公益社団法人 日本心理学会

詳細検索

心理学ワールド 絞込み


号 ~

執筆・投稿の手びき 絞込み

MENU

刊行物

心理学キャンパス

新潟青陵大学

齋藤恵美
福祉心理学部臨床心理学科

齋藤恵美(さいとう めぐみ)
所在地:新潟市中央区水道町1丁目5939番地
http://www.n-seiryo.ac.jp/

Profile─齋藤恵美
新潟青陵大学福祉心理学部臨床心理学科准教授。専門は健康心理学,臨床心理学。著書は『行動医学テキスト』(分担執筆,中外医学社),『健康心理学事典』(分担執筆,丸善出版)など。

はじめに

新潟青陵大学1号館
新潟青陵大学1号館

新潟青陵大学の設置母体である学校法人新潟青陵学園は,1900年に下田歌子によって裁縫伝習所として開所されました。建学の精神として「日進の学理を応用し,勉めて現今の社会に適応すべき実学を教授する」を掲げ,当時としては先駆的な女子の実学教育を目指し,新潟県内の女性教育の中心として活動してきました。1965年に名称を新潟青陵学園に改め,現在では大学院・大学・短期大学部・高等学校の男女共学の学園となっています。大学としては2000年,看護福祉心理学部福祉心理学科を開設,2005年に心理カウンセリングコースを導入,翌年に大学院臨床心理学研究科(修士課程)を開設しました。2015年,看護学部と福祉心理学部とに分離分割され,本学科がスタートして今年で6年目にあたります。

ところで,新潟県は本州の日本海側北部に位置していますが,日本の何地方であると思いますか?実は区分は様々で,国土形成計画では東北圏に,地理の教科書では中部地方に,気象予報区やスポーツ大会では北陸に,NHKニュースでは関東甲信越に含まれています。つまり,どの地方であるか明確に定まっていないわけですが,南北に細長い新潟は隣接する県が多く,どこの県・地域とも連携しやすいと言えるのかもしれません。本学へのアクセスは,新潟市の中心部からJRの最寄り駅(白山駅)まで1駅,バス利用では20分ほどです。徒歩圏内に日本海側有数の規模を誇る水族館「マリンピア日本海」があり,キャンパスは潮風に包まれる開放的な海岸エリアにあります。

福祉心理学部の概要

福祉心理学部の中には社会福祉学科と臨床心理学科があり,心理学に特化した専門分野だけでなく,社会福祉学を中心として関連周辺領域も広く学べることを特色としています。いずれの学科でも社会福祉士の受験資格と認定心理士の取得に必要な科目が設けられています。臨床心理学科では他にも介護に関する資格や医療事務,レクリエーション支援に関する資格を取得できる科目もあります。

臨床心理学科の概要

本学科は,臨床心理的視点を持った職業人の養成と,「心の専門家」養成の基礎段階を担うことを目的として設置され,2018年度から公認心理師資格取得に対応したカリキュラムをスタートさせました。教育目標としては,①生命尊厳・人間尊重の理念に基づき,ケアのこころ(自らケアができ,ケアされる側の気持ちを理解できるこころ)を持った人材を養成する,②客観的な観察と論理的な思考を身につける,③専門的な方法で人間を理解する力を身につける,④コミュニティに参与し,調整する力を身につけることを掲げています。

入学定員は50名で,卒業研究のゼミでは3~5名の学生を1人の教員が担当する形となり,濃密な指導を受けられるという少人数教育が特長です。所属する18名の教員の構成は,学科の名称からして臨床心理学を専門とする教員が多いのは当然ですが,他に社会心理学や発達心理学,認知心理学といった基礎領域を専門とする教員や,精神医学や精神保健福祉といった近接領域,さらには情報教育や経営情報学を専門とする教員もおり,バラエティに富んでいます。

臨床心理学科の学びの特色

認定心理士と公認心理師受験資格の取得に必要な科目が履修できるのはもちろんのこと,その他にも本学ならではの科目が設けられています。例えば,必修科目には「社会福祉原論」と「地域連携とボランティア」があり,選択科目には「人間発達学」や「人の生と死」「新潟学」があります。これらを履修することで,少子高齢化社会に対応する福祉の視点と,新潟という地域に根差した学びを得ることができ,心理学の学びもより深く豊かになります。また,「社会心理学実験実習」や「家族心理学概説」「コミュニティ心理学」「文化心理学」等の科目が開講されていることから,家族や地域,さらには文化といった社会と人間との関係を重視した視点を養っていると言えます。本学が創立以来の理念として掲げている「地域社会から求められる,時代に合った先進的な実学教育」が実現されています。

次に,体験と実践に基づいた学びが得られるよう演習の科目が多数設けられており,その中でも特色のある二つの必修科目を紹介します。

一つ目は,「臨床心理学演習」という2年次後期に履修する科目です。この授業はまず,大学を離れ非日常的な空間で,夏休みに合宿形式で集中的に行います。内容は,二人一組でブラインドウォーク(閉眼歩行)やピア・カウンセリングを行い,その体験をつぶさに振り返り,個々の気づきを言語化して少人数グループで共有します。その後は毎週1コマ,心理療法の中で用いられる非言語的な表現について学びます。具体的には,風景構成法やスクイグル,コラージュやグループ箱庭の制作を実際に体験します。各ワークの振り返りのディスカッションを通して,自己理解を深め,自分とは異なる他者を多面的に理解する重要性を学びます。

二つ目は,4年間の集大成である卒業研究に向けて初年次より開講される「臨床心理ゼミナールⅠ・Ⅱ・Ⅲ」です。ゼミナールⅠでは臨床心理学にまつわるトピックを取り上げ,少人数でディスカッションをすることで,自分とは異なる考えや価値観を知り,多様性に触れます。ゼミナールⅡでは,学生一人ひとりが関心のあるテーマを選び,文献を調べてまとめ,発表します。2年次後期からは心理学の研究論文の精読と発表・議論を通じて研究法や統計等を学びます。ゼミナールⅢではさらに焦点を絞って卒業研究で取り組むテーマを決め,研究計画を練ります。3年次12月に指導教員が決定し,1月の構想発表会において研究計画をブラッシュアップさせます。そして4年次には,実際にデータを収集して分析し考察します。卒業研究発表会で学生たちは堂々と見事なプレゼンテーションを披露し,一回りも二回りも成長した姿を見ると教員として感慨深いものがあります。

課外活動でも,本学科で培われたケアのこころや人間を多面的に理解し関係を調整する力を存分に発揮している学生の姿がよく伺えます。例えば,ボランティア活動において企画運営や後輩のサポート,さらには学生と関係機関との橋渡しをするコーディネーター役を務めたり,市内の商店街をフィールドとした経験型インターンシップに参加し,地域の方々の話を丁寧に聴き信頼関係を築きながら課題解決に取り組んだりしています。

卒業後の進路

本学科の卒業生は,就職する学生のうちおよそ7割が一般企業(営業・販売職,事務職,サービス職)に,3割が福祉・医療職(生活相談員,生活支援員,介護職等)に就きます。もともと新潟県内の出身者が多く,8割以上が県内で就職します。大学院(修士課程)に進学する学生は毎年10人前後おり,その多くは本学臨床心理学研究科に進んで6年間じっくりと学び巣立っていきます。

大学院臨床心理学研究科について

(公財)日本臨床心理士資格認定協会による第1種指定大学院として,さらに公認心理師の受験資格に対応したカリキュラムを持つ大学院として,地域に貢献できる「心の専門家」を養成しています。院生は1年次より幼稚園児とのプレイセラピー実習を行ったり,週1回行われるインテーク会議や月2回のケースカンファレンスに出席したりする等,様々な事例に触れていきます。1年次後期からは,付属の臨床心理センターで実際のクライエントさんの心理相談を行い,臨床経験の豊富な教員から綿密なスーパーヴィジョンを受けます。学外における実習も様々な領域で実施されており,実践経験をたくさん積めることが特長です。修了後に受験する資格試験の合格率も全国平均を毎年上回っており,本学における学びの質の高さが示されています。

おわりに

隣接する地域と連携しやすい新潟県のあり方と同様,本学科の卒業生たちも隣接する職域の様々な人々と手を取り合い連携する力を発揮すると同時に,生身の人間についての学びを実生活に役立ててほしいと願っています。コロナ禍で先行き不透明な時代であっても,心理学を学ぶことで科学的な思考とバランスの取れた人間観を身につけることができれば,難局に立ち向かい生き抜いてゆけるのではないでしょうか。心理学に興味があり,地域社会に貢献したいと思われる方はぜひ本学のホームページをご覧ください。

PDFをダウンロード

1