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  3. ニューズレター 2018 年度 No.2

The Japanese Psychological Association News Letter

vol.07

あけましておめでとうございます。2016年4月1日に設立された認定心理士の会も、会員のみなさまのご協力、ご支援のおかげをもちまして、このたび3度目の新年を迎えることができました。この間、日本心理学会は、毎年3,500名前後の資格を認定し続け、昨年12月31日の時点の累計で58,858名の認定心理士が生まれています。認定心理士の会には、毎年500名前後のみなさまに会員登録いただき、同時点の会員数は3,941名となっています。

日本心理学会から新年のご挨拶を申し上げるのは2017年以来となりますが、その年の9月19日には、認定心理士の会運営委員会が日本心理学会の常置委員会として設置され、その会を中心にして幹事会と各支部会の役員の方々のご尽力により、この間、北海道から九州・沖縄までの全国で、毎年10数件のシンポジウム、セミナー、講演会、ワークショップなどのイベントを主催・共催してきました。多くの認定心理士の会の会員のみなさまにご参加いただき、認定心理士としての資質の向上に向けたご研鑽にお励みいただき、また、社会のさまざまな場面、立場でご活躍の認定心理士のみなさまの間で活発な情報・意見交換をしていただきました。役員のみなさま、ご参加いただいた会員のみなさまには、この場をお借りして御礼申し上げます。

これらのイベントに地理的、時間的にご参加いただけない会員のみなさまからのご要望を受けて、インターネット会議を利用した「Net de 交流! 認定心理士」も企画してきましたが、昨年8月22日には、オンライン支部会を9番目の支部会として正式に設置し、この企画を活発化させてきました。日本全国の会員のみなさまだけでなく、はるばる(という言葉はネットの世界では死語かもしれませんが)カナダやフランスからご参加いただいた会員のみなさまに感謝申し上げます。

昨年は、日本の心理学界で大きな変化がありました。9月9日に公認心理師法に基づく第1回の公認心理師試験が実施され、35,020人が受験し、11月30日には27,876人の合格者が発表されました。臨床心理士をはじめとする、さまざまな心理関連諸資格のなかにあって、日本心理学会の認定心理士資格の位置づけや意義については、これまでもさまざまに模索、議論がなされてきたところですが、公認心理師国家資格の設置を受けて、それらがいまいちど問い直されなければならなくなっていると存じます。

認定心理士の会では、このような模索や議論のなかで、昨年にはシチズン・サイエンス・プロジェクトを始動させ、認定心理士のみなさまとアカデミアの研究者がいっしょになって心理学の研究を推し進めていく場を提供しようとしています。また、昨年には学会賞として新たにシチズン・サイコロジスト奨励賞を設けました。この賞は、学問としての心理学を修め、社会のさまざまな場面で一市民として心理学を活かしながら人びとの心の健康と福祉の増進に寄与されている認定心理士のみなさまを顕彰することによって、認定心理士のみなさまのご活躍とご貢献を社会に広く周知するとともに、日本における心理学の真の社会連携を達成しようとするものです。今年の9月には、日本心理学会第83回大会(立命館大学)で最初の表彰が予定されています。

今後とも、認定心理士の会を中心にして、認定心理士のみなさまのご意見やご要望、またご協力やご支援を賜りながら進めてまいりたいと存じます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

  • 北陸支部会の2018年度イベント第3弾、「講演会in富山」の詳細をお知らせします。

    • 大学コンソーシアム富山 駅前キャンパス 研修室1(富山駅前 CiCビル5階)
      • 13:00~14:10 講演
        演題:集団内の対立とその解決の心理学
        講師:黒川光流先生 (富山大学人文学部)
      • 14:30~14:50 講演
        演題:認知トレーニングは可能か?
        講師:坪見博之先生 (富山大学人文学部)
      • 15:50~16:45 懇親会 (お茶会)
    • 井戸啓介先生 (富山県立大学)
    • 北陸心理学会
      放送大学富山学習センター

    北陸支部会では、7月に福井、12月に石川で、講演会を開催してきました。第3弾として、ホタルイカ漁が解禁になった直後の富山で、開催します。今回も地元在住の研究者の方々に、ご講演いただきます。講演会終了後、懇親会(お茶会)も開催します。北陸在住の皆様も、富山で旬のホタルイカを味わいたい皆様も、ぜひご参加ください (ただし、懇親会でホタルイカは出ません)。今回は参加者の事前登録は行いません。当日、会場に直接お越しください。

    前号に引き続き、北陸在住の会員の皆様にお願いです。富山、石川、福井のそれぞれの地域で、イベントなどの運営をお手伝いしてくださる担当幹事を、随時募集しています。興味のある方は、お気軽に、幹事までご相談ください。

    (北陸支部会幹事:松井三枝・渡邊伸行)

  • 前号のニューズレター2018 年度 No.1にも記させていただきましたが、2019年3月3日(日)に近畿支部会企画のセミナーを開催します。会場は、利便性の高い立地にある立命館大学大阪いばらきキャンパスです。「心理学の基礎から社会への応用を考える」を全体テーマとした2つのご講演を準備しています。

    まず1つ目のご講演は、サトウ タツヤ先生(立命館大学)による「ものつくり企業が注目する質的研究法―人々の願いを明かにするTEM―」です。研究法、しかも質的研究法・・・、難解で近づき難いというイメージを有する方も多々かと存じますが、サトウ先生が大変分かりやすく解説してくださいますのでご安心ください。実生活を見る皆様の明日からの視点に、きっと役立つことになろうかと存じます。このご講演内にて、デンマーク・オールボー大学から、ちょうど来日中のサトウ先生のご友人でもあるJaan Valsiner教授がゲストとしてショートスピーチをして下さることにもなりました。ご期待ください。

    2つ目のご講演は、北岡 明佳先生(立命館大学) による「知られざる知覚研究の応用可能性」です。またまた研究、しかも知覚という心理学の基礎分野・・・、これまた難しそうというイメージでしょうか?そんな方々は是非、北岡先生の錯視のページ(http://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/)をご覧ください。物理的には動いていないものが動いて見える!平面のはずなのに膨らんで見える!好奇心をくすぐられる不思議でいっぱいです。この不思議に満ちた知覚に関する研究を社会や皆様の実生活へ応用する可能性について、北岡先生がかみ砕いて分かりやすくお話しくださる予定です。

    セミナー終了後、会場キャンパス内にて認定心理士または認定心理士(仮)の皆様の懇親会も準備しています。会場の都合にて先着30名限定ですので、講師先生方や他の認定心理士の皆様と一緒に“心理学”を楽しむひと時をご希望の皆様は、早目にお申し込みください。

    セミナー全体の詳細については、下記、または学会ホームページに掲載されているチラシ等(https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2019/02/190303_kinki.pdf)をご参照ください。既にご参加のお申し込みを下さっている方、ありがとうございます。皆様、奮ってお申し込みください。心理学へご興味を有する身近の方々にもお声掛けいただけますと幸いです。

    • 心理学の基礎から社会への応用を考える
      1. サトウ タツヤ氏(立命館大学総合心理学部教授)
        「ものつくり企業が注目する質的研究法―人々の願いを明かにするTEM―」
        <ゲスト:Jaan Valsiner 氏(デンマーク・オールボー大学教授)>
      2. 北岡 明佳氏(立命館大学総合心理学部教授)
        「知られざる知覚研究の応用可能性」
    • (受付13:30~)
    • 立命館大学 大阪いばらきキャンパス AN棟2階 AN211教室
      〒567-8570 大阪府茨木市岩倉町2-150
      JR茨木駅から徒歩約5分/阪急電鉄南茨木駅から徒歩約10分または京阪バス約5分(立命館大学[岩倉公園前]下車)/大阪モノレール宇野辺駅から 徒歩約7分
      ※アクセスやキャンパス内での詳細は、下記URLをご参照ください。
      キャンパスへのアクセス:http://www.ritsumei.ac.jp/accessmap/oic/
      キャンパス内:http://www.ritsumei.ac.jp/campusmap/#oic
    • 無料
    • セミナー終了後、認定心理士&認定心理士(仮)の方の懇親会を、会場キャンパス内で予定。無料(先着30名)。
      1. 定員 150名(先着順)
      2. 参加希望の方はメールでお申し込みください。
        宛先: jpa-ninnokai-event@psych.or.jp
        件名:「3.3近畿支部セミナー参加希望」
        本文:以下の項目を記入してご送信ください。
        1. 氏名/2. 認定心理士の方は登録番号(認定番号)/3. メールアドレス/4. 懇親会参加希望の有無

    ※参加希望の方は事前にお申し込みください。お申込みいただいていない方は、ご入場いただけない場合があります。お席に余裕がありましたら、当日申し込み・参加も可能です。

    (近畿支部会幹事:田中 芳幸)

  • 中国・四国支部会では、「職場で活きる心理学―基礎・臨床・現場から―」というテーマで公開シンポジウムを開催します。日時は2月9日(土)13:30~15:30、会場は聖カタリナ大学松山市駅キャンパスです。参加費は無料で、公開シンポジウムですので、認定心理士の方だけでなく一般の方もご参加いただけます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

    • 「職場で活きる心理学―基礎・臨床・現場から―」
    • 聖カタリナ大学松山市駅キャンパス聖ドミニコ館5F
    • 無料
      1. 森平准次(聖カタリナ大学)
        「職場ストレスとの向き合い方」
      2. 福田哲也 (聖カタリナ大学)
        「基礎心理学から見た感情コミュニケーションとは」
      3. 中川紗江((株)アドバンテッジリスクマネジメント)
        「感情労働とワークエンゲージメント」
    • 森岡陽介(聖カタリナ大学)
    • 宮谷真人(広島大学)、松尾浩一郎(福山市立大学)
    • 参加をご希望の方は、メール(宛先 jpa-ninnokai-event@psych.or.jp )にて、件名「2.9 中国・四国支部会公開シンポジウム参加希望」とし、氏名、メールアドレス、認定心理士の方は登録番号(認定番号)を記入してお申し込みください。シンポジウム当日、会場での申し込み・参加も可能です。

    (中国・四国支部会幹事:宮谷真人・松尾浩一郎・森岡陽介)

【北海道支部会イベント開催報告】「北海道心理学会第65回大会・日本心理学会認定心理士の会主催シンポジウム」

2018年10月20日(土)10時00分から2時間の枠で、北海道心理学会第65回大会(開催校 札幌国際大学:於 同校2号館)におきまして、シンポジウムを主催いたしました。

シンポジウムの題目は「発達障害と生きる社会―その機序と支援について―」です。近年発達障害の増加が叫ばれており、社会的関心も高まっています。発達障害は広範に渡っており、発達障害と生きる社会をめざすためには、その発達過程や機序について理解することが不可欠です。そのような点から本シンポジウムは、基礎から臨床まで様々な立場から話題提供をいただきました。

話題提供者として、米田英嗣先生(青山学院大学教育人間科学部)、関あゆみ先生(北海道大学大学院教育学研究院)、湯澤正通先生(広島大学大学院教育学研究科)、安達潤先生(北海道大学大学院教育学研究院)の4人の先生方にご登壇いただきました。まず米田英嗣先生は、「自閉スペクトラム症を持つ方々の共感性」という題目で、自閉症スペクトラム症の人達が持つ共感性の特徴について、行動実験や脳機能イメージングの結果からお話いただきました。次に関あゆみ先生は、「学習障害の理解と支援」という題目で、特に読み書き障害(ディスレクシア)について脳機能研究の近年の知見を紹介するとともに、支援の基本的な考え方についてお話いただきました。次に安達潤先生は、「発達障害児者の支援に国際生活機能分類(ICF)を活かす ~連携支援の実現に向けて~」という題目で、ICF項目に基づいた多職種支援連携と情報共有システムの開発や支援方法についてお話しいただきました。最後に湯澤正通先生は、「発達障害とワーキングメモリ」という題目で、子供のワーキングメモリ容量と学習の遅れについての診断や支援についてお話しいただきました。司会は、北海道支部会長の河原純一郎と同会幹事の小川健二(いずれも北海道大学大学院文学研究科)が務めました。

北海道心理学会の参加者に加えて、認定心理士の会からの参加者は51名と盛会でした。当日夕方には北海道心理学会と合同の懇親会が開催され、シンポジウムに参加された認定心理士の皆さんのご参加もあり、盛況に終わりました。来年度も引き続きイベントを企画しておりますので、是非ご参加いただければ幸いです。

(北海道支部会幹事:小川健二・河原純一郎)

【東北支部会イベント開催報告】「日本感性福祉学会第18回大会・日本心理学会 認定心理士の会共催公開講演・シンポジウム」

2018年11月14日(水)10時40分より日本感性福祉学会第18回大会(於 東北福祉大学けやきホール)にて基調講演「『感動空間』を創る発想力の秘密」(講演者: 相羽髙德氏・㈱グラフィクスアンドデザイニング・㈱東京妙案開発研究所)、および大会シンポジウム「未来へのデザイン-芸術・医療・福祉-」を共催致しました。当日は、総勢約700名以上の参加がありました。

基調講演において相羽氏は、数々の自身の空間デザイン(「新横浜ラーメン博物館」、「ガスト」等)に加えて、アート作品(「メイズ」、「Bonsai Art」等)の数多くの実例を示しながら、氏が不可欠と考える「奥深い物語性」、「人に教えたくなる話題性」「クオリティの高いアート性」がロジックの積み上げではなく、クリエイターの情熱やイマジネーションから生まれるものであることが論じられました。そして、クリエイター自身の純粋な心の声に耳を傾け、表現することこそが、デザインを体験する人々に感動を与えていくという相羽氏の経験が多くの若者が活躍する糧になればという願いを込めて締めくくられました。

シンポジウムでは、藤井まい氏(元WHO職員・JICA帰国専門家)からは、「未来へむかって~保健医療の観点から~」ということで、ご自身が看護師、国連職員等の多岐にわたる保健医療関連の職業に就き、生活していく中で、いかにして自身の感性を磨き、自身の生き方・未来をデザインしてきたかについてご講演頂きました。都築光一氏(東北福祉大学)からは、「未来へ もう一つの地域のデザイン~福祉の立場から~」ということで、はじめに、個々人の定年後の生活像、そして「死」との接し方等の課題が指摘されました。そして、こういった課題への対応として個々人が安心感を得るために、社会福祉の立場から、関連領域とのコラボレーションや地域の人々が種々の役割を分かち合うことで、地域社会のつながりや機能を構築することの必要性が述べられました。

【東北支部会イベント開催報告】「東北心理学会第72回大会・日本心理学会認定心理士の会共催公開講演・シンポジウム」

2018年11月23日(金)14時00分より東北心理学会第72回大会(於 岩手大学)にて特別講演「ポジティブなこころの科学-ポジティブ心理学の展開-」(講演者: 堀毛一也氏・岩手大学名誉教授・東洋大学HIRC21客員研究員)および、シンポジウムⅠ「顔認知の諸相」を共催致しました。およそ120名程度の参加者がありました。

特別講演では、堀毛氏からポジティブ心理学の定義と歴史、さらには最新の研究動向が詳細に述べられました。ポジティブ心理学研究の3つの柱である「ポジティブな経験」「ポジティブな個人特性」「ポジティブな機構」の観点から講演されました。ウェルビーイング研究やポジティブ感情の研究等、最も研究が進んでいる「ポジティブな経験」研究はもちろんのこと、最も進捗が遅れているとされる「ポジティブな機構」研究についても種々の心的モデルの概説にとどまることなく、教育と心理的介入効果といった今後の発展が期待される分野についても広く深くお話しがなされました。さらに、ポジティブ心理学を専門的に深めようとする学術団体は存在しないことに触れ、このテーマに関心をもつ若手研究者の今後の展開に期待するとして締めくくられました。

シンポジウムⅠでは「顔認知の諸相」として行場次朗氏(東北大学)企画・司会のもと、遠藤光男氏(琉球大学)は顔検出、すなわち顔の存在自体に気づくということに関するご自身の研究を交えながら種々の実験心理学的研究を概説されました。そして、竹島康博氏(同志社大学)、髙橋純一氏(福島大学)、桐田隆博氏(岩手県立大学)は、表情認知について各々の立場からご講演されました。竹島氏からは、怒り顔と同様の形態特徴をもつ逆三角形という幾何学図形でも種々の情報処理に同様の影響を及ぼしうることについて、高橋氏からは、表情認知とアレキシサイミアといった個人特性との関連性について、桐田氏からは、表情検出の脳内情報経路について膨大な研究レビューに基づいて議論がなされました。顔の知覚・認知といった社会的コミュニケーションの基盤ともされる、注目が高まり続けている研究領域について活発な質疑・応答のもと、考えを深めることができました。

(東北支部会幹事:阿部恒之・河地庸介)

【関東支部会イベント開催報告】「日本心理学会認定心理士の会2018 第1回関東セミナー」

2018年6月30日(土)、午後1時より、東洋大学白山キャンパスにおきまして、「2018認定心理士の会 第1回関東セミナー」を開催しました。当日は、東京都や神奈川県などの関東各都県をはじめ、静岡県や関西地区から総勢約180名の参加がありました。

今回のセミナーのテーマは、「『被害者』の心理を考える!~心の傷をどのように受け止めるのか~」ということで、ハンセン病や犯罪被害者、航空機事故犠牲者の遺族の心理を考えるテーマを設定しました。

会場の様子
会場の様子

最初に、高千穂大学人間科学部准教授の徳田治子氏から「“人生被害”はいかに聴き取られたか:ナラティヴ実践としてのハンセン病国賠訴訟における弁護士の聴き取りプロセス」というテーマで講演をいただきました。研究に至った経緯や、ハンセン病国賠償における裁判プロセスと被害証言の聴き取りなど、聴き取りに臨む聴き手の姿勢などを学ぶことができました。

徳田 治子氏
徳田 治子氏

次に、公益社団法人被害者支援センター相談支援室長代理、犯罪被害相談員で臨床心理士の佐藤 真奈美氏から「犯罪被害者のおかれる現状と支援」というテーマでご講演をいただきました。犯罪被害者が被害後におかれる状態や症状、二次被害など、佐藤氏が実際に犯罪被害者の方と相談をされる中で考えたことをお話いただきました。

その後、15分の休憩をはさみ、認定心理士の会関東支部会長で、東洋大学社会学部教授の安藤清志氏から「航空事故犠牲者遺族の心理―名古屋空港中華航空機墜落事故の事例から」というテーマで講演をいただきました。事故から4年後、8年後の遺族への調査を通して、遺族の心理的変化について話題提供していただきました。

佐藤 真奈美氏
佐藤 真奈美氏
安藤 清志氏
安藤 清志氏

最後に、認定心理士の会情報交換会の時間を設けましたが、講演に対する質問が多く、会員相互の情報交換の時間があまりとれませんでした。しかし、多くの参加者から好評をいただき、大盛況なセミナーにすることができました。講演者の皆様、参加者の皆様、ありがとうございました。

(関東支部会幹事:大崎博史)

【関東支部会イベント開催報告】「日本心理学会認定心理士の会2018 第2回関東セミナー」

2018年10月28日(日)、午後1時より、日本大学文理学部百周年記念館国際会議場におきまして、「2018認定心理士の会 第2回関東セミナー」を開催しました。当日は、約120名の参加がありました。

今回のセミナーのテーマは、「心理学から『化粧』行動を考える!~なぜ人は化粧をするのか~」ということで、化粧行動について心理学の視点から考えるテーマを設定しました。

最初に東北大学大学院文学研究科教授の阿部恒之氏から「化粧の心理学~日常生活に組み込まれた感情調整装置~」というテーマで講演をいただきました。

美対健康、美しさの今、スキンケアの心理効果、メーキャップの心理的効果など、日常生活に埋め込まれた感情装置として機能している化粧についてわかりやすくお話いただきました。

阿部 恒之氏
阿部 恒之氏

次に、東京工科大学医療保健学部作業療法科講師の石橋仁美氏から「おしゃれを楽しむことを支える作業療法~クライエントにとっての化粧を考える~」というテーマでご講演をいただきました。

作業療法とは何か、身体障がいのある方の化粧、精神障がいのある方の化粧、高齢者の化粧について、作業療法における化粧支援の実際についてお話いただきました。

その後、15分の休憩をはさみ、北星学園大学学長の大坊郁夫氏から「化粧する人間のこころと行動~コミュニケーションと文化~」というテーマで講演をいただきました。

顔はコミュニケーションする、日本人の美意識、日本・韓国・中国の比較、化粧することの目的と対人的影響、化粧行動の日韓比較、化粧の対人的、社会的拡がりなどについて今まで研究されてきたことを話題提供していただきました。

石橋 仁美氏
石橋 仁美氏
大坊 郁夫氏
大坊 郁夫氏

最後に、認定心理士の会情報交換会の時間を設け、各人の仕事のことや、今後の認定心理士の会に期待することなどの抱負を述べていただきました。参加者の方からは、このような情報交換の時間を設けてほしいなどの意見をいただきました。第2回目の関東セミナーも大盛況のうちに終えることができました。講演者の皆様、参加者の皆様ありがとうございました。

(関東支部会幹事:大崎博史)

【関東支部会イベント開催報告】「日本心理学会認定心理士の会・公立大学法人 長野大学共催公開シンポジウム」

関東支部会では、2018年度の3回目のイベントとして、昨年11月18日(日)に、長野県上田市の「駅前ビル パレオ」において、長野大学との共催により、公開シンポジウムを開催しました。当日は、40名の方にご参加いただきました。長野県内からお越しになった方が多かったようですが、九州などの遠方からお越しいただいた方もいらっしゃいました。JR北陸新幹線の上田駅から徒歩1、2分程度という交通至便の会場であり、紅葉シーズンに合わせて時期を選びましたので、遠方からご来場くださった皆さまには、心理学の学びと合わせて、信州の秋の美しい景観もお楽しみいただけたのではないでしょうか。シンポジウム終了後に開催した懇親会は、上田駅前の居酒屋で行いましたが、参加者の方には、信州の味覚をお楽しみいただけたと思います。

シンポジウムのタイトルは、「意識と行動のサイエンス~心理学は人間をどこまで理解できるか?~」でした。心理学の基礎領域から、意識研究と行動研究の最先端で活躍なさっておられる中堅の研究者お二人(東京大学の本吉勇先生と藤田医科大学の宮川剛先生)からご講演をいただきました。私にとっては、大学院生の頃から存じ上げているお二人であり、いつか、じっくりとお話を伺ってみたいと思っておりましたが、今回のシンポジウムで、幸いにも、その希望が実現できました。

最初に、本吉先生からは、「知覚と意識の心理学~意思決定とクオリアの謎~」というタイトルで、知覚の問題を中心に、さまざまな話題で興味深いお話をいただきました。特に、私たちがものを見るときに感じる透明感や、金属のメタリックの質感がどういった刺激の条件から作り出されるのかを、デモを通して解説いただいたときには、目から鱗が数枚落ちたように感じました。

次いで、宮川先生の「脳内中間表現型~遺伝子と行動をつなぐためのキーコンセプト~」と題されたご講演の中で、私にとって、もっとも強く印象に残ったのは、「脳の脱成熟化」ないし「未成熟脳」という話題でした。人間の成長発達の過程を個体レベルで考えるとき、赤ちゃんから大人へと進んでいくわけですが、その逆方向に変わること、つまり大幅な若返りは、心理的な「退行」のような現象を除けば、ほとんどないと思います。しかしながら、神経細胞のレベルでは、いったん成熟したものが、「脱成熟」して若返ることがあるというのですから驚きです。そして、この若返りの現象が、精神や神経の疾患に関わっているとのことで、いっそう興味を引かれました。

シンポジウムの後半には、討論の時間を設けて、ベテランの研究者お二人(立命館大学の佐藤隆夫先生と東北大学の阿部恒之先生)に指定討論をお願いし、ご講演内容の問題点を整理し、議論していただきました。お二人は、私にとって心理学の大先輩にあたる先生方であり、さすが、うまくお話をまとめてくださいました。会場の皆さまには、お二人の先生方の討論の中で、ご講演内容について、いっそう理解を深めていただけたのではないでしょうか。

今回の企画のテーマとしては、まさに心理学の科学的基礎をなす領域であり、心理学の学問としての根幹部分、人間の意識が生まれるメカニズムや、行動の背後にある生物学的なメカニズムに関わる部分でした。こうした心理学の基礎的なテーマについて、国内外で活躍する先生方をお招きしてシンポジウムを開催でき、とてもうれしく思う一方で、企画者としての立場からは、参加者の皆さまから「難しかった!」といったお声を多くいただくのではないかと、開催前には少し心配しておりました。しかしながら、幸いなことに、当日の受講アンケートの結果を拝見したところ、全体的に、たいへん好評でした。これはひとえに、4名のスピーカーの先生方の周到なご準備とご配慮によるところと思います。この企画を長野だけで終わらせるのは、本当にもったいない。企画者の自画自賛のようで恐縮ですが、次年度以降、ぜひ別な会場でも、この企画を実施できればと考えております。

また、長野を会場に、来年度も、別な内容の企画を準備したいと考えておりますので、昨年に長野へお越しになれなかった方も、次回は、ぜひお越しくださいませ。関東支部会では今後も引き続き、皆さまの心理学の学習でお役に立ちそうな企画を準備する予定でおります。今後ともよろしくお願い申し上げます。

当日の会場の様子(長野県上田市の駅前ビル パレオ2階会議室にて)。認定心理士の会会員の他、大学生、一般市民など、40名の方にご参加いただきました。
当日の会場の様子(長野県上田市の駅前ビル パレオ2階会議室にて)。認定心理士の会会員の他、大学生、一般市民など、40名の方にご参加いただきました。

(関東支部会幹事:佐藤俊彦)

【北陸支部会イベント開催報告】「日本心理学会認定心理士の会 北陸支部会講演会 in 石川」

2018年度北陸支部会講演会の第2弾を、石川で開催しました。2018年12月8日(土)に、金沢市武蔵が辻のITビジネスプラザ武蔵で開催された、北陸心理学会第53回大会の午後の時間帯をお借りして、“講演会 in 石川”を開催しました。テーマは「人と人との関わりの心理学」でした。講師として、金沢大学の岡田努先生、金沢学院大学の前川浩子先生をお招きしました。

岡田先生の演題は、「現代青年の対人関係の問題」でした。1990年以降の青年のコミュニケーションにおける意識の変遷や、青年の友人関係とコミュニケーション、キャリア形成力、就労意識との関係について、岡田先生が発表された2つの論文のデータを示しながら、お話しいただきました。

前川先生の演題は、「対人関係と精神的健康―誰との、どのようなやりとりが重要なのか?―」でした。対人関係療法の紹介と、ご自身が取り組まれた対人スキルと精神的健康の関連性についての研究について、お話しいただきました。最後に、演題にある「誰との、どのようなやり取りが重要なのか?」ということについて、まとめていただきました。

講演会終了後に回収したアンケートを見ると、今回取り上げた青年期や対人関係の問題は、会員の皆様にとって大いに関心のある領域のようで、大変好評でした。今後もこのテーマで講演会を開催してほしい、という声を多数いただいておりますので、参考にさせていただきます。

今回は会場の座席数の都合上、午後の講演会のみの参加者を30名限定とさせていただきました。北陸心理学会第53回大会の参加者や運営スタッフと合わせて、参加者は合計59名となりました。事前登録いただいた30名の方々のうち、約8割が北陸在住で、残りの2割は愛知、滋賀、東京、和歌山にお住まいの方々でした。

今回は講演会終了後に、会場で懇親会 (お茶会) を開催することができませんでした。それを事前に知った有志の方が、自主的に懇親会を実施することになり、講演会終了後に5名の方々が近隣の喫茶店に集まったとのことです。北陸でこういう雰囲気ができつつあるのは、大変喜ばしいことだと思っています。次回、3月3日(土)の“講演会 in 富山”では、懇親会 (お茶会) を開催しますので、皆様ぜひご参加ください。

末筆ながら、今回の“講演会 in 石川”開催に当たり、北陸心理学会第53回大会準備委員会の皆様に、大変お世話になりました。また昨年度に引き続き、放送大学石川学習センターにもご支援を賜りました。この場を借りて御礼申し上げます。

北陸支部会“講演会 in 石川”の会場の様子
北陸支部会“講演会 in 石川”の会場の様子

(北陸支部会幹事:松井三枝・渡邊伸行)

【中国・四国支部会イベント開催報告】「中国四国心理学会第74回大会・日本心理学会 認定心理士の会共催シンポジウム」

2018年10月13日(土)・14日(日)に東広島市民センターアザレアホールにおいて、中国四国心理学会との共催で公開シンポジウムを行いました。

10月13日の市民公開シンポジウムⅠのテーマは「身近で役立つ心理学」であり、話題提供の先生方が自分の専門の中でも特に「身近で役立つ」内容を高校生や一般の方にもわかりやすく解説されました。福山大学人間文化学部の平伸二先生は、「ヒトのウソとウソ発見:犯罪心理学の視点」のテーマで、ウソ発見の実際と脳機能研究を紹介され、その方法が医療や産業の場面でも貢献する可能性を示されました。広島大学大学院総合科学研究科の小川景子先生は、「夢をみる仕組み:生理心理学の視点」をテーマに、これまでにわかった夢をみる仕組みについて紹介され、夢と心の関連についてお話になりました。福山市立大学教育学部の倉盛美穂子先生は、「スリルのある遊びをめぐる大人の認識:発達心理学の視点」のテーマで、スリルのある遊びをめぐる大人の認識と子どもの心身の発達との関連についての知見を紹介され、現代の子育てや保育の在り方の問題について考察されました。広島大学大学院教育学研究科の中島健一郎先生は、「周囲との人間関係で苦しまないコツ:社会心理学の視点」をテーマに、「環境(状況)が私たちの行動を変える」「お金や地位のせいで人は他者の気持ちがわからなくなる」の2つのトピックスを取り上げられました。司会は広島国際大学心理学部の菱村豊先生でした。

10月14日の市民公開シンポジウムⅡのテーマは「未来を創る心理学の活かし方」であり、話題提供の先生方にこれからの暮らしや未来に役立つ可能性のある最新の心理学的研究や手法についてわかりやすくお話していただきました。比治山大学現代文化学部の吉田弘司先生は、「目はこころの窓―視線で読み解く心、視線で伸ばす心―」をテーマに、目からどのような情報を読み取れるのかを調べた研究を紹介され、これらの研究の応用として、障がいのために発話ができない子どもたちの物事のとらえ方を調べたり、言葉や文字の学習を支援できる可能性を示されました。安田女子大学心理学部の藤原裕弥先生は、「心理学における心の調べ方―来し方と行く末―」をテーマに、脳科学や人工知能の発達で心の中を直接知ることができつつあること、この方法が心理学だけでなく広く社会全体の発展に貢献する可能性があることをお話になりました。広島国際大学心理学部の首藤祐介先生は、「行動はうつを癒し健康を作る―行動活性化療法の紹介―」のテーマのもとに、うつ病に対する認知行動療法の一種として、行動活性化療法を紹介され、うつ病の人のみならず健康な人の幸福や生活の質向上に役立つ可能性があることを示されました。広島大学大学院社会科学研究科の相馬敏彦先生は、「変化する絆のはたらき―求められる信頼の形、変えるべき愛情の形―」をテーマに、人と人との絆に関わる問題について心理学がどのように解決の糸口を探すのかお話になられました。司会は広島国際大学心理学部の西村太志先生、指定討論者は広島修道大学健康科学部の古満伊里先生でした。

いずれのシンポジウムにおいても、話題提供の後、フロアを交えたディスカッションが行われました。2日とも一般の方にも多くご参加いただき、盛会のうちに終了しました。

(中国・四国支部会幹事:宮谷真人・松尾浩一郎・森岡陽介)

【九州・沖縄支部会イベント開催報告】「日本心理学会認定心理士の会 公開シンポジウム」

2018年8月11日の13時半から17時まで、博多駅JRシティ会議室において、公開シンポジウム「買い物にひそむ心理学」が開かれました。司会進行は九州大学の山口裕幸先生でした。参加者は74名、うち認定心理士の方の参加は45名と、地方にしてはかなりの数の方にご参加頂きました。話題提供の先生方は、国内外の第一線で活躍する社会心理学、認知心理学、経済学をご専門とする3名の先生でした。概略とまとめは以下の通りです。

鹿児島大学の山﨑真理子先生からは、実験心理学の基本的な考え方から社会心理学の基礎的知見まで、心理学の考え方を幅広く、大変わかりやすくご紹介頂きました。そのうえで日常場面に即した食行動を含めた、ご自身の研究についての示唆に富む解説を頂きました。

北九州市立大学の松田憲先生には、認知心理学の知見をもとに、商品の好ましさ、印象、購買意欲が変化する仕組みについて解説を頂きました。特に、ノスタルジアなどの感情と商品の印象についての考察は実験データに厚みがあり、説得力を感じさせるものでした。

名城大学の中川宏道先生には、行動経済学の基礎的な知見を踏まえて、値引きとポイントの選好に関する研究をご紹介頂きました。ポイントカードなど、現代の生活で近年広く普及したシステムと消費者心理学の理論を結びつけて考える視点は斬新に感じられました。

3名の先生からの話題提供の後、会場にお越し頂いた方々を交えて、多くのコメントを頂くとともに質疑応答がなされました。今回のシンポジウム開催にあたっては、認定心理士の会の方から事前にボランティアを募り、4名の方に会場設営と設置に関して多大なご協力を頂き、スムーズに会を進めることができました。熱のこもった話題提供を頂いた先生方、およびご参加頂いた方々に厚くお礼を申し上げます。

シンポジウムの様子
シンポジウムの様子

(九州・沖縄支部会幹事:光藤 宏行)

インターネット会議システムを使ったオンラインでのミニセミナーと交流会を、2018年7月20日と11月2日に開催しました。

第4回のテーマは「ダイアローグ(話し合い)によるチームビルディング」。参加者は全国各地、イギリスからご参加の方も含めて8名でした。 初めに講師の伊波あゆみ氏(日本ファシリテーション協会)から、話し合いの場におけるファシリテーター(進行役)の役割とダイアローグによる問題解決の手法についての短い講義をしていただきました。その後、「認定心理士の会員同士の交流が活発になると、どんなことを得ることができますか?」「会員としては何ができますか?」という2つの問いに対して、参加者同士で話し合いをして、アイディアを出し合っていきました。オンラインですが、参加者全員がスクリーンでお顔を見ながら発言していたため、話し合いのよい場の雰囲気が出来ており、最後に参加者の皆様からは、「考えていることを言語化するって大切なことですね」「やはり直接人と人が話し合うことは大切」「オンラインでここまでできるということが分かった」「良い話し合いができた」というご意見が出ていました。

(写真は講師の伊波あゆみ氏、沖縄からご参加いただきました)
(写真は講師の伊波あゆみ氏、沖縄からご参加いただきました)

第5回は「オンラインによるコミュニティの形成」というテーマで筒井洋一先生(前京都精華大学人文学部教授、現在、京都工芸繊維大学、大谷大学、成安造形大学 非常勤講師)にお話しいただきました。参加者は5名でした。

筒井先生は「講師の役割は、講師と参加者という関係ではなく、一緒に学びの場を創ること」をモットーに、授業にオンラインも含めて見学者を受け入れ、第三者の関与が学びを創ることを実践されています。

オンラインセミナーにおいての学習脱落者をネットによる学習者同士のつながりによって大幅に減少させることが可能、そして多彩なオンライン手法について、目的に沿った最適な方法や場をどのように提供していくか、具体例を用いてお話をしていただきました。

その後は「オンラインでつくれそうなコミュニティはありますか」「たとえば認定心理士の会でオンラインコミュニティを作りたい場合、必要なことはなんだと思いますか?」という問いに対して、参加者はオンラインとリアルとの違いを出し合いながら、可能な活動について話し合いを進めていきました。

(オンラインの画面、左下が講師の筒井先生、京都からご参加くださいました)
(オンラインの画面、左下が講師の筒井先生、京都からご参加くださいました)

どちらの回も講師と受講者というスタイルではなく、参加者同士の話し合いから、それぞれの気づきやグループとしてのアイディアを引き出すというスタイルでした。

皆様に、心理学というフィールドとベースの知識は同じだけれど、立場や考え方は異なる、その違いによる知識の交換や、話し合いによる気づきや学習の仲間を得られること、そんな場所をオンラインで提供できればと思っております。通常はお会いすることができない遠隔の認定心理士の皆様と、リアルタイムでディスカッションができるのは、オンラインだけです。今後もその特色を生かした企画を行っていく予定ですので、ご期待ください。

(認定心理士の会運営委員:池田琴世)

日本心理学会認定心理士の会は、昨年に引き続き、日本心理学会第82回大会において公開シンポジウムを開催しました。話題提供者に、三浦麻子先生(関西学院大学・日本心理学会広報委員会委員長)、林和弘先生(文部科学省)をお招きし、三浦先生には始めに「心理学の再現性危機」というタイトルでお話しをいただきました。再現性危機とは、実験結果を再現することが難しい、もしくはできないという科学における方法論的な危機のことで、特に心理学と医学の領域で広く議論されています。2015年8月のScience誌の報告によれば、心理学者270名が学術誌に掲載された研究100件について組織的に再現実験を行った結果、再現性が確認された研究は39%のみでした。このScience誌の衝撃的な報告も含め、三浦先生は、これまでも多数報告された心理学の再現性危機に関わる諸問題をご紹介くださいました。また、なぜそのような問題が起きてしまうのかという点も、研究者を囲む研究環境の点から詳しく説明してくださいました。そして最後に、再現性危機に対する世界の取り組み、日本の取り組みもご紹介くださいました。

林先生には「オープンな情報流通が変容させるシチズン・サイエンスが切り開く可能性」というタイトルでお話しいただきました。シチズン・サイエンスは“一般の人々によって行われる科学であり、職業的な科学者や研究機関と協調して行われる活動”を指します。ICTの急速な発展に伴い研究情報のオープン化とアクセス性が向上したことを背景に、研究者や研究機関との繋がりを持って多くの市民がデータの収集や分析に参加するシチズン・サイエンスが世界的に広がりを見せています。林先生は、シチズン・サイエンスの概要と最新の動向を紹介してくださいました。

最後に、三浦先生と林先生の話題提供を受けて、私が「認定心理士の会の新たな取り組み―シチズン・サイエンス」というタイトルで話題提供を行いました。先述の心理学の再現性危機に対応する方法の一つに、元の研究より大きなサンプルサイズで再現実験の精度を高めて研究する方法があります。しかし、アカデミアでは再現性実験は業績として評価されづらく、各研究者が扱えるサンプルサイズにも限界があります。シチズン・サイエンスは、この現状を打破する有力な方法の一つであることを発表の中で述べました。また、認定心理士の会では、今後、当会のネットワークを通じてシチズン・サイエンス行い、会員全員で大規模研究を推進して、ビッグデータを創出し、再現性の危機に挑戦していきたいことも述べました。

指定討論は岡隆先生(日本大学・日本心理学会常務理事)が行いました。岡先生は、再現性危機、ICTによるオープンサイエンスの功罪について総括され、その背景にある「アカデミック・キャピタリズム」や「ポップ・サイコロジーという危機」について述べられました。また、今後、認定心理士の会で行うシチズン・サイエンスには、認定心理士を参加者にICTを利用してビッグデータを得るタイプの研究(タイプI)と、認定心理士がデータ取得や追試を行うタイプの研究(タイプII)があることも述べられました。

再現性危機は、心理学界が抱える学術問題です。そのため、シンポジウム終了後は、聴衆(主にアカデミア所属の方)から、当会の今後の取り組みに対する高い関心を反映して、様々な質問が寄せられました。

(認定心理士の会運営委員会委員長:髙瀨堅吉)

2018年7月28日に日本学術会議講堂で公開シンポジウム「若手アカデミーが考えるシチズン・サイエンスに基づいた学術横断的社会連携」が開催されました。シンポジウムで基調講演を行った林和弘先生(文部科学省)は「オープンな情報流通によって変容するシチズン・サイエンスの可能性」というテーマでお話しくださいました。林先生は、学術雑誌の電子化をきっかけにオープンサイエンス政策に役立つ調査研究を一貫して行い、G7科学技術大臣会合の作業部会、内閣府の検討会、OECDの会合等において、その知見を国内外に生かす活動を行っています。ご講演では、これまでの幅広い活動の経験を踏まえ、シチズン・サイエンスの現状と最新の動向をお話しくださいました。

次に基調講演を行った中村征樹先生(大阪大学)は、「シチズン・サイエンスは学術研究をどう変えるか」というテーマで、シチズン・サイエンスが今後の学術に与えるインパクトについてお話しくださいました。中村先生は、科学技術と社会の関係の変容について歴史的観点から研究されており、サイエンスカフェなど、研究者と市民の対話を促す場のデザインとその普及にも携わっています。ご講演では、シチズン・サイエンスだけでなくサイエンスカフェにも話が及び、市民の文脈における科学の在り方についてもお話しくださいました。

これらの基調講演に続き、「多様な学術分野におけるシチズン・サイエンスの課題と可能性」として、私が「心理学におけるシチズン・サイエンスの可能性」を紹介しました。また、福森聡先生(日本ヒューマンインタフェース学会若手の会)が「ヒューマンインタフェース学におけるシチズン・サイエンスの可能性」を、長谷田真帆先生(東京大学)が「公衆衛生におけるシチズン・サイエンスの可能性」をご紹介くださいました。

本シンポジウムは、各国を代表する若手研究者で構成される国際的組織であるGlobal Young Academyのホームページにも採り上げられ(https://globalyoungacademy.net/young-academy-of-japan-hosted-symposium-on-citizen-science/)、海外からの関心の高さが伺えました。

シンポジウムの話題提供者。本シンポジウムは日本学術会議若手アカデミーおよび社会のための心理学分科会との共催で行われた。左から髙瀨、蒲池みゆき先生(日本学術会議社会のための心理学分科会副委員長)、長谷田先生、林先生、中村先生、福森先生、岸村顕広先生(日本学術会議若手アカデミー代表)。
シンポジウムの話題提供者。本シンポジウムは日本学術会議若手アカデミーおよび社会のための心理学分科会との共催で行われた。左から髙瀨、蒲池みゆき先生(日本学術会議社会のための心理学分科会副委員長)、長谷田先生、林先生、中村先生、福森先生、岸村顕広先生(日本学術会議若手アカデミー代表)。

(認定心理士の会運営委員会委員長:髙瀨堅吉)

シチズン・サイエンスとは、一般の方が行う研究活動のことです。シチズン・サイエンスは世界的に広がりを見せており、研究を職業とする科学者や公的な研究機関と協調して行われることもあります。このシチズン・サイエンスの広まりは昨年10月にNature誌でも紹介されました。(https://www.nature.com/articles/d41586-018-07106-5)。日本心理学会は、認定心理士の皆様と研究を行い、これからの心理学を共に創り上げることを目的に、シチズン・サイエンス プロジェクトを始めます! 詳しくは、今後、メーリングリストやFacebookでお知らせいたしますので、今しばらくお待ちください。

(認定心理士の会運営委員会委員長:髙瀨堅吉)

早いもので2019年も一ヶ月が経とうとしておりますが、会員の皆様は良いお年をお迎えになりましたでしょうか。さて、2018年度第2号のニューズレターをお届けいたします。ご覧の通り、数多くのイベントのお知らせや開催報告でボリュームたっぷりとなりました。新たな活動としてシチズン・サイエンス プロジェクトも始まる予定ですので、ご期待ください。会員の皆様の相互連携や、資質・技能の向上を目指す「認定心理士の会」を2019年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

(東海支部会幹事:小川一美)

  • 認定心理士の会運営委員会〒113-0033 東京都文京区本郷5-23-13田村ビル内公益社団法人日本心理学会事務局jpa-ninteinokai@psych.or.jp

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