理事長挨拶
唐沢 かおり(からさわ かおり)
このたび,日本心理学会の理事長を拝命いたしました,唐沢かおりです。これからの2年間,どうぞよろしくお願いいたします。
心理学は,今日ますます細分化・専門化が進み,多様な分野へと広がっています。そのようななか,日本心理学会は,異なる専門性を持つ研究者・実践者が集まり交流する貴重な場となっています。多様性は時に対話の難しさを伴う可能性があるかもしれません。しかし,それこそが学問の豊かさであり,心理学の未来を切り拓く力になると信じています。
心理学に対する社会の期待も年々高まっています。人の心を科学的に解明する研究の学術的成果,また,様々な社会課題の解決に資する実践的知見の蓄積と社会への還元は,心理学が専門知として担う重要な責任です。会員各位の研究活動を支えるとともに,こうした社会的要請に応えるためにも,学会の諸事業の円滑な運営を心掛け,心理学以外の学問分野との交流の活性化,さらには国際的な場でのアウトリーチ活動にも取り組んでまいりたいと考えております。
一方で,すでにお伝えしている通り,学会の財政は,楽観的な運営を許さない状況にあります。前期常務理事会では,皆様の活動支援の一部凍結を含む厳しい判断をするに至りました。このような状況に対して,会員各位からいただいたご理解に深く感謝いたします。学会としての基本的な活動にはしっかりと取り組みつつ,メリハリのある運営方針で,学会の財政の立て直しと,学会活動の活性化を両立させるべく,努力する所存です。
学会が取り組む課題は多岐にわたります。ホームページにおける挨拶1にも記しましたが,年次大会や学術刊行物,認定心理士制度をはじめとした,学会が取り組んでいる諸事業の安定的運営,MOU2締結学会との交流,中等教育での心理学教育支援,ダイバーシティや倫理的問題への対応など,どれも重要なテーマです。さらにその背後には,心理学に対する一般の人々の理解を深めるとともに,学問に対する社会的信頼の維持,向上という大きな課題も存在します。これらに関する取り組みの多くは,学会内に設置されている委員会活動が担っており,多くの会員の皆様のご尽力なくしては成り立ちません。
まだまだ至らない点もあるかと思いますが,皆様が学会の活動に関心を持ち,共に歩んでいただけることを願っています。ご意見をうかがいながら,日本の心理学の発展に向けて,力を尽くしてまいりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
- 1 https://psych.or.jp/about/#message
- 2 Memorandum of Understanding:覚書

Profile─唐沢 かおり
1992年,京都大学大学院文学研究科博士課程中途退学。Ph.D.(University of California, Los Angeles, Department of Psychology)。日本福祉大学情報社会科学部助教授,名古屋大学大学院環境学研究科助教授などを経て2010年より現職。専門は社会心理学。著書に『社会的認知:現状と展望』(編著,ナカニシヤ出版),『なぜ心を読みすぎるのか:みきわめと対人関係の心理学』(単著,東京大学出版会),『〈概念工学〉宣言!:哲学×心理学による知のエンジニアリング』(共編,名古屋大学出版会)など。
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