私のワークライフバランス
私の2つの見え方
市村 美帆(いちむら みほ)
Profile─市村 美帆
2009年,筑波大学大学院人間総合科学研究科心理学専攻修了,博士(心理学)。東洋大学HIRC21研究支援者(PD)などを経て,2019年より現職。専門は社会心理学。著書に『社会に切り込む心理学』(分担執筆,サイエンス社)など。
2人のお子さんの誕生が新しい世界との出会いを促したと振り返る市村美帆先生。大学教員であり2児の母であることを堅苦しく捉えず,柔軟に生活を広げている様子や,研究継続への意欲を語っていただきました。
私は,大学の教員をしている2児の母親です。仕事をしていると「2児の母親にはみえない」と言われる一方で,子どもといると「大学教員にはみえない」と言われるのですが,これは,私が家庭と仕事のバランスを自分なりにとることができていることを示しているのではないかと思います。
私は出産を経験していますが,出産・育児休業という時期がありません。学位取得後から非常勤の仕事をしており,第1子のときは出産前後の半期を避け,第2子の臨月には,半期の授業を集中講義にしていただき,数日で終えたりしていました。周囲に無理をする必要はないと言われても,空白の期間ができることが怖かったのです。継続的に続けることは最低限必要なことだと思っていました。「2児の母親にはみえない」のはこれが原因なのかもしれません。
一方で,母親になり,色々な出会いがありました。まず,「ママ友」という方々です。私たちの共通点は,「同じ年齢の子どもがいる」ということだけで,年齢や出身地,学生時代に学んだこと,仕事,全てが異なります。これが私には新鮮で,学んだことがない学問や,経験したことがない仕事の話を聞くことで,世界が広がったように感じました。また,子どもたちが好きな恐竜,昆虫,キャラクターなども,一緒に楽しんでいます。恐竜は,元々,私自身が考古学に少し興味をもっていたこともあり,化石友の会(日本古生物学会の組織)に入会し,子どもと最新の日本の古生物研究に触れ興奮しています。母親になり,「大学教員(心理学の研究者)にはみえない」という時間が増えたように思います。
このような生活の中,ご縁があり,現所属大学に専任教員として着任しました。はじめは,仕事も家のことも完璧でなければいけないと思っていました。ただ,どんなに無理をしても,「お迎えの時間」がきます。この時間までは全力で仕事をし,帰宅後は全力で家事と育児をし,早く寝る。これが私の生活スタイルに定着しつつあります。これが維持できるのも,現状を理解してくださり,配慮をしてくださる学科の先生方のおかげです。家事全般を完璧にこなせてしまう主人と,よく食べ,よく遊び,よく寝る子どもたちにも,支えられています。今では,「2児の母親にはみえない」のは,それだけ仕事をしているように周囲には見えていることだと都合よく解釈をすることにし,「大学教員にはみえない」くらい様々なことを楽しむことで,広い視野を維持し,充実した日々を過ごすことができるのだと思っています。
最後に,家庭と仕事は自分なりには両立できているように感じますが,「研究」が入ってくると話は別です。研究はやりたいことがたくさんあるのですが,落ち着いて取り組むことができていません。改めて考えてみると,家庭と仕事,研究とのバランスがとれるようになることが,ワークライフバランスが保つことができている状態のようにも思います。今後は,このバランスがとれるように努力したいと思います。
表 私のキャリアパス
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