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第1章 論文を書くにあたって

第1章 論文を書くにあたって

自分の考えや発見などを人に伝えるために最も適した論文形式は何か。はじめて科学論文(論文)を書くにあたって,いかに構想を立て,どのようにして内容を書き進めるか,その心構えや守らなければならない規則を本章で述べる。

1.1 論文の文章と用語

論文は,広範な読者が理解しやすいように,簡潔明瞭な文体で書く必要がある。原則として,日本語では常用漢字・現代かなづかいを用いて原稿を作成する。また英語については,ネイティブの専門家の責任ある校閲を経た文章であることが不可欠である。英語論文の書き方については,次のものを参照することが望まれる。

American Psychological Association (2010). Publication manual of the American Psychological Association(6th ed.). Washington, DC: American Psychological Association.(アメリカ心理学会(APA) 前田 樹海・江藤 裕之・田中 建彦(訳)(2011).APA論文作成マニュアル 第2版 医学書院)

論文中は,一般的でない用語の使用はできるだけ避ける。論文の文章のスタイルについて,とくに留意すべき点を以下にあげる。

(1)順序よく意見を述べる
読者が理解しやすいように,用語や概念間の関連性に配慮し,論旨の展開に一貫性をもたせること。それには,句読点の付け方に注意し,誤解を招かないつなぎ言葉(接続詞や関係代名詞)を用いること
(2)滑らかな表現
論文は,明確で論理的な文章でなければならない。自分の文章は,論理の飛躍,推論の矛盾点,時制の 間違い,同意語の不用意な使用などに気づかないことがあるので,時間をおいて読み直したり,他者に読んでもらうことが望ましい。
(3)無駄のない表現
定義の明確な用語を用いて,必要な事柄のみを記述した短い文が望ましい。一部の人々にしか分からない特殊な用語は避けること。長文になる場合は,文章の構造に注意すること。重複した表現は必要最小限にとどめ,内容のまとまりをもたせること。
(4)箇条書き・体言止めの不使用
本文中に箇条書き,体言止めを用いることは,できる限り避けるようにする。
(5)適切な言葉遣い
話し言葉は用いない。あいまいな表現,また,何を指し示すのか分かりにくい代名詞の使用は避けること。略語を用いる際には,一般的なものを用いる。一般的な略語がない場合は,無理がない略語の使用を心がける。
(6)日本語と外国語の混在の回避
日本語で論文を書く場合,すでに定着した翻訳語があり,また適切な日本語で表現できるものをわざわざ外国語で記載しない。たとえば,同一論文内で,あるときは“Dim 1”と書いたり,あるときは「次元1」と書いたり,「認知者のself esteemの高低と...」などと書いたりするのは好ましくない。同じ論文の中に日本語と外国語を不統一に混在させないようにする。
(7)正しい文法と語法
時制や記述方法に注意する。主語と動詞の関係を明確にし,代名詞・関係代名詞・従属接続詞を正しく使用すること。修辞語句の挿入の仕方に気を配り,差別用語や偏見と受け取られる言葉遣いを避ける。受動態と能動態を適切に使い分ける。
(8)倫理的配慮
論文の作成にあたっては,「公益社団法人日本心理学会会員倫理綱領及び行動規範」の趣旨を踏まえ「公益社団法人日本心理学会倫理規程」(https://psych.or.jp/publication/rinri_kitei/)に則ること。

1.2 論文の構成

論文の主な構成としては,問題(序論),方法,結果,考察,結論の各部分を含むことが望ましい。

(1)問題(Introduction)
その論文で何を問題にするかを簡潔明瞭に書く。ただし,「問題(Introduction)」という見出しは印刷されない。先行研究に対する検討内容や仮説を含む。
(2)方法(Method)
研究(実験,観察,調査,事例研究など)の対象,材料,方法,手続きなどについて,要点をもらさず詳細に書いておく必要がある。ただし,標準的方法あるいは同一方法を用いた既刊論文がある場合には,それを引用して記述を簡略にすることもできる。なお,実験参加者の個人情報の秘匿,保護など,研究倫理に関しても記述する。
(3)結果(Results)

研究の結果を,内容の重要度に従って事実に即して忠実に述べる。自分の予期に反した事実も省略しない。

心理学における研究では統計的仮説検定が分析にしばしば用いられるが,仮説検定はデータ分析の一側面に限られる。必要に応じて仮説検定に限らず適切な分析手法を用いるのが望ましい。特に,仮説検定の適用にあたっては,前提とするデータの性質(データの分布の正規性や,標本相互の独立性など)が成立していることを確認する。

分析結果の記述においては,研究結果の重要性を評価できるよう効果量とその信頼区間も示す。元来の測定単位・尺度によって表された効果量は理解が容易であるが,必要に応じて尺度に依存しない標準化された効果量の指標(Cohenのdや標準化回帰係数等)を示す。

データの欠測は分析の結果に大きな影響をしばしば与える。欠測を伴うデータを分析する場合には,欠測の頻度や件数を示すとともに,欠測の発生について経験的あるいは理論的な説明を記述する。分析において採用した欠測モデルの性質(MCAR,MAR,NMARの区分)や,欠測に対応するために採用した方法(多重埋め合わせなど)について記述することが望ましい。

(4)考察,結論(Discussion, Conclusion)
得られた結果を,従来の研究成果と比較し,その理論的意義を考察し,結論に至る過程を述べる。研究が複数に分かれている場合は,それぞれ方法,結果,考察を書いてもよい。ただし,その際は総合考察(General Discussion)が必要となる。
(5)利益相反の開示
本文末に利益相反の開示について記述する必要がある。なお,投稿時は,著者情報が含まれる場合,著者情報を伏せて投稿する。詳細は学会ホームページを参照されたい。
(6)その他
その他に,表題はもちろんのこと,引用文献(References),図表(Figure,Table),英文アブストラクトとキーワード(Abstract,Key Words)などが必要である。