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COVID-19の流行時に,遠隔健康支援サービスを放棄することが心理学の実践家に意味すること
(What the COVID-19 telehealth waiver means for psychology practitioners)

By Tori DeAngelis 2020年3月18日

原文はこちら

    日本語訳(協力:日本心理学会広報委員会)
  • 田中 恒彦(新潟大学)
  • 竹林 由武(福島県立医科大学)

訳者注:以下の情報の多くはアメリカの医療保険制度に基づくものであり,現時点で日本にそのまま適用できるものではございません。


COVID-19の流行時に,遠隔健康支援サービスを放棄することが心理学の実践家に意味すること

アメリカには65歳以上の人が加入できる医療保険サービス「メディケア」があります。公的な緊急時の法律とガイドラインには、メディケア受給者が公衆衛生上の緊急時に自宅で治療を受けられるように、心理士が遠隔健康関連サービスを提供する能力を一時的に拡大できるよう定められています。

訳注1:本ページで遠隔医療と表記されている箇所は原文では telemedicine ではなく telehealth という単語で表記されています。 telehealth は疾患の治療(medicine)のみに限定されない健康関連サービス全般を指す用語ですが,本文の記載内容の多くは医療行為(medicine)に関係するものであるため,日本語での読みやすさを考慮し,telemedicine の訳語である遠隔医療を telehealth の訳語にあてました。


For-psychology-practitioners

3月6日に議会で新しい法律が可決しました。それによって,メディケア受給者を支援する心理士は、COVID-19による公衆衛生にかかる緊急事態の間は,柔軟に遠隔医療を提供することが可能になりました。

2020年コロナウイルスへの準備と対応のための追加予算メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)が3月17日に発表したガイドラインに基づいて,CMSは遠隔医療についての主要な要件のいくつかを免除しています。そのため,メディケア受給者は,より少ない制約の中で自宅からサービスを受けられます。

訳注2:メディケア・メディケイドはアメリカの公的医療保険サービスです。


以下に新しい法律や手引きについて知っておくべきことをご紹介します:


―メディケア受給者は自宅で支援を受けることができるようになりました。

この法律では,メディケアの「起点となる場所」の要件が一時的に解除されました。もともとメディケア受給者は,クリティカルアクセス病院,農村部の診療所,連邦資格のある保健センターなど,メディケアが承認した特定の場所でのみケアを受けることができました。新法の下では,受給者は,緊急事態が発生した時いつでも,自宅や医療施設で遠隔医療を受けることができます。

また,連邦政府が指定した「医療提供者不足」の地域でのみ遠隔医療を提供することができるという要件も一時的に解除されました。それによって,この危機の間,医療提供者が免許を取得している管轄区域内のどこに住んでいても(それが都市部であれ郊外であれ地方であれ)メディケア受給者は,サービスを受けることができるようになっています。


―医療提供者がどのような場所から遠隔支援を行うのかについては,現時点では制限されていません。今後明確にする必要があります。

新法のもとでは,サービスの提供者が遠隔支援を行える場所または推奨される場所について明示されていません。アメリカ心理学会(APA)は,心理士が自宅から遠隔医療を提供できるか,CMSに確認中です。情報が入り次第,すぐにお知らせします。


―心理士は音声およびビデオ機能を有効にしたスマートフォンを活用できます。

新法では,サービスの提供者はPCで行うのと同じように,スマートフォンを使って遠隔医療を提供することが出来ます。ただし,その場合は,双方向によるリアルタイム通信を可能にする音声とビデオ機能を利用しなければならないとAPAの法務・規制政策担当ディレクターであるデボラ・C・ベイカー氏は述べています。従来の固定電話や携帯電話といった通話機能のみを使用した遠隔治療については,メディケアが適用されない場合があります。もちろん通話のみのセッションは合理的かつ倫理的に適切ではありますが,現時点ではメディケアでは適用となっていません。通話のみのセッションにも適用されるように,APAは引き続き提言していきます。


―HIPAAのルールが一時的に緩和されます。

米国保健福祉省は,「施行の裁量」を行使しました。そして,この危機的な時期に,遠隔医療を患者に提供する人に対して,医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令(HIPAA)に違反した場合の罰則を免除しています。米国保険福祉省によると,こうした免除の背景には,一般的に通院できない時期に,サービスの提供者が必要な治療を容易に行えるようにするが目的があるそうです。実際,メディケアを受給している患者に支援を行う合理的なものとして,SkypeやFaceTime,その他の非準拠の遠隔医療プラットフォームを具体的に挙げています。


―監査が一時的にストップします。

新法には,過去3年間に,サービスの提供者がメディケアに対して保険請求した患者に遠隔医療を限定すべきであると規定されていますが,CMSの手引米国保健福祉省は,提出された請求書については,サービスの提供者と患者の支援期間についての監査を行わないとされています。言い換えれば,その支援が初診患者に対して行われたのか,再診の患者に対してだったのは不問に付すということです。新法の下では,遠隔医療は,危機が訪れる以前と変わらず,対面での訪問と同じ金額が払い戻されます。したがって,心理士は,適切なCPT®コード(訳者注:各医療処置に対応した記号帳)を使って,通院時と同じ方法で,遠隔医療にかかった費用をメディケアに請求する必要があります。今回の健康上の緊急事態における遠隔医療の請求方法とメディケアの新しいe-Visitの適用範囲についての詳細は,我々のウェブサイトの拡大された適用範囲を参照してください。

アドボカシーアクション

残念ながら,新しい法律が適用されるのはメディケア受給者にのみです。APAは,心理士が遠隔医療にかかる費用が適切に払い戻され,緊急時に質の高い遠隔医療を提供するために必要な情報とサポートを得ることを保証するために,追加の措置を講じています。以下のような措置が含まれます。


―民間保険会社,州の規制当局,州知事に向けて,APAと各州の心理学会が共同で提出するアドボカシーレターの作成

書簡では,民間保険会社に対し,すべての提供者を対象としたビデオ会議を無制限に認めること,通話のみのサービス,専門家間のコンサルテーション,既存の遠隔医療の適用の障壁を取り除くことなどを求めています。さらに,この書簡では,医療の継続性を確保しウィルスのさらなる蔓延のリスクを避けるために,遠隔医療の適用範囲が限定されている,あるいは全く適用されていない州に対して,制限を撤廃するよう促しています。APAはまた,遠隔医療の利用可能性と適用範囲について,支払者が早急に,サービスの提供者と患者を教育するよう求めています。


―遠隔医療によるセッションの実施方法やサービスの受け方についての患者やサービスの提供者のための実践的で使いやすいチェックリストの作成

これらのチェックリストは、オンライン上でも公開されています。


―CMSと協力

心理学検査または神経心理学的検査を含めた遠隔医療の充実のために,CMSと協力していきます。


「長期的には,APAの実践とアドボカシーに関するリーダーは,緊急時だけでなく,必要な状況ではいつでも,より広範な遠隔医療を提供できる心理士の権限の拡大を主張し続けるだろう」APAの議会および連邦政府との関係及びとパートナーシップに関するシニアディレクターであるローレル・スタイン(JD)はこのように後押ししています。

APAは今後も会員の皆様に動向をお知らせしていきます。コロナウイルス危機に対応するための政府や支払者の政策は急速に変化しているので,COVID-19のウェブページを頻繁にチェックするようにしてください。


法律問題は複雑で,事実特定性が高く,国家固有の問題です。これらの問題には,この記事では提供できない法的な専門知識が必要とされます。さらに,APAおよびAPA Services, Inc.の弁護士は,会員または州協会に対して法的アドバイスを提供しませんし,また提供することもできません。本記事の情報は,法的助言として依拠すべきものではなく,また,意思決定を行う前に個人的な法的助言やコンサルテーションの代わりとして使用すべきものではありません。

この記事は,アメリカ心理学会(American Psychological Association: APA)公式Webサイトに掲載された記事 "What the COVID-19 telehealth waiver means for psychology practitioners" を,アメリカ心理学会の許諾を得て日本語に翻訳したものであり,翻訳の質や正確さの責任は日本心理学会広報委員会にあります。なお,この記事をAPAの許諾なく複製・再配布することを禁止します。ご紹介くださる際は,必ずこのページを引用して下さい。

This material originally appeared in English as [American Psychological Association (n.d.). What the COVID-19 telehealth waiver means for psychology practitioners. https://www.apaservices.org/practice/legal/technology/covid-19-telehealth-waiver?_ga=2.69728592.19580886.1584930983-1733436113.1579244153]. Copyright 2020 by the American Psychological Association. Translated and Adapted with permission. The American Psychological Association is not responsible for the quality or accuracy of this translation. This translation cannot be reprinted or distributed further without prior written permission from the APA.