴任したころは,大集団でイギリスに研修旅行に行くことに抵抗を感じたこともありますが,何より,団体ならではの経験ができ,学生の満足度が非常に高いのです。たとえば,ロンドンの精神分析で有名なタビストック・クリニックで,Margaret Rustinのような日本でも良く知られている心理療法家や精神科医の講演を聞いたり,地元の小学生と交流したりします。研修旅行の後は,学生たちの顔つきが違うような気がします。

児童心理コースの特徴:教員

学生に聖徳大学の児童心理コースの魅力は何か,と尋ねると,先生方が親身になって学生のことを考えてくれることだ,という回答を多く聞きました。クラス制ではありますが,担任だけでなく,3年生や4年生のゼミや授業を通して教員との関係を築き,教員との距離が近いことが学生の満足度を高めているようです。

教員の構成としては,齋藤有先生(発達心理学),鈴木由美先生(カウンセリング心理学),沢崎真史先生(カウンセリング心理学),小野瀬雅人先生(教育心理学),東原文子先生(障害児心理学),腰川一恵先生(障害児心理学)そして私,相良順子(発達心理学)です。メンバーからもおわかりのように,発達,教育,カウンセリング,障害児心理学を柱にしていますが,心理実験や研究法も組み入れられており,児童心理コースでは認定心理士の取得が可能なプログラムとなっています。学生からは,「ちょっと心理学に興味があるので入ってみたが,こんなにしっかり心理学を勉強するとは思わなかった」との声も聞きます。

大学院児童学研究科について

児童学研究科は,1998年に修士課程が開設され,22年の歴史があります。現在は,通学と通信の両課程から成り,それぞれ修士(児童学)が取得できる修士課程と博士(児童学)が取得できる博士課程を擁しています。通信課程では,大学院として全国で初めて博士後期課程が設立されました。入学者には社会人が多く,通学,通信課程で博士号の取得者の中には,他大学で学長をされている方もいらっしゃいます。児童学研究科は,心理学,教育学,保育学,保健学,福祉学,児童文化学という専門領域から成ります。そのうち,心理学を専門とする場合は,学校心理士や臨床発達心理士が取得できるカリキュラムになっており,教育や発達に関わる専門家として社会で活躍しています。聖徳大学の心理系の大学院には,2000年に設立された臨床心理学研究科もあります。こちらは,臨床の専門家を育成しており,臨床心理士,公認心理師の取得が可能です。

おわりに

聖徳大学の児童心理コースは,心理学を活かしながら,幼児教育のプロになろうとする学生たちのためのコースです。幼児教育の重要性が指摘される昨今,私たち教員は,将来,幼児教育の現場と心理の専門家との橋渡しができる人材になってほしいと強く願って学生と接しています。

聖徳大学のホームページに入り,「児童学科→児童心理コース」とお進みください。児童心理コースの学生の日々の様子をブログで見ることができます。ぜひご覧ください。

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