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心理学キャンパス

淑徳大学

中坪 太久郎
総合福祉学部実践心理学科

中坪 太久郎(なかつぼ たくろう)
所在地:千葉県千葉市中央区大巌寺町200
https://www.shukutoku.ac.jp/

Profile─中坪 太久郎
淑徳大学総合福祉学部実践心理学科 教授。専門は臨床心理学。著書に『幸せになるための心理学ワークブック』(編著,ナカニシヤ出版)など。

はじめに

淑徳大学は1965(昭和40)年に,社会福祉学部社会福祉学科の単科大学として開学しました。学祖,長谷川良信の教えである「利他共生(Together with him)」を建学の精神とし,これが現在でも教育の理念として掲げられています。この利他共生は,大乗仏教の精神に基づいており,「他者に生かされ,他者を生かし,共に生きる」という意味を持っています。

利他共生の教えは,元々は福祉教育の理念として用いられていたようですが,教育,心理,医療など,さまざまな専門職教育を行うようになった現在の淑徳大学においても,対人援助における支援者の態度を表現するものとして利用価値が高いものだと思います。特に,臨床心理士や公認心理師の養成プロセスにおいて,「for him(彼のために)ではなく,Together with him(彼と共に)」という考え方は,心理士がクライエントと相対するときの心の持ちようを学生に伝える言葉として,さまざまな心理療法との相性も良いものだと感じています。

単科大学として始まった淑徳大学ですが,現在は,千葉に2つ,東京,埼玉,の4キャンパスがあり,総合福祉学部,コミュニティ政策学部,看護栄養学部,経営学部,教育学部,人文学部から構成されています。法人としては,幼稚園・保育園から,小中高校,大学,大学院,そして実習先にもなっている特別養護老人ホームがあります。お寺の中にキャンパスがありますので,まさにゆりかごから墓場までといった感じです。

キャンパスの特徴

現在のところ,淑徳大学の中で心理学を専門に学べるのは「実践心理学科」となっており,千葉キャンパスの総合福祉学部の中に位置づけられた学科です。キャンパスは千葉県千葉市中央区大巌寺町にあり,町名が示すとおり大巌寺というお寺の境内に大学があります。大学の構内からお寺につながっているため,少し人混みを避けて静寂が欲しいときには散歩に行くことができます。

最寄り駅はJRの蘇我駅で,ディズニーランドに行くときに乗る電車の終点駅になります。蘇我駅周辺は旧川崎製鉄の城下町として発展してきたようですが,若い人はジェフユナイテッド市原・千葉のホームスタジアムや,JAPAN JAMの会場としてのイメージの方が強いかもしれません。京葉線と総武線が乗り入れていることもあり,学生は,千葉県内だけでなく,都内からも通うことができます。ひとり暮らしの学生も大学周辺だけでなく,千葉駅の近くや,少し電車に乗って船橋や津田沼などから通っている人も多い印象です。

キャンパスの様子
キャンパスの様子

実践心理学科の特徴

「人間開発,社会開発に貢献する人材の育成」を目的とすると謳っているように,淑徳大学では実学教育が主となっています。社会福祉士,精神保健福祉士といった社会福祉領域の専門職に加えて,教員,看護師,栄養士など,さまざまな専門職教育が行われています。

その中で実践心理学科においては,公認心理師および臨床心理士への進路を想定し,大学院と連携した教育,人材育成が行われています。「実践」という名が示すとおり,淑徳大学の心理学科は応用の心理学に特化したカリキュラムおよび教員構成になっています。具体的には,臨床心理学,発達心理学,社会心理学を中心とした,講義・実験・実習が開講されています。

臨床心理学領域を中心に学ぶ学生は,公務員の心理職や大学院に進学して臨床心理士および公認心理師として働くことを想定していることが多く,社会心理学領域を中心に学ぶ学生は,卒業後一般企業に就職することを想定していることが多いようです。一方発達心理学領域を中心に学ぶ学生は,福祉領域で心理学を活かした仕事に就くことを考えている場合が多いようです。これは,大学がこれまでに福祉領域に多くの卒業生を輩出していることで就職先に恵まれていることに加えて,「淑徳大学発達臨床研究センター」という附属機関での実習が行えることとも関連しています。ここでは,主に発達につまずきがあるお子さんに対して,「感覚と運動の高次化」という療育方法を用いた支援が行われています。このセンターでは大学院生も実習を行っており,実習に携わった卒業生や修了生が全国の療育機関で活躍しています。

実践心理学科がある総合福祉学部は,社会福祉学科,教育福祉学科の3学科から構成されていますが,それらの学科が学部での資格取得を目指したカリキュラム構成になっているのに対して,実践心理学科のみが長らく学部での専門職資格の取得がない状態が続いていました。その分,心理学の研究活動に精力的に取り組んできたこともあり,量的・質的を問わず,研究活動を学科全体でオープンに議論する文化があります。4年生の最後には卒業研究発表会があり,全員がポスター発表を行いますが,そこに教員および在学生が参加をして,学科全体での研究交流を行っています。現在は公認心理師の資格取得のためのカリキュラムが整備され,これまで同様の卒業研究発表に向けた取り組みや進路選択のための活動に加えて,資格に関連した実習や演習の講義も多くの学生が履修しています。

卒業後の進路と大学院

実践心理学科を卒業した学生の進路としては,一般企業,福祉関連施設,法務省や自治体などでの心理職,大学院進学,などがあります。特に千葉県の心理職については,学部や大学院の卒業・修了生が,児童相談所などに多く配属されています。

大学院としては「総合福祉研究科心理学専攻」があり,例年学部から10%前後が進学しています。公認心理師資格取得のためのカリキュラムが整備され,臨床心理士の第一種指定校となっていることから,ほとんどの院生は修士論文の作成と資格取得に向けた実習に取り組むことになります。

学内には「心理臨床センター」があり,大学院生の実習機関として,地域の方々の相談を受けています。2019(令和元)年の総面接回数は1,246件となっており,この地域のメンタルヘルスの維持・向上のための施設として認知されてきたといえます。大学院生はスーパーヴァイズを受けながら,カウンセリング,プレイセラピーなどを担当します。学外の実習機関としては,精神科病院,乳児院,児童養護施設,療育施設,中学校,教育相談,特別養護老人ホーム,などが契約施設となっており,大学院生は自身の関心のある機関で長期の実習をし,終了後はその成果を報告することとなっています。

また,大学院修了後も研修生制度を設けており,スーパーヴァイズを受ける,カンファレンスに参加する,などの機会があります。加えて,例年公開講座と事例検討会を開催しており,事例検討会ではこれまでの修了生と在学生が一日かけて事例を基にディスカッションを行います。さまざまな世代の関係者が交流する機会ともなっており,修了後のサポートの重要性も感じています。

卒業研究発表会の様子
卒業研究発表会の様子

おわりに

大学進学を機に生まれ育った場所から離れることを考えている人もいるでしょう。どこで暮らすかは,人の幸福にも関わる重要な選択になり得ます。その意味で,蘇我という土地はなかなかおもしろい選択だと思います。まず,成田空港を利用して行こうと思えばどこの国でも行けます。また,東京駅まで特急で33分,快速で42分,乗り換えなしで行けます。そのため,新幹線を使って全国に行くことができます。

実際,地元を離れて進学した人に理由を聞いてみると,「都会に住みたいけど,都内に住むのはちょっと…」という方が結構います。そういう人が卒業後は都内の会社に就職したりします。こういう方をみると,やはり人が環境を変えるにはそれなりの準備が必要なんだということを思ったりします。

暮らすには準備の時間が欲しいけど,都内にすぐ行ける手段は残しておきたい,そんな人には淑徳大学実践心理学科の4年間は検討の余地があると思います。福祉の大学らしく,ボランティア活動や地域交流に大学全体が力を入れており,多様な人々と関わるためのチャレンジの機会も多くあります。都会の喧騒から少し離れたまちで,心理学にどっぷり浸かる,そんな4年ないし6年間に関心が出てきた方は,大学のwebサイトをチェックしてみてください。

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