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若手の会から

当事者として語り合えることの可能性

今年の春は新型コロナの報道により触れられることが少なかったのですが,1月は阪神・淡路大震災から25年,3月は東日本大震災から9年,4月は熊本地震から4年が経ちました。今でもあの日のことをはっきりと覚えている方は多いのではないでしょうか。地震発生地域在住ではない人にとって,震災被害についての知識はあるものの実際に経験したわけではないということがいくつかあると思います。

私は最近海外で過ごす機会があったのですが,そこで利用したアパートメントの床が少し傾いており,在室中はまるでゆっくりと揺れる大型船に乗っているような感覚でした。震災によって生じた家屋の傾きで多くの方が不便な生活を余儀なくされたことが知られていますが,思いがけずその不便さを経験することになりました。ご存知の通り,日本は地震の多い国の一つですが,居住空間の傾きが人に与える影響について詳しく調査が行われるようになったのは1964年の新潟地震以降のようです。当時の様子を収めた写真には大きく傾いたマンションの廊下を住人が歩く様子も写っており,1度から8度も傾いた住居の中で生活していた住人は浮動感や傾斜側へ引っぱられるような牽引感,頭痛や疲労を覚えていたそうです。私は1度の傾きでも1週間違和感が続きましたから,被災者の方々がいかに大変な生活を送っていたのかと思いました。

そして,今現在,世界中の人々が新型コロナによる未曽有の事態を経験していますが,これだけ多くの人が当事者として語り合えることも初めてではないでしょうか。私たちはそれぞれの領域を超えて協力し合えると信じて,この経験を今後の研究に活かしていけるように若手の会の一員としても頑張っていきたいと思いました。

(若手の会幹事 宮坂真紀子)

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