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3. ガイドラインについて(About the Guidelines)

ガイドラインについて(About the Guidelines)

ガイドラインの必要性:

サービスの提供における通信技術の役割が拡大し,心理支援の実践に役立つ可能性のある新しい技術が継続的に開発されてきていることは,この分野での実践ガイドラインをつくる必要性を示唆しています。情報技術は,クライエント・患者が心理支援サービスへアクセスする機会を増やします。地理的位置,病状,精神医学的診断,経済的な制約,その他の障壁によって制限されていた人も,情報技術の利用により,質の高い心理支援サービスにアクセスできるようになる可能性があります。また,情報技術は,新しい方法を使った心理支援サービスの提供(例えば,オンラインでの心理教育,双方向のビデオ会議を利用した治療)を容易にし,従来の対面での心理支援サービスを拡大させます。近年のAPA人材育成センター研究による調査データ(APA Center for Workforce Studies, 2008)や遠隔心理支援の専門的な文献(Baker & Bufka, 2011)においても,医療サービスの提供者である心理士が情報技術を使って,様々なサービスを提供するケースが増えていることが示されました。遠隔での健康関連サービスの利用や支払いがメディケアや民間企業の間で増えていることに伴い,遠隔心理支援の全国的な実践ガイドラインの必要性が徐々に高まってきていおり,州や国際的な心理学学会の中には,すでに心理支援サービスの提供のためのガイドラインを開発したところもあります(Ohio Psychological Association, 2010; Canadian Psychological Association, 2006; New Zealand Psychological Association, 2011)。

ガイドラインの開発:

本ガイドラインは,米国心理学会(APA),州の心理学委員会(ASPPB),米国心理学会保険信託(APAIT)の3つの団体によって設立された「心理学者のための遠隔心理支援ガイドライン開発のための合同特別委員会(遠隔心理学特別委員会)」によって作成されました。これらの団体は,倫理・規制・法律・実践を含む多くの専門的な側面から,意見・専門知識・ガイダンスを提供しました。遠隔心理学特別委員会のメンバーは,情報技術の使用,倫理的配慮,ライセンスと流動性,実践範囲などに関わる問題の知識を含め,心理学の専門家として幅広い関心と専門知識を代表しました。

遠隔心理学特別委員会(The Telepsychology Task Force)は,遠隔でのコミュニケーションのための情報技術が心理士に様々な機会と挑戦を提供すると考えています。遠隔心理支援は,心理士がクライエント・患者にサービスを提供する能力を高めるだけでなく,遠隔でコミュニケーションするための情報技術が無ければ不可能であった心理支援サービスへのアクセスを大幅に拡大することができます。これらのガイドラインを作成するにあたり,遠隔心理学特別委員会は,この分野の心理士に対するガイダンスの必要性,遠隔心理支援の実践に関連した無数の複雑な問題,そして彼らや他の実践者が情報技術の使用において日々取り組んでいる経験について,多くの時間をかけて検討し,議論しました。そこでは,遠隔でのコミュニケーションのための情報技術を用いた心理支援サービスの提供における,対面でのサービス提供とは異なる独自の側面の特定に焦点が当てられ,以下の2 つの重要な点が特定されました。


  • ・遠隔でのコミュニケーションのための情報技術を利用するための心理士の知識と能力。
  • ・情報技術を利用する際に,安全性や機密性に関わるリスクの高さについてクライエント・患者の理解を十分にする必要があること。

  • したがって,遠隔心理学特別委員会のメンバーがこの文書の中で最も注目している問題は,情報技術を使用する際に,遠隔心理支援を提供するための心理士の知識と能力についてと,クライエント・患者が安全性や機密性に関わる高いリスクについての十分に理解する必要性についてです。

    特別委員会のメンバーによって議論されたもう一つの重要な問題は,司法権利管轄区域が異なる地域間での実践についてでした。ガイドラインでは,司法権利管轄区や国際的な国境を越えて心理支援サービスを提供する際には,関連するすべての法律や規制に心理士が精通し,それを遵守することを奨励しています。ガイドラインは,司法権利管轄区域が異なる地域間での実践の発展と調整を行ううえでの特定の手順を提示していません。しかし,現在はまだ管轄区や国際的な国境を越えるときの心理支援サービスの調整について手順がありませんが,遠隔心理学特別委員会は,技術の急速な進化や,米国の防衛省(the U.S. Department of Defense)・退役軍人省(the U.S. Department of Veterans Affairs)のような連邦政府で働く心理士の間で遠隔心理支援の利用が増加していることを踏まえると,司法権利管轄区域が異なる地域間での実践を可能にする手順を開発することになると指摘しています。

特別委員会について:

遠隔心理学特別委員会は,米国心理学会(APA)と州の心理学委員会(ASPPB)を代表する4名と,米国心理学会保険信託(APAIT)を代表する2名からなる心理学者で構成されていました。遠隔心理学特別委員会の共同議長は,リンダ・キャンベル博士とフレッド・ミラン博士,その他のメンバーは,マーゴ・アダムス・ラーセン博士,サラ・スマッカー・バーンウェル博士,ブルース・E・クロウ大佐・精神科医,テリー・S・ゴック博士,エリック・A・ハリス教職博士・法務博士,ジャナ・N・マーティン博士,トーマス・W・ミラー博士,ジョセフ・S・ラッロ博士です。APAのスタッフ(ロナルド・S・パロマレス博士,ジョーン・フロイント,ジェシカ・デイビス)とASPPBのスタッフ(スティーブン・デマーズ教職博士,アレックス・M・シーゲル博士・法務博士,ジャネット・ピピン・オーウィグ)は,遠隔心理学特別委員会に直接的にサポートしてくれました。それぞれの機関から資金が提供され,その資金は2011 年と 2012 年に行われた特別員会の対面会議と電話会議を実現するのに使用されました。本草案は APA の方針として,APA による最初の認定日から 10 年以内に失効する予定です。失効後は,本文書が有効であることを確認するために 米国心理学会実践理事会(APA Practice Directorate) に連絡してください。