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若手の会から

現実はいつも「若手の」対話から生まれる

─わたしは心って,もっとホリスティックなものだと思うの。言葉でなんて表現しきれない,全体的で,直観的なものでしょ?

─いやいや,それじゃあなにも説明できてないよ。俺は心はもっとこう,システマティックに説明できると思うんだ。

─はあ,わたしたちって,わかり合えないわね。  タイトルは,心理学に社会構成主義を取り込んだガーゲンの著書『現実はいつも対話から生まれる:社会構成主義入門』からのオマージュです。わたしたちは日々,他者と対話しながら生きています。雑談でもなく議論でもなく,そこで敢えて対話を選択するのは,両者が,両者なりの正しい“真実”を表そうとしているからでしょう。分断が多い世の中ですが,対話を経てうまくいけば,それぞれの真実は“わたしたちの真実”にめでたく昇華されます。しかし,これがなかなかうまくいかない。冒頭のように,両者はプライドを持って自分の信念をぶつけているわけで,そうそう簡単に折れたりはしません。もしくは,既存の権威関係や同調圧力などで,そもそも相手にぶつけることすらできていないのかもしれません。

そんな現実を打破するためにオススメできるのが,わたしたち若手です。若手なので,まだまだ己の“真実”の牙城は脆く,ナラティブ変容の余地があります。また,幸か不幸かそれほど業績もなければ有名でもなく,ゆえに,若手同士は皆フラットな関係です。対等な立場で正直な対話を通して,学問として,あるいは研究環境としての心理学のリフレーミングに貢献できることと信じています。冒頭のやり取りには,実は,続きがありました。

─わたしたちって,わかり合えないわね。でも,すごく楽しい。“わたしたち”が納得できる,新しい真実を一緒に見つけていきましょ。

(若手の会幹事 阪口幸駿)

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