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常務理事会から

認定心理士資格認定委員会活動─シチズン・サイエンスプロジェクト

この原稿を書いている今は新型コロナウイルス感染拡大の勢いが少し収まり始めたとはいえ,会員の皆様におかれましては大変困難な時期を過ごし,対応に苦慮されているのではないでしょうか。心よりお見舞い申し上げます。

日本心理学会では流行の早い段階より,ホームページに「新型コロナウイルス対策〜心理学会からの情報提供」というバナーを掲げて,「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連」の特設ページを作成し,随時情報更新をしてまいりました(https://psych.or.jp/special/covid19/)。坂上理事長からのお見舞いメッセージをはじめ,緊急事態宣言に伴う本学会の対応についてのお知らせや厚生労働省等の確かな情報を提供してきました。世界各国の心理学会とも連携して,感染に伴って生じる諸問題への心理的支援法の知識とスキルに関する情報を会員のみならず広く国民に発信するとともに,心理的支援に関する国際比較の調査研究にも参画しています。これには,テレワーク状況下での事務局スタッフの努力もさることながら,広報委員会や国際委員会をはじめとする多くの委員の先生方の献身的なご協力のおかげと深く感謝しております。

令和元年6月から資格担当の常務理事を拝命しました。前期の常務理事会では,教育研究委員会の業務を担当していましたので,80余年の伝統と格式ある日本心理学会のアカデミアの部分だけを考える役割で済んでいました。しかし今期は,日本心理学会が今後100周年を迎え,持続可能な組織としてさらに発展していくために欠かせない,本学会の公益目的事業の柱となる認定心理士資格認定事業と資格取得者のキャリアを継続支援する活動という社会実装化に向けた重要な業務が中心となります。改めて,その任の重さを痛感しています。

ここでは,2年間の任期の折り返し地点として,認定心理士の現況について,シチズン・サイエンスプロジェクトを中心にご報告いたします。認定心理士の資格制度は1990年に誕生しましたので,今年はちょうど30周年の記念すべき年です。認定心理士の会運営委員会およびその支部会と協働した記念行事を考えていましたが,この状況で変更を余儀なくされています。現在,認定心理士の資格認定作業は,53名の委員で年6回,その前後に認定保留や再審査等の案件の検討を行う小委員会(大木桃代・小委員長)を年12回程度開催して行っています。昨年度の審査状況については,本誌48ページの「資格認定委員会より」で詳しく報告していますので,そちらをご参照ください。

高瀬堅吉先生(認定心理士の会運営委員長)を中心に,認定心理士が主役の「シチズン・サイエンスプロジェクト」が活発化しています。シチズン・サイエンスは,職業科学者ではない一般の市民によって行われる科学的活動を指し,世界的に拡大しつつあります。研究に参加する市民が科学の効用と限界を知ることができるだけでなく,研究に参加した市民の「新たなキャリアパス」としても注目されています。現在,日本心理学会で行っている「シチズン・サイエンスプロジェクト」は,認定心理士が持つ素晴らしい能力を社会に広め,認定心理士の新たなキャリアパスを切り拓くことを目指します。

これまでは,学会独自の取り組みとして行ってきましたが,今後は,神奈川県庁等の官公庁(未病指標のアプリのユーザビリティ調査)や電通等の企業(サイコロロジック・プロジェクト),シンクタンク等と認定心理士を活用したシチズン・サイエンスプロジェクトを共同で進める予定となっています。これまで以上に,社会に対して認定心理士の存在が認知されることになります。本学会の取り組みは,既に高い関心を持たれており,文部科学省科学技術社会連携委員会でも紹介されました。

今後,社会の様々なセクターと共同で展開される「シチズン・サイエンスプロジェクト」を通じて,認定心理士及び心理調査士の資格が新たなキャリアパスの一助となるよう努め,学術大会時の社会連携セクションでの発表やシチズン・サイコロジスト奨励賞の顕彰等の企画も合わせて,より一層,活躍の場を広げていきたいと思います。これらの取り組みを通じて,学会としても,認定心理士の方の省察的実践家(生涯学習,生涯研究のキャリアを継続)への支援に全力で取り組んでいきたいと思います。

(資格担当常務理事・久留米大学教授 津田 彰)

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