公益社団法人 日本心理学会

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常務理事会から

教育研究担当の仕事から

今回は,教育研究関係の仕事のうち,講演会などのイベントについて,その現状と将来展望,またそこから見えてくる日本心理学会の組織論についてまで考えてみたいと思います。日本心理学会が実施している講演会やシンポジウムは,大きく分けて,公開シンポジウム,高校生のための心理学講座,認定心理士の会が実施するセミナーの3種類があります。公開シンポジウムは,最新の研究成果を広めるための,一般向けのシンポジウムであり,完全に公開されているものです。2019年度は,社会のための心理学シリーズ,科学としての心理学シリーズの2シリーズ,計3テーマ,5会場(東京・金沢,東京・大阪,東京・(京都))で開催されました。高校生のための心理学講座は,2019年度は全国14会場,八戸,仙台,新潟,東京,静岡,愛知,金沢,大阪,神戸,岡山,広島,松山,別府,熊本,で開催されました。認定心理士の会によるセミナーは,10都市,旭川,仙台(3回),東京(3回),上田,富山,(金沢),福井,大阪(3回,うち1回は中止),広島,福岡,愛知の合計15回開催されています。高校生,認定心理士を主たる対象とするものですが,実際には完全に公開されており,どなたでも参加できるものとして開催しています(上記のうち括弧のついた京都,金沢,大阪はコロナウイルス感染の危惧から中止)。

3種類の講演会は,開催の形態も異なっています。公開シンポジウムは,いわば学会本部直営,教育研究委員会が直接,企画・運営に携わります。それに対し,高校生講座は,企画を公募し,つまりは開催してくださる大学に応募していただき,その中から実施する企画を教育研究委員会で選び,実施していただいています。認定心理士の会のセミナーの場合も,本部直営ではありませんが,高校生講座とは違う形になっています。認定心理士の会には,各地域に支部会があります。現在,北海道,東北,関東,東海,北陸,近畿,中国・四国,九州・沖縄の8つの支部会があり,そうした支部会ごとに認定心理士向けのセミナーが開催されています。支部会の置き方に,ちょっとした工夫があります。本学会の代議員,理事は専門別,地域別の2つのルートから選出されています。地域別は,北海道,東北,関東,中部,近畿,中国・四国,九州・沖縄の7つの地域から選出されています。認定心理士の会の支部会の分け方と見比べると,選挙の地域のうち,中部が,東海と北陸に分けられています。これは,中部地方には,東海心理学会と北陸心理学会の2つの地域学会があり,それぞれが活発に活動していたことから,そうした地域学会の活動と認定心理士の会の活動をリンクさせることができれば,中部としてまとめるよりも,より活発な活動が期待できるのではという考えから,このような形にしたものです。実際に,この施策は効果があり,北陸支部会では富山,石川,福井の3県でそれぞれセミナーが開かれており,そのうちひとつ(富山)は,北陸心理学会の大会の中で開催されています。また,仙台では,3回のセミナーが開催されていますが,うち2つは東北心理学会のイベントを認定心理士にも公開したものとなっています。関西でも,3月に企画され,中止となったセミナーの他に,第83回大会(立命館大学)の中で認定心理士向けのイベントを2件開催しました。

こうした現状を見ると,教育研究委員会が企画,運営を行っている公開シンポジウムについても,2019年度は東京以外では年間3件ほどしか開催されていません。ひとつの理由は,学会本部の委員会,事務局の仕事がパンクしかかっていることにあるように思われます。しかし,こうした活動も,各地域のエネルギーを生かした運営形態に移していけば,さらなる活性化が期待できるかとも思います。現在,認定心理士の会には地域の支部会があり,活発な活動が展開されていますが,本学会には,地域支部会はありません。会員数8,000の学会でありながら,下部組織はまったくありません。代議員,理事は,専門分野別,地域別に選出されていますが,そのようにして選ばれた代議員,理事の方々の活躍の場も限られています。そろそろ,心理学会本体も,専門分野別,地域別の部門,地域支部会といった下部組織を設け,活動の多くをそうした下部組織に委ねることを考える段階に来ているように思えてなりません。

(学術担当常務理事・立命館大学教授 佐藤隆夫)

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