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常務理事会から

コロナ禍からの学会活動:編集関連業務から

日本心理学会での編集関連業務担当となって2年目,全体像が少しわかりかけてきた2020年度は「こんなことが本当に起こるのか」と思うようなことが様々に起きてきた一年でした。

とりわけCOVID–19パンデミックについては,「世界各地で,同時に同じ問題に直面している」ことに気づき,文字通り今まさに「世界」が変わる現場に立っているとの思いをもった頃から,「今,心理学研究者/心理学会は,何をすべきなのか/何ができるのか」という問いに向き合うこととなりました。また,その頃から多くの会員の皆様からも,ご意見やお問合せをいただくようになりました。

社会へ向けての情報発信

たとえばアメリカ心理学会(APA)では,パンデミック下の生活で「知っておいてほしい心理学の知見」や心理学としての取り組みを一般の人向けにわかりやすくまとめた記事を,学会サイト上に次々と公開していきました。本学会でも,広報委員会でこうした心理学からの情報を様々に集めて情報発信をしていただきました(https://psych.or.jp/special/covid19/)。しかし,「さぁ編集関連委員会としては何ができる?」となると,「日本心理学会として,今すぐに目に見える何かを実現することは困難」という現実の壁にぶつかりました。

そんな中で,まず「心理学ワールド」誌では,APAのように新たな記事を書くことは人的・時間的資源の制約から難しい,しかし既存記事の中から「これは関係があります,お役に立ちますよ」というものをまとめて,わかりやすい形で見せていく取り組みはできるのではないかという意見が出て,心理学ミュージアムの担当委員の皆さまとも協力してワーキンググループを構成し,上述の「新型コロナウィルス感染症(COVID–19)関連ページ」 の中に,「心理学ワールド & 心理学ミュージアム新型コロナウィルス感染症(COVID–19)関連記事およびコンテンツ」(https://psych.or.jp/special/covid19/pw_pm_covid19/)を立ち上げていただきました。「ストレスと心」「オンライン学習・研究」「情報の真偽と判断のゆがみ」「偏見と差別」のテーマごとに関連記事がまとめられ,またそのテーマと新型コロナウィルス感染との関係についても簡明に説明がついている内容は,社会の様々な方々にご覧いただいています。

パンデミックを「研究」する

パンデミックは数週間のオーダーでは終わらない,しかも人の生活や文化を持続的に大きく変えていく事態だとの認識が確固たるものになる中で,「こうした状況に,研究者として正面から取り組むこと,それを推進していくことこそが学会として成すべきことではないか」との考えから,常務理事会主導での新たな研究助成の提案・公募と「心理学研究」特集号の論文募集を並行して始めることとなりました。研究助成については,短期間の募集であったにも関わらず,予想をはるかに上回る99件もの応募が寄せられ,見通しが立てられない学会としての財政状況の中で,何件までだったらどのくらいの助成金を出せるか,ギリギリのラインを求めての議論を経て,15件の採択が決まりました。採択に至らなかった申請にも興味深い,また今後のことを考えると大切なテーマを取り上げた研究提案が多々あり,「それでも選択しなくてはいけない」ことは本当に難しく,また残念で,審査にあたった常務理事全員が複雑な思いを感じていたことも申し添えさせていただきます。

「心理学研究」刊行以来初の特集号(第92巻 第5号,2021年12月号刊行予定)「新型コロナウイルス感染症と心理学」は,今まさに続々と論文が投稿されてきています。こうした「特集号を組むことによる,心理学からの社会への発信」も,今後の学会活動の在り方につながる新たな試みとして考えています。なお,同時期に当学会英文誌Japanese Psychological Researchでも「健康と文化」という特集号テーマを掲げて論文募集を始め,こちらにもCOVID–19関連の研究が集まってきています。

これらの研究成果が実際に社会の目に触れるまでには,今しばらく時間がかかります。しかし数年後「あの時は大変だったね」と振り返る頃に,「でも『今この社会の中で生きる』心理学研究者コミュニティとして,できる限りのことをがんばった」と胸を張れるような活動にしていきたいと考えています。どうかこの後もご支援ご協力のほどよろしくお願いいたします。

(編集担当常務理事/筑波大学教授 原田悦子)

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