認定心理士の皆様、あけましておめでとうございます。昨年からほぼ1年間、皆様におかれましても息苦しい(マスクのせいだけではなく)生活を過ごされたのではないかと思います。日本心理学会ではかなり早い時期に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連ページ」(https://psych.or.jp/special/covid19/)を立ち上げ、特に海外の心理学会の様々な対策を紹介してまいりました。また、研究者向けには「新型コロナウイルス感染拡大に関連した実践活動及び研究」(https://psych.or.jp/2020_covid)の募集を行い、15件に助成を行いました(https://psych.or.jp/jishinjoho/2020_COVID-19_grant/)。また現時点で、編集委員会では、「新型コロナウイルス感染症と心理学」の特集を「心理学研究」誌で行うべく、原稿を募集しているところです(https://psych.or.jp/publication/sp_JJP/)。
すでにご存じと思いますが、昨年からの認定心理士に関わる新しい活動として、いくつものシチズン・サイエンスのプロジェクト(https://psych.or.jp/authorization/citizen/)が立ち上がっています。しっかりとした心理学の基盤を学んだ一市民として、ご自身を磨かれるとともに社会に何らかの貢献を果たしていこうとするこうした活動に、積極的に認定心理士の方々が参加していくことは、社会における新しい学問の姿を予感させるものと言え、それに日本心理学会が関わっていることを、とても誇らしく感じております。
このプロジェクトには、いろいろな可能性があると思います。特に、心理学は行動の理解をその専門としているので、それこそ新型コロナウイルス感染症などのパンデミック下での人々の行動を理解し変容させていく上で、大きな学問的な支援ができるはずです。
最近、大阪大学経済学研究科の松村真宏准教授の研究に接しました(https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/storyz/special_issue/research_topics_nl75/201703_special_issue03)。松村氏は「仕掛け」(その定義によれば、「問題解決に資するよう人の行動をいざなうもの」)に興味があります。例えばこのコロナ禍の中では、ライオン像の口の中に手を入れるとアルコール消毒液が出てくるようにすると、人々がすすんで消毒するようになるとか、スーパーのレジの前の床を双六盤のようにすることで、買い物客が楽しんでソーシャル・ディスタンスを取ってくれるとか、こうした「仕掛け」を考え出していらっしゃいます。
こうした「仕掛け」は、ある意味では、行動経済学のナッジ(例えば「実践 行動経済学」日経BP社)、ギブソンのアフォーダンスから出発したデザインの概念(例えば「誰のためのデザイン? 増補・改訂版」新曜社)、発達障害者の作業を援助する時の治具の位置づけ(例えばhttps://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/ld/h18ikeda/jirei29.html)にも近いように見えます。また、エスカレーターの片側を空けたり、先に交差点に入った車から先に通過したりするといった社会的マナーにも共通するものがあるように思います。私の専門である行動分析学(例えば「行動分析学」有斐閣アルマ)でいえば、自然な行動や流暢な行動を生み出す、ある種の随伴性の設計ということになると思います。古い言葉でいえば、行動工学とか心理工学に近い感じがします。
認定心理士の皆さんに、こうした行動工学や心理工学に興味を持ってもらえたらなあというのが、私からの新年のご挨拶です。シチズン・サイエンスほど、しっかりしたものでなくてもいいのですが、データとエビデンスに基づいた日常生活における心理科学の応用をどんどん考えていって、ついでに仲間同士で再現性もチェックしていけば、社会にも発信できる素晴らしいものができると思います。(きっとその中には、元気の出るテレビ会議や、酔っぱらいやすいビデオ呑み会というのもあるかもしれません。社会には発信できないかもしれませんが。)今年も皆様にとって実りある1年でありますことを、心よりお祈り申し上げます。
(日本心理学会理事長:坂上貴之)
あけましておめでとうございます。認定心理士の会も、会員のみなさまのご協力、ご支援のおかげをもちまして、このたび5回目の新年を迎えることができました。世界的に新型コロナウイルスのパンデミックがますます深刻化している現況にあって、このような平凡な新年の挨拶を交わせることがとてつもない価値であることに気づかせてくれた新年でもあります。困難な状況の中で、年明けを迎えられた方も多いのではないでしょうか。
昨年は認定心理士資格制度が誕生してちょうど30周年目の節目の年でした。認定委員会では、これまでに65,000人を超える認定心理士の資格を認定し続けてきました。認定心理士の会の会員数もわずか5年の間に4,500人を越えました。しかしながら昨年は、コロナ禍の中で、予定していた記念行事はすべてキャンセルとなり、またここ毎年3,500名前後の認定心理士が誕生してきましたが、昨年は残念ながら初回審査の件数は約2,500に留まっており、今年度は前年比70%程度の申請になりそうです。
しかしながら、心理学を学んだという証を負託された私たち会員にとっては、この苦難が「すべての人に健康と福祉を」届けるための行動変容を個人レベルで実践したり、正しい予防的な健康知識を草の根レベルで発信したりする好機となるのではないでしょうか。今年はその出発点となることに期待しております。認定心理士の会運営委員会の髙瀬委員長をはじめ各支部の委員の先生方のボランティア精神溢れるご尽力のおかげで、シチズン・サイエンスプロジェクトが産学官民一体となってますます多様に展開されつつあり、会員の方の活躍の場がさらに拡大しつつあり、認定心理士の社会的認知も高まってきています。
また、このニューズレターが発行される頃には申請受付が始まっているかと思いますが、心理調査士(通称)「正式名称:認定心理士(心理調査)」資格申請について、すでに認定心理士の資格を有している人にもいよいよ資格申請の門戸を開くことができました。会員の方には、認定心理士資格の上位的な資格の意味合いを持つ心理調査士資格(通称)の取得にチャレンジいただければと願っております。申請につきましての詳細は、昨年末に学会のホームページにご案内しておりますのでそちらをご参照ください。
今後とも、認定心理士の会を中心にして、認定心理士のみなさまのご意見やご要望、またご協力やご支援を賜りながら進めてまいりたいと存じます。コロナの収束を願いつつ、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
(日本心理学会資格担当常務理事:津田 彰)
認定心理士の会会員の皆さまは、ご所属に関わらずいずれの支部会のイベントにもご参加いただけます。オンラインによるイベントなど、是非、他支部会のイベントにもご参加ください。
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- 学習理論の臨床現場への応用
- 竹澤みどり先生(富山県立大学・准教授)
- 3月7日(日)午後1時開始予定(開始時間は後日決定)
- Zoomオンライン会場
- 古典的条件づけやオペラント条件づけといった学習理論から、現実場面での困りごとをどのように理解し、解決策を模索し試みるかについてお話ししたいと思います。その際、不登校に対して認知行動療法の技法の一つであるエクスポージャーを活用した事例(竹澤,2016)を紹介しながら説明していきたいと思います。
[参考:竹澤みどり(2016).広場恐怖による不登校に対する認知行動療法的アプローチ 学生相談研究,37(2),81-93.]
北陸支部会が主催する、本年度3回目のオンライン講演会です。交流会も開催予定ですので、北陸在住の方はもちろん、多くの方のご参加をお待ちしております。
(北陸支部会:松井三枝・伏島あゆみ)
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中国・四国支部会では、公開セミナーをZoomオンライン会場にて開催します。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
- 「司法・犯罪領域における心理学の貢献」
- 2021年2月27日(土)13:30~15:30 (受付 13:15〜)
- Zoomオンライン会場
- 平 伸二(福山大学教授 / 犯罪心理学)
- 公認心理師の領域として「司法・犯罪」が組み込まれたことで、この領域における心理学の役割の重要性が高まっています。本セミナーでは、近年の犯罪減少の原因として考えられる「防犯環境設計」「割れ窓理論」、公判で証拠能力も認められている「ポリグラフ検査」、犯罪被害後のサポートをする「犯罪被害者支援」という、私が携わってきた「防犯」「捜査」「支援」を紹介し、これからの司法・犯罪領域における心理学の貢献について議論できればと思います。
- 13:30〜13:35:開会あいさつ 宮谷真人(広島大学 / 認定心理士の会 中国・四国支部会 会長)
13:35〜15:00:講演
15:00〜15:30:質問コーナー
司会 山崎理央(福山大学 / 認定心理士の会 中国・四国支部会 運営委員) - 無料
- 100名(事前申込制・先着順)※認定心理士でない方も参加いただけます。
- Zoom Video Communications 社が提供するweb会議サービス「Zoom」を使用することでご参加いただけます。録画・録音はご遠慮ください。インターネットに接続しているパソコン、タブレット、スマートフォンが必要です。パソコンの場合は、ビデオカメラとマイク(パソコンにセットされていない場合はヘッドセット) が別途必要となります。通信料は参加者負担となります。
- 日本心理学会ホームページにてご案内します。以下の申し込みサイトより、該当のイベント名と開催日をご確認の上、必要事項を入力してお申し込みください。お申し込みされた方には、申込しめきり日以降に参加方法をご連絡させていただきます。(https://psych.or.jp/authorization/ninteinokaievent/)
- 2021年2月19日(土)
(中国・四国支部会:宮谷真人・森岡陽介・山崎理央)
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九州・沖縄支部会では、「心理学は学校、教育、学びにどう関わるか?」というテーマのもと、公開シンポジウムを開催します。会場はZOOMオンライン上で、開催日時は2021年2月28日(日) 13:00〜16:00となります。
本シンポジウムでは、学校、教育、学びという人の営みをより豊かにするうえで、人の心の理の学問である心理学がどのように貢献できるかについて考えます。最初に、鹿児島大学の稲垣勉先生より、「意識されにくい心の影響」というタイトルで話題提供をいただきます。次に長崎大学の前原由喜夫先生より、「心理学は教育現場で役に立たない?」というタイトルでお話しいただきます。最後に、鳴門教育大学の内田香奈子先生より、「いじめ予防のために心理学ができる学校教育」について話題提供をいただきます。各先生のご講演の概要については、https://psych.or.jp/authorization/20210228_kyuoki/をご覧ください。
参加ご希望の方は、申込専用サイト(https://www.kokuchpro.com/event/nokai20210228/)からお申し込みください。皆様のご参加をお待ちしております。
(九州・沖縄支部会:分部利紘)
【北海道】北海道支部会イベント開催報告:オンライン講演会
北海道支部会イベントとして、2020年11月1日(日)13〜14時にオンライン講演会を主催いたしました。例年本イベントは、北海道心理学会の年次大会との合同開催で実施しておりましたが、今年はコロナ禍で北海道心理学会がオンライン開催となりましたため、本イベントも単独でZoomのウェビナーにより実施しました。
ご講演者は、阿部修士先生(京都大学こころの未来研究センター・准教授)、ご講演題目は、「嘘と正直さの認知神経科学」です。まず前半では、孟子の「性善説」、荀子の「性悪説」という哲学的なテーマから始まり、次にコイントス課題という実験参加者が自発的に嘘をつく機会がある課題を用い、参加者の前頭前野の脳活動および金銭報酬に対する感受性について検討された研究成果をご紹介されました。後半では、反社会性パーソナリティ障害である「サイコパス」ついてお話いただきました。サイコパスは平然と嘘をつくことが特徴とされていますが、米国刑務所内のサイコパスを対象にして移動式のMRI装置を用いて脳活動を計測した実験から、サイコパス傾向と葛藤などの検出に関わる前部帯状回とに関係がある点をご紹介いただきました。最後の質疑応答では、ZoomのQ&Aから多数の質問があり、阿部先生にはお時間の許す限り丁寧にお答えいただきました。また講演後は引き続きZoomにて北海道地区の認定心理士の交流会を行いました。心理資格やキャリアパス等の話題で1時間半ほど盛り上がりました。
イベントの事前登録者は305名、当日の参加者は215名(うち認定心理士は182名)であり、オンライン開催ということもあってか例年以上に盛況に終わりました。来年度も、対面かオンラインか、あるいはハイブリッド開催になるかはまだ未定ですが、引き続き実施する予定ですので是非ご参加ください。
最後にお知らせですが、北海道支部会のFacebookグループが立ち上がりました。北海道地区にお住まいの認定心理士の皆さまは是非ご登録ください。
※認定心理士の会北海道支部:https://www.facebook.com/groups/801083160700345
(北海道支部会:小川健二・河原純一郎)
【東北】東北支部会イベント開催報告:東北支部会主催シンポジウム
2020年12月19日(土)13時よりZoomオンライン会場にて東北支部会主催シンポジウムを「災害の記憶を未来に活かすために―心理学と情報学の観点から」と題して開催いたしました。東北支部会では2016年の初回シンポジウムより継続的に災害にまつわる心理学をテーマとして取り上げてきました。そして今回は、災害の経験、記憶、知識を過去のものとするのではなく、災害情報を未来へ、次世代へ受け継いでいくことに着目した災害心理学と情報学の最新の研究成果をお伝えするシンポジウムを企画いたしました。
シンポジウムでは、東北支部会会長の阿部恒之先生(東北大学)から「災害の記憶~災害碑・災害文化・シチズンサイエンス」という題目でご発表いただきました。災害の記憶を途絶えさせないための災害碑がその機能を発揮するにはどうしたらよいかを市民の方々と一緒に研究していくというシチズン・サイエンスプロジェクトの話に始まり、科学の力(災害発生のメカニズム、被害の推定精度を上げて正確な警告を発信する)と歴史の力(低頻度巨大災害の記録を今に活かす)を借りて、災害経験や対処を「災害文化」として定着させていくことの重要性が指摘されました。
災害情報・伝承学を専門とされる佐藤翔輔先生(東北大学)からは「3.11の前と後をとりまく震災の記録・継承・記憶」という題目でご発表いただきました。様々な災害伝承の在り方を紹介していただくとともに、その災害伝承が実際に被害を減らすことにつながりうるということを数々のデータと実例を組み合わせてご発表いただきました。そしてこれからの災害伝承として、各地の語り部・ガイドの方々をつないで伝承活動をより充実したものにする活動を展開しているネットワーク・組織や、災害伝承に関わる施設をつなぐネットワークの紹介がなされ、持続可能な災害伝承についてお話がありました。
本多明生先生(静岡理工科大学)からは、「来るべき災害に備えて~幼保施設の防災対策の現状と課題」を発表いただきました。幼保施設における防災対策に関する実態調査の結果にもとづいて、「災害時の心のケア」まで行われている施設が少ないこと、そして保護者との情報共有にも課題があることが指摘されました。こういった傾向は全国的なものであることも併せてお示しになり、「災害時の心のケア」に関する情報の普及が急務ではないかとのメッセージが発せられました。
最後は、自然災害から人々が立ち直る過程における宗教の役割を研究されている木村敏明先生(東北大学)から指定討論として、市民の方々がサイエンティストとして災害碑の機能を研究する可能性について、外部の人間が語り部になることができる可能性について、地域社会との連携の可能性という本シンポジウムで示された災害伝承のさらなる展開についてコメントいただきました。当日は聴衆の方々からも多くの質問がよせられ、従来から注目されてきた災害にまつわる心の問題のみならず、災害体験を次世代に伝えていくことへの関心の高さが伺えました。
(東北支部会:河地庸介)
【北陸】北陸支部会イベント開催報告:“オンライン講演会 in 北陸”(2020/12/5)
今回は「ものづくり心理学のすすめ」というテーマで、神宮英夫先生(金沢工業大学)にお話しをいただきました。講演会の参加者は102名、その後のお茶会の参加者は22名で、全国各地の方々にご参加いただきました。
心理学を応用して、お客様の心を動かすものづくりやこと(イベント)づくりを目指した事例を、たくさんご紹介いただきました。私たちが「おいしい」「楽しい」と感じる、実際の状況や文脈などの日常性を大切にした、「人」と「もの・こと」とのかかわりの考え方に触れる時間となりました。先生の研究のルーツ(フロイトの「無意識」に関して)も含めてお話いただき、多くの方が興味を持って聞いていただけたようでした。特に、今回は実際にものづくりに従事されている参加者の方が多くいらっしゃいました。講演後の質疑応答も、チャットを用いて、多くの方から質問をいただきました。
オンラインお茶会では、様々な地域の認定心理士の方に、自己紹介や講演の感想、普段の活動などをお話しいただきました。認定心理士の資格を生かして活動している方も、資格を取ったばかりで初めてオンラインでの講演会に参加された方も、幅広く参加していただきました。このような勉強や交流の場があり、非常によかったという思いを共有できる場となりました。そう思っていただけると、企画側としても嬉しい限りです。終了後のアンケートからも、同様に好意的な感想をいただきました。皆様、本当にありがとうございました。
(北陸支部会:松井三枝・伏島あゆみ)
【オンライン支部会】オンライン支部会イベント開催報告1:「3つのシチズン・サイエンスプロジェクトと認定心理士 ―シチズンサイエンスワークショップ開催の説明会も併せて―」
【開催日】:2020年10月24日 オンライン
コロナウイルス感染症が拡大し、様々なニュースが飛び交う今日この頃です。皆様はいかがお過ごしでしょうか。今こそ、心理学の知見を活かす活動が大切な時期なのではないかと感じます。
今日は、10月24日に開催しましたシチズン・サイエンスプロジェクトについてご報告します。
10月24日のシチズン・サイエンスプロジェクトの参加者は、オンライン支部会幹事6名を含む50名(Ⅰ部は一般参加者も参加可能、Ⅱ部は認定心理士限定)で、開催しました。
Ⅰ部では認定心理士の会運営委員会委員長の髙瀨堅吉先生から「3つのシチズン・サイエンスプロジェクト」をご説明いただきました。内容は、認定心理士の資格と課題、世界で広がりつつあるシチズン・サイエンス、学術の課題と社会の課題を解決する立場にいるのが認定心理士でした。
具体的な課題は、認定心理士として資格を取得しても学び・交流の場がない、認定心理士の資格取得のメリットと社会的認知度の低さが課題としてアンケートから明らかになっています。それらを基に、認定心理士の会が2016年4月に立ち上げられ、各支部における企画・運営、日本心理学会の大会での社会連携セクション企画など、様々に活動しているのは皆様ご存知の通りです。
世界では、シチズン・サイエンスという市民を巻き込んだ研究が広まりつつあります。例えば、銀河の渦巻きが右か左か、渡り鳥の生態などです。日本でもこの研究スタイルに着目され始め、内閣府や文部科学省でも注目しております。
そこで、先ほどの課題解決のためにも、認定心理士というアカデミックな資格を活かし研究活動をしようと、シチズン・サイエンスワークショップ(以下CSW)という試みが生まれました。
Ⅱ部は、認定心理士限定でCSWについてご説明いただきました。内容は、坂田省吾先生(オンライン支部会長)、髙瀨先生からⅠ部のサイエンスプロジェクトの次のステップとして、認定心理士の方が自ら研究を計画発表することの意味をご説明いただきました。実際の活動は、次回以降でご報告します。
(オンライン支部会:荻野貴美子)
【オンライン支部会】オンライン支部会イベント開催報告2:第15回 Net de 交流! 認定心理士
【テーマ】社会貢献とビジネスの両立―ソーシャルビジネスと共感の心理学
【開催日】2020年12月18日 オンライン
【講師】島青志氏(慶應義塾大学大学院(SDM)研究科研究員/株式会社Salt 代表取締役)
参加者は50名でした。まず、島氏から「ソーシャルビジネスとは」、「ソーシャルビジネスをどのように設計すればよいのか?」を、短いお時間でお話しいただきました。
従来の一般企業(利益追求)と社会貢献活動(無料奉仕)はそれぞれの目的で活動してきたが、両者は両立し、お互いを伸ばしあう関係でなくては、それぞれにサスティナブル(長続き)に社会に存在していかれない。ではどのように両立していけるか、目の前の顧客や取引先等だけではなく、その先の繋がりの欲求も考えてみる→ 欲求の繋がりの図を書いて、可視化してみる(欲求のつながりが循環することがサスティナブルである)。そして手法としての、「欲求連鎖分析」の紹介と具体例を提示いただきました。
島氏のお話の後、グループに分かれたグループセッションでは、参加者が知っている/携わっているソーシャルビジネスについて話されたグループ、ご自身の具体的な企画をお話されたグループもありました。
また、セミナー開催後に引き続き【フォローアップカフェ】を開催しました。講師の島氏にもご厚意でご参加いただけたので、急遽Q&Aコーナーを設けました。現行の企業の経営方法とソーシャルビジネスの相違、無償ボランティアが多い相談業務の分野をソーシャルビジネスとして構築するヒントなどの話題がでました。
参加された方のコメント:「社会貢献がビジネスと両立するという考え方、目からウロコでした。楽しかったです。ありがとうございました。」「グループでの語り合いもあるのがいいですね。いろいろ話せ、自分とは違う視点を得られます。」
オンライン支部会が開催している「Net de 交流! 認定心理士」は講師のお話と参加者同士がグループに分かれて話す時間を設けています。それは参加者同士の情報交換によって、講師のお話とは別の学びを得ることもあると考えているからです。講義と交流をぎゅっとコンパクトに詰めた90分、参加者の皆様にできる限りの情報を持ち帰りいただきたい!と、オンライン支部会は毎度講師の先生と一緒にプログラムを準備しております。
「Net de 交流! 認定心理士」は今年もいろいろなテーマや分野をご紹介していこうと思いますので、お楽しみに!
(オンライン支部会:池田琴世)
日本心理学会第84回大会において、認定心理士の会は、日本心理学会企画シンポジウムとして「社会のための心理学~心理学高等教育の入口と出口~」というテーマのシンポジウムを開催しました。
現代社会では、心理学が疑似科学としての域を出ない学問と認識されている事実があります。このような誤解は、大学での心理学の意欲的な学びを阻害するだけでなく、心理学の学びを活かした卒業後のキャリアパス形成にも悪影響を及ぼしています。心理学に対する誤ったイメージの形成は、公認心理師資格の誕生により、さらに異なる方向へと拍車がかかることが予想されます。すなわち、心理学高等教育が心理的支援の実践家養成のためだけにあるという誤解です。心理学に対する誤ったイメージに端を発する様々な問題を解決するためには、心理学の正しい知見や、心理学の応用領域への貢献について、社会的な理解を深める必要があります。そこで、今回のシンポジウムでは、中等教育から心理学高等教育へ進む「入口」、心理学高等教育から社会へ進む「出口」に存在する「心理学への誤解」を浮き彫りにすべく、各フィールドで活躍する実践家に話題提供頂きました。さらに、心理学を学んだ人材が心理的支援以外のキャリアパスを構築する際のロールモデルとして、社会で活躍する認定心理士に話題提供頂きました。
話題提供者(※敬称略)と発表テーマは次の通りです。
- 木村和貴(郁文館グローバル高等学校)
「心理学高等教育に対するイメージ~入口から」 - 増本全(リクルートキャリア 就職みらい研究所)
「心理学高等教育に対するイメージ~出口から」 - 本園大介(認定心理士の会)
「心理学を学んだ人材のキャリアパス-実践例」
また、シンポジウムの最後に以下のお二人の先生から指定討論頂きます。
- 丹野義彦(東京大学)
「心理学を学んだ人材の多様なキャリアパス」 - 河原純一郎(北海道大学)
「基礎心理学の学びと社会接続」
今回は、新型コロナウイルスの影響でオンライ開催となりましたが、新しいかたちでの開催形態を採ることで、参加される皆様と、これまでにない交流が展開できたと考えております。
内容の詳細につきましては、本シンポジウムを共同で主催した日本学術会議心理学・教育学委員会社会のための心理学分科会がまとめた記録に掲載されています(http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kiroku/1-20200910.pdf)。ぜひご覧ください。
(認定心理士の会運営委員会委員長:髙瀨堅吉)
「認定心理士の仲間たち」では、認定心理士資格を持つ方々に寄稿していただき、会員同士が“つながるきっかけ”になればと考えています。
松本 留美さん
わたしと心理学との関係は、学生時代に教育学部で教育心理を専攻しなかったことにはじまります。その後小学校教員として様々な小学生と話し、地域で不登校の子に出会い、退職した後も家族関係や子育てで迷い、学生時代に一番興味のあった教育心理学を専攻しなかったことをいつも後悔していました。その後転勤族の生活(北海道から九州まで)が落ち着いて当分の間千葉県に住むことになった事がきっかけで、放送大学で心理学を学びはじめました。20年ぶりの大学生、放送授業、対面授業、単位認定試験、学ぶことがとても楽しく充実していました。科目履修で認定心理士を取得してからは市民活動で不登校の相談や親の会の活動に参加し、現在は小学校の相談室で働きながら放送大学大学院に在籍しています。
仕事については新型コロナ感染症の影響抜きには語れません。勤務している小学校でも緊張の中で教育活動が行われています。小学生は学校でも家庭でもおとなの様々な事情に気を使って生活しています。集団行動が苦手な子も行事が中止・縮小になってほっとするばかりでなく、がっかりしている友だちを思い、胸を痛めています。子どもたち、先生方、保護者の方のご相談をお受けしながら、マスクでも伝わる笑顔を研究し、相談室の備品を消毒する毎日です。また市民活動の不登校・親の会は時間と人数を制限して活動しています。月1回オンラインでの開催をはじめたところ遠方にお住まいの方にも参加しやすくなったと好評です。
オンラインといえば、わたしが在籍している放送大学大学院の修論ゼミは今年度はオンラインで行われています。M2になると同時に緊急事態宣言、職場も休校で自宅に籠もる日が続き、仕事も研究もできないと不安で押し潰されそうになった時、オンラインゼミの明るく前向きな仲間と、対面時と変わらぬご指導をくださった先生方に救われた気持ちになりました。それぞれの場所で同じ時間を共に過ごす、温かな繋がりをオンラインで得ることができたのです。そして修了後について考えはじめた時に「シチズン・サイエンス」という言葉を知りました。「シチズン・サイエンス・ワークショップ」は研究の楽しさとオンラインの良さを知ったわたしへの贈り物ではないかと思ったほど嬉しく、ワクワクした気持ちで参加申込をしました。説明会、Slackと第1回の課題を経た今は、シチズン・サイコロジストへの道のりの一歩目の足を持ち上げたところ。きっと3回のワークショップが終わった頃には小さな一歩を踏み出すことができていると思います。ご指導くださる高瀬先生、オンライン支部会の皆様に感謝申し上げます。
わたしは子どもの気持ちを知りたくて心理学を学びはじめましたが、仕事でも市民活動でもわからないことや知りたいことが泉のように湧いてきます。シチズン・サイコロジストとして歩み続けられることは大きな喜びです。皆さまどうぞよろしくお願いいたします。
(松本留美)
後藤 聡子さん ―シチズン目線で架け橋に―
幼い頃から身も心も不器用でどっしり座り込むとなかなか動かないタイプ。
決して社交的とはいえない私が唯一[人のために]にだけは自ら進んで動くことを親が心配し、「もっと自分のために欲を出しなさい」とよく言われていたことを覚えています。幼少期からずっとボランティア活動に身を置いて育ち、母となってからは保護者と学校の架け橋として動くことは当たり前の日々。私の生きる原動力は、人と関わることとなっていました。発達やお身体に障がいがある方、そのご家族との寄り添いも多く、社会福祉の視点に心理学を学問的に深めることを加えたら、自身の核を強化し、お相手のさらなる安心感に繋がるのではないかと考えるようになりました。大の苦手な統計にも覚悟を決め、一念発起し認定心理士の資格取得を目指し再入学。主婦業と学費捻出の為の新たなる仕事にもチャレンジしながら履修した日々は、大変ではありましたがとても有意義で自分の財産となりました。無事資格取得後、認定心理士の会主催の研修会があると知り即申し込み参加。帰り道、沢山の仲間と共に新しい知識に触れた高揚感でいっぱいになり、都内まで電車を乗り継ぎ決して近くない道のりも自身が誇らしく感じられ、資格取得の実感が初めて湧いた事を覚えています。その後「Net de 交流! 認定心理士」を知り、地方に住む私は嬉しくて飛びつき数多くの参加を重ねております。
参加するうち、幹事の方々が認定心理士の社会的認知度の向上や社会貢献を目指し活動している事も知りました。微力ながらお手伝いできないかと考え始めた頃、台風により地域も我が家も甚大な被害を受けました。人生のイベントは様々経験してきたつもりでいましたが、被災するということがこんなにも人の心に大きく影響する事を身をもって知ることとなりました。コロナ禍で長く続く復興の中、励ましが素直に受け取れないことも経験し、心の傷の深さとの向き合い方に戸惑うことも。自然災害というとてつもなく大きな相手に、自身も地域も起きたことの受容ができない根深さを思い知り押しつぶされそうになる中、この心の変化をきちんと記録しこれからの誰かのために役に立てることはできないかと考え始めました。そんな時プロジェクトを知り高瀬委員長発信の「認定心理士と共創でシチズンに根ざしたこれからの心理学を作る」との主旨に強く共感し、社会課題を炙り出し認定心理士目線で研究をすること、そしてアカデミアに繋ぐ架け橋でもありたいと参加を決意しました。力不足や復興半ばで白旗上げてしまったこともありますが、各自の課題を抱えながらも互いを支え合い、社会を担う一翼でありたいと願う参加者の皆さんとのご縁に恵まれ、共に学び歩める喜びに心より感謝し活動進行中です。地元では臨床美術士としてアート制作を通じ自己肯定感を高めるアプローチや、社会教育委員として行政と市民の架け橋として皆が笑顔になれることを目指し活動しております。
コロナ禍で不安が募る中、多様化する生き方に生きづらさの質も変わりつつあります。「煩わしくもやっぱり人って愛おしい」との思いをベースに、私らしくシチズン目線を武器に、社会に役立つこれからの心理学を目指し共創活動を深めていきたいと思います。
(後藤聡子)
シチズン・サイエンスとは、市民が行う研究活動のことです。シチズン・サイエンスは世界的に広がりを見せており、研究を職業とする科学者や公的な研究機関と協調して行われることもあります。日本心理学会は、認定心理士の皆様と研究を行い、これからの心理学を共に創り上げることを目的に、シチズン・サイエンスプロジェクトを始めました。詳細はホームページ(https://psych.or.jp/authorization/citizen/)をご覧ください。ホームページには、日本心理学会がなぜ認定心理士の皆様とシチズン・サイエンスプロジェクトを推進しているのかを説明する動画がアップされています(https://youtu.be/RaSNCCiIG1Y)。こちらもぜひご覧ください。
シチズン・サイエンスプロジェクトでは、これまで、神奈川県との共同プロジェクトである「アプリケーション『マイME-BYOカルテ』に実装された『未病指標』の操作性の検討」、株式会社三菱総合研究所との共同プロジェクトである「高齢者の社会参画を促進する方法を検討するための、人との繋がり状況の調査」、株式会社電通・株式会社電通マクロミルインサイトとの共同プロジェクトである「サイコロロジック・プロジェクト」が実装され、非常に多くの認定心理士の皆様にプロジェクトにご参加頂きました。
神奈川県との共同プロジェクトは、既に成果報告書をまとめて神奈川県に提出し、県より認定心理士の皆様のご協力に対する感謝を頂きました。今後、認定心理士の皆様のご活躍を、適宜、県から周知いただけるとのことです。また、株式会社三菱総合研究所との共同プロジェクトでは、現在、認定心理士の皆様より頂いたデータを解析しており、この取り組みが三菱総合研究所の共創コミュニティ「ThinkLink」に掲載されました(https://thinklink.mri.co.jp/008.html)。株式会社電通・株式会社電通マクロミルインサイトとの共同プロジェクトは、現在、プロジェクトの第一フェーズとして、認定心理士の皆様の参加意思や、参加了承いただいた方の現在の活動状況/参加してもよいテーマなどを把握させていただくための、事前アンケートを実施しました。事前アンケートにご回答いただいた内容を当学会で検討し、今後プロジェクトを拡大するか/どういったテーマでプロジェクトを推進していくかを検討中です。
このように昨年は「認定心理士」という名称が官公庁やシンクタンク、そして大手企業という社会的インフルエンサーによって広く社会に浸透した一年でした。認定心理士の皆様が、社会で活躍する契機を、今後は学会としてより一層創っていけたらと考えています。
シチズン・サイエンスプロジェクトでは、現在、「潜在的連合テストによる『ジェンダー』-『科学』ステレオタイプの測定」、「災害碑発掘プロジェクト-災害の記憶を未来に届けるために-」の2テーマについて、引き続き、参加者を募集しています。ぜひ奮ってご参加ください。また、学会がテーマを設定するシチズン・サイエンスプロジェクトとは別に、認定心理士の皆様が自らプロジェクトを考案して進める「シチズン・サイエンスワークショップ」も現在進行中です(https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2020/08/20201024_csp.pdf)。大学や研究機関に所属していない「シチズン・サイコロジスト」である認定心理士の皆様への社会からの期待は、ますます高まっています。日本心理学会から発信される情報を、メールや認定心理士の会Facebook(https://www.facebook.com/NinteiShinrishiNoKai)でいち早くキャッチして、ぜひ様々な機会をご利用ください。
(認定心理士の会運営委員会委員長:髙瀨堅吉)
新年、あけましておめでとうございます。2020年はCOVID-19に振り回され、対応に追われ、不安をかられる一年だったという方が多いのではないでしょうか。しかし、前号と同じことをあえて繰り返させていただきます。このような事態だからこそ心理学が果たせる役割も多くあると思います。身近なところから、そして小さなことで良いので、心理学の力を発揮していきましょう。2021年が、認定心理士の会会員の皆様、そして世界中の人々にとって幸多き一年になりますことを祈念しております。
(認定心理士の会運営委員会委員:小川一美)
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認定心理士の会運営委員会〒113-0033 東京都文京区本郷5-23-13田村ビル内公益社団法人日本心理学会事務局jpa-ninteinokai@psych.or.jp
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