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特設ページ
5. ガイドライン2: 遠隔心理支援サービスの提供における標準的なケア
(Guideline 2: Standards of Care in the Delivery of Telepsychology Services)
心理士は,自らが提供する遠隔心理支援サービスの開始時,および治療過程を通して,ケアと実践に関する倫理的・専門的基準を保証するために,あらゆる努力をします。
根拠:
対面での心理支援サービスを提供する際に必要とされる専門的な実践と同等の倫理的・専門的なケアの基準を,遠隔心理支援サービスを提供する心理士は適用しています。心理支援サービスの提供において,遠隔でのコミュニケーションのための情報技術の導入は比較的新しく,急速に発展している分野です。そのため,心理士は,心理支援サービスにおける支援方法が適切で,効果的で,安全であるかを判断するために,遠隔心理学の実践に取り組む前,および実施の過程を通じて,これらの情報技術の利用が適切であるかどうかを判断,評価するために,特に注意を払うことが推奨されています。
遠隔心理学は,多様な情報技術(例えば,双方向的なテレビ会議,電話,ショートメッセージ,電子メール,ウェブサービス,モバイルアプリケーションなど)を利用した,様々な心理支援サービスを包含しています。飛躍的な進歩を遂げている遠隔心理学の研究によって,対面での介入と比較して,特定の双方向的な遠隔心理学的介入(テレビ会議や電話を利用して提供される特定の心理療法)の有効性が示唆されています。したがって,心理士は,遠隔心理支援サービスを提供する前に,クライエント・患者に提供する遠隔心理支援サービスが適切であるかどうかを判断するための初回アセスメントを行うことが求められています。初回アセスメントには,クライエント・患者の特定のニーズに対して遠隔心理支援サービスを提供する際の潜在的な危険性と便益の検討,生じる可能性のある多文化的・倫理的な問題についての検討,サービスの提供に最適な媒体(例:ビデオ電話会議,ショートメッセージ,電子メールなど)や利用可能な最良のオプションの検討などが含まれます。また,同等の対面でのサービスが利用可能かどうか,なぜ遠隔心理学により提供されるサービスが対面によるサービスと同等であるのか,あるいは対面によるサービスよりも好ましいのかを検討することも含まれます。さらに,心理士はサービスを提供している間,遠隔心理支援サービスを提供することの適切性を継続的に評価することが求められています。
実践への適用:
遠隔心理支援サービスを提供する際には,そのようなサービスに対するクライエント・患者の好みを考慮することが重要です。しかしながら,クライエント・患者の好みだけでサービスの適切性を判断することはできないでしょう。遠隔心理支援サービスを提供するかどうかを決定する際に,心理士は,遠隔心理支援サービスを提供することで得られる特有の利点(例えば,治療へのアクセス,コンサルティングサービスへのアクセス,クライエントの利便性,クライエントの特別なニーズへの対応など)と,特有のリスク(例えば,情報セキュリティ,緊急時の管理など)とを慎重に比較検討することが推奨されています。また,心理士は,地理的場所,組織文化,(心理士およびクライエント・患者の)技術的な能力,そして,必要に応じて,病状,心理状態と心理的安定性,精神医学的診断,現在または過去の物質使用,治療歴,治療上のニーズといった,提供する遠隔心理支援サービスの適切性の評価に関連する可能性のある要因について心得ておきましょう。さらに,心理士は,提供される遠隔心理支援サービスの危険性や利点をクライエント・患者に伝え,そのやりとりを文書化することが推奨されています。加えて,心理士は,これらの論点についての積極的な話し合いを促進したり初回アセスメントを行うために,クライエント・患者との最初の交流を対面で行うことを考慮することがあります。
従来のサービスの提供と同様に,心理士は実証的な文献や専門的な基準(多文化への配慮を含む)が記載されているサービス提供のベストプラクティス,および提供している遠隔心理支援サービスの支援方法に関する専門的な基準に従うように努めます。また,心理士は,クライエント・患者が遠隔心理支援サービスをうける際に必要な情報技術への精通度や能力を考慮します。さらに,多文化への配慮や,遠隔心理支援サービスの提供中に発生しうる緊急事態の最善の対処法を考えることが推奨されています。
心理士は,サービスが提供される遠隔での環境を慎重に評価し,遠隔心理学によって提供される介入の有効性,プライバシー,および(または)安全性にどのような影響があるかを判断することが推奨されています。このような遠隔環境の評価には,クライエント・患者の家庭内や組織内の状況,緊急時対応・技術者・サポートの利用可能性,気が散るリスク,プライバシー侵害の可能性,遠隔心理支援サービスの効果的な提供に影響を与える可能性のあるその他の要因についての話し合いが含まれます。心理士はこれらの要因を遠隔で操作することは出来ません。ですので,この考えに沿って,心理士は,セッションが中断されないようにすること,また,提供されたサービスの効果を最大化するために,快適で進歩を助長するような環境にすることについて,クライエント・患者と十分に話し合うことが推奨されます。
心理士は,遠隔心理支援サービスを提供する際には,定期的にクライエント・患者の経過をモニタリングし,評価することで,遠隔心理サービスの提供がクライエント・患者にその時点においても適切で有益なものであるかどうかを判断することが求められています。もし,クライエント・患者に大きな変化があった場合や,治療関係に懸念が生じるようなことが起こった場合には,心理士は,遠隔心理学によって提供されるサービスの適切性を調整し,再評価するための適切な措置を講じるために,合理的な努力を行います。遠隔によるサービスを継続して提供することがもはや有益ではない,あるいはクライエント・患者の精神的・身体的な幸福を損なう危険性があると考えられる場合には,心理士はクライエント・患者と十分に話し合い,適切な通知をもって遠隔サービスを然るべく終了させ,必要な代替となるサービスをクライエント・患者に紹介したり,提供したりすることが推奨されます。