ここでも活きてる心理学
マーケティングリサーチと心理学
白井美穂(しらい みほ)
Profile─白井美穂
2012年3月博士号(社会心理学)を取得後,リサーチャー,アナリストなどを経て,2018年11月に「LSa」開業。主な事業内容はマーケティングリサーチおよびマーケティングに関する研究活動。
社会心理学との出会いは,大学1年のときに履修した「社会心理学概論」という授業でした。自分でも驚くくらい聞き入っていたのを,今でも鮮明に思い出すことができます。当時は「面白い授業だな」としか思っていなかったのですが,結果的にはこれがきっかけで大学院へ進むことになったので,ささやかな出会いが人生を大きく変え得るということを実感しています。
一歩踏み込んで,当時の自分がなぜ社会心理学の授業をとても面白いと感じたのかを考えてみると,帰属理論による説明が,自分の頭の中にあったモヤモヤとしたものをスッキリと説明できるように思えたことと,人間そのものを客観的に,しかし直視するということが,新鮮に感じられたからだと思います。大学院では帰属理論をベースとして,裁判員裁判に関する研究をおこないました。方法論としては主に,質問紙による調査や実験をしていました。
社会人になってからはいくつかの企業を経験しましたが,大半の時間を,調査会社のマーケティングリサーチャーとして過ごしてきました。マーケティングリサーチというのはやや広い概念ですが,私のメインの業務は市場調査,その中でも,ウェブ調査と呼ばれるものが,担当していた案件のほとんどでした。調査というだけあって,業務の流れや手順としては,大学院生のときにおこなっていたことと,かなり近いものだと感じます。
たとえば,クライアントが抱える課題をヒアリングし,その課題の解決へ向けた調査をおこなうため,調査票を設計し,その内容を調査画面にして,アンケートサイトの登録者であるモニターへ向けて配信・回収し,データの集計や分析をおこない,結果をレポーティングします。案件には様々な部署の社員が関わり,協力して進めていきますが,リサーチャーがメインで担当するのは,調査票の設計,データの分析,結果のレポーティングの部分です。
マーケティングリサーチは,大きく言えば,顧客のことを知るためにおこなうものです。リサーチをおこなって顧客を理解することが,マーケティングの成功につながるからです。顧客理解の中には,「顧客の心理を把握する」という目的も含まれます。現場においても「心理」というワードが日常的に飛び交う業界です。
現在は個人事業主として独立し,会社員のときとは少し異なる視点でマーケティングリサーチに関わっています。屋号であるLSa(エルサ)という名前は「Laboratory for Social psychology &」の略で,これまでの経験や知見を様々なプロジェクトでコラボさせていく中で,顧客と一緒に自分自身も大きく成長したいという願いを込めて命名しました。
独立したことは,もちろん自分自身で決めたことなのですが,間接的には,会社員のときに個人事業主の方々と一緒に仕事をする機会が多かったからかもしれません。半ば無意識ではあるものの,やはり身近な人の影響というものを受けていたのだと思います。
独立してからは,これまでに関わりのなかった業界の事業主の方々ともやり取りする機会が増え,業務だけではなく率直な雑談の中にも,勉強になる事柄はたくさんあるのだと感じています。現在は新しく得た知識と,これまでの視点の融合を目指しています。
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