公益社団法人 日本心理学会

詳細検索

心理学ワールド 絞込み


号 ~

執筆・投稿の手びき 絞込み

MENU

刊行物

特設ページ

11. ガイドライン8: 法制度の異なる地域間での実践(Guideline 8: Interjurisdictional Practice)

法制度の異なる地域間や国家間でクライエントや患者に遠隔心理サービスを提供する際には,関連するすべての法律や規則を熟知し,遵守することが,奨励されます。


根拠:

遠隔でのコミュニケーション技術の急速な進歩に伴い,自覚的にせよ無自覚的にせよ,心理士が法制度の異なる地域や国家間で心理支援サービスを提供することが,現実的になってきています。心理士が新しい情報技術の利点を活かして提供するこのようなサービスは,心理士やクライアント・患者が一時的に管轄地域外にいる場合から,心理士が法制度が異なる地域でサービスを提供するような場合まで多岐にわたります。アメリカの国防総省(Department of Defense)や退役軍人省(Department of Veterans Affairs)のような機関では,法制度が異なる地域や国家間で心理支援サービスを提供するための内部指針や手順がすでに確立されています。しかし,これらの機関の外で心理士がサービスを提供する際に適用される法律や規制は,州,地域,区域,国によって異なります(APAPO, 2010)。心理士は,自分やクライアント/患者がお住まいの地域における遠隔心理支援サービスの提供に関する法律や規制に精通し,必要に応じて対応するために,適切に努力しなければなりません。

実践への適用:

心理士は,情報技術を利用した専門的な心理支援サービスを,法制度が異なる地域や国家間で提供することに関する法律や規定があることを知っておく必要があります。法律や規制が,どのような行為を遠隔健康支援サービスや遠隔心理支援サービスとみなしているのかを,理解することが推奨されます。さらに,専門家の資格要件,対象となるサービスや通信の形態,インフォームド・コンセントにおいて提供しなければならない情報などについて,確認することが求められます。司法権利管轄区域によって,遠隔情報技術を利用したサービスの提供に対して,特別な要件が課されている所とそうでない所があることに注意する必要があります。APAPO(2010)は,心理士が単独のサービス提供者と認められている地域もあれば,多様な提供者グループの一員とされている地域もあり,さまざまであることを報告しています。また,遠隔情報技術を介したサービスに関する法律の対象となるサービスの種類や,情報技術にも多様性があります。

現時点では,遠隔情報技術を利用した心理支援サービスの提供を規定する具体的な法律がない地域も多く存在しています。そのような地域で遠隔心理支援サービスを提供する場合には,関連する管轄機関や他の専門資格認定機関が発表した意見書や声明文を参考にすることが推奨されます。

遠隔の情報技術の利用が急速に増加しているため,心理士は,法制度の異なる地域間での遠隔心理支援サービスの提供に関連する資格や実務の要件の新設や変更について,最新の知見を更新するよう努めています。医療専門職の価値観の多様性や,現在の連邦政府の優先順位を考えると,複数の地域にまたがることで生じる心理士の資格要件に関する問題の解決は重要な課題であり(引用例:FCC National Broadband Plan, 2010, Canadian Agreement on Internal Trade 1995),今後,法制度の異なる地域間での実践のために,心理学関連団体が遠隔心理支援サービスの資格要件を設定する可能性があります。例えば,看護師は,資格を取得した地域に関わらず異なる地域で,対面でもしくは遠隔での実践が可能な資格制度になっており,現在,アメリカの多くの地域でそうした制度が受け入れられています。ASPPB(The Association of State and Provincial Psychology Boards: 州の心理学委員会)のワーキンググループは,このような資格制度を実現するために,推奨事項の草案を提案しています。