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7. ガイドライン4: データ・情報の守秘義務(Guideline 4: Confidentiality of Data and Information)

遠隔心理支援サービスを行う心理士は,クライアント・患者に関するデータや情報の機密性を保護・維持するために相当な努力を要します。必要に応じて,心理士は遠隔でのコミュニケーションのための情報技術の使用によって機密性が損なわれるリスクが増すかもしれないことをクライアント・患者に知らせます。


根拠:

遠隔でのコミュニケーションのための情報技術の使用とテクノロジーの急速な進歩は,心理士がクライエント・患者の機密を保護する上で,他に類を見ない課題となっています。遠隔での心理支援を提供する心理士は,そのようなテクノロジーを利用する前に,守秘義務に対して生じうるリスクを学びます。心理士は,クライアント・患者に関するデータと情報の機密性を保護・維持するセキュリティ対策を行う必要があります。そのため,必要に応じて,心理士は専門家から適切なコンサルテーションを受け,遠隔でのコミュニケーションのための情報技術の知識を増やします。

守秘義務に対して生じうるリスクとしては,検索エンジンの使用やソーシャル・ネットワーキング・サイト(以下SNS)への参加に関する検討が挙げられます。他の課題としては,心理士が用いている確立されたセキュリティ対策に対する不適切もしくは不注意な違反から機密データや情報を保護すること,心理士の検索エンジンの使用やSNSへの参加の結果として生じる可能性のある境界線の問題などが挙げられます。さらに,心理士のインターネットへの参加は,クライアント・患者や他の人に発見される可能性があり,それによって専門的関係性が危うくなる可能性があります。

実践への適用:

心理士は,サービス提供中に起こりうる機密データや情報へのアクセスや開示のリスクや守秘義務の限界点について理解し,クライアント・患者に伝えます。例えば,心理士とクライアント・患者との間の電子通信(電話や電子メールなど)にアクセスされるリスクがあり得ます。また,心理士は,クライアント・患者の個人情報をオンラインで積極的に検索することの倫理的・実践的な意味合いを理解します。心理士は,そのような検索活動についてクライアント・患者と話し合うことの可否や,検索から得られた情報がどのように利用され記録されるかについて慎重に検討します。なぜなら,このような情報を文書化することは,心理士にとっての適切な行為の境界線を犯すかもしれないからです。さらに,心理士は,そのような関係に取り組む前に,遠隔でのコミュニケーションのための情報技術の使用により,クライアントや患者との間に二重の関係が生じる可能性があることのリスクと利点を比較検討することが推奨されます(APAPO, 2012)。

仕事とプライベートの両方でSNSを使用している心理士は,プライバシーや守秘義務に対して生じうるリスクについて再検討・学習し,これらのリスクを軽減するために利用可能なすべてのプライバシー設定の使用を検討することが奨励されます。また,どのような電子的コミュニケーションであっても,公開されるリスクが高い可能性があることを念頭に置きます。したがって,適切な法律,規制そしてAPA倫理規定(APA, 2010)に従うことで,そのようなリスクを軽減し,クライアント・患者に関する機密データや情報を開示しないようします。