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特設ページ

COVID-19の感染拡大に伴う危機的な状況下において,患者のケアに当たる心理学の教育研修プログラムの指導者および研修生へのアドバイス
(Advice for psychology supervisors and trainees on caring for patients during the COVID-19 crisis)

原文はこちら

    日本語訳(協力:日本心理学会広報委員会)
  • 高階 光梨(関西学院大学大学院文学研究科)
  • 竹林 由武(福島県立医科大学医学部)

公衆衛生や教育の関係者が新型コロナウイルスの感染拡大の動向を注視している中,ここでは,心理学の教育研修プログラムの指導者(スーパーバイザー)や研修生に向けて,患者へのケアにあたる上での状況変化にどのように備え,適応するかについてアドバイスを提供します。


Advice-for-psychology-supervisors-and-trainees

訳者注:以下の情報の多くはアメリカの医療保険制度に基づくものであり,現時点で日本にそのまま適用できるものではございません。



COVID-19の感染拡大に伴う危機的な状況下において,患者のケアに当たる心理学の教育研修プログラムの指導者および研修生へのアドバイス

所属機関に相談して指導を受ける

あなたの施設でのCOVID-19に対応した新たな手続きや決定が,研修プログラムや患者へのケアにどのように影響するか,管理責任者に相談してください。状況は常に変化しているので,各施設の責任者は決定内容や手続きを継続的に再評価し,改訂する可能性があります。最新の情報を確認してください。

想定外の事態に備える

お住まいの地域の公衆衛生のために,社会的距離の確保(social distancing) ,急速な感染拡大(アウトブレイク)の可能性,あるいは検疫に関する要請が発せられる可能性があります。このような状況は,学生や研修生にとって,予期せぬ状況に柔軟に対応する方法を学ぶよい機会となります。心理学的なサービスの提供方法の変化にどう対処するか話し合いましょう。緊急時の応答計画を作成し,患者やその家族,そしてスタッフ間で, 効果的にコミュニケーションをとりましょう。自分自身のケアと職務の優先順位のつけ方やバランスの取り方について指導者(スーパーバイザー)に相談しましょう。

患者とのコミュニケーションプランを作成する

社会的距離の確保が必要な期間,アウトブレイクや隔離措置中に患者やその家族と連絡を取り合う方法を,指導者 (スーパーバイザー) と協力して決めてください。指導者 (スーパーバイザー) は,サービスを提供するために,どのように変化に対応するか研修生と話し合いましょう。留守番電話のメッセージや自動返信メールに,サービスの利用可能な時間帯や変更点などを含めましょう。また,危機にある方に向けた情報(対応方針と手続き)も,留守電や自動返信メールに含めましょう。

遠隔心理学(遠隔心理支援)という選択肢を把握する

所属の医療機関や教育機関の遠隔での健康関連サービスに関する方針や手引きを確認してください。多くの医療センターや病院では,HIPAA1に準拠したプロトコルや科学技術を導入しています。患者への遠隔心理学サービスが提供されているか確認しましょう。また,遠隔通信技術を使っての指導が可能か確認しましょう。遠隔でのスーパービジョンが許可されているか,その際に指導者 (スーパーバイザー) の実際の居場所についての成約が無いか,州のライセンスに関する法律を必ず確認しましょう2。州を越えて遠隔での心理学的なサービスの提供が行われる可能性があるのか,また,あなたの住んでいる州がそれを一時的にでも許可しているかどうかを考慮することが重要です。学術機関によっては,遠隔医療の選択肢がない場合もあり,州の法律は多様であることを覚えておいてください。遠隔での健康関連サービスの適切な利用方法については所属機関に相談し,現在の方針で大学院生が遠隔心理学サービスを提供することが認められているかどうかを尋ねてみましょう。あなたの研修プログラムがAPAの認定を受けている場合は,遠隔での健康関連サービス・遠隔でのスーパービジョンに関するプログラム相談・認定事務局 (Office of Program Consultation and Accreditation on telehealth and telesupervision) の指示を受けてください。遠隔医療に関する情報については,APAのウェブサイトを確認してください(APA website for resources on telehealth) 。


1米国ではHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996:医療保険の携行性と責任に関する法律)に基づき,健康情報の保護,電子的に保持・移動される健康情報のセキュリティに関する国家基準が定められています(厚生労働省, 2010) 。

2米国の各州のライセンスに関する情報はAPA State Licensure and Certification Information for Psychologistsをご参照ください(日本語版はありません)州ごとにライセンスの要件が異なるのは,米国では法律が州ごとに制定されているためです。

患者や地域の不安への対処を支える

COVID-19の感染がさらに拡大するかもしれないというニュースや,社会的距離の確保の必要性に関する報道は,一部の人々を不安にさせています。Eメール,電話,ウェブサイト,ソーシャルメディアを通じて,患者,地域のリーダー,および地域のメディアに信頼できる情報を提供することで,不安を和らげる手助けをしましょう。APAの不安の対処のコツと報道の捉え方の記事(Tips on managing anxiety and putting news reports in perspective)や「心理学の話(Speaking of Psychology)」のポッドキャスト(podcast episode on coronavirus anxiety)を共有しましょう3

3APAのサイトに掲載された「もしも「距離を保つ」ことを求められたなら:あなた自身の安全のために (Keeping Your Distance to Stay Safe) の日本語版」が,日本心理学会広報委員会によって提供されています。

セルフケアを優先させる

自分自身の健康管理を忘れずに行いましょう。患者のニーズを優先したくなるかもしれませんが,自分が病気になってしまうと効果的なケアを提供できないことを忘れてはなりません。適切な衛生習慣を守り,社会的距離を確保しましょう。疾病対策センター(the Centers for Disease Control)のウェブサイトで,新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止(guidance on preventing the spread of coronavirus)に関する最新情報やガイダンスを定期的に確認しましょう4。APAのウェブサイトでは,セルフケアに関する豊富な情報(self-care resources)を提供しています5

4日本では,厚生労働省が「新型コロナウィルス感染症について」というサイトで情報を提供しています。また,新型コロナウイルス感染症の感染の予防に関する情報は厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症の予防」のサイトをご覧ください。

5日本語版はありませんが,セルフケアに関する情報は厚生労働省「こころもメンテしよう」や「e-ラーニングで学ぶ「15分でわかるセルフケア」」 (e-ラーニングpdf版) で提供されています。

自分自身の不安の程度をチェックする

自分自身の不安が患者の体験に影響を与え,質の高いケアを提供する能力の妨げになることもあります。個人的に経験した不安については,指導者(スーパーバイザー)に相談し,支援を求めましょう。その他の情報については,APAのウェブサイト(APA website6)を参照してください。

6日本語版はありません。日本における新型コロナウイルス感染症に関する情報は,厚生労働省「新型コロナウィルス感染症について」というサイトで情報を提供しています。



【COVID-19 アウトブレイク時の心理教育に関するよくある質問】

私のクリニックには心理学の研修生がいます。研修を続けるには、どうすればよいでしょう?

対面での臨床が実施できない場合には,遠隔での実践や指導(スーパービジョン)を利用するのも一つの選択肢かもしれません。初めての場合は,遠隔心理学ガイドライン (APA Telepsychology Guidelines7)やスーパービジョンガイドライン(Supervision Guidelines8)など,最適な実践方法を学ぶようにしましょう。また,資格認定委員や,実習生の場合は実習先の臨床研修の責任者に相談するのも良いでしょう。APAは,北アメリカの州心理学協会合同協議会 (Association of State and Provincial Psychology Boards: ASPPB ) と協働して,スーパービジョンに求められる要件や州の協議会が実施する可能性のある変更についての情報収集に取り組んでいます。遠隔によるスーパービジョンがどのように役立つかについてのさらなる情報は,こちらの記事(How remote supervision can help9)を参照してください。

7日本語版遠隔心理支援ガイドラインは現在翻訳中です。

8日本語版はありません。

9日本語版はありません。

私はAPA認定の研修プログラムに参加しています。研修生が遠隔での実践や遠隔スーパービジョンを行ってもよいでしょうか?

研修生は遠隔での実践や遠隔でのスーパービジョンを行うことが認められています。APAの認定委員会 (APA’s Commission on Accreditation) は,この前代未聞の事態にこれらの手段の使用を拡大する必要があるかもしれないと認識しています。プログラムに関する質問はAPAプログラムコンサルテーション・認定事務局 (the APA Office of Program Consultation and Accreditation) までお問い合わせください。10

10日本語で対応可能な連絡先はございません。

11 日本語版はありませんが,日本における新型コロナウイルス感染症に関する情報は,厚生労働省「新型コロナウィルス感染症について」というサイトで情報を提供しています。



多くの疑問が残っていることは承知しております。状況が急速に変化する中、最新の情報を提供するために取り組んでいます。最新情報については,APAのウェブサイト(APA website)をご覧ください。

2020年3月17日


この記事は,アメリカ心理学会(American Psychological Association: APA)公式Webサイトに掲載された記事 "Advice for psychology supervisors and trainees on caring for patients during the COVID-19 crisis を,アメリカ心理学会の許諾を得て日本語に翻訳したものであり,翻訳の質や正確さの責任は日本心理学会広報委員会にあります。なお,この記事をAPAの許諾なく複製・再配布することを禁止します。ご紹介くださる際は,必ずこのページを引用して下さい。


This material originally appeared in English as [Advice for psychology supervisors and trainees on caring for patients during the COVID-19 crisis. https://www.apaservices.org/practice/news/psychology-training-covid19]. Copyright 2020 by the American Psychological Association. Translated and Adapted with permission. The American Psychological Association is not responsible for the quality or accuracy of this translation. This translation cannot be reprinted or distributed further without prior written permission from the APA.