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私のワークライフバランス

今のところ,なんとかなってます

大須 理英子
早稲田大学人間科学学術院 教授

大須 理英子(おおす りえこ)

Profile─大須 理英子
博士(文学)。ERATO川人学習動態脳プロジェクト 研究員,ATR 脳情報研究所運動制御・機能回復研究室 室長,ニールセン・カンパニー合同会社 コンシューマーニューロサイエンス ディレクター等を経て現職。専門は認知神経科学。

二人のお子様が大学生となり,育児が一段落された大須理英子先生。環境の変化にたまには流されても,「自由なキャリアパスを描くこと」の大事さに思いがいたったこれまでの生活を振り返っていただきました。

昨年度,子供が二人とも大学生となり下宿生活を始めました。お金はまだガンガン出ていくものの,「子育て」はコンプリートした感が満載で,ワークライフバランスの点でも大きな節目を迎えました。頭の中で「子供」が占めていた割合が激減し,時間の所有権が戻ってきたように感じます。折しも成人が18歳に引き下げられ,親としての社会的責任も放免されました。これからは介護とのバランスなど新たなステージに入ることを感じつつ,開放感を味わっています。

表1 私のキャリアパス
表1 私のキャリアパス

キャリアパスの表を書くというリクエストに,自分の過去を振り返ってみましたが,まわりのみなさまと運に支えられていることを改めて感じています。私が高校生の時に男女雇用均等法が施行され,学部時代はバブルの絶頂期であり,同期は女性も含めいわゆる日系大企業に軽々と就職していきました。しかし大学院に進むという天邪鬼も意外と多く,私もその一人でしたが修士の時にバブルが崩壊。できたてで知名度の低かった学振DC1に運良くもぐりこみ,またATRに赴いたことで私の研究人生がスタートしました。出産と保育園期にERATOやATRに所属していたことは,大学勤務とは違い自分で研究時間をアレンジできるという点で大変なアドバンテージだったと思います。一方で,育児休業がなかったので産休後即保育園,今でも娘からは,うちの親は2ヶ月から保育園に入れた不届きものだと冗談を言われます。

大きな変化は,長女が小学校に入学する時期に合わせて,家族で東京に移住したことでしょうか。夫が先に東京に異動しており,上司の言葉に甘えて,ATRに所属しながら東京で研究をするという特殊な形態となりました。幸運にも,9月転居にもかかわらず,二人とも同じ保育園に入ることができ,区の担当者に奇跡ですからね,と念を押されました。同じ保育園でも奈良は若いママが多かったのですが,東京は私と同年代か年上のママも多く,いわゆる雇用均等法第一世代というのが印象的でした。

「ワーク」では,短い期間ですが外資系企業で働いたことは,刺激的でした。なんといっても管理職の半分以上が女性ですから,意思決定も男社会的忖度がありません。日系大企業と取引をした時,先方から説明には日本人男性をとの指定があったのですが,こちらは女性か外国人しかいない,という笑えない笑い話もありました。

「ライフ」で特筆すべきは,くじ引きで娘の高校のPTA副会長を引き当ててしまったことです。幸いにも直前の役員さんが効率化,オンライン化を推し進めておりなんとかなりましたが,PTAという理不尽な組織の存在(Pが悪い訳でもTが悪い訳でもないのですが)を存分に味わいました。

私は,結果的に結婚して子供を持つという選択をしましたが,それが正解だったかはよくわかりません。折しもRegretting Motherhood『母親になって後悔してる』(新潮社)の邦訳が出版されましたので,胸に手を当てて考えたところでは,後悔はしていないけれど,うまく「母」の役割を果たせたかどうかは大いなる疑問符です。私のまわりには,結婚しない人,結婚しても子供を持たない人が多数おり,同窓会などでも,既婚子持ちは意外と少数派です。皆さんも,既定路線にとらわれることなく,たまには流されつつも自由なキャリアパスを描いていただけるとよいなと思います。

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